高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会 in 佐賀(玄海町)
開催結果
日 時:2023 年 11 月 16 日 (木) 18:00〜20:10
場 所:玄海町産業会館 2 階 研修室ほか
参加者数:25 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・桑原 豊
(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)
ほか
・岩﨑 聡(原子力発電環境整備機構 地域交流部 部長)ほか
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
・日本では過去 50 年以上にわたって原子力発電を利用してきており、それに伴って発生す
る高レベル放射性廃棄物は、
人々の生活環境に影響を与えないよう、
地層処分という方法
で最終処分する方針。
・全国の皆さまに地層処分について、関心を持って、理解を深めていただくとともに、この
事業を受け入れていただける地域に対して、社会全体で敬意や感謝の気持ちを持ってい
ただけるよう、全国で対話活動に取り組んでいる。
・原子力発電により発生した使用済燃料は、
再処理工場でプルトニウムなどを回収した後、
残った放射性廃液をガラスに溶かし込んで「ガラス固化体」にする。既に約 27,000 本の
ガラス固化体に相当する高レベル放射性廃棄物が存在している。将来世代に先送りする
ことなく、
原子力を含む電気を多く使ってきた現世代で、
この問題の解決に道筋をつける
べく取り組んでいくことが重要。
・放射能が低減するまで数万年以上にわたって人間の生活環境から適切に隔離する必要が
ある。
確実性や環境への影響などの観点から考慮した結果、
地下深くに埋設して人間によ
る直接の管理を必要としない地層処分が、
国際社会から現時点で、
最も安全で実現可能な
処分方法とされている。
・世界で唯一建設を開始しているフィンランドは、30 年以上の歳月をかけ、国民理解・地
域理解に弛まぬ努力を重ねている。先行する諸外国は、プロセスの初期段階で 10 程度の
自治体が関心を持ち、
調査の過程で候補地が絞られ、
最終的に1つの地域が選ばれている。
日本もできるだけ多くの地域が関心を持つことが望ましい。
・地層処分にあたって考慮すべき地質環境の科学的特性について、
全国でほぼ同じ精度で作
成されている既存のデータをもとに、
日本全国を4種類に区分した
「科学的特性マップ」
を 2017 年 7 月に公表した。マップにより、日本でも地層処分に好ましい特性が確認でき
る可能性が高い地下環境が広く存在するとの見通しを共有する。
・処分地選定としては、文献調査、概要調査、精密調査の段階的な調査を行い、最終処分地
を選定する。この調査期間中、放射性廃棄物を持ち込むことは一切ない。
・文献調査は、関心を持っていただけた地域の皆さまに、地域の地下の状況や、事業をより
深く知っていただき、次のステップである概要調査に進むかどうかの判断をいただく材
料を提供し、理解活動の促進を図るもの。概要調査に進もうとする場合には、改めて都道
府県知事と当該市町村長のご意見を伺い、その意見に反して、先に進むことはない。
・2020 年 11 月に、北海道の寿都町と神恵内村の 2 町村において、文献調査を開始した。
2021 年 4 月から 2 町村で「対話の場」を開催している。
「対話の場」を通じ、逐次情報提
供を行い、
地域住民の皆さまの間で継続的な対話が行われ、
議論を深めていただくことが
重要と考えている。
「対話の場」では、参加された方々が主体となって、処分事業などに
ついて議論を深めていただくため、
また、
賛否に偏らない自由な議論ができるように取り
組んでいる。2 町村に設置された「対話の場」では、町や村の将来のまちづくりに関する
議論も始まっている。
・地層処分場として、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設する施設を全国で 1 か所つくる計
