高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会 in 香川(高松市)
開催結果
日 時:2023 年 11 月 13 日 (月) 18:00〜20:10
場 所:香川県県民ホール レクザムホール 小ホール棟 4 階 大会議室ほか
参加者数:22 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・桑原 豊
(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)
ほか
・富森 卓(原子力発電環境整備機構 地域交流部 専門部長)ほか
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
・日本では過去 50 年以上にわたって原子力発電を利用してきており、それに伴って発生す
る高レベル放射性廃棄物は、
人々の生活環境に影響を与えないよう、
地層処分という方法
で最終処分する方針。
・全国の皆さまに地層処分について、関心を持って、理解を深めていただくとともに、この
事業を受け入れていただける地域に対して、社会全体で敬意や感謝の気持ちを持ってい
ただけるよう、全国で対話活動に取り組んでいる。
・原子力発電により発生した使用済燃料は、
再処理工場でプルトニウムなどを回収した後、
残った放射性廃液をガラスに溶かし込んで「ガラス固化体」にする。既に約 27,000 本の
ガラス固化体に相当する高レベル放射性廃棄物が存在している。将来世代に先送りする
ことなく、
原子力を含む電気を多く使ってきた現世代で、
この問題の解決に道筋をつける
べく取り組んでいくことが重要。
・放射能が低減するまで数万年以上にわたって人間の生活環境から適切に隔離する必要が
ある。
確実性や環境への影響などの観点から考慮した結果、
地下深くに埋設して人間によ
る直接の管理を必要としない地層処分が、
国際社会から現時点で、
最も安全で実現可能な
処分方法とされている。
・世界で唯一建設を開始しているフィンランドは、30 年以上の歳月をかけ、国民理解・地
域理解に弛まぬ努力を重ねている。先行する諸外国は、プロセスの初期段階で 10 程度の
自治体が関心を持ち、
調査の過程で候補地が絞られ、
最終的に1つの地域が選ばれている。
日本もできるだけ多くの地域が関心を持つことが望ましい。
・地層処分にあたって考慮すべき地質環境の科学的特性について、
全国でほぼ同じ精度で作
成されている既存のデータをもとに、
日本全国を4種類に区分した
「科学的特性マップ」
を 2017 年 7 月に公表した。マップにより、日本でも地層処分に好ましい特性が確認でき
る可能性が高い地下環境が広く存在するとの見通しを共有する。
・処分地選定としては、文献調査、概要調査、精密調査の段階的な調査を行い、最終処分地
を選定する。この調査期間中、放射性廃棄物を持ち込むことは一切ない。
・文献調査は、関心を持っていただけた地域の皆さまに、地域の地下の状況や、事業をより
深く知っていただき、次のステップである概要調査に進むかどうかの判断をいただく材
料を提供し、理解活動の促進を図るもの。概要調査に進もうとする場合には、改めて都道
府県知事と当該市町村長のご意見を伺い、その意見に反して、先に進むことはない。
・2020 年 11 月に、北海道の寿都町と神恵内村の 2 町村において、文献調査を開始した。
2021 年 4 月から 2 町村で「対話の場」を開催している。
「対話の場」を通じ、逐次情報提
供を行い、
地域住民の皆さまの間で継続的な対話が行われ、
議論を深めていただくことが
重要と考えている。
「対話の場」では、参加された方々が主体となって、処分事業などに
ついて議論を深めていただくため、
また、
賛否に偏らない自由な議論ができるように取り
組んでいる。2 町村に設置された「対話の場」では、町や村の将来のまちづくりに関する
議論も始まっている。
・地層処分場として、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設する施設を全国で 1 か所つくる計
画である。
・安全に地層処分を行うため、
NUMOでは様々なリスク要因を抽出し、
対応と安全性の確
認を行う。
処分地選定プロセスにおける調査により、
断層や火山などを避けて場所を選ぶ
という「立地による対応」
