高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会 in 広島(尾道市)
開催結果
日 時:2023 年 8 月 1 日 (火) 18:00〜20:15
場 所:協同組合 ベイタウン尾道組合会館会議室 2 階 第 1 会議室ほか
参加者数:29 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・丹 貴義(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)ほか
・富森 卓(原子力発電環境整備機構 地域交流部 専門部長)ほか
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
・日本では過去 50 年以上にわたって原子力発電を利用してきており、それに伴って発生す
る高レベル放射性廃棄物は、
人々の生活環境に影響を与えないよう、
地層処分という方法
で最終処分する方針。
・全国の皆さまに地層処分について、関心を持って、理解を深めていただくとともに、この
事業を受け入れていただける地域に対して、社会全体で敬意や感謝の気持ちを持ってい
ただけるよう、全国で対話活動に取り組んでいる。
・原子力発電により発生した使用済燃料は、
再処理工場でプルトニウムなどを回収した後、
残った放射性廃液をガラスに溶かし込んで「ガラス固化体」にする。既に約 27,000 本の
ガラス固化体に相当する高レベル放射性廃棄物が存在している。将来世代に先送りする
ことなく、
原子力を含む電気を多く使ってきた現世代で、
この問題の解決に道筋をつける
べく取り組んでいくことが重要。
・放射能が低減するまで数万年以上にわたって人間の生活環境から適切に隔離する必要が
ある。
確実性や環境への影響などの観点から考慮した結果、
地下深くに埋設して人間によ
る直接の管理を必要としない地層処分が、
国際社会から現時点で、
最も安全で実現可能な
処分方法とされている。
・世界で唯一建設を開始しているフィンランドは、30 年以上の歳月をかけ、国民理解・地
域理解に弛まぬ努力を重ねている。先行する諸外国は、プロセスの初期段階で 10 程度の
自治体が関心を持ち、
調査の過程で候補地が絞られ、
最終的に1つの地域が選ばれている。
日本もできるだけ多くの地域が関心を持つことが望ましい。
・地層処分にあたって考慮すべき地質環境の科学的特性について、
全国でほぼ同じ精度で作
成されている既存のデータをもとに、
日本全国を4種類に区分した
「科学的特性マップ」
を 2017 年 7 月に公表した。マップにより、日本でも地層処分に好ましい特性が確認でき
る可能性が高い地下環境が広く存在するとの見通しを共有する。
・処分地選定としては、文献調査、概要調査、精密調査の段階的な調査を行い、最終処分地
を選定する。この調査期間中、放射性廃棄物を持ち込むことは一切ない。
・文献調査は、関心を持っていただけた地域の皆さまに、地域の地下の状況や、事業をより
深く知っていただき、次のステップである概要調査に進むかどうかの判断をいただく材
料を提供し、理解活動の促進を図るもの。概要調査に進もうとする場合には、改めて都道
府県知事と当該市町村長のご意見を伺い、その意見に反して、先に進むことはない。
・2020 年 11 月に、北海道の寿都町と神恵内村の 2 町村において、文献調査を開始した。
2021 年 4 月から 2 町村で「対話の場」を開催している。
「対話の場」を通じ、逐次情報提
供を行い、
地域住民の皆さまの間で継続的な対話が行われ、
議論を深めていただくことが
重要と考えている。
「対話の場」では、参加された方々が主体となって、処分事業などに
ついて議論を深めていただくため、
また、
賛否に偏らない自由な議論ができるように取り
組んでいる。2 町村に設置された「対話の場」では、町や村の将来のまちづくりに関する
議論も始まっている。
・地層処分場として、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設する施設を全国で 1 か所つくる計
画である。
・安全に地層処分を行うため、NUMOでは様々なリスク要因を抽出し、
対応と安全性の確
認を行う。
処分地選定プロセスにおける調査により、
断層や火山などを避けて場所を選ぶ
という「立地による対応」
、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計によ
る対応」
、その対策により、安全性が確保できるかをシミュレーションなどで確認すると