画である。
・安全に地層処分を行うため、
NUMOでは様々なリスク要因を抽出し、
対応と安全性の確
認を行う。
処分地選定プロセスにおける調査により、
断層や火山などを避けて場所を選ぶ
という「立地による対応」
、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計によ
る対応」
、その対策により、安全性が確保できるかをシミュレーションなどで確認すると
いう「安全性の確認」といった対策を行う。また、地震・津波、輸送中の安全性について
も設計による対応、シミュレーションによる安全性確認を行う。また、地層処分の技術開
発については、国やJAEAなどの関係機関と連携して、技術開発を実施している。技術
的な課題を整理し、最新の技術開発動向を踏まえた安全確保の考え方やその手法を、
「包
括的技術報告書」として取りまとめ、NUMOのホームページに掲載している。今後も、
より実践的な技術開発に取り組み、技術的信頼性の更なる向上を目指す。
・最終処分事業は 100 年以上の長期にわたるため、
地域の発展を支えてこそ、
安定的な運営
ができる。NUMOは、調査の開始に伴い、地域にコミュニケーションのための拠点を設
置し、事業に関する様々なご質問にお答えするとともに、住民の皆さまと共に、地域の発
展に向けた議論に貢献していく。
・これまで対話活動を進める中で、地層処分事業を「より深く知りたい」との思いから主体
的に活動されている地域団体、大学・教育関係者、NPOなどのグループが全国各地に広
がりつつある。
・地層処分事業についてご不明な点や疑問点や、
またもっと詳しい話を聞いてみたいと関心
を持っていただける場合には、
一般の方でも、
自治体の方でも国やNUMOからご説明さ
せていただく機会を設けさせていただくとともに、
関連施設の見学にご案内するなど、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応させていただく。
しろまるグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載
<地層処分事業>
・最終処分に係る期間はどのくらいか。
(→回答:)目安としては、
「文献調査」、「概要調査」、「精密調査」の 3 段階の調査を
約 20 年かけて実施し、施設建設地の選定後、施設の建設、操業、地下施
設の埋め戻し、地上施設撤去後、閉鎖することとなり、100 年以上の長期
にわたる事業となる。
・地層処分における責任は誰が負うのか。
(→回答:)処分事業における一義的責任は事業の実施主体であるNUMOが負う。安
全規制への適合・遵守にとどまることなく、安全性の向上に向けて不断に
取り組む義務を有している。
・処分場はどれくらいの大きさなのか。
(→回答:)地上施設が 1〜2km2程度・地下施設が 6〜10km2程度である。
・処分場は何か所つくるのか。
(→回答:)40,000 本以上のガラス固化体を処分する施設を全国で 1 か所建設する予
定である。
・処分場は 1 か所で足りるのか。
(→回答:)現在ある使用済燃料をすべて再処理したと仮定してガラス固化体の本数に
換算し、今あるガラス固化体と合わせると約 27,000 本相当が存在してい
る。
これに対し、
40,000 本以上のガラス固化体を埋設できる処分場を確保
すれば、1 か所で足りると考えている。
・50,000 本、60,000 本でも建設できるのか。
(→回答:)40,000 本以上としている根拠は、地層処分事業で必要となる費用には、埋
設する本数にかかわらず必要となる費用(固定費)と、本数に比例する費
用(変動費)がある。処分施設の規模とガラス固化体 1 本当たりの処分費
用との関係については、40,000 本程度以上であれば処分単価は処分施設
の規模にほとんど影響されなくなり、
スケールメリットを得られることか
ら、40,000 本以上を前提として設定している。
いずれにせよ、段階的な処
分地選定調査を経て、処分場の建設許可を規制当局に申請する際には、そ
の時点で将来的に発生すると見込まれる廃棄物を十分に処分できる規模
