高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会 in 栃木(栃木市)
開催結果
日 時:2024 年 5 月 13 日 (月) 18:00〜20:07
場 所:栃木市市民交流センター 1 階 大交流室ほか
参加者数:33 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・桑原 豊
(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)
ほか
・高橋 徹治(原子力発電環境整備機構 地域交流部 部長)ほか
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
・ 日本では過去 50 年以上にわたって原子力発電を利用してきており、それに伴って発
生する高レベル放射性廃棄物は、
人々の生活環境に影響を与えないよう、
地層処分と
いう方法で最終処分する方針。
・ 全国の皆さまに地層処分について、
関心を持って、
理解を深めていただくとともに、
この事業を受け入れていただける地域に対して、社会全体で敬意や感謝の気持ちを
持っていただけるよう、全国で対話活動に取り組んでいる。
・ 原子力発電により発生した使用済燃料は、再処理工場でプルトニウムなどを回収し
た後、残った放射性廃液をガラスに溶かし込んで「ガラス固化体」にする。既に約
27,000 本のガラス固化体に相当する高レベル放射性廃棄物が存在している。将来世
代に先送りすることなく、
原子力を含む電気を多く使ってきた現世代で、
この問題の
解決に道筋をつけるべく取り組んでいくことが重要。
・ 地層処分はガラス固化体を地下深くの安定した岩盤に閉じ込め、地上環境から隔離
して処分する方法である。
・ 地層処分場として、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設する施設を全国で 1 か所つく
る計画である。
・ 放射能が低減するまで数万年以上にわたって人間の生活環境から適切に隔離する必
要がある。
確実性や環境への影響などの観点から考慮した結果、
地下深くに埋設して
人間による直接の管理を必要としない地層処分が、
国際社会から現時点で、
最も安全
で実現可能な処分方法とされている。
・ 世界で唯一建設を開始しているフィンランドは、
30 年以上の歳月をかけ、
国民理解・
地域理解に弛まぬ努力を重ねている。先行する諸外国は、プロセスの初期段階で 10
程度の自治体が関心を持ち、
調査の過程で候補地が絞られ、
最終的に1つの地域が選
ばれている。日本もできるだけ多くの地域が関心を持つことが望ましい。
・ 地層処分にあたって考慮すべき地質環境の科学的特性について、全国でほぼ同じ精
度で作成されている既存のデータをもとに、日本全国を 4 種類に区分した「科学的
特性マップ」を 2017 年 7 月に公表した。
・ 処分地選定としては、文献調査、概要調査、精密調査の段階的な調査を行い、最終処
分地を選定する。この調査期間中、放射性廃棄物を持ち込むことは一切ない。
・ 文献調査では、
地域固有の文献やデータをNUMOが机上で調査し、
断層やマグマな
ど避けるべき場所の基準などを具体化した
「文献調査段階の評価の考え方」
に基づい
て報告書をとりまとめる。その後、調査結果を都道府県知事と当該市町村長に報告
し、
地域の皆さま向けの説明会等を実施する。
国は、
都道府県知事と当該市町村長に
ご意見を伺い、
概要調査を行うか判断する。
ご意見に反して、
先に進むことはない。
・ 2020 年 11 月に、北海道の寿都町と神恵内村の 2 町村において、文献調査を開始し
た。2021 年 4 月から 2 町村で「対話の場」を開催している。
「対話の場」を通じ、逐
次情報提供を行い、
地域住民の皆さまの間で継続的な対話が行われ、
議論を深めてい
ただくことが重要と考えている。
「対話の場」
では、
参加された方々が主体となって、
処分事業などについて議論を深めていただくため、
また、
賛否に偏らない自由な議論
ができるように取り組んでいる。2 町村に設置された「対話の場」では、町や村の将
来のまちづくりに関する議論も始まっている。
・ 安全に地層処分を行うため、
NUMOでは様々なリスク要因を抽出し、
対応と安全性
の確認を行う。
処分地選定プロセスにおける調査により、
断層や火山などを避けて場
所を選ぶという「立地による対応」
