高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会 in 東京(渋谷区)
開催結果
日 時:2023 年 6 月 15 日 (木) 18:00〜20:20
場 所:AP 渋谷道玄坂 ROOM A ほか
参加者数:25 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・加島 優(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)ほか
・高橋 徹治(原子力発電環境整備機構 地域交流部 部長)ほか
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
・日本では過去 50 年以上にわたって原子力発電を利用してきており、
それに伴って発生する高レ
ベル放射性廃棄物は、人々の生活環境に影響を与えないよう、地層処分という方法で最終処分
する方針。
・全国のみなさまに地層処分について、関心を持って、理解を深めていただくとともに、この事
業を受け入れていただける地域に対して、社会全体で敬意や感謝の気持ちを持っていただける
よう、全国で対話活動に取り組んでいる。
・原子力発電により発生した使用済燃料は、再処理工場でプルトニウムなどを回収した後、残っ
た放射性廃液をガラスに溶かし込んで「ガラス固化体」にする。既に約 27,000 本のガラス固化
体に相当する高レベル放射性廃棄物が存在している。将来世代に先送りすることなく、原子力
を含む電気を多く使ってきた現世代で、この問題の解決に道筋をつけるべく取り組んでいくこ
とが重要。
・放射能が低減するまで数万年以上にわたって人間の生活環境から適切に隔離する必要がある。
確実性や環境への影響などの観点から考慮した結果、地下深くに埋設して人間による直接の管
理を必要としない地層処分が、国際社会から現時点で、最も安全で実現可能な処分方法とされ
ている。
・世界で唯一建設を開始しているフィンランドは、30 年以上の歳月をかけ、国民理解・地域理解
に弛まぬ努力を重ねている。先行する諸外国は、プロセスの初期段階で 10 程度の自治体が関心
を持ち、調査の過程で候補地が絞られ、最終的に1つの地域が選ばれている。日本もできるだ
け多くの地域が関心を持つことが望ましい。
・地層処分にあたって考慮すべき地質環境の科学的特性について、全国でほぼ同じ精度で作成さ
れている既存のデータをもとに、日本全国を4種類に区分した「科学的特性マップ」を 2017 年
7 月に公表した。
マップにより、
日本でも地層処分に好ましい特性が確認できる可能性が高い地
下環境が広く存在するとの見通しを共有する。
・処分地選定としては、文献調査、概要調査、精密調査の段階的な調査を行い、最終処分地を選
定する。この調査期間中、放射性廃棄物を持ち込むことは一切ない。
・文献調査は、関心を持っていただけた地域のみなさまに、地域の地下の状況や、事業をより深
く知っていただき、次のステップである概要調査に進むかどうかの判断をいただく材料を提供
し、理解活動の促進を図るもの。概要調査に進もうとする場合には、改めて都道府県知事と当
該市町村長のご意見を伺い、その意見に反して、先に進むことはない。
・2020 年 11 月に、北海道の寿都町と神恵内村の 2 町村において、文献調査を開始した。2021 年
4 月から 2 町村で「対話の場」を開催している。
「対話の場」を通じ、逐次情報提供を行い、地
域住民のみなさまの間で継続的な対話が行われ、議論を深めていただくことが重要と考えてい
る。
「対話の場」では、参加された方々が主体となって、処分事業などについて議論を深めてい
ただくため、また、賛否に偏らない自由な議論ができるように取り組んでいる。2 町村に設置さ
れた「対話の場」では、町や村の将来のまちづくりに関する議論も始まっている。
・地層処分場として、
ガラス固化体を 40,000 本以上埋設する施設を全国で 1 か所つくる計画であ
る。
・安全に地層処分を行うため、NUMOでは様々なリスク要因を抽出し、対応と安全性の確認を
行う。
処分地選定プロセスにおける調査により、
断層や火山などを避けて場所を選ぶという
「立
地による対応」
、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計による対応」
、その対
策により、安全性が確保できるかをシミュレーションなどで確認するという「安全性の確認」
といった対策を行う。また、地震・津波、輸送中の安全性についても設計による対応、シミュ