いう「安全性の確認」といった対策を行う。また、地震・津波、輸送中の安全性について
も設計による対応、シミュレーションによる安全性確認を行う。また、地層処分の技術開
発については、国やJAEAなどの関係機関と連携して、技術開発を実施している。技術
的な課題を整理し、最新の技術開発動向を踏まえた安全確保の考え方やその手法を、
「包
括的技術報告書」として取りまとめ、NUMOのホームページに掲載している。今後も、
より実践的な技術開発に取り組み、技術的信頼性の更なる向上を目指す。
・最終処分事業は 100 年以上の長期にわたるため、
地域の発展を支えてこそ、
安定的な運営
ができる。NUMOは、調査の開始に伴い、地域にコミュニケーションのための拠点を設
置し、事業に関する様々なご質問にお答えするとともに、住民の皆さまと共に、地域の発
展に向けた議論に貢献していく。
・これまで対話活動を進める中で、地層処分事業を「より深く知りたい」との思いから主体
的に活動されている地域団体、大学・教育関係者、NPOなどのグループが全国各地に広
がりつつある。
・地層処分事業についてご不明な点や疑問点や、
またもっと詳しい話を聞いてみたいと関心
を持っていただける場合には、
一般の方でも、
自治体の方でも国やNUMOからご説明さ
せていただく機会を設けさせていただくとともに、
関連施設の見学にご案内するなど、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応させていただく。
しろまるグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載
<地層処分事業>
・地上で保管すべきではないか。
(→回答:)地上施設で長期保管する場合、それが人間の生活環境に影響を及ぼさなく
なるまで、数万年の長期間にわたり地上施設を維持・管理していく必要が
あり、その間には施設の修復や建て替えも必要となる。さらに地上保管の
場合、地震、津波、台風などの自然現象による影響や、戦争、テロ、火災
などといった人間の行為の影響を受けるリスクがある。長期にわたり、こ
のようなリスクを念頭に管理を継続する必要がある地上施設を残すこと
は、将来の世代に負担を負わせ続けることとなり、現実的ではない。この
ため、人の管理を必要としない地層処分が国際的にも共通した認識となっ
ている。
・処分施設は 1 か所で足りるのか。
(→回答:)現在ある使用済燃料をすべて再処理したと仮定してガラス固化体の本数に
換算し、今あるガラス固化体と合わせると約 27,000 本が存在している。
これに対し、
40,000 本以上のガラス固化体を埋設できる処分場を確保する
ことを考えている。
・処分場の容量を 40,000 本以上とする根拠は。
(→回答:)地層処分事業で必要となる費用には、埋設する本数にかかわらず必要とな
る費用(固定費)と、本数に比例する 費用(変動費)がある。処分施設の
規模とガラス固化体 1 本当たりの処分費用との関係については、40,000
本程度以上であれば処分単価は処分施設の規模にほとんど影響されなく
なり、スケールメリットを得られることから、40,000 本以上を前提として
設定している。
・40,000 本から差し引いたら 13,000 本しか余裕が無いが、すぐに満杯になるのではな
いか。
(→回答:)100 万 kW 級の発電所を1年間稼働させ、発生する使用済燃料を再処理する
と、ガラス固化体が約 20〜30 本発生する。再稼働している発電所が 10 基
であれば、毎年 300 本程度発生する。
・イギリス、
フランスで発生した高レベル放射性廃棄物も日本に埋めると聞いたが本当
か。
(→回答:)国際原子力機関(IAEA)が定めた国際条約において、自国で発生した
高レベル放射性廃棄物は自国で処分することが原則であり、海外で発生し
た高レベル放射性廃棄物
(返還分を除く)
を日本国内に埋めることはない。
・国有地や無人島など、実現可能な場所を選んで処分場にすればいいのでは。
(→回答:)国有地や無人島もいずれかの自治体に属しており、当該地域を所管してい
る自治体の了解が必要になる。
・将来、もっと良い処分方法が見つかるのではないか。
(→回答:)今後、もっと良い技術が出てくるかもしれないことを考慮して、将来世代
の選択肢を残すという視点から処分場を埋め戻して閉鎖するまでは回収
可能性を維持することとしている。回収可能性は、国が定めた最終処分法
に基づく基本方針に明記されている。
<リスクと安全性>
・地層処分で長期の安全性が保てるのか。
(→回答:)様々なリスク要因を抽出し、火山活動や活断層の影響を避けるなどして処
