高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会 in 神奈川(相模原市)
開催結果
日 時:2023 年 12 月 11 日 (月) 18:00〜20:10
場 所:サン・エールさがみはら 2 階 第 1 研修室ほか
参加者数:36 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・桑原 豊(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)ほか
・高橋 徹治(原子力発電環境整備機構 地域交流部 部長)ほか
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
・日本では過去 50 年以上にわたって原子力発電を利用してきており、それに伴って発生す
る高レベル放射性廃棄物は、
人々の生活環境に影響を与えないよう、
地層処分という方法
で最終処分する方針。
・全国の皆さまに地層処分について、関心を持って、理解を深めていただくとともに、この
事業を受け入れていただける地域に対して、社会全体で敬意や感謝の気持ちを持ってい
ただけるよう、全国で対話活動に取り組んでいる。
・原子力発電により発生した使用済燃料は、
再処理工場でプルトニウムなどを回収した後、
残った放射性廃液をガラスに溶かし込んで「ガラス固化体」にする。既に約 27,000 本の
ガラス固化体に相当する高レベル放射性廃棄物が存在している。将来世代に先送りする
ことなく、
原子力を含む電気を多く使ってきた現世代で、
この問題の解決に道筋をつける
べく取り組んでいくことが重要。
・放射能が低減するまで数万年以上にわたって人間の生活環境から適切に隔離する必要が
ある。
確実性や環境への影響などの観点から考慮した結果、
地下深くに埋設して人間によ
る直接の管理を必要としない地層処分が、
国際社会から現時点で、
最も安全で実現可能な
処分方法とされている。
・世界で唯一建設を開始しているフィンランドは、30 年以上の歳月をかけ、国民理解・地
域理解に弛まぬ努力を重ねている。先行する諸外国は、プロセスの初期段階で 10 程度の
自治体が関心を持ち、調査の過程で候補地が絞られ、最終的に 1 つの地域が選ばれてい
る。日本もできるだけ多くの地域が関心を持つことが望ましい。
・地層処分にあたって考慮すべき地質環境の科学的特性について、
全国でほぼ同じ精度で作
成されている既存のデータをもとに、
日本全国を 4 種類に区分した
「科学的特性マップ」
を 2017 年 7 月に公表した。マップにより、日本でも地層処分に好ましい特性が確認でき
る可能性が高い地下環境が広く存在するとの見通しを共有する。
・処分地選定としては、文献調査、概要調査、精密調査の段階的な調査を行い、最終処分地
を選定する。この調査期間中、放射性廃棄物を持ち込むことは一切ない。
・文献調査は、関心を持っていただけた地域の皆さまに、地域の地下の状況や、事業をより
深く知っていただき、次のステップである概要調査に進むかどうかの判断をいただく材
料を提供し、理解活動の促進を図るもの。概要調査に進もうとする場合には、改めて都道
府県知事と当該市町村長のご意見を伺い、その意見に反して、先に進むことはない。
・2020 年 11 月に、北海道の寿都町と神恵内村の 2 町村において、文献調査を開始した。
2021 年 4 月から 2 町村で「対話の場」を開催している。
「対話の場」を通じ、逐次情報提
供を行い、
地域住民の皆さまの間で継続的な対話が行われ、
議論を深めていただくことが
重要と考えている。
「対話の場」では、参加された方々が主体となって、処分事業などに
ついて議論を深めていただくため、
また、
賛否に偏らない自由な議論ができるように取り
組んでいる。2 町村に設置された「対話の場」では、町や村の将来のまちづくりに関する
議論も始まっている。
・地層処分場として、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設する施設を全国で 1 か所つくる計
画である。
・安全に地層処分を行うため、
NUMOでは様々なリスク要因を抽出し、
対応と安全性の確
認を行う。
処分地選定プロセスにおける調査により、
断層や火山などを避けて場所を選ぶ
という「立地による対応」