レーションによる安全性確認を行う。また、地層処分の技術開発については、国やJAEAな
どの関係機関と連携して、技術開発を実施している。技術的な課題を整理し、最新の技術開発
動向を踏まえた安全確保の考え方やその手法を、
「包括的技術報告書」として取りまとめ、NU
MOのホームページに掲載している。今後も、より実践的な技術開発に取組み、技術的信頼性
の更なる向上を目指す。
・最終処分事業は 100 年以上の長期にわたるため、地域の発展を支えてこそ、安定的な運営がで
きる。NUMOは、調査の開始に伴い、地域にコミュニケーションのための拠点を設置し、事
業に関する様々なご質問にお答えするとともに、住民のみなさまと共に、地域の発展に向けた
議論に貢献していく。
・これまで対話活動を進める中で、地層処分事業を「より深く知りたい」との思いから主体的に
活動されている地域団体、大学・教育関係者、NPOなどのグループが全国各地に広がりつつ
ある。
・地層処分事業についてご不明な点や疑問点や、またもっと詳しい話を聞いてみたいと関心を持
っていただける場合には、一般の方でも、自治体の方でも国やNUMOからご説明させていた
だく機会を設けさせていただくとともに、関連施設の見学にご案内するなど、ご関心やニーズ
に応じて、柔軟に対応させていただく。
しろまるグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載
<地層処分事業>
・すでに発生しているガラス固化体はどこで製造されたものか。
(→回答:)英国と仏国の再処理施設において日本で発生した使用済燃料を再処理した際に発生
したもの、日本原子力研究開発機構(JAEA)の再処理施設で発生したもの、お
よび、日本原燃(JNFL)の再処理施設におけるアクティブ試験で発生したもの
がある。
・ガラス固化体 40,000 本というのは原子力発電所の何年分を想定して設定されているのか。
(→回答:)
地層処分事業で必要となる費用には、
埋設する本数にかかわらず必要となる費用(固定費)と、本数に比例する 費用(変動費)がある。処分施設の規模とガラス固化体
1 本当たりの処分費用との関係については、4 万本程度以上であれば処分単価は処
分施設の規模にほとんど影響されなくなり、
スケールメリットを得られることから、
4 万本以上を前提として設定している。
今後どのように再稼働が進むのか見通しができないため、
あと何年で 40,000 本に達
するのかを見通すのは難しい。目安として 100 万kW級の原子力発電所が 1 年間
稼働するとガラス固化体が 20 本〜30 本程度できることになる。
・ガラス固化体 40,000 本以上埋設する計画との事だが、埋設量として十分に足りるという試
算があるのか。
(→回答:)現在ある使用済燃料をすべてガラス固化体として換算し、今あるガラス固化体
と合わせると約 27,000 本が存在している。
これに対し、
40,000 本以上のガラス
固化体を埋設できる処分場を確保すれば、1 か所で対応できると考えている。
・海外で処分を行うということはないのか。
(→回答:)国際原子力機関(IAEA)が定めた国際条約において、自国で発生した高レベル
放射性廃棄物は自国で処分するという原則があるため、日本においても法律に基づ
き国内で地層処分を進めていく必要がある。
・操業終了後、処分場の土地は国有地とするのか。また、どのような姿・管理になるのか。
(→回答:)地上施設は、廃棄物を全て埋設した後は更地に戻し、地下施設は埋め戻す。土地
の所有権は、地下施設に対して土地の所有地が関係するかどうかは決まってい
ないのが現状である。
・約 4 兆円の費用はどこから出ているのか。
(→回答:)最終処分事業に必要な費用は、原子力発電所などの運転実績に応じた金額を原
子力事業者等が拠出している。原資は、電気料金の一部としてみなさまにご負
担いただき、NUMOとは別の資金管理機関において適切に管理されている。
・最終処分費用約 4 兆円の算出根拠は。
(→回答:)最終処分費用は、現在の知見に基づき、標準的な工程や技術的な条件をもとに
算出したもの。毎年、物価指数の変動および利子率等を勘案した見直しが国に
より行われている。
・処分場をいつまでにつくるという計画はあるのか。
(→回答:)高レベル放射性廃棄物の最終処分は将来世代に先送りすることなく、原子力発
電の恩恵を受けた現世代で道筋をつくるべきだと考えている。スケジュールあ
りきではなく、国民のみなさまに事業をご理解いただくことを重視して取り組
