高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会 in 長崎(諫早市)
開催結果
日 時:2024 年 2 月 3 日 (土) 13:30〜16:00
場 所:小野ふれあい広場 ふれあい会館 1 階 多目的ホールほか
参加者数:13 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・桑原 豊
(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)
ほか
・富森 卓(原子力発電環境整備機構 地域交流部 専門部長)ほか
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
・日本では過去 50 年以上にわたって原子力発電を利用してきており、それに伴って発
生する高レベル放射性廃棄物は、人々の生活環境に影響を与えないよう、地層処分と
いう方法で最終処分する方針。
・全国の皆さまに地層処分について、関心を持って、理解を深めていただくとともに、
この事業を受け入れていただける地域に対して、
社会全体で敬意や感謝の気持ちを持
っていただけるよう、全国で対話活動に取り組んでいる。
・原子力発電により発生した使用済燃料は、
再処理工場でプルトニウムなどを回収した
後、
残った放射性廃液をガラスに溶かし込んで
「ガラス固化体」
にする。
既に約 27,000
本のガラス固化体に相当する高レベル放射性廃棄物が存在している。
将来世代に先送
りすることなく、原子力を含む電気を多く使ってきた現世代で、この問題の解決に道
筋をつけるべく取り組んでいくことが重要。
・放射能が低減するまで数万年以上にわたって人間の生活環境から適切に隔離する必
要がある。確実性や環境への影響などの観点から考慮した結果、地下深くに埋設して
人間による直接の管理を必要としない地層処分が、国際社会から現時点で、最も安全
で実現可能な処分方法とされている。
・世界で唯一建設を開始しているフィンランドは、30 年以上の歳月をかけ、国民理解・
地域理解に弛まぬ努力を重ねている。先行する諸外国は、プロセスの初期段階で 10
程度の自治体が関心を持ち、調査の過程で候補地が絞られ、最終的に1つの地域が選
ばれている。日本もできるだけ多くの地域が関心を持つことが望ましい。
・地層処分にあたって考慮すべき地質環境の科学的特性について、
全国でほぼ同じ精度
で作成されている既存のデータをもとに、日本全国を4種類に区分した「科学的特性
マップ」を 2017 年 7 月に公表した。マップにより、日本でも地層処分に好ましい特
性が確認できる可能性が高い地下環境が広く存在するとの見通しを共有する。
・処分地選定としては、文献調査、概要調査、精密調査の段階的な調査を行い、最終処
分地を選定する。この調査期間中、放射性廃棄物を持ち込むことは一切ない。
・文献調査は、関心を持っていただけた地域の皆さまに、地域の地下の状況や、事業を
より深く知っていただき、
次のステップである概要調査に進むかどうかの判断をいた
だく材料を提供し、理解活動の促進を図るもの。概要調査に進もうとする場合には、
改めて都道府県知事と当該市町村長のご意見を伺い、その意見に反して、先に進むこ
とはない。・2020 年 11 月に、
北海道の寿都町と神恵内村の 2 町村において、
文献調査を開始した。
2021 年 4 月から 2 町村で「対話の場」を開催している。
「対話の場」を通じ、逐次情
報提供を行い、地域住民の皆さまの間で継続的な対話が行われ、議論を深めていただ
くことが重要と考えている。
「対話の場」では、参加された方々が主体となって、処
分事業などについて議論を深めていただくため、また、賛否に偏らない自由な議論が
できるように取り組んでいる。2 町村に設置された「対話の場」では、町や村の将来
のまちづくりに関する議論も始まっている。
・地層処分場として、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設する施設を全国で 1 か所つく
る計画である。
・安全に地層処分を行うため、NUMOでは様々なリスク要因を抽出し、対応と安全性
の確認を行う。処分地選定プロセスにおける調査により、断層や火山などを避けて場
所を選ぶという「立地による対応」
、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するとい
う「設計による対応」
、その対策により、安全性が確保できるかをシミュレーション
などで確認するという「安全性の確認」といった対策を行う。また、地震・津波、輸
送中の安全性についても設計による対応、
シミュレーションによる安全性確認を行う。
また、地層処分の技術開発については、国やJAEAなどの関係機関と連携して、技
術開発を実施している。技術的な課題を整理し、最新の技術開発動向を踏まえた安全
確保の考え方やその手法を、
「包括的技術報告書」として取りまとめ、NUMOのホ
ームページに掲載している。今後も、より実践的な技術開発に取り組み、技術的信頼
性の更なる向上を目指す。
・最終処分事業は 100 年以上の長期にわたるため、地域の発展を支えてこそ、安定的な
