高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会 in 岡山(総社市)
開催結果
日 時:2023 年 11 月 29 日 (水) 18:00〜20:15
場 所:国民宿舎 サンロード吉備路 1 階 コンベンションホール「雪舟」
参加者数:29 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・桑原 豊(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)ほか
・富森 卓(原子力発電環境整備機構 地域交流部 専門部長)ほか
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
・日本では過去 50 年以上にわたって原子力発電を利用してきており、それに伴って発生す
る高レベル放射性廃棄物は、
人々の生活環境に影響を与えないよう、
地層処分という方法
で最終処分する方針。
・全国の皆さまに地層処分について、関心を持って、理解を深めていただくとともに、この
事業を受け入れていただける地域に対して、社会全体で敬意や感謝の気持ちを持ってい
ただけるよう、全国で対話活動に取り組んでいる。
・原子力発電により発生した使用済燃料は、
再処理工場でプルトニウムなどを回収した後、
残った放射性廃液をガラスに溶かし込んで「ガラス固化体」にする。既に約 27,000 本の
ガラス固化体に相当する高レベル放射性廃棄物が存在している。将来世代に先送りする
ことなく、
原子力を含む電気を多く使ってきた現世代で、
この問題の解決に道筋をつける
べく取り組んでいくことが重要。
・放射能が低減するまで数万年以上にわたって人間の生活環境から適切に隔離する必要が
ある。
確実性や環境への影響などの観点から考慮した結果、
地下深くに埋設して人間によ
る直接の管理を必要としない地層処分が、
国際社会から現時点で、
最も安全で実現可能な
処分方法とされている。
・世界で唯一建設を開始しているフィンランドは、30 年以上の歳月をかけ、国民理解・地
域理解に弛まぬ努力を重ねている。先行する諸外国は、プロセスの初期段階で 10 程度の
自治体が関心を持ち、
調査の過程で候補地が絞られ、
最終的に1つの地域が選ばれている。
日本もできるだけ多くの地域が関心を持つことが望ましい。
・地層処分にあたって考慮すべき地質環境の科学的特性について、
全国でほぼ同じ精度で作
成されている既存のデータをもとに、
日本全国を4種類に区分した
「科学的特性マップ」
を 2017 年 7 月に公表した。マップにより、日本でも地層処分に好ましい特性が確認でき
る可能性が高い地下環境が広く存在するとの見通しを共有する。
・処分地選定としては、文献調査、概要調査、精密調査の段階的な調査を行い、最終処分地
を選定する。この調査期間中、放射性廃棄物を持ち込むことは一切ない。
・文献調査は、関心を持っていただけた地域の皆さまに、地域の地下の状況や、事業をより
深く知っていただき、次のステップである概要調査に進むかどうかの判断をいただく材
料を提供し、理解活動の促進を図るもの。概要調査に進もうとする場合には、改めて都道
府県知事と当該市町村長のご意見を伺い、その意見に反して、先に進むことはない。
・2020 年 11 月に、北海道の寿都町と神恵内村の 2 町村において、文献調査を開始した。
2021 年 4 月から 2 町村で「対話の場」を開催している。
「対話の場」を通じ、逐次情報提
供を行い、
地域住民の皆さまの間で継続的な対話が行われ、
議論を深めていただくことが
重要と考えている。
「対話の場」では、参加された方々が主体となって、処分事業などに
ついて議論を深めていただくため、
また、
賛否に偏らない自由な議論ができるように取り
組んでいる。2 町村に設置された「対話の場」では、町や村の将来のまちづくりに関する
議論も始まっている。
・地層処分場として、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設する施設を全国で 1 か所つくる計
画である。
・安全に地層処分を行うため、
NUMOでは様々なリスク要因を抽出し、
対応と安全性の確
認を行う。
処分地選定プロセスにおける調査により、
断層や火山などを避けて場所を選ぶ
という「立地による対応」
、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計によ
る対応」
、その対策により、安全性が確保できるかをシミュレーションなどで確認すると
いう「安全性の確認」といった対策を行う。また、地震・津波、輸送中の安全性について
