高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会 in 山形(山形市)
開催結果
日 時:2023 年 9 月 26 日 (火) 18:00〜20:15
場 所:山形テルサ 1 階 大会議室ほか
参加者数:17 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・桑原 豊
(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)
ほか
・富森 卓(原子力発電環境整備機構 地域交流部 専門部長)ほか
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
・日本では過去 50 年以上にわたって原子力発電を利用してきており、それに伴って発生す
る高レベル放射性廃棄物は、
人々の生活環境に影響を与えないよう、
地層処分という方法
で最終処分する方針。
・全国の皆さまに地層処分について、関心を持って、理解を深めていただくとともに、この
事業を受け入れていただける地域に対して、社会全体で敬意や感謝の気持ちを持ってい
ただけるよう、全国で対話活動に取り組んでいる。
・原子力発電により発生した使用済燃料は、
再処理工場でプルトニウムなどを回収した後、
残った放射性廃液をガラスに溶かし込んで「ガラス固化体」にする。既に約 27,000 本の
ガラス固化体に相当する高レベル放射性廃棄物が存在している。将来世代に先送りする
ことなく、
原子力を含む電気を多く使ってきた現世代で、
この問題の解決に道筋をつける
べく取り組んでいくことが重要。
・放射能が低減するまで数万年以上にわたって人間の生活環境から適切に隔離する必要が
ある。
確実性や環境への影響などの観点から考慮した結果、
地下深くに埋設して人間によ
る直接の管理を必要としない地層処分が、
国際社会から現時点で、
最も安全で実現可能な
処分方法とされている。
・世界で唯一建設を開始しているフィンランドは、30 年以上の歳月をかけ、国民理解・地
域理解に弛まぬ努力を重ねている。先行する諸外国は、プロセスの初期段階で 10 程度の
自治体が関心を持ち、
調査の過程で候補地が絞られ、
最終的に1つの地域が選ばれている。
日本もできるだけ多くの地域が関心を持つことが望ましい。
・地層処分にあたって考慮すべき地質環境の科学的特性について、
全国でほぼ同じ精度で作
成されている既存のデータをもとに、
日本全国を4種類に区分した
「科学的特性マップ」
を 2017 年 7 月に公表した。マップにより、日本でも地層処分に好ましい特性が確認でき
る可能性が高い地下環境が広く存在するとの見通しを共有する。
・処分地選定としては、文献調査、概要調査、精密調査の段階的な調査を行い、最終処分地
を選定する。この調査期間中、放射性廃棄物を持ち込むことは一切ない。
・文献調査は、関心を持っていただけた地域の皆さまに、地域の地下の状況や、事業をより
深く知っていただき、次のステップである概要調査に進むかどうかの判断をいただく材
料を提供し、理解活動の促進を図るもの。概要調査に進もうとする場合には、改めて都道
府県知事と当該市町村長のご意見を伺い、その意見に反して、先に進むことはない。
・2020 年 11 月に、北海道の寿都町と神恵内村の 2 町村において、文献調査を開始した。
2021 年 4 月から 2 町村で「対話の場」を開催している。
「対話の場」を通じ、逐次情報提
供を行い、
地域住民の皆さまの間で継続的な対話が行われ、
議論を深めていただくことが
重要と考えている。
「対話の場」では、参加された方々が主体となって、処分事業などに
ついて議論を深めていただくため、
また、
賛否に偏らない自由な議論ができるように取り
組んでいる。2 町村に設置された「対話の場」では、町や村の将来のまちづくりに関する
議論も始まっている。
・地層処分場として、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設する施設を全国で 1 か所つくる計
画である。
・安全に地層処分を行うため、
NUMOでは様々なリスク要因を抽出し、
対応と安全性の確
認を行う。
処分地選定プロセスにおける調査により、
断層や火山などを避けて場所を選ぶ
という「立地による対応」
、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計によ
る対応」
、その対策により、安全性が確保できるかをシミュレーションなどで確認すると
いう「安全性の確認」といった対策を行う。また、地震・津波、輸送中の安全性について
も設計による対応、シミュレーションによる安全性確認を行う。また、地層処分の技術開
発については、国やJAEAなどの関係機関と連携して、技術開発を実施している。技術
的な課題を整理し、最新の技術開発動向を踏まえた安全確保の考え方やその手法を、
「包
括的技術報告書」として取りまとめ、NUMOのホームページに掲載している。今後も、
より実践的な技術開発に取り組み、技術的信頼性の更なる向上を目指す。