運営ができる。NUMOは、調査の開始に伴い、地域にコミュニケーションのための
拠点を設置し、事業に関する様々なご質問にお答えするとともに、住民の皆さまと共
に、地域の発展に向けた議論に貢献していく。
・これまで対話活動を進める中で、地層処分事業を「より深く知りたい」との思いから
主体的に活動されている地域団体、大学・教育関係者、NPOなどのグループが全国
各地に広がりつつある。
・地層処分事業についてご不明な点や疑問点や、
またもっと詳しい話を聞いてみたいと
関心を持っていただける場合には、一般の方でも、自治体の方でも国やNUMOから
ご説明させていただく機会を設けさせていただくとともに、
関連施設の見学にご案内
するなど、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応させていただく。
しろまるグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載
<地層処分事業>
・最終処分費用の 4 兆円はどこが負担するのか。
(→回答:)
最終処分事業に必要な費用は、
原子力発電所等の運転実績に応じた金額が、
毎年、電力会社等からNUMOへ拠出されている。
・地上で保管すべきではないか。
(→回答:)地上施設で長期保管する場合、それが人間の生活環境に影響を及ぼさなく
なるまで、数万年の長期間にわたり地上施設を維持・管理していく必要が
あり、その間には施設の修復や建て替えも必要となる。さらに地上保管の
場合、地震、津波、台風などの自然現象による影響や、戦争、テロ、火災
などといった人間の行為の影響を受けるリスクがある。長期にわたり、こ
のようなリスクを念頭に管理を継続する必要がある地上施設を残すこと
は、将来の世代に負担を負わせ続けることとなり、現実的ではない。この
ため、
人の管理を必要としない地層処分が国際的にも共通した認識となっ
ている。
・離島(無人島)に処分場をつくればよいのではないか。
(→回答:)個別の地域について適性があるかどうかは、その地域における詳細な処分
地選定調査を実施して検討していくことになる。なお、無人島もどこかの
自治体に属しており、
その地域の理解が必要であることにはかわりがない。
・暫く地上に保管して新たな技術開発を待った方が良いのではないか。
(→回答:)原子力発電を利用してきた現世代の責任として、現時点で最善と考えられ
る地層処分を前提に最終処分の実現を目指すべきであるというのが、
国際
的な共通認識。他の技術が地層処分に替わるとの見通しは、現時点ではど
の国でも得られていない。なお、今後もっと良い技術が出てくるかもしれ
ないことを考慮して、将来世代の選択肢を残すという視点から、処分場を
埋め戻して閉鎖するまでは回収可能性を維持することとしている。
・最終処分場をいつまでに完成させるといったスケジュールがないのなら、
そもそも最
終処分場など必要ないのではないか。
(→回答:)半世紀以上にわたって原子力を利用し、使用済燃料が既に存在している以
上、放射性廃棄物の最終処分は将来に先送りすることなく、日本の社会全
体で必ず解決しなければならない重要な課題である。なお、これまで海外
などで再処理に伴い生じたガラス固化体は、
青森県六ヶ所村の高レベル放
射性廃棄物貯蔵管理センターにおいて、30〜50 年間を管理期間とした上
で管理されている。最終処分の実現に向けて、まずは広く国民理解を深め
ていくことが重要であり、性急にことを進めるのではなく、地道な対話活
動を積み重ねていくことが結果的には最終処分の実現へとつながるもの
と考えている。
<リスクと安全性>
・能登半島地震では海岸が 4m 隆起したと聞く。隆起現象は予想できるのか。また、地
層処分場の閉鎖後に隆起した場合、安全性に影響はないのか。
(→回答:)処分場は隆起速度の速い場所を避けて建設する必要があると考えている。
科学的特性マップでも、今回隆起した場所とは若干離れているが、能登半
島の一部が隆起速度の速い場所としてオレンジにマッピングされている
が、実際に安全に処分できるかは、処分地選定調査の中で詳しく調べる。
・火山に対する対策とは。
(→回答:)日本列島は 4 つのプレートが重なる場所に位置しており、プレートがもぐ
り込む場所から一定の地点では、活発な火山活動が見られる。日本周辺の
プレートの動きについては、数百万年前からほとんど変化が無く、こうし
たプレートの動きに関係する火山活動などの傾向は、今後も 10 万年程度
はほとんど変化しないと考えられている。
・ガラス固化体が臨界に達し、爆発することは無いのか。
(→回答:)ウランやプルトニウムが臨界に達するには、特定の放射性同位体(ウラン
233、ウラン 235、プルトニウム 239、プルトニウム 241)が臨界質量と呼
ばれる一定の重量で濃集する必要がある。ガラス固化体はウラン・プルト
ニウムを取り除いた後の廃液をガラスと溶かして固めたもので、
ウランと
プルトニウムはほとんど残っておらず、
特定の放射性同位体の濃度も低い
ことから、臨界には至らない。
・ガラス固化体を運搬する道路は、特別なものになるのか。
(→回答:)ガラス固化体を入れた容器(キャスク)および専用車両を合わせると合計
で約 150t の超重量物になり、
一般道路を通行することが難しいことから、
専用道路が必要になると考えている。