も設計による対応、シミュレーションによる安全性確認を行う。また、地層処分の技術開
発については、国やJAEAなどの関係機関と連携して、技術開発を実施している。技術
的な課題を整理し、最新の技術開発動向を踏まえた安全確保の考え方やその手法を、
「包
括的技術報告書」として取りまとめ、NUMOのホームページに掲載している。今後も、
より実践的な技術開発に取り組み、技術的信頼性の更なる向上を目指す。
・最終処分事業は 100 年以上の長期にわたるため、
地域の発展を支えてこそ、
安定的な運営
ができる。NUMOは、調査の開始に伴い、地域にコミュニケーションのための拠点を設
置し、事業に関する様々なご質問にお答えするとともに、住民の皆さまと共に、地域の発
展に向けた議論に貢献していく。
・これまで対話活動を進める中で、地層処分事業を「より深く知りたい」との思いから主体
的に活動されている地域団体、大学・教育関係者、NPOなどのグループが全国各地に広
がりつつある。
・地層処分事業についてご不明な点や疑問点や、
またもっと詳しい話を聞いてみたいと関心
を持っていただける場合には、
一般の方でも、
自治体の方でも国やNUMOからご説明さ
せていただく機会を設けさせていただくとともに、
関連施設の見学にご案内するなど、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応させていただく。
しろまるグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載
<地層処分事業>
・処分場は 1 か所で足りるのか。
(→回答:)現在ある使用済燃料をすべて再処理したと仮定してガラス固化体の本数に
換算し、今あるガラス固化体と合わせると約 27,000 本相当が存在してい
る。これに対し、40,000 本以上のガラス固化体を埋設できる処分場を確保
すれば、1か所で足りると考えている。
・40,000 本はいつ頃に到達する予定か。
(→回答:)原子力発電所の稼働状況について、将来的な見通しを立てることは難しい
が、100 万 kW 級の原子力発電所が 1 年間稼働すると 20〜30 本程度のガラ
ス固化体が発生する。
・処分場の容量を 40,000 本以上とする根拠は。
(→回答:)地層処分事業で必要となる費用には、埋設する本数にかかわらず必要とな
る費用(固定費)と、本数に比例する費用(変動費)がある。処分施設の
規模とガラス固化体 1 本当たりの処分費用との関係において、
40,000 本程
度以上であれば処分単価は処分施設の規模にほとんど影響されなくなり、
スケールメリットを得られることから、
40,000 本以上を前提として設定し
ている。
・約 4 兆円の費用はどこから出ているのか。
(→回答:)最終処分事業に必要な費用は、原子力発電所などの運転実績に応じた金額
を原子力事業者などが拠出している。
・最終処分費用は 4 兆円で足りるのか。
(→回答:)最終処分費用は、現在の知見に基づき、標準的な工程や技術的な条件をも
とに算出したもの。毎年、物価指数の変動および利子率などを勘案した見
直しが国により行われている。
・最終処分費用を加えると原子力発電に係るコストはさらにアップするのではないか。
(→回答:)2021 年に国が行った発電コスト試算では、原子力は 11.7 円/kWh 以上と
いうコストとなっている。このコストには、再処理の費用や最終処分にか
かる費用も含まれている。
・既に存在するガラス固化体は、どこで保管されてどうやって地層処分場へ運ぶのか。
(→回答:)ガラス固化体は、青森県の六ヶ所村と茨城県の東海村で一時保管されてい
る。地層処分場への輸送は、放射線を遮へいし、衝突や火災などの事故時
でも放射性物質が漏れないよう、
国際機関や国が定めた基準をクリアした
専用容器に入れて輸送する。
輸送するための車両や船も特別な安全対策を
講じ、さらに専用道路を建設することも考えている。
・既に地層処分を実施している国はあるのか。
(→回答:)まだ実際に地層処分を開始している国はない。処分地を選定した国はフィ
ンランド、スウェーデン、フランスである。一番進んでいるフィンランド
では処分場を建設中で、2020 年代半ばから操業開始予定となっている。
・各国の処分方法に違いはあるか。
(→回答:)いずれの国も地層処分を選択している。現在、地層処分は最も適切な処分
方法であるとの基本的な考え方が国際的に共有されている。
<リスクと安全性>
・変動帯の日本でも地層処分はできるのか。
(→回答:)日本周辺のプレートの動きは、その方向や速さ(数cm/年)は数百万年前
からほとんど変化がなく、
こうしたプレートの動きに関係する活断層や火