の施設を建設していくことになる。
・玄海発電所の例では 1 年間でどれくらいのガラス固化体が発生するのか。
(→回答:)100 万 kW 級の玄海発電所が 1 年間稼働し続けると 20〜30 本程度のガラス
固化体が発生する。
・地上施設、地下施設の範囲の土地は購入するのか。
(→回答:)地層処分に必要となる土地の取得条件等については、土地の取得範囲や周
辺環境への影響等を踏まえつつ、施設の具体的な設計や検討を行う際に、
地域の皆さまや地権者の方々と協議してまいりたい。
・玄海町地域は大部分がシルバーとなっているが地層処分場に適さないのか。
(→回答:)科学的特性マップのシルバー地域については、鉱物が確認されない範囲も
ありえるところ、
調査をすればそうした範囲が確認される可能性があると
の位置づけのもの。その地域で実際に安全に処分ができるかどうかは、段
階的な処分地選定調査の中で詳しく調べていく。
・六ヶ所村の再処理工場の状況はどうなっているのか。
まだ稼働していないとのことだ
が、既に六ヶ所村に貯蔵しているガラス固化体があるのは何故か。
(→回答:)再処理工場については現在、東日本大震災以降に強化された原子力規制委
員会の新規制基準に基づく安全審査への対応を行っており、2024 年上期
の竣工を目指している。六ヶ所村では、国内で発生した使用済燃料をイギ
リスやフランスの再処理工場で再処理した後に返還されたガラス固化体
と、
六ヶ所村の再処理工場での試験に伴い発生したガラス固化体が貯蔵さ
れている。
・最終処分の進め方については、諸外国とも連携しながらやっているのか。
(→回答:)最終処分は、原子力を利用する全ての国の共通の課題であり、先行する諸
外国ともしっかりと連携しながら進めている。
既に処分地が選定されたフ
ィンランドでも 30 年以上かかっており、複数の候補地点があって、最終
的に 1 か所に決まった経緯がある。
日本でもできるだけ多くの地域が関心
を持つことが望ましいと考えている。
<リスクと安全性>
・弾道ミサイルにも対応できるのか。
(→回答:)我が国自身の防衛の問題であり、事態対処法や国民保護法等の枠組みの下
で然るべき対応がなされるものと考えられる。
・地下の坑道はどのくらいの大きさになるのか。
(→回答:)地上施設でガラス固化体を収納したオーバーパックを、専用の輸送車両に
積んで地下施設まで運ぶため、大型トラックが走行できる広さとなる。
・科学的特性マップの要件に海岸から 20 km以内とあるが、限定されるのか。津波など
は考慮しないのか。
(→回答:)
ガラス固化体を、
専用の輸送車両で、
専用道路で運搬することになるため、
輸送の速度や時間を考慮し、
20 km程度が目安として好ましいということで
ある。津波については、地点毎に最大級の津波を、個別に考慮することに
なる。
・ガラス固化体の放射能の量は 1 本につきセシウム 137 は何ベクレルか。
(→回答:)参考資料の P.12 にグラフがあるが、セシウム 137 は約 10 の 15 乗ベクレ
ル。兆や京といういい方でいうと、約 1,000 兆ベクレル。
・ドイツの地下 750m においた放射性廃棄物が、地下水で崩壊寸前と聞いたが。
(→回答:)ドイツのアッセでは、旧岩塩鉱山に 1960 年代から 70 年代まで低中レベル
の放射性廃棄物を試験的に処分したが、
地下水の浸入により岩塩から成る
処分坑道の安定性が確保できなくなる可能性があったため、
廃棄物を回収
することとなった。現在は、回収の計画策定に向け現状確認調査が行われ
ている。日本には岩塩層はないが、こういった海外のトラブルは他山の石
としてしっかり情報を把握し、今後の検討に反映させていく。
・廃棄物を地下に移動させる際に、緩衝材が変形したり崩れたりしないのか。
(→回答:)ガラス固化体、オーバーパックおよび緩衝材までを一体として予め地上施
設で製作してから搬送する方法や、
ガラス固化体をオーバーパックに包む
までを地上施設で施工して地下に搬送した後に緩衝材を現地施工する方
法が考えられるが、まだどちらの方法と決めていない。いずれの方法にし
