高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会 in 鹿児島(鹿児島市)
開催結果
日 時:2024 年 2 月 17 日 (土) 13:30〜16:05
場 所:サンプラザ天文館 2 階 ホールほか
参加者数:17 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・桑原 豊
(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)
ほか
・富森 卓(原子力発電環境整備機構 地域交流部 専門部長)ほか
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
・日本では過去 50 年以上にわたって原子力発電を利用してきており、それに伴って発
生する高レベル放射性廃棄物は、人々の生活環境に影響を与えないよう、地層処分と
いう方法で最終処分する方針。
・全国の皆さまに地層処分について、関心を持って、理解を深めていただくとともに、
この事業を受け入れていただける地域に対して、
社会全体で敬意や感謝の気持ちを持
っていただけるよう、全国で対話活動に取り組んでいる。
・原子力発電により発生した使用済燃料は、
再処理工場でプルトニウムなどを回収した
後、
残った放射性廃液をガラスに溶かし込んで
「ガラス固化体」
にする。
既に約 27,000
本のガラス固化体に相当する高レベル放射性廃棄物が存在している。
将来世代に先送
りすることなく、原子力を含む電気を多く使ってきた現世代で、この問題の解決に道
筋をつけるべく取り組んでいくことが重要。
・地層処分はガラス固化体を地下深くの安定した岩盤に閉じ込め、
地上環境から隔離し
て処分する方法である。
・地層処分場として、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設する施設を全国で 1 か所つく
る計画である。
・放射能が低減するまで数万年以上にわたって人間の生活環境から適切に隔離する必
要がある。確実性や環境への影響などの観点から考慮した結果、地下深くに埋設して
人間による直接の管理を必要としない地層処分が、国際社会から現時点で、最も安全
で実現可能な処分方法とされている。
・世界で唯一建設を開始しているフィンランドは、30 年以上の歳月をかけ、国民理解・
地域理解に弛まぬ努力を重ねている。先行する諸外国は、プロセスの初期段階で 10
程度の自治体が関心を持ち、調査の過程で候補地が絞られ、最終的に1つの地域が選
ばれている。日本もできるだけ多くの地域が関心を持つことが望ましい。
・地層処分にあたって考慮すべき地質環境の科学的特性について、
全国でほぼ同じ精度
で作成されている既存のデータをもとに、日本全国を 4 種類に区分した「科学的特性
マップ」を 2017 年 7 月に公表した。
・処分地選定としては、文献調査、概要調査、精密調査の段階的な調査を行い、最終処
分地を選定する。この調査期間中、放射性廃棄物を持ち込むことは一切ない。
・文献調査では、地域固有の文献やデータをNUMOが机上で調査し、断層やマグマな
ど避けるべき場所の基準などを具体化した「文献調査段階の評価の考え方」に基づい
て報告書をとりまとめる。
その後、
調査結果を都道府県知事と当該市町村長に報告し、
地域の皆さま向けの説明会等を実施する。国は、都道府県知事と当該市町村長にご意
見を伺い、概要調査を行うか判断する。ご意見に反して、先に進むことはない。・2020 年 11 月に、
北海道の寿都町と神恵内村の 2 町村において、
文献調査を開始した。
2021 年 4 月から 2 町村で「対話の場」を開催している。
「対話の場」を通じ、逐次情
報提供を行い、地域住民の皆さまの間で継続的な対話が行われ、議論を深めていただ
くことが重要と考えている。
「対話の場」では、参加された方々が主体となって、処
分事業などについて議論を深めていただくため、また、賛否に偏らない自由な議論が
できるように取り組んでいる。2 町村に設置された「対話の場」では、町や村の将来
のまちづくりに関する議論も始まっている。
・安全に地層処分を行うため、NUMOでは様々なリスク要因を抽出し、対応と安全性