・最終処分事業は 100 年以上の長期にわたるため、
地域の発展を支えてこそ、
安定的な運営
ができる。NUMOは、調査の開始に伴い、地域にコミュニケーションのための拠点を設
置し、事業に関する様々なご質問にお答えするとともに、住民の皆さまと共に、地域の発
展に向けた議論に貢献していく。
・これまで対話活動を進める中で、地層処分事業を「より深く知りたい」との思いから主体
的に活動されている地域団体、大学・教育関係者、NPOなどのグループが全国各地に広
がりつつある。
・地層処分事業についてご不明な点や疑問点や、
またもっと詳しい話を聞いてみたいと関心
を持っていただける場合には、
一般の方でも、
自治体の方でも国やNUMOからご説明さ
せていただく機会を設けさせていただくとともに、
関連施設の見学にご案内するなど、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応させていただく。
しろまるグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載
<地層処分事業>
・原子力発電をすれば廃棄物が出ることはわかっていたはずなのに、
なぜ今まで先延ば
ししてきたのか。
(→回答:)原子力発電の利用が始まる 1966 年より前の 1962 年から、放射性廃棄物の
最終処分について検討・取り組みが重ねられてきており、決して先送りし
てきた訳ではない。
・地層処分事業を実施する時期はいつを想定しているのか。
いつまでに処分場を造らな
ければならないという、計画や見通しはないのか。
(→回答:)法律に基づき、文献調査、概要調査、精密調査という3段階の調査を実施
しながら、地層処分事業を進めていくことになっており、国民の皆さまに
事業をご理解いただくことを重視して取り組んでいる。
・40,000 本以上の処分場を建設するとのことだが、処分場が一杯になったら原子力発
電は行わないという理解でいいのか。
(→回答:)現時点の発電所の稼働状況や、今後の原子力利用の見通し(2030 年時点で
20〜22%)を踏まえれば、40,000 本以上のガラス固化体を処分できる施設
を設ければ、1か所で対応できると考えている。
・埋設後、掘り起こすこと(回収可能性)は定められているのか。
(→回答:)
回収可能性については、
国が定めた最終処分法の基本方針において、
今後、
もっと良い技術が出てくるかもしれないことを考慮して、将来世代の選択
肢を残すという視点から、処分場を埋め戻して閉鎖するまではその可能性
を維持することとしている。
・将来の科学技術の進展も考慮できるようにすべきではないか。
(→回答:)今後、新しい技術が開発される可能性も考慮して、将来世代の選択肢を残
すという視点から、処分場を埋め戻して閉鎖するまでは回収可能性を維持
することとしている。
・地層処分に係る費用はこれから電力料金に上乗せされるのか。
(→回答:)地層処分に係る費用は、原子力発電所の運転実績に応じて電気事業者から
拠出されている。
・使用済燃料を再処理して地層処分する国はどれくらいあるか。
(→回答:)フランス、英国、スイス、ロシア、中国などで、再処理したガラス固化体
の処分が検討されている。
・地層処分に係る費用は、これまでにどのくらい貯まっているのか。本当に 4 兆円も集
めることができるのか。
(→回答:)電力会社等は法律に基づき、原子力発電の稼働状況に応じて、拠出金を納
付する義務を負っている。これまでに1兆円強の拠出金を徴収しており、
今後も原子力発電の稼働に伴い拠出される。
・地層処分を実施する最終決定者は誰か。
(→回答:)最終処分施設建設地の選定プロセスは、経済産業大臣が地元の知事や市町
村長の意見を聞き、これを十分に尊重した上で進められる。
<リスクと安全性>
・地層処分で考えられるリスクは、資料に記載されているものだけか。何か隠していな
いか。
(→回答:)数万年以上長期の安全性に関するリスクをゼロにすることは不可能という
認識のもと、リスクを最小限に抑え、環境に与える影響を可能な限り低く
するよう最大限の努力をしていく。
・プレートテクトニクスは昭和 50 年代の理論で、まだ不明な点が多いのではないか。
(→回答:)日本周辺のプレートの動きは数百万年前からほとんど変化がなく、このプ
レートの動きに関係する地震・断層活動等は、ほとんど変化しないと考え
られている。
・地下深くに総延長 200km に及ぶトンネルを、安全に建設できるのか。
(→回答:)岩盤の強さと深さに応じて、より適切なトンネルの形状や支保工の計画に
ついて検討することにより、建設は可能と考える。過去の長大トンネルの
工事として、青函トンネルの事例では、難工事となるのは断層破砕帯から
の湧水などが挙げられる。このような事例を参考に、地下調査施設の建設
を通じて、掘削が可能であるかなどを詳細に検討していくこととなる。
・日本の岩種はヨーロッパとは異なると思うが、安全に地層処分を行うことは可能か。
(→回答:)確かに、日本の地質はヨーロッパなどの大陸の地質と異なる点もあるが、