ても、緩衝材の効果が果たされるよう厳密に施工管理する予定である。
・フィンランドは本当にうまくいっているのか。
(→回答:)協力協定や共同研究等を通じて最新情報を入手しているが、不具合がある
とは聞いていない。フィンランドは 2016 年から地層処分場の建設を開始
しており、操業許可申請は 2021 年 12 月に国に対して行われている。実際
の処分は、国から操業許可を受けた後の 2020 年代半ば以降と見込まれて
いる。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・今回、全国で 183 回目ということだが、なぜ玄海町が選定されたのか。グリーンの地
点であればわかるが、なぜシルバーのエリアである玄海町での開催なのか。原子力発
電所が既に立地している玄海町なら、
最終処分に繋がるのではとの甘い考えがあるの
ではないか。
(→回答:)対話型全国説明会は全国各地で開催しており、人口や交通の便などの地域
バランスを考慮しつつ、開催場所の確保や周知・広報の準備などを終えた
ところから順次開催することとしている。
佐賀県内では、
佐賀市、
唐津市、
鳥栖市に次ぐ 4 か所目の開催となる。対話型全国説明会は、全国の皆さま
に高レベル放射性廃棄物や地層処分についての理解を深めていただくた
めに開催しており、
特定の地域に文献調査の受入れをお願いするものでは
ない。
・文献調査は、地元が手を挙げるのか。国がお願いをするのか。
(→回答:)地域から応募いただくか、国からの申出を受諾いただいた場合に文献調査
を実施する。
・調査受入れ地域に対し、なぜ交付金を出すのか。
(→回答:)地層処分の実現は、国全体の課題を、一部の地域の協力を得ながら進めて
いく必要があることから、
調査を受入れていただいた地域に対して感謝の
念を示し、社会として適切に利益を還元していく観点から、処分地選定調
査の段階から活用いただくことができる制度としている。
・地層処分は長期にわたる事業であるので、若い人も参加すべき。
(→回答:)次世代層からの理解を得ることは重要であると考えており、今後も広報活
動について工夫していきたい。
・科学的根拠をもって、素人でもわかるような説明をするべき。
(→回答:)専門用語をなるべく使わず、分かりやすい言葉に置き換えて説明するよう
にさらに改善して参りたい。
<その他>
・一番のリスクは風評被害だと思う。
(→回答:)風評被害を防ぐためには、事業を受け入れていただく地域のみならず、多
くの方に正確な情報が伝わることが重要であり、
特定放射性廃棄物につい
て正しく国民に理解されるよう、
引き続き、
丁寧に対話活動を続けていく。
・まず、高レベル放射性廃棄物の発生原因である原子力発電を止めるべきではないか。
(→回答:)
資源の乏しい日本において、
再生可能エネルギーの最大限の導入も図るが、
気象条件に左右される供給の不安定性やコスト高という課題があり、
安全性
が確認された原子力発電の活用も必要と考えている。
・玄海原子力発電所 1,2 号機の廃炉作業が始まったが、圧力容器の中の原子炉本体は
どこが責任を持って処分するのか。
(→回答:)発生者責任の原則から、責任は基本的に電力会社にある。
・制御棒は本当に低レベル放射性廃棄物なのか。高レベル放射性廃棄物ではないのか。
(→回答:)使用済燃料を再処理して核分裂から生成した物質を多く含む高レベル放射
性廃棄物
(ガラス固化体)
と制御棒とでは、
放射能レベルが大きく異なる。
わが国では高レベル放射性廃棄物はガラス固化体のみであり、その他は低
レベル放射性廃棄物になる。ただし、低レベル放射性廃棄物も放射能レベ
ルに応じて区分けがなされており、その区分けにしたがって処分する深さ
や形態などが異なる。
・使用済MOX燃料の再処理はどうなるのか。
(→回答:)使用済MOX燃料の再処理については、研究開発が進められている。
・使用済燃料の再処理を実施していた国はどこか。
(→回答:)フランス、中国などである。
以上

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