の確認を行う。処分地選定プロセスにおける調査により、断層や火山などを避けて場
所を選ぶという「立地による対応」
、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するとい
う「設計による対応」
、その対策により、安全性が確保できるかをシミュレーション
などで確認するという「安全性の確認」といった対策を行う。また、地震・津波、輸
送中の安全性についても設計による対応、
シミュレーションによる安全性確認を行う。
また、地層処分の技術開発については、国やJAEAなどの関係機関と連携して、技
術開発を実施している。技術的な課題を整理し、最新の技術開発動向を踏まえた安全
確保の考え方やその手法を、
「包括的技術報告書」として取りまとめ、2023 年 1 月に
国際レビューを完了し、NUMOのホームページに掲載している。今後も、より実践
的な技術開発に取り組み、技術的信頼性の更なる向上を目指す。
・最終処分事業は 100 年以上の長期にわたるため、地域の発展を支えてこそ、安定的な
運営ができる。NUMOは、調査の開始に伴い、地域にコミュニケーションのための
拠点を設置し、事業に関する様々なご質問にお答えするとともに、住民の皆さまと共
に、地域の発展に向けた議論に貢献していく。
・これまで対話活動を進める中で、地層処分事業を「より深く知りたい」との思いから
主体的に活動されている地域団体、大学・教育関係者、NPOなどのグループが全国
各地に広がりつつある。
・地層処分事業についてご不明な点や疑問点や、
またもっと詳しい話を聞いてみたいと
関心を持っていただける場合には、一般の方でも、自治体の方でも国やNUMOから
ご説明させていただく機会を設けさせていただくとともに、
関連施設の見学にご案内
するなど、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応させていただく。
しろまるグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載
<地層処分事業>
・最終処分事業の事業期間は何年か。
(→回答:)20 年程度の調査期間を含めて 100 年以上の事業期間を予定している。
・処分場をいつまでにつくるという計画はあるのか。
(→回答:)高レベル放射性廃棄物の最終処分は、将来世代に先送りすることなく、原
子力発電の恩恵を受けた現世代で道筋をつくるべきだと考えている。
ただ
しスケジュールありきではなく、
国民の皆さまに事業をご理解いただくこ
とを重視して取り組んでいる。
・処分場は 1 か所で足りるのか。
(→回答:)現在ある使用済燃料をすべて再処理したと仮定してガラス固化体の本数に
換算し、今あるガラス固化体と合わせると約 27,000 本相当が存在してい
る。
これに対し、
40,000 本以上のガラス固化体を埋設できる処分場を確保
できれば、1 か所で足りると考えている。
・40,000 本はいつ頃に到達する予定か。
(→回答:)原子力発電所の稼働状況について、将来的な見通しを立てることは難しい
が、100 万 kW 級の原子力発電所が 1 年間稼働すると、20〜30 本程度のガ
ラス固化体が発生する。
・鹿児島県の馬毛島や長崎県の男島や女島に処分場はつくれないのか。
(→回答:)個別の地域について適性があるかどうかは、その地域における詳細な処分
地選定調査を実施して検討していくことになる。なお、仮に無人島でもど
こかの自治体に属しており、
その地域の理解が必要であることには変わり
はない。
・山の下に処分場をつくれないのか。
(→回答:)好ましい特性が確認でき、処分場をつくる深度が確保できれば候補地とな
る可能性がある。海外事例として、米国では、政府判断により計画は中断
されているが、
ユッカマウンテンという山の下を処分場建設予定地として
選定している。
・北欧でつくる処分場に、日本で発生した廃棄物を持っていくことはできないのか。
(→回答:)国際条約において、自国で発生した高レベル放射性廃棄物は自国で処分す
るという原則があるため、
日本においても法律に基づき国内で処分を進め
ていく必要がある。
・海外の地層処分の状況はどうなっているのか。