んでいる。
<リスクと安全性>
・説明資料 P.19 にある人間が受ける年間線量の最大値 2μSv/年の設定条件は。
(→回答:)数万年以上にわたる長期の安全性を確認する方法として、40,000 本以上のガラス固
化体を封入したオーバーパックのすべてが 1,000 年後に同時に閉じ込め性能を失い、
放射性物質が地下水に溶け出すと想定した場合のシミュレーションを行い、基本ケ
ースで最大 2μSv/年という値が得られた。詳細については説明資料に併記している
包括的技術報告書のリンクを確認いただきたい。包括的技術報告書はNUMOのホ
ームページからも閲覧できる。
・科学的特性マップについて、全国の活断層データが全て反映されているのか。このマップだけ
で処分場を選定するのは不安である。
(→回答:)科学的特性マップは、地層処分に関係する科学的特性を、既存の全国データに基づ
き一定の要件・基準に従って客観的に整理し、全国地図の形にしたものであり、マ
ップには反映されていない地域の文献・データや、未知の活断層なども存在する。
・全国で起こる地震を正確に予想することは非常に難しいと思う。
(→回答:)詳細な調査の中で、隠れた活断層についても調査していく。一般論として、地表付
近と比べて 1/3〜1/5 程度と小さくなることや、
ガラス固化体と岩盤が一体となり動
くことから、地上と同程度の大きな影響が及ぶとは考えにくい。また、東日本大震
災時の揺れを再現し、どの程度地下の坑道にひずみがでるかコンピューターで数値
解析した結果、
地下 500m の堆積岩中の坑道の形がほとんど変化していない結果が得
られている。
・先行している国から得られた知見はあるのか。
(→回答:)
NUMOは海外の地層処分実施主体と協力協定等を結んでいる。
これらの国(機関)と地質環境特性の調査や評価技術、人工バリアに係わる工学技術、地層処
分システムの性能評価方法などについて技術的な協力を行っている。例えば、
カナダでは廃棄体容器に銅をコーティングするが、
その技術を日本のオーバー
パックにも適用できないかといった検討をするため、
カナダの実施主体に職員
を長期派遣して人工バリアの技術開発を進めたりもしている。
・地層処分事業にて事故等が発生した場合、責任は誰が負うのか。
(→回答:)処分事業における一義的責任は事業の実施主体であるNUMOが負う。安全規
制への適合・遵守にとどまることなく、安全性の向上に向けて不断に取り組む
義務を有している。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・文献調査は終了したのか。
(→回答:)現在、国の放射線廃棄物WGなどで文献調査の評価の考え方を審議している段階で
あり、調査は終了していない。
・現在、文献調査が進んでいる寿都町・神恵内村はどのような状況か。
(→回答:)対話活動の拠点として寿都町・神恵内村それぞれに交流センターを開設。NUMO
職員も加わり、対話の場を中心とした活動が行われている。その中では地域の将来
についての議論なども行われている。
・現在、文献調査は北海道の 2 地点で進んでいるが、最終的にはどちらか一方が候補地から外れ
るということか。
(→回答:)文献調査は、段階的な処分地選定調査の最初の調査。北海道に処分地が決定したわ
けではない。全国のできるだけ多くの地域で、最終処分事業に関心を持っていただ
き、文献調査を受け入れていただきたい。
・説明会の回数が少ないので増やすべき。また、説明会では、地震の影響が小さい点などの利点
について、何度も強調して説明すべき。
(→回答:)グループ質疑では、車座で行うことで参加者に寄り添ったきめ細かく丁寧な対話、
活発な議論が行われ、貴重なご意見を頂戴している。参加者の皆さまから、いただ
いたご質問やご意見などを踏まえて、説明資料を更新するなど、都度改善を続けて
いく。
<その他>
・フィンランドのオルキルオトにて建設中の処分地は、実際に稼働するのはいつ頃か。また
操業期間はどれくらいか。
(→回答:)操業予定は 2025 年ごろとなっており、操業期間は 100 年ほどを見込んでいる。
・原子力発電をなくせないのか。
(→回答:)資源の乏しい日本において、国民生活や産業活動を守るという責任あるエネルギー
政策を実現することが必要。経済性や温暖化対策の問題にも配慮しつつ、エネルギ
ー供給の安定性を確保するためには、安全最優先という大前提のもと原子力も活用
することとしている。
以上

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