、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計によ
る対応」
、その対策により、安全性が確保できるかをシミュレーションなどで確認すると
いう「安全性の確認」といった対策を行う。また、地震・津波、輸送中の安全性について
も設計による対応、シミュレーションによる安全性確認を行う。また、地層処分の技術開
発については、国やJAEAなどの関係機関と連携して、技術開発を実施している。技術
的な課題を整理し、最新の技術開発動向を踏まえた安全確保の考え方やその手法を、
「包
括的技術報告書」として取りまとめ、NUMOのホームページに掲載している。今後も、
より実践的な技術開発に取り組み、技術的信頼性の更なる向上を目指す。
・最終処分事業は 100 年以上の長期にわたるため、
地域の発展を支えてこそ、
安定的な運営
ができる。NUMOは、調査の開始に伴い、地域にコミュニケーションのための拠点を設
置し、事業に関する様々なご質問にお答えするとともに、住民の皆さまと共に、地域の発
展に向けた議論に貢献していく。
・これまで対話活動を進める中で、地層処分事業を「より深く知りたい」との思いから主体
的に活動されている地域団体、大学・教育関係者、NPOなどのグループが全国各地に広
がりつつある。
・地層処分事業についてご不明な点や疑問点や、
またもっと詳しい話を聞いてみたいと関心
を持っていただける場合には、
一般の方でも、
自治体の方でも国やNUMOからご説明さ
せていただく機会を設けさせていただくとともに、
関連施設の見学にご案内するなど、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応させていただく。
しろまるグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載
<地層処分事業>
・年間何本のガラス固化体が発生するのか。
(→回答:)100 万 kW 級の原子力発電所を 1 年間稼働させ、発生する使用済燃料を再
処理するとガラス固化体が約 20〜30 本相当発生する。
・候補地の選定期限といった地層処分事業のスケジュールはあるのか。
(→回答:)最終処分の実現に向けて計画的に進めていくことは重要だが、スケジュ
ールありきで考えても全国での理解が進むものではなく、むしろ、期限
があることで、地域の意向に反して一方的に物事を推し進められてしま
うのではないかととられてしまう可能性もある。いずれにしても現世代
の責任として地層処分を実現することが不可欠と考えており、引き続
き、全国の皆さまに地層処分についてご理解いただくとともに、いずれ
かの地域で調査を受け入れていただけるよう努めていく。
・ガラス固化体の輸送はどのように実施するのか。
(→回答:)青森県六ヶ所村から処分場最寄りの港まで海上輸送し、そこから処分場
まで陸上輸送することが考えられる。放射線を遮へいし、衝突や火災な
どの事故時でも放射性物質が漏れないよう、国際的な基準をクリアした
専用容器に入れて輸送する予定。なお、六ヶ所村では海外から日本に返
還されたガラス固化体の輸送実績もある。陸上輸送は、ガラス固化体を
入れた容器(キャスク)および専用車両を合わせると約 150t と非常に重
いため、専用道路により運搬することになると考えている。また、海上
輸送であれば、専用の輸送容器を取扱える港の整備も必要になると考え
ている。
・処分場は閉鎖後どのような状態になるのか。
(→回答:)
地下施設の閉鎖完了後、
すべての地上施設を撤去することを想定している。
環境モニタリングの期間や方法などは、
今後の国による規制の動向も踏ま
え具体化されていくものであるが、
地元の皆さまにも安心していただける
よう、ご相談しながら考えていきたい。
・事業費用約 4 兆円には閉鎖後の施設撤去費用も含まれるのか。
(→回答:)施設撤去費用も含まれる。
・処分場の閉鎖までに要する期間は。
(→回答:)調査開始から処分場の閉鎖までの期間は、100 年程度と考えている。
・地層処分よりも良い方法ができた場合、閉鎖後でも掘り出せるのか。
(→回答:)今後、もっと良い技術が出てくるかもしれないことを考慮して、将来世代
の選択肢を残すという視点から処分場を埋め戻して閉鎖するまでは回収
可能性を維持することとしている。また、埋設した廃棄体を取り出す研究
開発も進められており、実証もされている。
・海外の国にお願いすればよいのではないか。
