高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会 in 徳島(徳島市)
開催結果
日 時:2023 年 7 月 29 日 (土) 13:30〜16:10
場 所:あわぎんホール 徳島県郷土文化会館 4 階 会議室 2 ほか
参加者数:17 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・桑原 豊(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)ほか
・富森 卓(原子力発電環境整備機構 地域交流部 専門部長)ほか
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
・日本では過去 50 年以上にわたって原子力発電を利用してきており、それに伴って発生す
る高レベル放射性廃棄物は、
人々の生活環境に影響を与えないよう、
地層処分という方法
で最終処分する方針。
・全国の皆さまに地層処分について、関心を持って、理解を深めていただくとともに、この
事業を受け入れていただける地域に対して、社会全体で敬意や感謝の気持ちを持ってい
ただけるよう、全国で対話活動に取り組んでいる。
・原子力発電により発生した使用済燃料は、
再処理工場でプルトニウムなどを回収した後、
残った放射性廃液をガラスに溶かし込んで「ガラス固化体」にする。既に約 27,000 本の
ガラス固化体に相当する高レベル放射性廃棄物が存在している。将来世代に先送りする
ことなく、
原子力を含む電気を多く使ってきた現世代で、
この問題の解決に道筋をつける
べく取り組んでいくことが重要。
・放射能が低減するまで数万年以上にわたって人間の生活環境から適切に隔離する必要が
ある。
確実性や環境への影響などの観点から考慮した結果、
地下深くに埋設して人間によ
る直接の管理を必要としない地層処分が、
国際社会から現時点で、
最も安全で実現可能な
処分方法とされている。
・世界で唯一建設を開始しているフィンランドは、30 年以上の歳月をかけ、国民理解・地
域理解に弛まぬ努力を重ねている。先行する諸外国は、プロセスの初期段階で 10 程度の
自治体が関心を持ち、
調査の過程で候補地が絞られ、
最終的に1つの地域が選ばれている。
日本もできるだけ多くの地域が関心を持つことが望ましい。
・地層処分にあたって考慮すべき地質環境の科学的特性について、
全国でほぼ同じ精度で作
成されている既存のデータをもとに、
日本全国を4種類に区分した
「科学的特性マップ」
を 2017 年 7 月に公表した。マップにより、日本でも地層処分に好ましい特性が確認でき
る可能性が高い地下環境が広く存在するとの見通しを共有する。
・処分地選定としては、文献調査、概要調査、精密調査の段階的な調査を行い、最終処分地
を選定する。この調査期間中、放射性廃棄物を持ち込むことは一切ない。
・文献調査は、関心を持っていただけた地域の皆さまに、地域の地下の状況や、事業をより
深く知っていただき、次のステップである概要調査に進むかどうかの判断をいただく材
料を提供し、理解活動の促進を図るもの。概要調査に進もうとする場合には、改めて都道
府県知事と当該市町村長のご意見を伺い、その意見に反して、先に進むことはない。
・2020 年 11 月に、北海道の寿都町と神恵内村の 2 町村において、文献調査を開始した。
2021 年 4 月から 2 町村で「対話の場」を開催している。
「対話の場」を通じ、逐次情報提
供を行い、
地域住民の皆さまの間で継続的な対話が行われ、
議論を深めていただくことが
重要と考えている。
「対話の場」では、参加された方々が主体となって、処分事業などに
ついて議論を深めていただくため、
また、
賛否に偏らない自由な議論ができるように取り
組んでいる。2 町村に設置された「対話の場」では、町や村の将来のまちづくりに関する
議論も始まっている。
・地層処分場として、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設する施設を全国で 1 か所つくる計
画である。
・安全に地層処分を行うため、NUMOでは様々なリスク要因を抽出し、
対応と安全性の確
認を行う。
処分地選定プロセスにおける調査により、
断層や火山などを避けて場所を選ぶ
という「立地による対応」
、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計によ
る対応」
、その対策により、安全性が確保できるかをシミュレーションなどで確認すると
いう「安全性の確認」といった対策を行う。また、地震・津波、輸送中の安全性について