、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するとい
う「設計による対応」
、その対策により、安全性が確保できるかをシミュレーション
などで確認するという「安全性の確認」といった対策を行う。また、地震・津波、輸
送中の安全性についても設計による対応、シミュレーションによる安全性確認を行
う。また、地層処分の技術開発については、国やJAEAなどの関係機関と連携し
て、
技術開発を実施している。
技術的な課題を整理し、
最新の技術開発動向を踏まえ
た安全確保の考え方やその手法を、
「包括的技術報告書」として取りまとめ、2023 年
1 月に国際レビューを完了し、NUMOのホームページに掲載している。今後も、よ
り実践的な技術開発に取り組み、技術的信頼性の更なる向上を目指す。
・ 最終処分事業は 100 年以上の長期にわたるため、地域の発展を支えてこそ、安定的
な運営ができる。
NUMOは、
調査の開始に伴い、
地域にコミュニケーションのため
の拠点を設置し、
事業に関する様々なご質問にお答えするとともに、
住民の皆さまと
共に、地域の発展に向けた議論に貢献していく。
・ これまで対話活動を進める中で、
地層処分事業を
「より深く知りたい」
との思いから
主体的に活動されている地域団体、
大学・教育関係者、
NPOなどのグループが全国
各地に広がりつつある。
・ 地層処分事業についてご不明な点や疑問点や、またもっと詳しい話を聞いてみたい
と関心を持っていただける場合には、
一般の方でも、
自治体の方でも国やNUMOか
らご説明させていただく機会を設けさせていただくとともに、関連施設の見学にご
案内するなど、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応させていただく。
しろまるグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載
<地層処分事業>
・高レベル放射性廃棄物の処分方法が検討された経緯について教えてほしい。
(→回答:)高レベル放射性廃棄物の処分方法については、日本で初めて商業用原子力
発電所が運転を開始した 1966 年より前の 1962 年に検討が開始された。
1976 年から地層処分研究が始まり、1999 年に日本でも地層処分を事業化
の段階に進めるための信頼性のある技術基盤が整備されたことが示され、
2000 年に「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」が国会で制定さ
れ、高レベル放射性廃棄物の最終処分方法を地層処分とすること、原子力
発電環境整備機構が地層処分の実施を担うことが法律で定められた。
・候補地の選定期限といった地層処分事業のスケジュールはあるのか。
(→回答:)最終処分の実現に向けて計画的に進めていくことは重要だが、スケジュー
ルありきで考えても全国での理解が進むものではなく、
むしろ期限がある
ことで、
地域の意向に反して一方的に物事を推し進められてしまうのでは
ないかととられてしまう可能性もある。
いずれにしても現世代の責任とし
て地層処分を実現することが不可欠と考えており、引き続き、全国の皆さ
まに地層処分についてご理解いただくとともに、
できるだけ多くの地域で
調査を受け入れていただけるよう努めていく。
・地層処分場はどのようなものか。
(→回答:)地層処分施設は、地上施設と地下施設で構成されており、40,000 本以上の
ガラス固化体と 19,000 m3以上の地層処分相当低レベル放射性廃棄物 (T
RU廃棄物)を、埋設する施設を全国で 1 箇所、建設することを計画して
いる。
・東京、大阪、名古屋など、電気の最大の消費地につくらないのか。
(→回答:)全国でいずれか 1 か所に建設する計画である。個別の地域について適性が
あるかどうかは、
その地域における詳細な処分地選定調査を実施して検討
していくこととなる。
・ガラス固化体はあと何年で 40,000 本に達するのか。
(→回答:)原子力発電所の稼働状況について、将来的な見通しを立てることは難しい
が、100 万 kW 級の原子力発電所が 1 年間稼働すると、20〜30 本程度のガ
ラス固化体が発生する。
・処分場の跡地はどのように活用されるのか。
(→回答:)地下に処分場が存在することを示すモニュメント等を設置することや公園
などを設けること、技術を継承するための記念館の設置など、様々な用途