(→回答:)海外でも高レベル放射性廃棄物の地層処分に向けて、処分地の選定に向け
た取り組みが進められている。フィンランドやスウェーデンなど、処分地
が決定し、処分場建設に必要な手続きが進められている国もある。処分方
法については、原子力発電で使い終わった燃料(使用済燃料)を、再利用
するために再処理するか、
そのまま廃棄物として最終処分する直接処分を
選択するかは、それぞれの国情により異なる。
・宇宙処分や、南極で処分することはできないのか。
(→回答:)高レベル放射性廃棄物の最終処分方法として氷床処分、海洋投棄、宇宙処
分、地層処分が候補として検討された。氷床処分と海洋投棄については国
際条約で不可能となり、
宇宙処分は発射時の信頼性やコスト面などから現
実的ではないと判断された。
<リスクと安全性>
・火山に対する対策とは。
(→回答:)日本列島は 4 つのプレートがぶつかる場所に位置しており、プレートがも
ぐり込む場所やその周辺では地震が頻発するなど、
活発な火山活動が見ら
れる。日本周辺のプレートの動きについては、数百万年前からほとんど変
化が無く、
こうしたプレートの動きに関係する活断層や火山活動などの傾
向は、今後も 10 万年程度はほとんど変化しないと考えられている。
・隠された活断層とは何か。これを避けることはできるのか。
(→回答:)地下に隠れていて、まだ認識されていない活断層のことを隠れた活断層と
呼んでいる。科学的特性マップは、産業技術総合研究所のデータベースに
記載されている断層をもとにしているため、
データベースにない活断層に
ついては科学的特性マップには考慮されていない。文献調査において、断
層等の分布の位置や幅が確認できる場合または確度の高い推定ができる
場合には、断層を避けることが基本であるが、文献だけでは影響を十分に
評価できない場合には、
避ける必要がある位置を概要調査以降で確認する。
概要調査や精密調査に進めば、
現地における詳細な調査に基づいて確認す
るため、未知の活断層が発見される可能性は高まる。その場合は、断層と
その影響の著しい範囲を除外した場所を地層処分地の候補地として選ん
でいく。
・沿岸海底下に処分場を建設する場合のメリットとデメリットは。
(→回答:)沿岸海底下は、地下水の流れが極めて遅く、流動性が長期間にわたって低
い場所を見いだせる可能性がある。また、隆起速度の小さい地域が比較的
多い。一方、考慮すべき点としては、侵食や塩水の影響がある。
・処分場だった場所をどうやって将来に伝えるのか。
(→回答:)処分場の存在を将来に示すことは必要と考えている。例えば、記録を保存
すること、処分場の性能に影響を与える地域を保護区域に指定して、その
ことを知らせるために、文字、絵、シンボル等を記したマーカー、モニュ
メントを設置することなどの対策が国際的にも検討されている。
・埋設後のモニタリングについては、どう考えているか。
(→回答:)モニタリングの期間や方法などは、今後策定される規制基準の中で具体化
されることも考えられるが、地元の皆さまにも安心していただけるよう、
ご相談しながら考えていきたい。
・処分事業が進まない理由は、地層処分技術そのものが問題なのではなく、地層処分の
安全性について一般に浸透していないことではないか。
地層処分の技術は一般の人に
は理解し難いということを意識すべきだ。
(→回答:)確かに地層処分の技術は多岐にわたっており、また数万年という長期間の
安全性について理解を得なければならず、
短時間の説明ではなかなか理解
がいただけないことは認識している。
引き続き丁寧な説明を積み重ねてま
いりたい。・「数万年の安全確保が必要」
というメッセージよりも、
「1000 年間の対策をしっかりと
取ることができれば、将来の影響は十分低くなる」というメッセージを伝えるべきで
はないか。1000 年程度であれば、遺跡の例など一般の人も身近に感じると思うが。
(→回答:)管理を必要としない地層処分により、高レベル放射性廃棄物の放射能量が
自然界の値と同様になるまでの期間として、
数万年という説明をしている
が、
1000 年程度経てばその影響は十分低くなるということについても、わかり易く伝えていきたい。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・概要調査に進むことについて、法律で知事の了解は明記されているのか。
