高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会 in 山梨(南アルプス市)
開催結果
日 時:2023 年 8 月 30 日 (水) 18:00〜20:20
場 所:桃源文化会館 1 階 桃源の間ほか
参加者数:28 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・丹 貴義
(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)
ほか
・富森 卓(原子力発電環境整備機構 地域交流部 専門部長)ほか
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
・日本では過去 50 年以上にわたって原子力発電を利用してきており、それに伴って発生す
る高レベル放射性廃棄物は、
人々の生活環境に影響を与えないよう、
地層処分という方法
で最終処分する方針。
・全国の皆さまに地層処分について、関心を持って、理解を深めていただくとともに、この
事業を受け入れていただける地域に対して、社会全体で敬意や感謝の気持ちを持ってい
ただけるよう、全国で対話活動に取り組んでいる。
・原子力発電により発生した使用済燃料は、
再処理工場でプルトニウムなどを回収した後、
残った放射性廃液をガラスに溶かし込んで「ガラス固化体」にする。既に約 27,000 本の
ガラス固化体に相当する高レベル放射性廃棄物が存在している。将来世代に先送りする
ことなく、
原子力を含む電気を多く使ってきた現世代で、
この問題の解決に道筋をつける
べく取り組んでいくことが重要。
・放射能が低減するまで数万年以上にわたって人間の生活環境から適切に隔離する必要が
ある。
確実性や環境への影響などの観点から考慮した結果、
地下深くに埋設して人間によ
る直接の管理を必要としない地層処分が、
国際社会から現時点で、
最も安全で実現可能な
処分方法とされている。
・世界で唯一建設を開始しているフィンランドは、30 年以上の歳月をかけ、国民理解・地
域理解に弛まぬ努力を重ねている。先行する諸外国は、プロセスの初期段階で 10 程度の
自治体が関心を持ち、
調査の過程で候補地が絞られ、
最終的に1つの地域が選ばれている。
日本もできるだけ多くの地域が関心を持つことが望ましい。
・地層処分にあたって考慮すべき地質環境の科学的特性について、
全国でほぼ同じ精度で作
成されている既存のデータをもとに、
日本全国を4種類に区分した
「科学的特性マップ」
を 2017 年 7 月に公表した。マップにより、日本でも地層処分に好ましい特性が確認でき
る可能性が高い地下環境が広く存在するとの見通しを共有する。
・処分地選定としては、文献調査、概要調査、精密調査の段階的な調査を行い、最終処分地
を選定する。この調査期間中、放射性廃棄物を持ち込むことは一切ない。
・文献調査は、関心を持っていただけた地域の皆さまに、地域の地下の状況や、事業をより
深く知っていただき、次のステップである概要調査に進むかどうかの判断をいただく材
料を提供し、理解活動の促進を図るもの。概要調査に進もうとする場合には、改めて都道
府県知事と当該市町村長のご意見を伺い、その意見に反して、先に進むことはない。
・2020 年 11 月に、北海道の寿都町と神恵内村の 2 町村において、文献調査を開始した。
2021 年 4 月から 2 町村で「対話の場」を開催している。
「対話の場」を通じ、逐次情報提
供を行い、
地域住民の皆さまの間で継続的な対話が行われ、
議論を深めていただくことが
重要と考えている。
「対話の場」では、参加された方々が主体となって、処分事業などに
ついて議論を深めていただくため、
また、
賛否に偏らない自由な議論ができるように取り
組んでいる。2 町村に設置された「対話の場」では、町や村の将来のまちづくりに関する
議論も始まっている。
・地層処分場として、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設する施設を全国で 1 か所つくる計
画である。
・安全に地層処分を行うため、
NUMOでは様々なリスク要因を抽出し、
対応と安全性の確
認を行う。
処分地選定プロセスにおける調査により、
断層や火山などを避けて場所を選ぶ
という「立地による対応」
、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計によ
る対応」
、その対策により、安全性が確保できるかをシミュレーションなどで確認すると
いう「安全性の確認」といった対策を行う。また、地震・津波、輸送中の安全性について
も設計による対応、シミュレーションによる安全性確認を行う。また、地層処分の技術開
発については、国やJAEAなどの関係機関と連携して、技術開発を実施している。技術
的な課題を整理し、最新の技術開発動向を踏まえた安全確保の考え方やその手法を、
「包
括的技術報告書」として取りまとめ、NUMOのホームページに掲載している。今後も、
より実践的な技術開発に取り組み、技術的信頼性の更なる向上を目指す。