、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計によ
る対応」
、その対策により、安全性が確保できるかをシミュレーションなどで確認すると
いう「安全性の確認」といった対策を行う。また、地震・津波、輸送中の安全性について
も設計による対応、シミュレーションによる安全性確認を行う。また、地層処分の技術開
発については、国やJAEAなどの関係機関と連携して、技術開発を実施している。技術
的な課題を整理し、最新の技術開発動向を踏まえた安全確保の考え方やその手法を、
「包
括的技術報告書」として取りまとめ、NUMOのホームページに掲載している。今後も、
より実践的な技術開発に取り組み、技術的信頼性の更なる向上を目指す。
・最終処分事業は 100 年以上の長期にわたるため、
地域の発展を支えてこそ、
安定的な運営
ができる。NUMOは、調査の開始に伴い、地域にコミュニケーションのための拠点を設
置し、事業に関する様々なご質問にお答えするとともに、住民の皆さまと共に、地域の発
展に向けた議論に貢献していく。
・これまで対話活動を進める中で、地層処分事業を「より深く知りたい」との思いから主体
的に活動されている地域団体、大学・教育関係者、NPOなどのグループが全国各地に広
がりつつある。
・地層処分事業についてご不明な点や疑問点や、
またもっと詳しい話を聞いてみたいと関心
を持っていただける場合には、
一般の方でも、
自治体の方でも国やNUMOからご説明さ
せていただく機会を設けさせていただくとともに、
関連施設の見学にご案内するなど、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応させていただく。
しろまるグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載
<地層処分事業>
・処分場を決定するスケジュールの目途は。
(→回答:)最終処分の実現に向けて計画的に進めていくことは重要だが、スケジュー
ルありきで考えても全国での理解が進むものではなく、むしろ、期限があ
ることで、
地域の意向に反して一方的に物事を推し進められてしまうので
はないかととられてしまう可能性もある。
いずれにしても現世代の責任と
して地層処分を実現することが不可欠であり、引き続き、全国の皆さまに
地層処分についてご理解いただくとともに、
いずれかの地域で調査を受け
入れていただけるよう努めていく。
・高レベル放射性廃棄物を隔離し閉じ込める期間は、
海外では 100 万年であると聞くの
に、日本においては 10 万年程度としているのはなぜか。
(→回答:)日本では、再処理の工程で使用済燃料からウランやプルトニウムを回収し
た後の放射能レベルの高い廃液をガラス原料と混ぜ合わせ、
ステンレス製
容器に注入して固めた高レベル放射性廃棄物(=ガラス固化体)を製造す
る。
このガラス固化体 1 本分の放射能レベルがもとのウラン鉱石のレベル
まで下がるのに数万年かかることから、
ガラス固化体を隔離し閉じ込める
期間を数万年程度としている。一方、使用済燃料を再処理せずに直接処分
する国では、
ウランやプルトニウムを回収しないことから放射能レベルが
低減する程度がガラス固化体よりも長いため、隔離し閉じ込める期間を
100 万年としている。
・全国で 1 か所だけで処分場は足りるのか。
(→回答:)現在ある使用済燃料をすべて再処理したと仮定してガラス固化体の本数に
換算し、今あるガラス固化体と合わせると約 27,000 本が存在している。
これに対し、40,000 本以上のガラス固化体を埋設できる処分場を 1 か所
確保することで対応できると考えている。
・ガラス固化体はいつ頃 40,000 本に到達する予定か。
(→回答:)
原子力発電所の稼働状況について将来的な見通しを立てることは難しいが、
100 万 kW 級の原子力発電所が 1 年間稼働すると、20〜30 本程度のガラス
固化体が発生する。
・なぜ 40,000 本以上という設定なのか。
(→回答:)地層処分事業で必要となる費用には、埋設する本数にかかわらず必要とな
る費用(固定費)と、本数に比例する費用(変動費)がある。処分施設の
規模とガラス固化体 1 本当たりの処分費用との関係については、
40,000 本
程度以上であれば処分単価は処分施設の規模にほとんど影響されなくな
り、スケールメリットを得られることから、40,000 本以上を前提として設
定している。