(→回答:)文献調査の開始・受入れの判断は、市町村長に行っていただくが、次の概
要調査や精密調査に進む場合には、
経済産業大臣が当該所在地を管轄する
都道府県知事および市町村長のご意見を聴き、
これを十分尊重することが、
特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律に規定されている。
・報道で寿都町長が文献調査を受け入れる自治体が他に数カ所現れないと、
概要調査に
は進まないと言っていると耳にしたが。
(→回答:)寿都町長のお考えは承知している。他地点で文献調査を開始できるよう、
国や各地域の電力会社とともに取り組んでまいりたい。
・文献調査を受け入れた自治体以外でも、
地層処分事業に関心を持っている自治体はあ
るはず。そのような自治体への宣伝が足りていないのではないか。
(→回答:)特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針を昨年 4 月に改訂し、国と
NUMO、電力会社が全国の市町村の首長を訪問し、相互理解促進活動で
ある全国行脚を開始した。
・風評被害が心配だ。調査を受け入れるだけでも、風評被害が出るのではないか。
(→回答:)風評被害を防ぐためには、事業を受け入れていただく地域だけでなくその
他の地域の方々にも、
「地層処分を適切に行えば、放射性物質により地域
の自然環境や農水産品等が汚染されることはない」
という情報が正確に伝
わることが重要と考える。大都市等を含めて 1 人でも多くの方に、地層処
分の仕組みや安全確保策について理解を深めていただけるよう、
わかりや
すい情報提供と全国的な対話活動を進めていく。なお、既に処分場を決定
している北欧の国においては、
農業や観光業に対してマイナス影響が出て
いないと評価されている。
・このような少人数の説明会を開催するだけでは、理解が進むとは思えないが。
(→回答:)地層処分については全国の皆さまに理解していただくことが必要であり、
今後も対話型全国説明会だけでなく、学校での出前授業や、移動型の模型
展示車によるイベント出展など、
様々な方法により理解活動を行っていく。
・NUMOは地域の人との対話を重視しているが、
地域の人が知るよりも前に首長など
がまずは勉強すべき。新聞社の論説委員にも丁寧な説明が必要では。
(→回答:)NUMOはこうした対話型説明会を、これまで全国で 180 回以上行ってき
たが、その都度地元の新聞社を訪問し、論説委員等への説明と意見交換も
行っている。
・スウェーデンのエストハンマル前市長コメントに、
エストハンマルはハイテク技術が
集まる工業地域になる、とのコメントがあったが、日本で処分場を受け入れた地域は
どうなるのか。
(→回答:)処分場を受け入れた場合の将来のまちづくりについては、自治体や地域住
民の皆さまとの対話を通じ、
その地域のニーズを汲み取って一緒に検討し
ていく。
<その他>
・六ヶ所村の再処理工場が稼動しないと、
再処理を前提とする地層処分もできないので
はないか。
(→回答:)
再処理工場については、2022 年内に主要な安全対策工事を概ね終了してお
り、2024 年度上期の竣工を目指していると聞いている。
・報道を見るとマイナス面や反対の意見が大きく取り上げられるが、
プラス面や推進の
意見はなぜ少ないのか。
(→回答:)広く一般の方々に地層処分に対する関心を持っていただくことや地層処分
という課題があることを知っていただくため、
本日の説明会も報道機関に
もご案内し公開で実施している。
・NUMOの職員も数年毎に人が変わり、
真剣に地層処分の問題に取り組んでいるとは
思えない。腰掛けではうまくいかないのではないか。
(→回答:)NUMOの職員は設立当初は電力からの出向者が多かったが、新規職員の
採用を毎年行うなどプロパー比率を高めている。
プロパーや出向者に関わ
らず、NUMOの職員は「日本で地層処分事業を成し遂げられるのは、自
分たちしかいない」という使命感を持って取り組んでいる。
以上

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /