高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会 in 茨城(土浦市)
開催結果
日 時:2023 年 8 月 24 日 (木) 18:00〜20:15
場 所:土浦市亀城プラザ 4 階 学習室ほか
参加者数:25 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・桑原 豊(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)ほか
・高橋 徹治(原子力発電環境整備機構 地域交流部 部長)ほか
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
・日本では過去 50 年以上にわたって原子力発電を利用してきており、それに伴って発生す
る高レベル放射性廃棄物は、
人々の生活環境に影響を与えないよう、
地層処分という方法
で最終処分する方針。
・全国の皆さまに地層処分について、関心を持って、理解を深めていただくとともに、この
事業を受け入れていただける地域に対して、社会全体で敬意や感謝の気持ちを持ってい
ただけるよう、全国で対話活動に取り組んでいる。
・原子力発電により発生した使用済燃料は、
再処理工場でプルトニウムなどを回収した後、
残った放射性廃液をガラスに溶かし込んで「ガラス固化体」にする。既に約 27,000 本の
ガラス固化体に相当する高レベル放射性廃棄物が存在している。将来世代に先送りする
ことなく、
原子力を含む電気を多く使ってきた現世代で、
この問題の解決に道筋をつける
べく取り組んでいくことが重要。
・放射能が低減するまで数万年以上にわたって人間の生活環境から適切に隔離する必要が
ある。
確実性や環境への影響などの観点から考慮した結果、
地下深くに埋設して人間によ
る直接の管理を必要としない地層処分が、
国際社会から現時点で、
最も安全で実現可能な
処分方法とされている。
・世界で唯一建設を開始しているフィンランドは、30 年以上の歳月をかけ、国民理解・地
域理解に弛まぬ努力を重ねている。先行する諸外国は、プロセスの初期段階で 10 程度の
自治体が関心を持ち、
調査の過程で候補地が絞られ、
最終的に1つの地域が選ばれている。
日本もできるだけ多くの地域が関心を持つことが望ましい。
・地層処分にあたって考慮すべき地質環境の科学的特性について、
全国でほぼ同じ精度で作
成されている既存のデータをもとに、
日本全国を4種類に区分した
「科学的特性マップ」
を 2017 年 7 月に公表した。マップにより、日本でも地層処分に好ましい特性が確認でき
る可能性が高い地下環境が広く存在するとの見通しを共有する。
・処分地選定としては、文献調査、概要調査、精密調査の段階的な調査を行い、最終処分地
を選定する。この調査期間中、放射性廃棄物を持ち込むことは一切ない。
・文献調査は、関心を持っていただけた地域の皆さまに、地域の地下の状況や、事業をより
深く知っていただき、次のステップである概要調査に進むかどうかの判断をいただく材
料を提供し、理解活動の促進を図るもの。概要調査に進もうとする場合には、改めて都道
府県知事と当該市町村長のご意見を伺い、その意見に反して、先に進むことはない。
・2020 年 11 月に、北海道の寿都町と神恵内村の 2 町村において、文献調査を開始した。
2021 年 4 月から 2 町村で「対話の場」を開催している。
「対話の場」を通じ、逐次情報提
供を行い、
地域住民の皆さまの間で継続的な対話が行われ、
議論を深めていただくことが
重要と考えている。
「対話の場」では、参加された方々が主体となって、処分事業などに
ついて議論を深めていただくため、
また、
賛否に偏らない自由な議論ができるように取り
組んでいる。2 町村に設置された「対話の場」では、町や村の将来のまちづくりに関する
議論も始まっている。
・地層処分場として、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設する施設を全国で 1 か所つくる計
画である。
・安全に地層処分を行うため、NUMOでは様々なリスク要因を抽出し、
対応と安全性の確
認を行う。
処分地選定プロセスにおける調査により、
断層や火山などを避けて場所を選ぶ
という「立地による対応」
、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計によ
る対応」
、その対策により、安全性が確保できるかをシミュレーションなどで確認すると
いう「安全性の確認」といった対策を行う。また、地震・津波、輸送中の安全性について
も設計による対応、シミュレーションによる安全性確認を行う。また、地層処分の技術開
発については、国やJAEAなどの関係機関と連携して、技術開発を実施している。技術
的な課題を整理し、最新の技術開発動向を踏まえた安全確保の考え方やその手法を、