も設計による対応、シミュレーションによる安全性確認を行う。また、地層処分の技術開
発については、国やJAEAなどの関係機関と連携して、技術開発を実施している。技術
的な課題を整理し、最新の技術開発動向を踏まえた安全確保の考え方やその手法を、
「包
括的技術報告書」として取りまとめ、NUMOのホームページに掲載している。今後も、
より実践的な技術開発に取り組み、技術的信頼性の更なる向上を目指す。
・最終処分事業は 100 年以上の長期にわたるため、
地域の発展を支えてこそ、
安定的な運営
ができる。NUMOは、調査の開始に伴い、地域にコミュニケーションのための拠点を設
置し、事業に関する様々なご質問にお答えするとともに、住民の皆さまと共に、地域の発
展に向けた議論に貢献していく。
・これまで対話活動を進める中で、地層処分事業を「より深く知りたい」との思いから主体
的に活動されている地域団体、大学・教育関係者、NPOなどのグループが全国各地に広
がりつつある。
・地層処分事業についてご不明な点や疑問点や、
またもっと詳しい話を聞いてみたいと関心
を持っていただける場合には、
一般の方でも、
自治体の方でも国やNUMOからご説明さ
せていただく機会を設けさせていただくとともに、
関連施設の見学にご案内するなど、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応させていただく。
しろまるグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載
<地層処分事業>
・今ある原子力発電所それぞれに処分場をつくってはどうか。
(→回答:)全国でいずれか 1 カ所に建設する計画である。個別の地域について適性が
あるかどうかは、その地域における詳細な処分地選定調査を実施して検討
していくこととなる。原子力発電所とは地下深部の安定性などで求められ
る条件が異なる点もあるため、原子力発電所の立地地域が必ずしも地層処
分の処分地として適しているとは限らない。
・処分施設は 1 か所で足りるのか。
(→回答:)現在ある使用済燃料をすべて再処理したと仮定してガラス固化体の本数に
換算し、今あるガラス固化体と合わせると約 27,000 本が存在している。
これに対し、
40,000 本以上のガラス固化体を埋設できる処分場を確保する
ことを考えている。
・海の下に処分場をつくることは可能か。
(→回答:)地上施設からアクセスできれば、沿岸海底下に処分場をつくることも可能
である。
・2045 年までに最終処分場を操業できない場合、青森県に一時貯蔵している高レベル
放射性廃棄物は、どこに搬出するのか。
(→回答:)青森県と六ヶ所村と事業者の間で、それぞれのガラス固化体について、貯
蔵管理センターにおける管理期間を 30 年間から 50 年間とし、管理期間終
了時点で事業者が搬出する旨の協定を結んでいる。
・海外の国に最終処分をお願いすればよいのではないか。
(→回答:)国際条約において、自国で発生した高レベル放射性廃棄物は自国で処分す
るという原則があるため、日本においても法律に基づき国内で地層処分を
進めていく必要がある。
・オーバーパックの設計耐用年数を最低 1,000 年としている理由は何か。
(→回答:)ガラス固化体を地下深部に埋めた後は、1,000 年間でガラス固化体中の放
射能は数千分の1に減少し、その後も緩やかに放射能が減少する。このこ
とから、オーバーパックの設計耐用年数としては最低 1,000 年を考え、安
全裕度を確保して設計している。
・処分費用が約 4 兆円とのことだが、結局は数倍に膨れ上がるのではないか。
(→回答:)最終処分費用は、現在の知見に基づき、標準的な工程や技術的な条件をも
とに算出したもの。毎年、物価指数の変動および利子率等を勘案した見直
しが国により行われている。
<リスクと安全性>
・ガラス固化体が再臨界の状態になったり爆発したりすることはないのか。
(→回答:)ガラス固化体は、化学的に爆発を引き起こす物質や引火する物質を含んで
おらず、爆発するようなものではない。またプルトニウムなどの核分裂性
物質もほとんど含まれていないため、臨界状態になることもない。
・ガラス固化体1本に占める高レベル放射性廃液の割合を教えてほしい。
(→回答:)ガラス固化体1本に対し放射性物質の重量比が約 10%となる高レベル放射
性廃液が含まれている。
・製造されるガラス固化体の品質管理はするのか。
(→回答:)日本原燃が製造するガラス固化体については、日本原燃において品質確認
を実施するものと認識している。
・地層処分を実施するうえで最悪のケースはどのように考えているのか。
(→回答:)調査で見つからなかった断層が処分場を直撃し、すべてのガラス固化体が