山活動などの現象は、今後も 10 万年程度はほとんど変化しないと考えら
れており、日本でも地層処分は可能と考えている。
・高深度のトンネルを掘削する技術はあるのか。
(→回答:)国内では、青函トンネルなどの地下構造物の建設実績も多数あり、処分場
を建設するための技術力は十分あるものと考えている。また、北海道の幌
延と岐阜県の瑞浪では、地下 300m よりも深い地下研究所が建設された実
績もある。
・仮定のシミュレーションで安全が保障できるのか。
(→回答:)数万年以上長期の安全性は、実験などによって直接確認することはできな
いため、様々なリスク要因を抽出し、火山活動や活断層の影響を避けるな
どして処分地を選び、詳細な設計による対応を行った上で、解析による評
価を繰り返し行う。これは、国際的にも共通の考え方である。様々なケー
スをシミュレーションして、人や環境への影響を評価するが、例えば処分
してから 1000 年後にすべてのガラス固化体が地下水に接するような厳し
い条件で評価した場合でも、地上の人間が受ける年間線量の最大値は 2μ
Sv であり、安全性確保の国際基準と比較しても 2 桁も下回るような値で
あることがわかっている。地下については、現時点でわかっていないこと
もあるが、その場合は、あえて保守的に値が悪くなるようにパラメーター
設定を行っている。またこの条件設定については、国内外の機関から妥当
であるという評価を得た上で実施している。
・ガラス固化体からの放射線量はどのくらいか。
(→回答:)
ガラス固化体から出る放射線量は、
製造直後は仮に真横に人間が立てば 20
秒弱で生命に影響を及ぼすほど高いが、
距離を取ることやコンクリートな
どで遮へいすることで影響を小さくすることが可能である。
高レベル放射
性廃棄物貯蔵管理センターでは、厚さ約 2m のコンクリートで遮へいする
ことで安全に貯蔵している。
・活断層の安全性の評価はどのように行うのか。
(→回答:)活断層の存在やその影響範囲については、処分地選定調査において地震波
探査やボーリング調査などを実施して評価を行い、対応を検討する。
・ガラス固化体を一時貯蔵する理由は。
(→回答:)ガラス固化体の製造直後の表面温度は 200°C以上あり、そのまま埋設する
とオーバーパックや緩衝材といったバリア機能に悪影響を及ぼす可能性
があるため、30 年〜50 年程度一時貯蔵する必要がある。
・科学的特性マップを見ると、地層処分に適した場所は限定的に見えるが。
(→回答:)科学的特性マップにおいて、処分地として適さない可能性があるオレンジ
地域は日本全土の約 30%、シルバー地域は約 5%であり、これらを除くグリ
ーン地域は約 65%存在している。その地域で実際に安全に地層処分できる
かは、
科学的特性マップの記載に関わらず、
処分地選定調査の中で調べる。
・現時点では地層処分がベストということだが、将来、技術の進歩により地層処分以外
の処分方法を選択する可能性はあるのではないか。
(→回答:)最終処分法の基本方針において、今後、もっと良い技術が出てくるかもし
れないことを考慮して、将来世代の選択肢を残すという視点から、処分場
を埋め戻して閉鎖するまでは回収可能性を維持することとしている。
・処分場閉鎖後のモニタリングについては、どう考えているか。
(→回答:)モニタリングの期間や方法などは、今後の国による規制の動向も踏まえ、
地元の皆さまにも安心していただけるよう、
ご相談しながら進めていきた
い。
・放射能の減衰が数万年かかるとの説明の一方で、人工バリアが 1000 年しか持たない
という説明もあったが、整合がとれているのか。
(→回答:)
「数万年」というのは、ガラス固化体の放射能レベルがウラン鉱石の放射
能レベルになるまでに数万年かかるため、
地層処分では非常に長期間の安
全性を確保する必要があるという説明をしたもの。
「1000 年」
というのは、
人工バリアの1つであるオーバーパックの説明で、最初の 1000 年間でガ
ラス固化体中の放射能は数千分の 1 と急激に減少するので、
比較的放射能
が高い期間は最低限ガラス固化体と地下水が触れることがないよう、
設計
耐用年数を最低 1000 年としていると説明したものである。オーバーパッ
クが機能を失ったとしても、
人工バリアの1つであるベントナイトや地下
深くの岩盤(天然バリア)の機能により、生活環境に影響が出ないように
する。
・今後開発が必要とされている技術はあるか。
(→回答:)更なる安全性の向上を目指してNUMO、国、JAEAなどで地層処分技
術の研究開発を行っている。一例を挙げると、より腐食しにくいオーバー
パックの研究として、
銅をコーティングしたオーバーパックの技術開発な
