高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会 in 静岡(掛川市)
開催結果
日 時:2023 年 7 月 20 日 (木) 18:00〜20:10
場 所:掛川市生涯学習センター 1 階 第 2 会議室ほか
参加者数:20 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・桑原 豊(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)ほか
・富森 卓(原子力発電環境整備機構 地域交流部 専門部長)ほか
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
・日本では過去 50 年以上にわたって原子力発電を利用してきており、それに伴って発生す
る高レベル放射性廃棄物は、
人々の生活環境に影響を与えないよう、
地層処分という方法
で最終処分する方針。
・全国の皆さまに地層処分について、関心を持って、理解を深めていただくとともに、この
事業を受け入れていただける地域に対して、社会全体で敬意や感謝の気持ちを持ってい
ただけるよう、全国で対話活動に取り組んでいる。
・原子力発電により発生した使用済燃料は、
再処理工場でプルトニウムなどを回収した後、
残った放射性廃液をガラスに溶かし込んで「ガラス固化体」にする。既に約 27,000 本の
ガラス固化体に相当する高レベル放射性廃棄物が存在している。将来世代に先送りする
ことなく、
原子力を含む電気を多く使ってきた現世代で、
この問題の解決に道筋をつける
べく取り組んでいくことが重要。
・放射能が低減するまで数万年以上にわたって人間の生活環境から適切に隔離する必要が
ある。
確実性や環境への影響などの観点から考慮した結果、
地下深くに埋設して人間によ
る直接の管理を必要としない地層処分が、
国際社会から現時点で、
最も安全で実現可能な
処分方法とされている。
・世界で唯一建設を開始しているフィンランドは、30 年以上の歳月をかけ、国民理解・地
域理解に弛まぬ努力を重ねている。先行する諸外国は、プロセスの初期段階で 10 程度の
自治体が関心を持ち、
調査の過程で候補地が絞られ、
最終的に1つの地域が選ばれている。
日本もできるだけ多くの地域が関心を持つことが望ましい。
・地層処分にあたって考慮すべき地質環境の科学的特性について、
全国でほぼ同じ精度で作
成されている既存のデータをもとに、
日本全国を4種類に区分した
「科学的特性マップ」
を 2017 年 7 月に公表した。マップにより、日本でも地層処分に好ましい特性が確認でき
る可能性が高い地下環境が広く存在するとの見通しを共有する。
・処分地選定としては、文献調査、概要調査、精密調査の段階的な調査を行い、最終処分地
を選定する。この調査期間中、放射性廃棄物を持ち込むことは一切ない。
・文献調査は、関心を持っていただけた地域の皆さまに、地域の地下の状況や、事業をより
深く知っていただき、次のステップである概要調査に進むかどうかの判断をいただく材
料を提供し、理解活動の促進を図るもの。概要調査に進もうとする場合には、改めて都道
府県知事と当該市町村長のご意見を伺い、その意見に反して、先に進むことはない。
・2020 年 11 月に、北海道の寿都町と神恵内村の 2 町村において、文献調査を開始した。
2021 年 4 月から 2 町村で「対話の場」を開催している。
「対話の場」を通じ、逐次情報提
供を行い、
地域住民の皆さまの間で継続的な対話が行われ、
議論を深めていただくことが
重要と考えている。
「対話の場」では、参加された方々が主体となって、処分事業などに
ついて議論を深めていただくため、
また、
賛否に偏らない自由な議論ができるように取り
組んでいる。2 町村に設置された「対話の場」では、町や村の将来のまちづくりに関する
議論も始まっている。
・地層処分場として、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設する施設を全国で 1 か所つくる計
画である。
・安全に地層処分を行うため、NUMOでは様々なリスク要因を抽出し、
対応と安全性の確
認を行う。
処分地選定プロセスにおける調査により、
断層や火山などを避けて場所を選ぶ
という「立地による対応」
、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計によ
る対応」
、その対策により、安全性が確保できるかをシミュレーションなどで確認すると
いう「安全性の確認」といった対策を行う。また、地震・津波、輸送中の安全性について
も設計による対応、シミュレーションによる安全性確認を行う。また、地層処分の技術開
発については、国やJAEAなどの関係機関と連携して、技術開発を実施している。技術
的な課題を整理し、最新の技術開発動向を踏まえた安全確保の考え方やその手法を、
「包
括的技術報告書」として取りまとめ、NUMOのホームページに掲載している。今後も、
より実践的な技術開発に取り組み、技術的信頼性の更なる向上を目指す。
・最終処分事業は 100 年以上の長期にわたるため、
地域の発展を支えてこそ、
安定的な運営
ができる。NUMOは、調査の開始に伴い、地域にコミュニケーションのための拠点を設
置し、事業に関する様々なご質問にお答えするとともに、住民の皆さまと共に、地域の発
展に向けた議論に貢献していく。
・これまで対話活動を進める中で、地層処分事業を「より深く知りたい」との思いから主体
的に活動されている地域団体、大学・教育関係者、NPOなどのグループが全国各地に広
がりつつある。
・地層処分事業についてご不明な点や疑問点や、
またもっと詳しい話を聞いてみたいと関心
を持っていただける場合には、
一般の方でも、
自治体の方でも国やNUMOからご説明さ
せていただく機会を設けさせていただくとともに、
関連施設の見学にご案内するなど、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応させていただく。
しろまるグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載
<地層処分事業>
・上限の 40,000 本にはいつ到達すると考えているのか。
(→回答:)処分場の規模は 40,000 本以上としており、必ずしも 40,000 本が上限とい
う訳ではない。原子力発電所の稼働状況の将来的な見通しを立てることは
難しいが、100 万 kW 級の原子力発電所が 1 年間稼働すると 20〜30 本程度
のガラス固化体が発生する。
・ガラス固化体は 27,000 本相当との説明を聞いたが、日本には、まだガラス固化体は
ないと考えればよいのか。
(→回答:)海外等で再処理されたガラス固化体が約 2,500 本存在する。海外で再処理
されたガラス固化体は日本原燃の高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センタ
ーなどで保管されており、同センターでは、ガラス固化体を最終処分する
までの間、冷却のために貯蔵している。なお、これまでに発生した使用済
燃料をすべて再処理したと仮定すると、海外等で再処理したものと併せて
約 27,000 本相当のガラス固化体が存在する。
・貯蔵管理センターに一時貯蔵している高レベル放射性廃棄物は、2045 年を過ぎても
保管を続けられるのか。
(→回答:)青森県と六ヶ所村と事業者の間で、それぞれのガラス固化体について、貯
蔵管理センターにおける管理期間を 30 年間から 50 年間とし、管理期間終
了時点で事業者が搬出する旨の協定を結んでいる。協定の遵守に向けて、
事業者がしっかり取り組んでいくものと考えている。
・今ある原子力発電所それぞれに処分場をつくってはどうか。
(→回答:)40,000 本以上のガラス固化体を埋設できる処分場を1か所つくることと
している。
・安全に処分できる海外の国にお願いすればよいのではないか。
(→回答:)国際条約に基づいて、自国で発生した高レベル放射性廃棄物は自国で処分
するという原則がある。法律でも国内処分を前提としており、しっかり国
内で処分していくことが重要と考えている。
・処分費用はどのような考え方で算出しているのか。4 兆円で足りるのか。
(→回答:)最終処分費用は、現在の知見に基づき、標準的な工程や技術的な条件をも
とに算出したもの。毎年、物価指数の変動および利子率等を勘案した見直
しが国により行われている。
・国が委託して行っている研究開発費とNUMOが行っている技術開発費はどのよう
な違いがあるのか。
(→回答:)NUMOの技術開発費は、実際に事業を進めるうえで必要になる技術開発
の費用であり、国が委託して行っている研究開発費は、より基盤的な研究
を行うための費用である。
<リスクと安全性>
・地下 300m 以深とあるが、深いほうが良いのではないか。
(→回答:)地表から遠ざけて人間の生活環境から隔離する機能を十分確保する必要が
あるが、一般に地下深部になるほど地温が高くなり、人工バリアの機能低
下といった安全性に影響を及ぼす可能性がある。また、深くなれば地圧が
高くなり、
地質によっては、
トンネルの強度に影響を及ぼす可能性もある。
したがって一概に深ければ良いというわけではなく、地質構造に応じて最
適な処分深度を設定することになる。
・評価する対象期間が数万年と非常に長いが、本当に安全なのか。
(→回答:)数万年以上の長期の安全性は、実験などで直接的に確かめることはできな
いため、火山を避けるなどの立地による対応や坑道への止水防止などの設
計による対応に加えて、様々な厳しいケースを想定して、コンピュータ上
でシミュレーションを実施し、人や環境への影響を評価している。
・数万年の安全性の評価で、
「人間が受ける年間線量の最大値 2μSv/年」とは、どうい
う意味なのか。
(→回答:)将来、地下水に乗って放射性物質が地表付近に到達することによって、人
間が受ける被ばく線量を厳しめの条件で評価しても、自然放射線からの被
ばく線量より小さく、人体への影響がないレベルになっていることを示し
ている。
・浜岡原発のある御前崎から浜岡は断層が多く、
南海トラフ巨大地震が起こる地域と言
われ危険性があるにも関わらず、なぜ科学的特性マップでは適地になっているのか。
(→回答:)科学的特性マップは、地層処分に関係する科学的特性を、既存の全国デー
タに基づき一定の要件・基準に従って客観的に整理し、全国地図の形にし
たもの。マップに反映されていない地域の文献や、未知の活断層なども存