破損して地下水の通り道が地上までできてしまう場合など、発生する可能
性が限りなく低いケースを想定している。このようなケースについてもシ
ミュレーションを行い、その結果が地上の人間への放射能による影響につ
いて安全基準を満たしているかを検証している。
・坑道を埋め戻す際に元の岩石より多くの隙間ができることで、
放射性物質が漏れた際
に坑道に沿って地上に出てくるのではないか。
(→回答:)埋め戻された坑道が放射性物質の移行経路とならないよう、坑道を埋め戻
すとともに止水プラグを施す。埋戻し材は低透水性である必要があるため、
処分場建設時に元の岩盤から発生した掘削土にベントナイトを混合する
ことを考えている。このような埋戻しを施したあとは、岩盤と埋め尽くさ
れた坑道の圧力差がほとんどなくなり、再び地下水の流れが建設前のよう
な状態に戻ると考えている。
・徳島県は南海トラフが心配だ。どのような対策をとるのか。
(→回答:)廃棄体や処分施設が受ける地震や津波の影響については、個別地点におけ
る詳細な処分地選定調査の中で、過去の地震の履歴などを綿密に調査・評
価し、対策を講じていくことになる。仮に南海トラフの影響が懸念される
地域において、想定される地震や津波に耐えられるような設計が施せない
のであれば、そこに処分場を建設することはできないと考えている。
・処分場がつくられた地域に人が立ち入ることはできるのか。
(→回答:)できる。管理終了後は全ての地上施設を撤去するが、様々な用途に使うこ
とも可能。管理終了後の跡地の利用方法については、地域の皆さまのご要
望をお聞きしながら考えていきたい。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・文献調査は具体的に何を行っているのか。
(→回答:)調査内容は、その地域固有の地質図などの文献・データ、地質などに関す
る学術論文などを収集し、
情報を整理する。
それらの情報をもとに、
火山・
火成活動、断層活動などに関して概要調査地区として適しているかどうか
を確認する。
・寿都町、神恵内村の現状はどうなっているのか。
(→回答:)国の審議会にて策定された文献調査の評価の考え方について広く国民の皆
様からご意見をいただきながら取りまとめを進めている。
・科学的特性マップで神恵内村はオレンジ色となっているが、
地元が調査を受け入れれ
ばリスクの高い地域でも調査や建設を行うのか。
(→回答:)科学的特性マップでは、隣接の積丹町にある火山の中心から半径 15km の
円周内にほとんど覆われているが、南側の泊村との隣接地域にオレンジ色
が掛かっていない箇所があることから、文献調査を行っている。
・2007 年頃に高知県東洋町で起こった文献調査応募に関する紛争の反省を受けて、そ
の後の処分地選定プロセスにどのような影響があったか。
(→回答:)東洋町の反省も踏まえ、2015 年に最終処分法の基本方針を改定し、これま
で手挙げ方式のみとしていた文献調査への応募に加え、国から自治体に申
し入れする仕組みを新たに追加した。
<その他>
・調査を受け入れた自治体には、どれくらいの交付金が支払われるのか。
(→回答:)文献調査の段階では 1 年で最大 10 億円、調査期間で最大 20 億円。概要調
査の段階では 1 年で最大 20 億円、調査期間で最大 70 億円となり、調査を
受け入れていただいた自治体の申請に基づき交付される。
・今後も原子力発電を使い続けるのか。
プルトニウムなどの半減期が数万年の放射性物
質を生み出す原子力発電は中止、廃炉すべきではないか。
(→回答:)資源の乏しい日本において、経済性や温暖化対策の問題にも配慮しつつ、
エネルギー供給の安定性を確保するためには、安全最優先という大前提の
もと原子力も活用することとしている。また、原子力発電を止める・止め
ないにかかわらず、すでに高レベル放射性廃棄物があることは事実であり、
現世代の責任で地層処分を進める必要があると考えている。
・資源に乏しい日本では脱炭素電源として原子力発電をもっと推進するべきである。
(→回答:)政府としてはS+3Eの大原則に基づきエネルギー政策を進めてく中で、
あるべき電源構成を検討していく。原発についてはGX(グリーントラン
スフォーメーション)実現のための重要電源として位置付けており、既存
の原発を可能な限り活用し、電力の安定供給と温暖化ガスの排出削減を目
指すこととしている。
・福島第一原発の燃料デブリはどのように処分するのか。
(→回答:)デブリの処分方法については、取り出し開始後にその性状の分析を進めた
うえで検討し、決定される。
以上

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