に使うことも考えられるが、
閉鎖後の活用方法については地域の皆さまの
ご要望をお聞きしながら考えていきたい。
<リスクと安全性>
・地層処分の安全性は本当に問題がないのか。
(→回答:)地層処分では、リスクを低減するために火山や活断層等を避ける必要があ
るが、これらは入念な調査により避けることができる。また、将来、人間
が掘り起こさないよう鉱物資源などの存在も確認し、
さらに長期間のうち
に地下水によってガラス固化体から放射性物質が溶け出して人間の生活
圏に運ばれた場合の影響についても評価する。これは、国際的にも共通し
た考え方である。
・地層処分は技術的に可能なのか。
(→回答:)日本では、1976 年以降の長年にわたり研究開発が進められてきている。
1999 年にとりまとめられた報告書の中では、日本においても地層処分に
好ましい地質環境およびその長期安定性が確保できる場所が広く存在し、
現実的な工学技術により合理的に処分施設を設置できる見通しが得られ
ており、
また安全評価のための手法も確立されていることが示されている。
今後も更なる安全性向上を図る観点等から、
技術開発等を積極的に進めて
いく。
・地震の影響は、どのようなことを想定しているのか。
(→回答:)地震の影響については、処分地選定調査の中で過去の地震の履歴を調査・
評価し、工学的対策で安全が確保できるかを検討していく。また、一般論
として、地下での揺れが地表付近と比較して小さくなる(1/3 から 1/5 程
度)ことや、廃棄体が岩盤と一緒に揺れることから、地下深部の処分施設
に地上と同程度の大きな影響が及ぶことは考えにくい。
・なぜガラスを使用するのか。
(→回答:)ガラス固化体にガラスを用いるのは、放射性物質を長期間にわたり、安定
な状態で閉じ込めておくことができる材料であり、
主成分であるケイ素や
ホウ素等の原子が網目のような化学構造を形成していることから、
大きさ
や性質の違う様々な成分を均質かつ安定に取り込むことができるからで
ある。色ガラスが割れたとしても、色の成分だけが流れ出すことがないの
と同様、
ガラス固化体においても放射性物質が網目のような構造に取り込
まれ、ガラス固化体が壊れても、中から放射性物質が容易に漏れ出すこと
はない。
・戦争に対する地上施設の防護はどのように考えているのか。
(→回答:)放射性物質の盗取や妨害破壊行為を防ぐ対策を実施する。地層処分場の施
設は、法律に従い、放射性物質が不法に持ち出される行為や妨害破壊行為
を防ぐ対策などを実施することになると考えている。
・シミュレーションによって将来の安全性を確認するとのことだが、
その信頼性はどの
ように検証するのか。
(→回答:)オーバーパックの腐食、人工バリアや岩盤における放射性核種の移行挙動
などを室内実験や現場実験などによって測定し、
これらの個々の現象をシ
ミュレーションによって表現できることを確認したうえで、
地表までの放
射性核種の移行を推測する。
地下から地表までに至る核種移行のシミュレ
ーション結果を実験で確認することはできないため、
シミュレーション結
果には不確実性があることを前提に、放射性物質が移動しやすくなるよう
な厳しいケースをあえて想定してパラメータやモデルを保守的に設定し、
それでも生活環境に影響がないことを確認する。また、その手段や方法が
技術的に妥当であるかを様々な専門家に確認していただくことで信頼性
を確保する。
・建設・操業中に地下で活断層が見つかったらどうするのか。
(→回答:)建設・操業中に活断層が見つかった場合、その影響を評価し、変位規模の
小さなものが発見された場合には、
地下施設配置の工夫などにより対応す
ることを考えている。
安全確保上のリスクが許容できないと判断される場
合には、その場所での事業を取り止めることを考えている。
・どのような材料で坑道を埋め戻すのか。
(→回答:)坑道掘削により出た土を活用する。ただし、坑道が水みち(地下水の移動
経路)にならないよう、ベントナイトなどを混ぜて岩盤と同等以下の透水
性となるよう埋め戻すことを考えている。
・オーバーパックの耐食性について、地下の温度影響、硫黄の影響などを考えて試験を
実施しているのか。その試験に対して、どの程度の余裕があるのか。
(→回答:)一般に 3°C/100mで地温は上昇するので、地層処分の対象となる地下の環
境というのは 30〜50°C程度と想定し、硫黄の影響についても考慮してい
る。これらを考慮して評価を行った結果から、オーバーパックの腐食は
1000 年間で約 2cm と推定している。