・ガラス固化体を全て埋設した後は、処分場はどのようになるのか。
(→回答:)処分場閉鎖後のモニタリングや利活用については、今後策定される規制基
準の中で具体化されていくものであるが、
地域の皆さまのご要望をお聞き
しながら考えていきたい。
・ガラス固化体は 500kg とのことだが、オーバーパックの重量はどれくらいか。
(→回答:)オーバーパックの重量は約 5.5t である。ガラス固化体を含めると約 6t で
ある。
<リスクと安全性>
・処分場の深さは、なぜ地下 300m なのか。
(→回答:)人間の地下開発が 300m 以深にほとんど及んでいないことや、諸外国での
検討状況を踏まえて法律で設定された最小の深さであり、
処分地選定調査
において地質を調査した上で、処分に適した深さに処分することになる。
なお、深ければ深い方が適しているというわけではなく、深いと逆に地温
が高くなり、
人工バリアの機能低下といった安全性に影響を及ぼす可能性
もある。
・地下坑道を掘削する際に、発破による掘削だと岩盤に亀裂が生じて、そこが地下水の
通り道になることが懸念されるが、対策は行うのか。
(→回答:)坑道掘削に関する技術については、トンネル建設などの既存の土木技術が
適用可能であることを確認している。
岩盤を対象としたトンネル建設技術
には、例えば発破を用いる方法(NATM)や機械的に掘削する方法(ロ
ードヘッダー、TBM)などがあり、岩盤の特性に応じて掘削方法を選択
する。坑道における湧水対策や安全対策については、一般的な掘削現場と
同様の安全対策を講じる。
・処分場を埋め戻した後に、
温泉利用等の目的からボーリング調査される恐れはないの
か。
(→回答:)地層処分においては、処分場を埋め戻した後に、将来、鉱物資源の探査の
目的でボーリング孔を掘るような活動が行われることがないよう、鉱物資
源が存在する地域を避けること、記録を保存すること、処分場の性能に影
響を与える地域を保護区域に指定してそのことを知らせる標識を設置す
ることにより、地下に影響を与える人間活動が行われないような対策を検
討していく。
・埋設作業中のテロや戦争などのリスクにどう対処するのか。
(→回答:)高レベル放射性廃棄物は、国際規則に基づく安全規制体系によって、その
貯蔵・輸送時において不法移転(盗難など)や妨害破壊行為から防護する
こと、
それを扱う施設を妨害破壊行為から防護することが求められており、
物理的防護の目的のために立ち入りが制限され、
管理された区域に置くこ
とが要求されている。地層処分場への輸送や地層処分場の施設は、これら
の規則にしたがって設計・建設・管理される。
・生態系への影響を様々なケースで想定しているということだが、
例えばどのようなこ
とを想定しているのか。また、その結果、どのような事態になることが想定されるの
か。
(→回答:)例えば、調査で見つからなかった断層が処分場を直撃し、すべてのガラス
固化体が破損して放射性物質が地下水に伝わり地上に出てきてしまう場
合など、
発生する可能性が低いケースについてもあえて想定してシミュレ
ーションを行い、
その際の地上の人間の生活環境への放射線量の影響につ
いて安全性の評価を行っている。
・処分場の作業員の被ばく管理は、行うのか。
(→回答:)当然、被ばく管理は行うことになる。なお、地上施設・地下施設ともに、
作業員が廃棄体に近づくことなく、
遠隔操作などにより放射線が遮へいさ
れたエリアで操作や作業を行うような施設設計を想定している。
・産業の技術革新が進む中で、新しい工法についても取り入れるのか。
(→回答:)最新の技術的知見を踏まえた技術開発を行いながら、必要に応じて取り入
れていく所存である。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・説明会への参加者が少ないよう感じる。
地層処分事業について多くの方に知っていた
だくために、どのようなことを行っているのか。
(→回答:)対話型全国説明会のようなテーブル議論形式の説明会の場合、大勢の方に
ご参加いただくことは難しいが、
皆さまからの疑問などに丁寧に対応する
ことに重きを置いて、このような対話形式での説明会を行っている。対話
型説明会以外にも、
学校での出前授業や移動型の模型展示車によるイベン
ト出展を全国各地で行うなど、
次世代層にも広くこの事業を知ってもらえ
るよう取り組んでいる。
より多くの皆さまに地層処分事業について理解を
深めていただくことが重要と考えており、