必要となる条件を満たす場所であれば、岩石の種類にかかわらず、安全な
地層処分を行うことは可能ということが過去の研究成果として確認され
ており、日本でも安全に地層処分を実施することは可能と考えている。
・ガラス固化体が溶解するのに数万年とのことだが、10 万年の安全確保には期間が不
足しており、問題ではないか。
(→回答:)ガラス固化体を封入するオーバーパックは、安全裕度を確保して耐用年数
を設計している。オーバーパックの周りも 70 cmのベントナイトで覆い、
さらに天然の岩盤で閉じ込めることで、長期の安全を確保できる。
・ガラス固化体からの被ばく線量が、国際基準である 300μSv/年以下になるのはいつ
頃か。
(→回答:)この国際基準は、地層処分した放射性廃棄物の影響が地上に及んだ際の上
限値を示したもので、
実際にガラス固化体自体から出される放射線の値で
はない。
国際基準では、
埋設後の地上への影響が 300μSv/年を超えないこ
とが求められている。
・10 万年の間に処分地付近に新たな地下資源が見つかって、将来の人類が掘り返して
しまう危険性はないのか。
(→回答:)処分場を埋め戻した後に、将来、鉱物資源の探査の目的でボーリング孔を
掘るような活動が行われるリスクを最小限とするため、
経済的に価値が高
い鉱物資源が存在する地域を避ける等の工夫により、
地下に影響を与える
人間活動が行われないような対策を検討していく。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・交付金という制度は、結局は貧しい地域に金をばらまいて押し付けるやり方であり、
間違っているのではないか。
(→回答:)電源立地地域対策交付金制度は、電気を消費することによって社会が受け
る便益を、立地地域に還元する観点から交付金として交付する制度。地層
処分の実現は、国全体の課題を解決しようとする話であり、受入地域に対
して感謝の念を示し、社会として適切に利益を還元していく観点から、処
分地選定調査の段階から活用いただくことができる制度としている。
・そうは言っても、
北海道の 2 町村の首長は
「金が目当てだ」
と言っているではないか。
(→回答:)寿都町長は「この問題に対していち早く一石を投じたいとの思いで応募し
た」と語っており、神恵内村長は「人口の減少が著しい村の将来を案じた
村民の意を踏まえた」と述べている。
・説明会についてどのような方法で周知したのか。
参加者が少なく周知が不十分ではな
いか。
(→回答:)NUMOのホームページ、メールマガジン、SNSでの周知に加え、地方
新聞などに広告も掲載した。
より多くの方に説明会開催を知っていただけ
るよう工夫してまいりたい。
・北欧では処分地が決まっているのに、
日本ではなかなか決まらない違いはどこにある
のか。
(→回答:)北欧も何事もなく順調に事業が進んだわけではなく、長い年月をかけて住
民への理解活動を重ねた結果、今に至っている。
・首長から手が挙がるのを待っていても、処分場は一向に決まらないと思う。昭和 40
年代の新全国総合開発計画のように、
国家的プロジェクトとして国が場所を指定する
しか方法はないのではないか。
(→回答:)2015 年に最終処分法に基づく国の基本方針を改定し、自治体からの応募
に加え、国が文献調査を申し入れる仕組みを位置付け、国が前面に立って
取り組むこととした。2017 年 7 月に国が科学的特性マップを公表し、今
回の説明会やイベントへの出展などに取り組んでいる。引き続き、地域の
理解を得ながら前面に立って対話活動を行い、
全国のできるだけ多くの地
域で文献調査を実施していただけるよう、
一歩ずつ取り組んでまいりたい。
<その他>
・なぜ山形で実施するのか。説明会の開催地はどのような基準で決めているのか。
(→回答:)対話型全国説明会は全国の各地で開催しており、人口や交通の便などの地
域バランスを考慮しつつ、開催場所の確保や周知・広報の準備などを終え
たところから順次開催している。
・科学的特性マップのグリーンの地域は広いが、
日本で適地とされる場所はもっと限ら
れているはずである。
(→回答:)科学的特性マップは、地層処分に関する科学的特性を、既存の全国データ
に基づき一定の要件・基準にしたがって、全国地図の形にしたもの。その
地域で実際に安全に処分できるかどうかは、
段階的な処分地選定調査の中
で詳しく調べていく。
・非火山性の温泉や、活断層だけでなく、活動性のない断層も地下水の移行に寄与して
いるのに、なぜそれを科学的特性マップに示さないのか。
(→回答:)
科学的特性マップに反映されていない地域の文献・データなども存在する。
非火山性の温泉については、全国一律で評価されたデータがないため、マ
ップには示されていない。こうした地域の詳細な地質環境については、3
段階の処分地選定調査において詳細に調査することとしている。
処分場に
おける地下水の影響については、
今後の処分地選定調査段階で地下水の性
状・挙動等を調査した上で評価していくこととなる。
以上

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /