高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会 in 三重(津市)
開催結果
日 時:2023 年 6 月 22 日 (木) 18:00〜20:10
場 所:三重県総合文化センター 生涯学習棟 4 階 大研修室ほか
参加者数:40 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・桑原 豊(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)ほか
・高橋 徹治(原子力発電環境整備機構 地域交流部 部長)ほか
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
・日本では過去 50 年以上にわたって原子力発電を利用してきており、それに伴って発生す
る高レベル放射性廃棄物は、
人々の生活環境に影響を与えないよう、
地層処分という方法
で最終処分する方針。
・全国の皆さまに地層処分について、関心を持って、理解を深めていただくとともに、この
事業を受け入れていただける地域に対して、社会全体で敬意や感謝の気持ちを持ってい
ただけるよう、全国で対話活動に取り組んでいる。
・原子力発電により発生した使用済燃料は、
再処理工場でプルトニウムなどを回収した後、
残った放射性廃液をガラスに溶かし込んで「ガラス固化体」にする。既に約 27,000 本の
ガラス固化体に相当する高レベル放射性廃棄物が存在している。将来世代に先送りする
ことなく、
原子力を含む電気を多く使ってきた現世代で、
この問題の解決に道筋をつける
べく取り組んでいくことが重要。
・放射能が低減するまで数万年以上にわたって人間の生活環境から適切に隔離する必要が
ある。
確実性や環境への影響などの観点から考慮した結果、
地下深くに埋設して人間によ
る直接の管理を必要としない地層処分が、
国際社会から現時点で、
最も安全で実現可能な
処分方法とされている。
・世界で唯一建設を開始しているフィンランドは、30 年以上の歳月をかけ、国民理解・地
域理解に弛まぬ努力を重ねている。先行する諸外国は、プロセスの初期段階で 10 程度の
自治体が関心を持ち、
調査の過程で候補地が絞られ、
最終的に1つの地域が選ばれている。
日本もできるだけ多くの地域が関心を持つことが望ましい。
・地層処分にあたって考慮すべき地質環境の科学的特性について、
全国でほぼ同じ精度で作
成されている既存のデータをもとに、
日本全国を4種類に区分した
「科学的特性マップ」
を 2017 年 7 月に公表した。マップにより、日本でも地層処分に好ましい特性が確認でき
る可能性が高い地下環境が広く存在するとの見通しを共有する。
・処分地選定としては、文献調査、概要調査、精密調査の段階的な調査を行い、最終処分地
を選定する。この調査期間中、放射性廃棄物を持ち込むことは一切ない。
・文献調査は、関心を持っていただけた地域の皆さまに、地域の地下の状況や、事業をより
深く知っていただき、次のステップである概要調査に進むかどうかの判断をいただく材
料を提供し、理解活動の促進を図るもの。概要調査に進もうとする場合には、改めて都道
府県知事と当該市町村長のご意見を伺い、その意見に反して、先に進むことはない。
・2020 年 11 月に、北海道の寿都町と神恵内村の 2 町村において、文献調査を開始した。
2021 年 4 月から 2 町村で「対話の場」を開催している。
「対話の場」を通じ、逐次情報提
供を行い、
地域住民の皆さまの間で継続的な対話が行われ、
議論を深めていただくことが
重要と考えている。
「対話の場」では、参加された方々が主体となって、処分事業などに
ついて議論を深めていただくため、
また、
賛否に偏らない自由な議論ができるように取り
組んでいる。2 町村に設置された「対話の場」では、町や村の将来のまちづくりに関する
議論も始まっている。
・地層処分場として、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設する施設を全国で 1 か所つくる計
画である。
・安全に地層処分を行うため、NUMOでは様々なリスク要因を抽出し、
対応と安全性の確
認を行う。
処分地選定プロセスにおける調査により、
断層や火山などを避けて場所を選ぶ
という「立地による対応」
、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計によ
る対応」
、その対策により、安全性が確保できるかをシミュレーションなどで確認すると
いう「安全性の確認」といった対策を行う。また、地震・津波、輸送中の安全性について
も設計による対応、シミュレーションによる安全性確認を行う。また、地層処分の技術開
発については、国やJAEAなどの関係機関と連携して、技術開発を実施している。技術
的な課題を整理し、最新の技術開発動向を踏まえた安全確保の考え方やその手法を、
「包
括的技術報告書」として取りまとめ、NUMOのホームページに掲載している。今後も、
より実践的な技術開発に取り組み、技術的信頼性の更なる向上を目指す。
・最終処分事業は 100 年以上の長期にわたるため、
地域の発展を支えてこそ、
安定的な運営
ができる。NUMOは、調査の開始に伴い、地域にコミュニケーションのための拠点を設
置し、事業に関する様々なご質問にお答えするとともに、住民の皆さまと共に、地域の発
展に向けた議論に貢献していく。
・これまで対話活動を進める中で、地層処分事業を「より深く知りたい」との思いから主体
的に活動されている地域団体、大学・教育関係者、NPOなどのグループが全国各地に広
がりつつある。
・地層処分事業についてご不明な点や疑問点や、
またもっと詳しい話を聞いてみたいと関心
を持っていただける場合には、
一般の方でも、
自治体の方でも国やNUMOからご説明さ
せていただく機会を設けさせていただくとともに、
関連施設の見学にご案内するなど、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応させていただく。
しろまるグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載
<地層処分事業>
・地層処分が最良の方法なのか。地上で人間が管理した方が確実ではないか。
(→回答:)地上施設で長期保管する場合、それが人間の生活環境に影響を及ぼさなく
なるまで、数万年の長期間にわたり地上施設を維持・管理していく必要が
あり、その間には施設の修復や建て替えも必要となる。さらに地上保管の
場合、津波などの自然現象による影響や、戦争、テロなどといった人間の
行為の影響を受けるリスクがある。長期にわたり、このようなリスクを念
頭に、人の管理を必要としない最終的な処分(最終処分)を行うべきであ
るというのが国際的にも共通した認識となっている。
・科学技術が進歩するのを待って、最善の方法で処分することを考えるべきでは。
(→回答:)国が定めた最終処分法の基本方針において、今後、もっと良い技術が出て
くるかもしれないことを考慮して、将来世代の選択肢を残すという視点か
ら処分場を埋め戻して閉鎖するまでは回収可能性を維持することとして
いる。
・最終処分場の規模について、ガラス固化体 40,000 本とする根拠は(将来を含めたガ
ラス固化体の発生上限を定めたものか)
。最終処分場は日本で 1 か所だけか。
(→回答:)地層処分事業で必要となる費用には、埋設する本数にかかわらず必要とな
る費用(固定費)と、本数に比例する 費用(変動費)がある。処分施設の
規模とガラス固化体(1 本)当たりの処分費用との関係について分析した
ところ、
40,000 本程度以上であれば処分単価は処分施設の規模にほとんど
影響されなくなる
(処分費用はほとんど変わらなくなる)
ことから、
40,000
本を前提として設定したものであり、ガラス固化体の発生上限を定めたも
のではない。
40,000 本以上のガラス固化体を処分する施設を 1 箇所建設す
る予定である。
・科学的特性マップには、
三重県にも伸びている中央構造線断層帯が反映しきれていな
いのではないか。
(→回答:)科学的特性マップは、地層処分に関係する科学的特性を、既存の全国デー
タに基づき一定の要件・基準に従って客観的に整理し、全国地図の形にし
たものであり、マップには反映されていない地域の文献・データや、未知
の活断層なども存在する可能性がある。こうした地域の詳細な地質環境に
ついては、3 段階の処分地選定調査において詳細に調査することとしてい
る。
<リスクと安全性>
・フィンランドやスウェーデンの地層は古く安定しており、日本の様に地震も少ない。
日本には、地層処分に適した地層は無いのでは。
(→回答:)確かに、日本の地質はヨーロッパなどの大陸の地質と比べると新しい。し
かし、これまでの研究成果では、地層処分に必要な地質環境が、日本にも
広く存在すると評価されている。日本周辺のプレートの動きは数百万年前
からほとんど変化がなく、
このプレートの動きに関係する地震・断層活動、
火成活動等は、
今後 10 万年程度はほとんど変化しないと考えられている。
なお、北欧の地層は古いが氷河期時代の氷がある分、隆起速度が速いなど
地域によって個性がある。
・処分場の深さは、なぜ地下 300m なのか。
(→回答:)300m とは、諸外国での検討状況を踏まえて法律で設定された最小の深さ。
地表から遠ざけて人間の生活環境からの隔離を十分確保する必要がある
が、一般に地下深部になるほど地温が高くなり、人工バリアの機能低下と
いった安全性に影響を及ぼす可能性がある。また深くなれば地圧が高くな
り、地質によっては、トンネルの強度に影響を及ぼす可能性もある。した
がって一概に深ければ良いというわけではなく、地質構造に応じて地下
300m以上の最適な深度を設定することになる。
・地下施設で人が閉じ込められたらどうするのか。
(→回答:)人が閉じ込められた場合を想定して、避難経路と緊急避難所を設置する。
・安全性の話について希望的観測を土台にした内容が多すぎるのではないかと感じた
が、どうか(科学者や研究者は絶対ということを避けるべきと言われるが)。(→回答:)
数万年以上長期の安全性は、
実験などで直接確認することができないため、
リスクを最小限に抑えるよう立地や設計による対策を講じて可能な限り
最大限の努力をしていく。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・寿都町及び神恵内村はなぜ文献調査を受け入れたのか。
(→回答:)寿都町では議会や住民説明会等を経て町長が応募を決断された。一方、神
恵内村では、商工会から村議会に対して文献調査への応募検討の請願があ
り、議会での議論や住民説明会等を経て、臨時議会で誘致請願が採択され
た。
その後、
国の方から申し入れが行われ、
それを村長が受け入れたもの。
・科学的特性マップにおいて、神恵内村にはオレンジ色の部分しかないが、なぜ文献調
査を実施したのか。
(→回答:)科学的特性マップ上、神恵内村にもグリーン色(好ましい特性が見込まれ
る地域)が一部存在しているため、文献調査が行われている。
・文献調査を開始すれば、処分場を受け入れなければならなくなるのではないか。福島
の汚染水処理問題、リニア中央新幹線の静岡ルートなど、地元が反対しても最終的に
政府が押し切るのでは。
(→回答:)概要調査に進もうとする場合、自治体の首長と都道府県知事のご意見を聴
くこととなっており、意見に反して事業を前に進めることはない。
・対話型全国説明会は、どのように計画されるのか。
(→回答:)
人口や交通の便などの地域バランスを考慮しつつ、
開催場所の確保や周知・
広報の準備等を終えたところから順次開催している。
<その他>
・原発を止めてから、処分するという政策を取るべき。
(→回答:)資源の乏しい日本において、経済性や温暖化対策の問題にも配慮しつつ、
エネルギー供給の安定性を確保するためには、安全最優先という大前提の
もと原子力を活用していかざるを得ない。一方、原子力発電を止める・止
めないにかかわらず、すでに高レベル放射性廃棄物があることは事実であ
り、現世代の責任で地層処分を進める必要があると考えている。
・六ヶ所村の再処理工場が稼動しないと、
再処理を前提とする地層処分もできないので
はないか。
(→回答:)再処理工場については 2022 年内に主要な安全対策工事を概ね終了してお
り、2024 年上期の竣工を目指している。
・なぜ、フィンランドやスウェーデンは事業が進んでいるのか。
(→回答:)地層処分の安全性について信頼を高めていただけるよう、実施主体が国民
や自治体と長い時間をかけて丁寧な対話活動に取り組んできた結果、
政府
や実施主体に対する高い信頼が得られたと考えられる。
フィンランドにお
いても、
30 年以上の歳月をかけて国民理解・地域理解が得られるまで弛ま
ぬ努力を重ねてきている。
・フィンランドの例を挙げているが、同国には何基の原子力発電所があるのか。また、
フィンランドとスウェーデンは直接処分か。
(→回答:)フィンランドの原子力発電所は 2 か所で合計 5 基。また、フィンランドと
スウェーデンは使用済燃料を再処理しない直接処分である。
・NUMOの職員は研究者の方が多いのか。
どのような分野にどう配置されているのか。
(→回答:)NUMOには主に地層処分の技術開発を行う技術部が組織されている。技
術部には地質調査、工学設計、安全評価等を専門とする技術者が在籍して
いる。
以上

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