・緩衝材は放射性物質が地下水にしみ出すのを「遅らせる」とあるが、どの程度遅らせ
るのか。
(→回答:)緩衝材は水を含むと膨潤する(膨らむ)という性質をもっており、これに
より地下水の通り道を塞ぎ、通りにくくする。さらに放射性物質を吸着す
る性質を併せ持つため、
放射性物質が地下水に溶け出していくのを遅らせ
ることができる。
どの程度遅らせるかはその地質環境によるため明確には
お答えできない。
・将来的に放射性物質が人体へ与える影響が心配だが大丈夫か。
(→回答:)人体への影響が問題ないレベルになるようシミュレーションを繰り返しな
がら立地や設計による対策を講じることを考えている。例えば、処分して
から 1000 年後にすべてのガラス固化体が地下水に接するような厳しい条
件でシミュレーションを行った場合でも、
地下水が地表付近に到達して水
や農産物の摂取による被ばく線量は最大でも 2μSv/年であり、国際的な
安全指標である 300μSv/年をはるかに下回ると評価している。
・処分場の操業時あるいは閉鎖後の周辺監視(モニタリングポストの設置等)は考えら
れているのか。
(→回答:)建設・操業から閉鎖までの間は、放射線等を常時モニタリングする。閉鎖
後のモニタリング期間や方法などは、
今後策定される規制基準の中で具体
化されることも考えられるが、
地元の皆さまにも安心していただけるよう、
ご相談しながら考えていきたい。また、処分場閉鎖後でも、掘り返して廃
棄体を回収することは技術的に不可能ではない。万が一、処分場閉鎖後に
不測の事態が発生し、処分場の安全性に懸念が生じる場合は、影響の度合
いと回収の困難性などを総合的に考慮し、対応策を検討することとなる。
・廃棄物の無害化の研究にもっと力を注ぐべきでは。
(→回答:)JAEA等において放射性廃棄物の減容化と有害度低減を目的に、高レベ
ル放射性廃棄物中に含まれる放射性物質を分離し、
放射能の減衰期間が短
い他の放射性物質に変換する技術の基礎研究も進められている。
・技術開発は今後も継続して行うのか。
(→回答:)地層処分は今の技術で実施可能なものとされているが、今後も技術開発を
継続し、国内外の最新知見を取り入れ、地層処分の更なる信頼性向上に努
めていく。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・寿都町と神恵内村が概要調査に進めば、
新たな地点を探す必要はなくなるのではない
か。
(→回答:)2町村のいずれかで処分地が決まるわけではない。最終処分法では、概要
調査や精密調査に進むかどうかの際には、
当該調査の受入れにご協力いた
だく市町村長ならびに、
当該の都道府県知事のご意見を聴くことが規定さ
れている。いずれかの段階で反対意見がある場合は調査を進めない。処分
地が選定された海外の 3 か国でも、10 件程度の関心地域から段階的に調
査を進め、最終的に 1 件に絞り込んでいる。
・科学的特性マップでは、諫早市の周辺は好ましくない地域にあたり、科学的特性マッ
プを見た当該市民は関係ないと思い込み無関心につながる可能性がある。
科学的特性
マップの公開は好ましくないのでは。
(→回答:)科学的特性マップは、地層処分に関係する科学的特性を、既存の全国デー
タに基づき一定の要件・基準にしたがって客観的に整理し、全国地図の形
にしたものであり、地層処分事業を広く知っていただき、全国の皆さまに
理解を深めていただくことを目的の一つとしている。
この科学的特性マッ
プなどを利用しながら対話型全国説明会などの理解活動を実施している。
・このような少人数の説明会を開催するだけで理解が進むとは思えない。
(→回答:)地層処分については全国の皆さまに理解していただくことが必要であり、
今後も対話型全国説明会だけでなく、学校での出前授業や、移動型の模型
展示車によるイベント出展など、
様々な方法により理解活動を行っていく。
<その他>
・ガラス固化体はどこで製造されているのか。
六ヶ所村の再処理工場は稼働していない
が、日本に製造できる技術はあるのか。
(→回答:)現在日本に保管されているガラス固化体の多くはフランスとイギリスで製
造されたもの。また、六ヶ所村の再処理工場で 2000 年代からアクティブ
試験が実施された際に、346 本のガラス固化体が生産されており、日本で
も技術は確立されている。再処理工場については現在、東日本大震災以降
に強化された原子力規制委員会の新規制基準に基づく安全審査への対応
を行っており、2024 年度上期の竣工を目指している。
・原子力発電所を解体することでも放射性廃棄物は発生するのではないか。また、それ
らの処分はどうするのか。
(→回答:)原子力発電所の廃炉に伴い様々な放射能レベルを有する放射性廃棄物が発
生するため、放射能レベルに応じて取り扱われる。放射能レベルに応じて
処分方法が決まっている。
・こんな人間の手に負えないような廃棄物を生んでしまったことに対して、
自分の孫に
どう伝えればいいのか。
(→回答:)この廃棄物は、人々の生活に不可欠な電気をつくるために生じたもの。社
会全体の課題として、少しでも全国の皆さまの関心が広がり、理解が深ま
っていってほしい。
以上

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