分地を選び、閉じ込め機能に十分な余裕を持たせた人工バリアを設置する。
また、求められる安全確保の期間は、数万年以上と長く、実験などで直接
的に確かめることはできないため、様々なケースをシミュレーションし、
人や環境への影響を評価する。
・処分場だった場所をどうやって将来に伝えるのか。
(→回答:)処分場の存在を将来に示すことは必要と考えている。例えば、記録を保存
すること、処分場の性能に影響を与える地域を保護区域に指定してそのこ
とを知らせるよう、文字、絵、シンボル等を記したマーカー、モニュメン
トを設置することなどの対策が検討されている。
・テロのリスクにはどのような対策をとるのか。
(→回答:)高レベル放射性廃棄物であるガラス固化体は、国際規則に基づく安全規制
体系によって、その貯蔵・輸送時においては不法移転(盗難など)や妨害
破壊行為から防護すること、それを扱う施設にあっては、これを妨害破壊
行為から防護することが求められており、このため、物理的防護目的のた
めに立ち入りが制限され、管理された区域に置くことが要求されている。
地層処分場への輸送、地層処分場の施設はこれらの規則に従って設計・建
設・管理される。なお、地層処分では、地下 300 m より深い場所に放射
性廃棄物を埋設し坑道を埋め戻すので、処分されたガラス固化体は不法移
転(盗難など)や妨害破壊行為を受けにくいと考えている。
・活断層のリスクをどのように考えるのか。
(→回答:)断層については、断層のずれが廃棄体を直撃すること、断層のずれによっ
て地下水が流れやすくなることを避ける必要がある。過去の知見から、活
断層の長さの 1/100 程度の幅の範囲では地下水が流れやすくなる可能性が
あることから、科学的特性マップではこの範囲を好ましくない範囲とした。
・花崗岩とそれより重い岩石ではどちらが安定した地層か。
(→回答:)岩石の種類だけで地層が安定かどうかを判断することはできない。地層処
分では、埋設箇所の地層が放射性物質を閉じ込める働きや人工バリアを設
置するうえで好ましい特性を持ち、その特性が長期間にわたり維持される
ことが必要となる。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・科学的特性マップを見ると神恵内村には適地がないように見えるが、
文献調査の対象
となるのか。
(→回答:)科学的特性マップ上、神恵内村にも好ましい特性が確認できる可能性が相
対的に高い地域が一部存在している。
<その他>
・文献調査に応じるとなぜ交付金を出すのか。お金で誘導しているのではないか。
(→回答:)
調査を受け入れていただいた地域に対して感謝の念をお示しするとともに、
社会として適切に利益を還元していくため処分地選定調査の段階から、国
の電源立地対策交付金制度を御用意している。
・今後も原子力発電を使い続けるのか。
続ける限り、
この問題は解決できないと思うが。
(→回答:)資源の乏しい日本において、経済性や温暖化対策の問題にも配慮しつつ、
エネルギー供給の安定性を確保するためには、安全最優先という大前提の
もと原子力も活用することとしている。
・温暖化対策が必要なら、
太陽光など再生可能エネルギーの普及にもっと力を注ぐべき。
(→回答:)再生可能エネルギーの主力電源化にも取り組んでいるが、再エネか原子力
かではなく、電源の脱炭素化とエネルギーの安定供給の両立を図る必要が
ある。
・TRU廃棄物とは。
(→回答:)再処理工場やMOX燃料工場の操業及び解体に伴って発生する低レベル放
射性廃棄物のうち、
ウランより原子番号が大きい放射性核種
(TRU核種:
Trans-uranium)
を含み、
発熱量が小さく長寿命の放射性廃棄物のことを、
TRU廃棄物または長半減期低発熱放射性廃棄物と呼ぶ。半減期の長い核
種を一定量以上含む廃棄物は、放射能が十分低くなるまでには長い時間が
必要なことから、長期間にわたって隔離する地層処分の対象となる。
・NUMO(原子力発電環境整備機構)の成り立ちは。
(→回答:)NUMOは、
「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」に基づき、経
済産業大臣の認可を受けて 2000 年に設立された法人である。
・NUMOへの拠出金はきちんと管理されているのか。
(→回答:)最終処分費用は、法律に基づき、電力事業者等から毎年、原子力発電電力
量等に応じて拠出され 、NUMOとは別の資金管理機関(公益財団法人
原子力環境整備促進・資金管理センター)
において適切に管理されている。
以上

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