どを行っている。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・住民が反対している場合、事業を止めることはできるのか。
(→回答:)処分地選定調査で次の調査に進むためには、基礎自治体の首長と都道府県
知事のご意見を聴くこととなっており、
ご意見に反して先には進めること
はない。
・調査の受け入れが決まった以降に、撤回をすることはできるのか。
(→回答:)最終処分法に則り実施される文献・概要・精密調査の段階的な調査結果に
ついて、
「知事および市町村長の意見を聴き、これを十分尊重しなければ
ならない」とされており、仮に知事や市長村長が反対となれば、選定手続
きはそれ以上進むことはない。
・処分場を受け入れた場合のメリットは何か。
(→回答:)最終処分地が決まった場合には、NUMOは本拠をその地域に移転し、N
UMO職員や関連事業者は地域の一員として地域の発展に貢献する。
また、
雇用の創出や生活の向上など、
地域の持続的な発展に資する総合的な支援
策について、
自治体や地域住民の皆さまとの対話を通じニーズを汲み取り
ながら具体化し、地域と共生していく。
・最終処分場ができることによって、本当に地域は発展するのか。
(→回答:)最終処分事業を進める際には、膨大な建設工事が発生する。また、周辺に
は研究施設や宿泊施設などが必要となることから、
相当の雇用や経済効果
が見込まれる。
すでに処分地として選定されているスウェーデンのエスト
ハンマル市では、最終処分場は「ゴミ捨て場」ではなく、最先端の技術が
集まる「ハイテクシティ」になるとの前向きなイメージが市民と共有され
ている。
・新規地点について、首長にとっては決断が難しく、自治体からの申し入れを待つだけ
では限界がある。国からの積極的な働きかけを行う必要があるのでは。
(→回答:)2023 年 4 月に基本方針を改訂し、国が主導して、地元電力・NUMO協働
で、自治体の首長を訪問する全国行脚を開始するなど、体制を強化し取り
組んでいる。
・神恵内村以外にも、国から自治体への文献調査への協力依頼(申し入れ)は行ってい
るのか。
(→回答:)現時点で神恵内村以外は行っていない。神恵内村は、商工会議所が誘致の
請願を議会に提出し、議会で請願が採択された。これを踏まえ、国が文献
調査の申し入れを行い村長が受託したものである。
・地層処分について理解を深めるために、
様々な立場の専門家がオープンな場で議論す
ることを検討してはどうか。
(→回答:)国の審議会において、様々な専門家に参加いただいて議論を進めたり、シ
ンポジウムにおいて様々な方に登壇いただいたりしている。引き続き、よ
りご理解が賜れるよう活動していく。
・地層処分は長期にわたる事業であり、次世代層の理解を得ることが重要である。次世
代層にはどのように働きかけているのか。
(→回答:)学校での出前授業や移動型の模型展示車によるイベント出展を全国各地で
行うなど、
次世代層にも広くこの事業を知ってもらえるよう取り組んでい
る。次世代層からの理解を得ることは重要であると考えており、今後も広
報活動について工夫していきたい。
・説明会について、どのような方法で周知したのか。参加者が少なく周知が不十分では
ないか。
(→回答:)NUMOのホームページ、WEB広告での周知、総社市内 10,000 部以上
のポスティングに加え、地方新聞などに広告も掲載した。より多くの方に
説明会開催を知っていただけるよう工夫してまいりたい。
<その他>
・まず、高レベル放射性廃棄物の発生原因である原子力発電を止めるべきではないか。
(→回答:)資源の乏しい日本において、経済性や温暖化対策の問題にも配慮しつつ、
エネルギー供給の安定性を確保するためには、
安全最優先という大前提の
もと原子力の活用も必要と考えている。
・ガラス固化体が発している熱を、エネルギーとして利用できないのか。
(→回答:)製造直後は 200°C以上あり、約 2kW の熱エネルギーを持っているが、他に
利用できるほどのエネルギー量や密度はない。一方、ガラス固化体は放射
線量が高いことから、厳重な遮へい機能を有する貯蔵設備が必要になる。
したがって、
ガラス固化体を熱源として利用することは実用的ではないと
考えられる。
・以前の説明会と説明資料に変更がほとんどないように思われるが、
最新の知見を取り
入れているのか。
(→回答:)説明の内容には最新の情報を取り入れながら、地層処分を初めて知る方で
も理解を深めてもらえるよう試行錯誤を重ねて今の内容で構成されてい
る。
より詳細な科学的知見や研究成果については包括的技術報告書などで
公表しているため、そちらを確認していただきたい。
以上

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