・1000 年という数字は何の指標なのか。
(→回答:)
説明参考資料に記載されているが、
廃棄体の放射能は経時変化にて 1000 年
で 99.9%以上が減衰する。この期間までは最低でも放射性物質を漏れ出
さないような設計を施すというのが現在の考え方である。
・放射性物質が生活環境に漏れ出した場合に設定している数字は、
都合の良い数値を使
っているのではないか。
(→回答:)NUMOで行った評価の技術的な信頼性を確認するため、第三者機関とし
て放射線に関する専門家が集まる原子力学会や、
国際的な観点からOEC
D/NEAによる外部レビューを受けている。
・操業中、
地上施設が津波に襲われたら、
福島原子力発電所のようになるのではないか。
(→回答:)津波の影響を受けにくい高台への施設の建設や水密扉、防潮堤、高台に施
設を建設するなどの対策を検討する。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・科学的特性マップでは玄海町はシルバーに塗られているが文献調査の対象になるの
か。
(→回答:)科学的特性マップは、全国一律にデータがあるものを使ってつくられてい
る等、全国の概要を示すものであり、国民理解を深めるための対話活動に
活用するためのもの。それ自体で処分場所を決定するものではない。
シルバーの地域については、
「資源が存在しうる範囲を広域的に示したも
の」であることが、国が発行した『
「科学的特性マップ」の説明資料』に留
意事項として明記されており、その全域で均一にすべからく鉱物資源の存
在が確証されているわけではなく、調査によって鉱物資源が存在しないこ
とが確認されうることを示している。処分地としての適否を判断するため
には、NUMOによる文献調査をはじめとする段階的な調査を経て選定す
ることになる。
・調査を受け入れた自治体には、どれくらいの交付金が支払われるのか。
(→回答:)受け入れていただいた地域に対して感謝の念をお示しするとともに、社会
として適切に利益を還元していくために、
雇用の創出や生活の向上ならび
に国内外との交流拡大など、
持続的な発展に資する相応の支援策を講じて
いく必要がある。こうした支援策の 1 つとして、処分地選定調査の段階か
ら、国の交付金制度が活用できる。具体的には、文献調査の段階では 1 年
で最大 10 億円、調査期間で最大 20 億円。概要調査の段階では 1 年で最大
20 億円、調査期間で最大 70 億円となり、調査を受け入れていただいた自
治体の申請に基づき交付される。
・現在の調査地点は 3 か所(寿都町、神恵内村、玄海町)しかないのか。
(→回答:)現在、玄海町においては町長が文献調査の受け入れを表明されたが、調査
自体は開始していない。日本全国で文献調査を実施しているのは、寿都町
と神恵内村である。
・なぜ、寿都町と神恵内村の文献調査には 2 年以上経過しているのか。
(→回答:)初めて実施する調査でもあり、文献の収集から報告書の取りまとめに至る
各ステップにおいて、具体的な文献・データに基づいて、実施方法から議
論を要している点が理由の一つとして挙げられる。
<その他>
・説明会についてどのような方法で周知したのか。
参加者が少なく周知が不十分ではな
いか。
(→回答:)NUMOのホームページ、メールマガジン、SNSでの周知に加え、新聞
などに広告も掲載した。
より多くの方に説明会開催を知っていただけるよ
う工夫したい。
・六ヶ所村の再処理施設は破綻しているのではないか。
(→回答:)再処理施設は原子力規制委員会の審査を経て 2024 年度上期の竣工を目指
しているところであり、再処理の技術そのものは確立されている。
・再処理をしてもプルトニウムが使い切れずにたまっていくのではないか。
(→回答:)もんじゅは廃止したものの、高速炉の研究は諸外国との協力等により継続
していく。また、再処理により取り出したプルトニウムは、プルサーマル
発電により利用することとしており、高浜、玄海、伊方発電所などで使用
実績がある。
・高レベル放射性廃棄物の発生量を減らすための取り組みはされていないのか。
(→回答:)日本原子力研究開発機構等において放射性廃棄物の減容化と有害度低減を
目的に、高レベル放射性廃棄物中に含まれる放射性物質を分離し、放射能
の減衰期間が短い他の放射性物質に変換する技術の基礎研究が進められ
ている。
以上

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