今後も広報活動について工夫し
ていきたい。
・地層処分は待ちの姿勢では進まないのではないか。
受け入れてもらうための理解活動
が必要ではないか。
(→回答:)高レベル放射性廃棄物の問題の解決に向け、国は 2023 年 4 月に「特定放
射性廃棄物の最終処分に関する基本方針」を改訂し、国、電力会社、NUMO
が合同となって地方自治体を個別に訪問する全国行脚を開始するととも
に、関係府省連携の下、国民の関心を踏まえた多様な支援、対話活動の推
進等の取り組みを一層強化している。
・これまでにNUMOが行った安全評価の結果では、
被ばく線量が基準値を下回ってい
るとのことだが、
地域の方々にとっては基準値以下の放射線であっても不安を感じる
と思う。寿都町や神恵内村では、ご理解いただけているのか。
(→回答:)両町村に設置された「対話の場」における 10 数回を超える対話活動など
のなかで、
徐々に地層処分事業の安全性についてご理解が深まってきてい
るものと感じている。
今後とも地域の皆さまの疑問や不安に対して丁寧に
説明し理解を深めていただけるよう対話活動を継続していく。
・受け入れ地域に対する地域貢献の具体策はあるか。
(→回答:)最終処分地が決まった場合には、NUMOは本拠をその地域に移転し、N
UMO職員や関連事業者は地域の一員として地域の発展に貢献する。
また、
支援策の1つとして、処分地選定調査の段階から、国の交付金制度が活用
できる。具体的には、文献調査の段階では 1 年で最大 10 億円、調査期間
全体で最大 20 億円。概要調査の段階では 1 年で最大 20 億円、調査期間全
体で最大 70 億円となる。
・地層処分事業が先行しているフィンランドでは、反対運動などは起きなかったのか。
(→回答:)フィンランドにおいて、選定プロセスを開始した 1983 年は地層処分の安
全性に否定的な意見が過半数であったが、
対話を重ねることで否定的な意
見は徐々に減少し、
2021年には肯定的な意見が否定的な意見を上回った。
このように、
地層処分事業の実現には全国的な対話活動が重要であると認
識している。
・諸外国の状況について、進捗に大きな違いがあるのはなぜか。
(→回答:)高レベル放射性廃棄物の最終処分として、地層処分が適切であるという
ことは世界共通の認識ではあるが、地層処分の実現が可能であるかどう
かについては、それぞれの国において評価検討されてきており、日本で
は 1976 年に地層処分の研究が始まり、1999 年に地層処分が成立すると
いう見通しがついた。例えば、ベルギーではごく最近、地層処分が国内
で成立する可能性が示されたということもあり、現在調査段階前にあ
る。このように、それぞれの国情に応じて進め方や考え方など異なる部
分もあるが、地層処分以外の処分方法を選択した国はない。
<その他>
・原子力発電所が立地している場所に地層処分すればよいのではないか。
(→回答:)個別の地域について適性があるかどうかは、その地域における詳細な処分
地選定調査を実施して検討していくこととなる。
原子力発電所とは地下深
部の安定性などで求められる条件が異なる点もあるため、
原子力発電所の
立地地域が必ずしも地層処分の処分地として適しているとは限らない。
・国が国有地を確保して、そこに処分場をつくった方が早いと思うが。
(→回答:)国有地や無人島もいずれかの自治体に属しており、当該地域を所管してい
る自治体の了解が必要になる。
・プルトニウムはどのようにして再利用されているのか。
(→回答:)再処理により取り出したプルトニウムは、プルサーマル発電により利用す
ることとしており、高浜、玄海、伊方発電所などで使用実績がある。
・福島第一原子力発電所の事故による廃棄物は、
地層処分の対象廃棄物と同様に処分さ
れるのか。
(→回答:)福島第一原子力発電所から発生する廃棄物の処分地選定や処分は、地層処
分事業とは異なるプロセスで進められる。今後の廃炉の進捗に伴い、性状
や発生量といった全体像を把握した上で、その処理や処分に関する検討が
国と東京電力により進められる方針となっている。
・ガラス固化体を何かの熱源として利用することはできないのか。
(→回答:)ガラス固化体から発せられる熱量はそれほど多くなく、一方で熱源として
利用する場合には、放射性物質の管理が必要となることから、経済性を考
慮すると利用価値は低いと考えている。
以上

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