在する可能性がある。こうした地域の詳細な地質環境については、3 段階
の処分地選定調査において詳細に調査することとしている。
・岐阜県瑞浪市の研究施設では、
毎日相当な量の地下水が湧き出ていると聞いたことが
ある。オンカロでは少ししか出ないそうだが、日本では地層処分は無理なのではない
か。
(→回答:)瑞浪市の地下研究施設では、止水対策(グラウチング)により、坑道への地
下水の湧水を 100 分の1程度まで減らしたことが実証されている。地下施
設の建設中や廃棄物の埋設中は、地下トンネルと岩盤に圧力差が生じ、そ
の結果、岩盤中のすき間からトンネル内に地下水が流入しやすくなるため、
排水設備の設置や湧水対策などの工学的手法により対策を講じる。埋設後
は、岩盤と埋め尽くされた坑道の圧力差がほとんどなくなるため、再び地
下水の流れは元の非常に遅い状態に戻る。
・地層処分の責任は誰が負うのか。NUMOが解散した後はどうなるのか。
(→回答:)処分事業における一義的責任は事業の実施主体であるNUMOが負う。安
全規制への適合・遵守にとどまることなく、安全性の向上に向けて不断に
取り組む義務を有している。埋設後は、地元のみなさんにご相談しながら
モニタリングなどを行うことが考えられるが、NUMOが解散した後は、
国が必要な措置を講じていくこととなる。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・首長の了解を待っても事業は進まない。
NUMOが自ら適地を選定すればよいではな
いか。
(→回答:)文献調査、概要調査、精密調査の 3 段階の調査を経て最終処分地を選定す
ることが、最終処分法に規定されている。第一段階の文献調査は、市町村
から応募または国からの申し入れを市町村が受諾して始まることから、地
域のご理解なしにNUMOが独自に調査を始めることはない。地道な対話
活動を積み重ねることで地域の皆さまのご理解をいただいたうえで、事業
を進めていけるよう取り組んでいきたい。
・調査に一度でも応じると、自治体は断り難くなるのではないか。
(→回答:)処分地選定調査の各段階に進むためには、当該自治体の首長と都道府県知
事のご意見を聴くこととなっており、ご意見に反しては事業を前に進めな
い。
・寿都町や神恵内村の文献調査の進捗状況はどうか。
(→回答:)文献調査について、文献及びデータの収集、整理は終わっている。現在、
調査結果の評価方法についてパブリックコメントが行われている。
・寿都町や神恵内村で文献調査を受け入れた影響はどうか。
(→回答:)
両町村において、
風評被害のような影響があったとの報告は聞いていない。
一方、いくつかの企業が事業などを始めていることは聞いており、NUM
Oが協力したものもある。
<その他>
・NUMOは国の機関か。
(→回答:)
最終処分法に基づき、
経済産業大臣の認可を受けて設立された法人である。
・廃棄物の無害化の研究は行われていないのか。
(→回答:)大学やJAEA等において放射性廃棄物の減容化と有害度低減を目的に、
高レベル放射性廃棄物中に含まれる放射性物質を他の放射性物質に変換
する技術の研究が行われている。
・原子力発電所が稼働していない電力会社はいくつかある。
再生可能エネルギーで十分
賄えるとの試算もある。原子力発電は必要ないのではないか。
(→回答:)電力需給が逼迫し、電気が足りなくなった時期もある。また、資源価格高
騰やロシアによるウクライナ侵略等によりエネルギー情勢は一変し、電気
料金の上昇やエネルギーの安定供給、地球温暖化対策の面でリスクにさら
されており、
S+3Eの原則が大変重要。
徹底した省エネの推進や再エネの
最大限の導入も図っていくが、省エネには国民生活の利便性や企業の経済
活動との関係で限界があり、再エネについても、気象条件に左右される供
給の不安定性やコスト高という課題があり、今すぐ原子力を代替できるも
のではない。
・原子力発電は、地層処分や福島第一の廃炉、安全対策などでコストがかかっている。
浜岡原子力発電所では 4,000 億円もかけて防波壁を作った。
原子力発電の発電コスト
は 11.7 円とあるが、本当はもっと高いのではないか。原子力発電が安いというのは
間違いではないか。
(→回答:)万が一の事故にそなえる費用、最終処分費用、安全対策費用、廃炉に必要
な費用など、さまざまなコストがかかることは事実である。しかし、2021
年に行った発電コスト計算では、そうしたさまざまなコストをすべて盛り
込んだ上で、
原子力発電所を新設した場合の発電コストは、
11.7 円/kWh 以
上という数値が出ている。
・社会全体の課題との考えは誤りではないか。
原子力発電を選択した電力会社の責任で
はないのか。
(→回答:)50 年以上、原子力発電を含む電気が使われてきており、それに伴って発生
する高レベル放射性廃棄物がすでに存在している。現世代の責任で地層処
分を進める必要があると考えている。
・なぜ掛川市で説明会を開催したのか。市から依頼があったのか。
(→回答:)対話型全国説明会は全国の各地で開催しており、人口や交通の便などの地
域バランスを考慮しつつ、開催場所の確保や周知・広報の準備などを終え
たところから順次開催している。市から依頼があって開催したわけではな
い。
以上

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