「包
括的技術報告書」として取りまとめ、NUMOのホームページに掲載している。今後も、
より実践的な技術開発に取り組み、技術的信頼性の更なる向上を目指す。
・最終処分事業は 100 年以上の長期にわたるため、
地域の発展を支えてこそ、
安定的な運営
ができる。NUMOは、調査の開始に伴い、地域にコミュニケーションのための拠点を設
置し、事業に関する様々なご質問にお答えするとともに、住民の皆さまと共に、地域の発
展に向けた議論に貢献していく。
・これまで対話活動を進める中で、地層処分事業を「より深く知りたい」との思いから主体
的に活動されている地域団体、大学・教育関係者、NPOなどのグループが全国各地に広
がりつつある。
・地層処分事業についてご不明な点や疑問点や、
またもっと詳しい話を聞いてみたいと関心
を持っていただける場合には、
一般の方でも、
自治体の方でも国やNUMOからご説明さ
せていただく機会を設けさせていただくとともに、
関連施設の見学にご案内するなど、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応させていただく。
しろまるグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載
<地層処分事業>
・原子力発電が始まったときには最終処分について考えていなかったのか。
(→回答:)原子力発電の利用が始まる 1966 年より前の 1962 年から、放射性廃棄物の
最終処分方法については様々な検討がなされてきた。
氷床処分・海洋投棄・
宇宙処分・地層処分が候補として検討されたが、氷床処分と海洋投棄は国
際条約で禁止され、宇宙処分は発射時の信頼性やコスト面などから現実的
ではないと判断された。こうした検討を経て、日本でも、世界各国と同様
に、地層処分が現時点で最も適切な方法であると考えている。
・処分場をいつまでにつくるという計画はあるのか。
(→回答:)高レベル放射性廃棄物の最終処分は将来世代に先送りすることなく、原子
力発電の恩恵を受けた現世代で道筋をつくるべきだと考えている。スケジ
ュールありきではなく、国民の皆さまに事業をご理解いただくことを重視
して取り組んでいる。
・最終処分費用は 4 兆円で足りるのか、また 4 兆円の積算根拠についてはどうか。
(→回答:)最終処分費用は、現在の知見に基づき、標準的な工程や技術的な条件をも
とに算出したもの。毎年、物価指数の変動および利子率等を勘案した見直
しが国により行われている。
・4 兆円の内訳には維持管理費等は計上されているのか。
(→回答:)4 兆円には調査費のほか建設費や維持管理費用、施設閉鎖後のモニタリン
グ費用なども含まれている。
・茨城県ではどのような場所が処分場の候補となるのか。
(→回答:)今は地層処分について全国の方々に広く知っていただくために、科学的特
性マップを公表し、説明会を開催しているところ。候補になるかどうかは
段階的な処分地選定調査で調べていくことになる。
<リスクと安全性>
・ヨーロッパなどに比べて日本の地層は若い。変動帯の日本で地層処分ができるのか。
(→回答:)一概に新しい地層が悪いというわけではない。ヨーロッパならどこでも地
層処分ができて、日本ではいずれの場所でも地層処分ができないというわ
けではない。例えば北欧の地層は古いが氷河期時代の氷がある分、隆起速
度が速いなど地域によって特性がある。日本周辺のプレートの動きについ
ては、
その方向や速さ
(数cm/年)
は数百万年前からほとんど変化がなく、
こうしたプレートの動きに関係する活断層や火山活動などの現象は今後
も 10 万年程度はほとんど変化しないと考えられている。段階的な調査の
中で地下深部を詳細に把握し、活断層や火山を避けることで、地層処分は
可能と考えている。
・長期の安全性が保てるのか。
(→回答:)様々なリスク要因を抽出し、火山活動や活断層の影響を避けるなどして処
分地を選び、閉じ込め機能に十分な余裕を持たせた人工バリアを設置する。
また、求められる安全確保の期間は、数万年以上と長く、実験などで直接
的に確かめることはできないため、様々なケースをシミュレーションし、
人や環境への影響を評価する。
・地層処分における地下熱の考慮は。
(→回答:)地層処分システムに著しい熱的影響を及ぼす地熱活動により、閉じ込め機
能が喪失されないよう、地温による影響も考慮している。2017 年に公表し
た科学的特性マップの地熱活動にかかる基準では、約 15°C/100m より大
きな地温勾配の範囲を地下深部の長期安定性等の観点から好ましくない
特性があると推定される地域に分類している。
・坑道は大きな地震が来ても大丈夫なのか。
(→回答:)坑道の壁面にコンクリートを設置して安定化させる。廃棄体や処分施設が
受ける地震の影響については、個別地点における詳細な処分地選定調査の
中で、過去の地震の履歴などを綿密に調査・評価し、十分に耐震性を確保