・最終処分事業は 100 年以上の長期にわたるため、
地域の発展を支えてこそ、
安定的な運営
ができる。NUMOは、調査の開始に伴い、地域にコミュニケーションのための拠点を設
置し、事業に関する様々なご質問にお答えするとともに、住民の皆さまと共に、地域の発
展に向けた議論に貢献していく。
・これまで対話活動を進める中で、地層処分事業を「より深く知りたい」との思いから主体
的に活動されている地域団体、大学・教育関係者、NPOなどのグループが全国各地に広
がりつつある。
・地層処分事業についてご不明な点や疑問点や、
またもっと詳しい話を聞いてみたいと関心
を持っていただける場合には、
一般の方でも、
自治体の方でも国やNUMOからご説明さ
せていただく機会を設けさせていただくとともに、
関連施設の見学にご案内するなど、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応させていただく。
しろまるグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載
<地層処分事業>
・処分場は 1 か所で足りるのか。100 年後にまた処分場をつくるのではないか。
(→回答:)
現在ある使用済燃料をすべてガラス固化体として換算すると、
約 27,000 本
相当が存在し、40,000 本以上のガラス固化体を処分できる施設を国内に 1
か所建設することとしている。差し引き 13,000 本については、100 万 kW
級の発電所を 1 年間稼働させるとガラス固化体が 20〜30 本発生する計算
になり、再稼働している発電所が 10 基であれば、毎年 300 本程度が発生
する。今後の再稼働の状況を見通すことが難しいが、国は 2030 年時点で
の原子力の比率を 20〜22%程度と見込んでおり、こういった数値で推移す
るのであれば、1 か所で対応できると考えている。
・ガラス固化体の処分が始まってから、埋め戻すまでどれくらいの期間がかかるのか。
(→回答:)ガラス固化体を全て定置してから埋め戻すのか、区画(パネル)毎に埋め
戻すのかにもよるが、調査に 20 年程度、調査開始から閉鎖までは 100 年
以上かかる見通し。
・処分場建設のスケジュール、期限はあるのか。
(→回答:)最終処分の実現に向けて計画的に進めていくことは重要だが、スケジュー
ルありきで考えても全国での理解が進むものではなく、むしろ、期限があ
ることで、地域の意向に反して一方的に物事を推し進められてしまうので
はないかとられてしまう可能性もある。いずれにしても現世代の責任とし
て地層処分を実現することが不可欠であり、引き続き、全国の皆さまに地
層処分についてご理解いただくとともに、いずれかの地域で調査を受け入
れていただけるよう努めていく。
・閉鎖後、処分場はどのように管理されるのか。
(→回答:)処分場の閉鎖後の管理のあり方は現時点では決まっていない。地域をはじ
め国民の皆さまに安心して生活していただくために、地域の方々のご意見
も伺いながら、今後策定される国の規制の動向も踏まえながら検討してい
くことになる。
・科学的特性マップに日本海溝の断層などが反映されておらず、太平洋側の海沿いがす
べて濃いグリーンになっているのはなぜか。
(→回答:)科学的特性マップは、地層処分に関係する科学的特性を、既存の全国デー
タに基づき一定の要件・基準にしたがって客観的に整理し、全国地図の形
にしたものである。活断層は産総研の活断層データベースを反映しており、
海域の活断層は陸域にかかるもののみを表示しているため、海域のみに存
在する日本海溝の断層は科学的特性マップに表示されていない。実際に立
地地点を選定して調査する段階においては、周辺の活断層を詳細に調査す
ることになる。
・海外での実績はどうか。
(→回答:)フィンランド、スウェーデンでは事業認可されており、フィンランドでは
実際に建設が始まっている。
・約 4 兆円の費用はどこから出ているのか。電気代か。
(→回答:)最終処分事業に必要な費用は、原子力発電所の運転実績に応じた金額を原
子力事業者等が拠出している。原資は、電気料金の一部として皆さまにご
負担いただいている。
・沖縄電力には原子力発電所はないが、拠出金もないのか。
(→回答:)沖縄電力からの拠出金はない。
<リスクと安全性>
・リスクの分析はどのくらいされているのか。公開されているのか。
(→回答:)包括的技術報告書の中に地層処分システムの各要素の変遷を多数シナリオ
化して、それに沿ったリスクを分析しており、NUMOのホームページで
公表している。また、技術的な信頼性が備わっているかを確認するため、
外部の専門家に評価もいただいている。さらに、国際的な視点から技術的
な信頼性について評価をいただくため、OECD/NEA(経済協力開発
機構/原子力機関)による国際レビューを受け、今年 1 月にレビュー結果
が公表されている。
・温泉を掘る時でも 1000m 以上掘削すると聞く。300m は浅すぎないか。
(→回答:)地表から遠ざけて人間の生活環境から隔離する必要があるが、一般に地下
深部になるほど地温が高くなり、地温が高すぎると人工バリアの機能低下
といった安全性に影響を及ぼす可能性がある。一概に深ければ良いという
わけではなく、地質構造に応じて最適な処分深度を設定することになる。
・たとえ 300m 地下に埋めても隆起することはないか。
(→回答:)火山や鉱物資源だけでなく隆起についても処分地選定で考慮する。科学的
特性マップにおいても、10 万年間に 300m 以上の変動する可能性のある場
所は好ましくない範囲として示している。
・処分場は活断層からどれくらい離すという基準はあるのか。
(→回答:)科学的特性マップでは、活断層の長さの 1/100 程度の範囲の幅は避けるこ
ととしている。
・更地後のモニタリングは、地下に穴を掘って行うと思われるが、そこが弱点になるこ
とはないのか。
(→回答:)NUMOとしても、地下と地上がつながる状況はできれば避けたいと考え
る。閉鎖後の具体的なモニタリングのあり方については、地域の皆さまに
安心して生活していただくために、今後の国による規制の動向も踏まえ、
地域の皆さまと相談しながら対応を図っていく。
・閉鎖後に地下で異常が起きたときはどうするのか。
(→回答:)地層処分事業については、可逆性と回収可能性を担保するよう国の方針が
定められており、NUMOは、廃棄体が処分施設に搬入された後も、安全
な管理が継続される範囲において、最終処分施設を閉鎖するまでの間、廃
棄物を搬出できることを確保する。一方、処分場の閉鎖後に不測の事態が
発生し、処分場の安全性に懸念が生じる場合は、影響の度合いと回収の困
難性などを総合的に考慮し、対応策を検討することになる。
・処分場へのテロのリスクはどのように考えているのか。
ミサイル攻撃への対処は検討
しているのか。
(→回答:)テロのリスクについては、放射性物質の盗取や妨害破壊行為の防止に準じ
た対策を実施することになる。
具体的には、
貯蔵施設の立ち入りの制限や、
監視や巡回の実施、防護設備・機器の設置などの措置が考えられる。ミサ
イル攻撃への対処については、国家防衛の問題として国において検討され
るものと思われる。
・資料上、国際基準を満たしているという表現があるが、だからといって安心できない
人もいると思う。
(→回答:)単に基準を満たしているということではなく、様々なシミュレーションな
どにより、安全性を確認していることを、エビデンスを持って説明してい
くことが重要と考えている。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・文献調査の開始には、周辺市町村の同意は必要無いのか。
(→回答:)文献調査は、当該市町村からの応募、または国からの申し入れを当該市町
村に受諾していただくことで開始する。概要調査に進む前には、当該都道
府県知事と当該市町村長の意見を聞くこととなっている。
・文献調査の状況はどうなっているのか。
(→回答:)文献調査の取りまとめについて、国において文献調査の評価の考え方につ
いてご審議いただき、パブリックコメントが実施されたところである。今
後、NUMOにおいて報告書を取りまとめていく。
・科学的特性マップでは神恵内村はオレンジ色なのに、交付金が支払われるのか。科学
的特性マップへの信頼性をまったく感じない。
(→回答:)科学的特性マップは、一般の方々に地層処分に関心を持っていただくこと
が目的である。なお、神恵内村にはグリーンの地域も一部存在している。
適地かどうかについては、実際に詳細な調査を行い、評価していくことと
なる。
・対話の場での地域の将来についての議論や、ジオ・ラボ号での子供向けのPR活動な
ど、親しみを持ってもらうための活動をしているようだが、安全だから理解してくだ
さいとごまかしているように思える。
メリットだけでなくリスクについてもきちんと
伝えるべきだと思う。
(→回答:)対話の場では、処分場閉鎖後の放射線の人体への影響などのリスクや、ど
ういった対策を講じてリスクを低減しようとしているのかについても説
明している。
<その他>
・30 人という参加者では理解が進まないのではないか。
(→回答:)過去には、大きな会場で大勢の方にお集まりいただいて開催したこともあ
るが、一部の方しか発言できないというデメリットもあった。NUMOと
しては、一人でも多くの方に地層処分事業のご理解を深めてもらうべく、
説明会以外にも出前授業やジオ・ラボ号の広報ブースへの展開など様々な
広報活動にも取り組んでいる。この説明会も、より多くの方に知っていた
だけるよう広報手段を工夫してまいりたい。
・処分場ができていないのに、原子力発電を運転し続けるのはおかしくないか。
(→回答:)資源の乏しい日本において、再生可能エネルギーの最大限の導入も図って
いるが、気象条件に左右される供給の不安定性などの課題があり、原子力
の活用も必要と考えている。
・六ヶ所村の再処理工場はいつ稼働するのか。
(→回答:)現在の予定では、2024 年度の上期のできるだけ早い時期とされている。
以上

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