(→回答:)国際原子力機関(IAEA)が定めた国際条約において、自国で発生し
た高レベル放射性廃棄物は自国で処分するという原則があるため、日本
においても法律に基づき国内で処分を進めていく必要がある。
<リスクと安全性>
・オーバーパックとガラス固化体は地上で製作するのか。
(→回答:)そのとおりである。
・オーバーパックの金属には何を使うのか。
(→回答:)現時点では、鉄(炭素鋼)を中心に検討を進めている。
・地上で廃棄物を管理するリスクの方が地下のリスクよりも大きいのではないか。
(→回答:)おっしゃるとおり。なお、地上におけるリスクへの対応については、既往
の原子力関連施設と類似の方法が適用できると考えている。
・地下に穴を掘ることで、地下水など地下の環境に影響を及ぼすことはないのか。
(→回答:)設計や工事の方法など事前の調査によって、地下水などの環境に大きな影
響を及ぼさないことを確認したうえで坑道掘削を行う。
・南海トラフ地震のような巨大地震が起きても地下は安全なのか。
(→回答:)地震の影響については、処分地選定調査の中で過去の地震の履歴を調
査・評価し、工学的対策で安全が確保できるかを検討していく。また、
一般的に地上に比べて地下の揺れは 1/3 から 1/5 程度であることがこれ
までの調査から判明しており、地下深部の処分施設に地上と同程度の大
きな影響が及ぶことは考えにくい。
・津波が処分場まで到達した場合、地下施設に海水が流れ込むことはないのか。
(→回答:)津波に対しては、まず防潮堤や高台に施設を建設するなどの対策を取り、
安全を確保する。
地下施設へのアクセス箇所にも水密扉を設置することも
検討しており、万が一津波が到達しても、地震発生から津波が到達するま
での時間の間に地下施設への影響がでないよう対策を講じる。
・シミュレーション技術の発展は理解しているが、
本当に地層処分で数万年以上先の長
期の安全性が保てるのか。想定外のことが起きたらどうするのか。
(→回答:)求められる安全確保の期間は数万年以上と長く、実験などで直接的に確か
めることはできないため、実験や理論などの科学的な根拠に基づき、将来
の不確実性を考慮して様々なケースをシミュレーションし、
人や環境への
影響を評価する。この際、万が一調査で見つからなかった活断層が処分場
を直撃した場合など、
発生可能性が非常に低い過酷な条件を想定したシミ
ュレーションを行い、
人間の生活環境に影響を与えるリスクが許容できる
レベルであるかを検証し、安全性を確認する。
・なぜ数万年以上という長い期間がかかるのか。数万年以上では、いつまでの時間かわ
からないのでちゃんと説明すべきではないか。
(→回答:)説明参考資料 P.12 にグラフの記載があるが、ガラス固化体には色々な核
種が含まれていて、半減期が長い核種も含まれている。数万年以上経過し
ても放射能がなくなるわけではないが、
ガラス固化体 1 本あたりが持つ放
射能が原子燃料の製造に必要な量の天然ウラン鉱石と同程度の放射能に
まで減衰するのに 10 万年程度かかることがわかっている。
・掘削土はどのように処理するのか。
(→回答:)掘削土は、地上施設敷地内の掘削土置き場に仮置きし、処分場埋め戻し
の際に利用することを考えている。
・被害者と物損についての法律があるのか。
(→回答:)原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)という法律があり、施設が原因
で地域に被害が及んだ場合には、
この法律に基づいて補償することになる
と考えている。
・11 月 30 日付朝日新聞の記事(地球科学の専門家有志による発表)では、地層処分を
否定している。ただ、今日の説明を聞くと、納得できるし、何を信じればいいのか困
惑している。
(→回答:)発表の内容は「地殻変動の激しい日本では廃棄物を 10 万年にわたって地
下に閉じ込められる場所を選ぶのは不可能」とのことであるが、実際に掘
って活断層等の影響を詳しく調べてみないと良し悪しは判断できないと
考えている。
・日本学術会議の地上保管に関する回答に対し、
NUMOはどのように考えているのか。
(→回答:)日本学術会議による「高レベル放射性廃棄物の処分に関する検討委員会」
の回答は、地層処分を前提として考えられている。
「処分場が決まるまで
の間、地上に安全に保管(暫定保管)した上で、国民と議論を深めつつ、
安全性をさらに高める技術開発を進めていく」
という内容の日本学術会議
の提言は、NUMOが目指す方向性と基本的に同じであると考えている。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・文献調査や現地調査をする人は、どうやって選ばれるのか。誰が調査を行うのか。
(→回答:)ボーリング作業自体などは業者に委託を行う可能性があるが、文献調査や
現地調査はNUMOが責任を持って行う。
・文献調査を行っている寿都町では対話が進んでいると思うが、
どのような反対意見が
あるのか。
(→回答:)寿都町で得られたものというわけではないが、
「北海道電力の泊発電所か
ら出る廃棄物をこの地域で処分するということならわかるが、
日本全国の
廃棄物をなぜすべて受け入れなければいけないのか」といったご意見や、
「地層処分そのものに信頼ができない」
などといったご意見をいただいた
ことがある。
・北海道で文献調査を実施している地点も最終処分地になりうるのか。
(→回答:)北海道の2町村で文献調査が行われているが、北海道に処分地が決まった
わけではない。
全国のできるだけ多くの地域で文献調査を受け入れていた
だけるよう、努力を積み重ねていく。
・将来世代に関わる話であるのならば、
もっと若い人たちにも説明をして参加してもら
うべきではないか。
(→回答:)学校での出前授業や、移動型の地層処分展示車によるイベント出展を全国
各地で行うなど、
次世代層にも広くこの事業を知ってもらえるよう取り組
んでいる。次世代層からの理解を得ることは重要であると考えており、今
後も広報活動について工夫していきたい。
・横浜市や川崎市は、科学的特性マップの分布では濃いグリーンになっているが、都市
部であろうと適地はどんどん調査を実施すれば良いのではないか。
(→回答:)科学的特性マップの濃いグリーンは、すべて地層処分の適地ということで
はない。マップは、安全な地層処分が成立することが確認できる可能性が
相対的に高い場所や低い場所を、
既存の公表された全国データに基づいて、4色(オレンジ、
シルバー、
グリーン、
濃いグリーン)
で塗り分けたもの。
グリーンの地域であっても、処分地に適しているかどうかは、個別地点に
おいて処分地選定調査を詳細に行っていくことが必要である。
・政府主導で強権的に事業を進めることはないのか。
(→回答:)地層処分は受け入れていただく地域の方々の理解と協力が必要な事業であ
る。法令により政府が強権的に事業を進めることはない。
<その他>
・原子力発電を始める時になぜ最終処分について決めなかったのか。
(→回答:)原子力発電の利用が始まる 1966 年より前の 1962 年から、放射性廃棄物
の最終処分方法については様々な検討がなされてきた。氷床処分・海洋
投棄・宇宙処分・地層処分が候補として検討されたが、氷床処分と海洋
投棄は国際条約で禁止され、宇宙処分は発射時の信頼性やコスト面など
から現実的ではないと判断された。こうした検討を経て、日本でも、世
界各国と同様に、地層処分が現時点で最も適切な方法であると考えてい
る。
・六ヶ所村のガラス固化体一時貯蔵施設で 25 年以上安全に保管できていたのは偶然で
はないか。
(→回答:)東日本大震災を経ても六ヶ所村の一時貯蔵施設では想定を超える事象は発
生しておらず、安全性を確保している。
・再処理技術は日本で確立できるのか。再処理できないのであれば、そのまま処分する
方法を考えたらどうか。
(→回答:)六ヶ所村の再処理工場については、再処理できる技術は国内でも確立され
ている。現在、東日本大震災以降に強化された原子力規制委員会の新規制
基準に基づく安全審査への対応を行っており、2024 年上期の竣工を目指
している。また、使用済燃料を再処理せず直接処分を行う場合の技術開発
なども行っている。
・本日の説明会を受けて私たちにできることは何か。
(→回答:)高レベル放射性廃棄物の最終処分について、社会全体の課題として皆さま
に関心やご理解を深めていただけるよう、地層処分の仕組みや、日本の地
質環境などについて、広く全国の皆さまにご理解を深めていただくべく、
全国各地で順次説明会を開催している。本日、見聞された内容をご家族や
身近な方々にお伝えいただければありがたい。
より深く知りたいなどのご
関心があれば、いつでもNUMOにご連絡いただければ、さらにご説明を
させていただく。
以上

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