できるよう設計を行っていくことになる。なお、廃棄体の埋設後の地震の
揺れによる影響は、一般論として、地表付近と比べて 1/3〜1/5 程度と小
さくなることや、ガラス固化体と岩盤が一体となって動くことから、地上
と同程度の大きな影響が及ぶとは考えにくい。
・放射線が自然界のレベルよりはるかに高いので、管理が必要なのではないか。
(→回答:)長い期間にわたって地上で保管する場合、自然災害や戦争などのリスクが
増大し、また、管理に必要な技術や人材の維持、施設の建て替えなど、将
来世代へ負担をかけ続けることになる。
地下深くに適切に埋設することで、
人間が管理することなく、
将来にわたる高レベル放射性廃棄物によるリス
クを十分に小さく維持し続けることができると考えており、
国際社会から
も現時点で最も安全で実現可能な処分方法とされている。
・茨城県がほぼグリーンになっているが、調べると活断層が見つかるのではないか。
(→回答:)個別の地域について適性があるかどうかは、詳細な調査を実施して検討し
ていくこととなる。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・現在行われている文献調査は国が調査を申し入れたのか、
自治体から応募があったの
か。
(→回答:)神恵内村は、商工会が誘致の請願を行い、議会が請願を採択。これを踏ま
えて国が申し入れ村長が受諾された。寿都町は、地元での意見交換などを
経て町長から応募された。
・概要調査以降の処分地選定調査への同意は、知事と市長村長だけか、それとも周辺市
町村が含まれるのか。
(→回答:)最終処分法には、概要調査や精密調査に進むかどうかの際には、当該調査
の受入れにご協力いただく市町村長ならびに当該の都道府県知事のご意
見を聴くことが規定されている。
・文献調査は応募した地域からのみ実施するのか。
(→回答:)地域から応募いただくか、国からの申出を受諾いただいた場合に文献調査
を実施する。
・調査受入れ地域に対し、なぜ交付金を出すのか。
(→回答:)電源立地地域対策交付金制度は、電気を消費することによって社会が受け
る便益を、立地地域に還元する観点から交付金を交付する制度。地層処分
の実現は、
国全体の課題を一部の地域の協力を得て解決しようとする話で
あることから、受入れ地域に対して感謝の念を示し、社会として適切に利
益を還元していく観点から、
地層処分においても処分地選定調査の段階か
ら活用いただくことができる制度としている。
・神恵内村は、マップ上はオレンジ色なので、対象とならないのではないか。
(→回答:)一部グリーンのエリアも含まれる。本当に適切な地域かどうかは、今文献
調査を通じて調査しているところである。
・フィンランドやスウェーデンはなぜ事業が進んだのか。
(→回答:)必ずしも順調に進んだわけではなく、実施主体が国民や自治体に様々な情
報を提供し、長い時間をかけて丁寧な対話活動に取り組まれて関心や理解
を深めていただいたことが挙げられる。
<その他>
・茨城県内の説明会で水戸市や日立市、東海村などではなく土浦市を選んだ理由は。
(→回答:)水戸市では 2018 年、つくば市では 2019 年、ひたちなか市では 2021 年に
説明会を開催している。人口や交通の便などを考慮しつつ、開催場所の確
保や周知・広報の準備などを終えたところから順次開催しており、特定の
地域に文献調査の受入れをお願いするものではない。
・今すぐに原子力発電を止めることはできないにしても、
再生可能エネルギーなどの技
術開発を行って将来的にはすべて止めることを目指すべきではないか。
将来的にどう
するつもりなのか、国が明確な方針を打ち出さないから信用されない。
(→回答:)資源の乏しい日本において、再生可能エネルギーの最大限の導入も図って
いるが、気象条件に左右される供給の不安定性やコスト高という課題があ
り、原子力の活用も必要と考えている。
・ガラス固化体が発している熱をエネルギーとして利用できないのか。
(→回答:)ガラス固化体は、製造直後は表面温度が 200°C以上あるが、エネルギー密
度が低いため、発電所のようなエネルギー量にはならず、現在の技術で利
用するのは難しい。
・なぜ高レベル放射性廃棄物と表現するのか。
技術革新により資源になる可能性はない
のか。
(→回答:)日本では、使用済燃料からプルトニウムなどを取り出し再利用する。現在
は、
どうしても再利用できない約 5%が高レベル放射性廃棄物となっている
が、将来の技術革新を否定するわけではない。・「包括的技術報告書」は全文NUMOのホームページで公開されているのか。
(→回答:)付属書を含め全文をNUMOホームページでご覧いただくことができる。
・NUMOは何の略称か。
(→回答:)英語表記の組織名「Nuclear Waste Management Organization of Japan」
を略したもの。
以上

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