高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会 in 鳥取(米子市)
開催結果
日 時:2023 年 5 月 31 日(水)18:00〜20:30
場 所:米子コンベンションセンターBiG SHiP(ビッグシップ) 第 4 会議室ほか
参加者数:36 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・青田 優子(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)ほか
・富森 卓(原子力発電環境整備機構 地域交流部 専門部長)ほか
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
・日本では過去 50 年以上にわたって原子力発電を利用してきており、
それに伴って発生する高レ
ベル放射性廃棄物は、人々の生活環境に影響を与えないよう、地層処分という方法で最終処分
する方針。
・全国のみなさまに地層処分について、関心を持って、理解を深めていただくとともに、この事
業を受け入れていただける地域に対して、社会全体で敬意や感謝の気持ちを持っていただける
よう、全国で対話活動に取り組んでいる。
・原子力発電により発生した使用済燃料は、再処理工場でプルトニウムなどを回収した後、残っ
た放射性廃液をガラスに溶かし込んで「ガラス固化体」にする。既に約 27,000 本のガラス固化
体に相当する高レベル放射性廃棄物が存在している。将来世代に先送りすることなく、原子力
を含む電気を多く使ってきた現世代で、この問題の解決に道筋をつけるべく取り組んでいくこ
とが重要。
・放射能が低減するまで数万年以上にわたって人間の生活環境から適切に隔離する必要がある。
確実性や環境への影響などの観点から考慮した結果、地下深くに埋設して人間による直接の管
理を必要としない地層処分が、国際社会から現時点で、最も安全で実現可能な処分方法とされ
ている。
・世界で唯一建設を開始しているフィンランドは、30 年以上の歳月をかけ、国民理解・地域理解
に弛まぬ努力を重ねている。先行する諸外国は、プロセスの初期段階で 10 程度の自治体が関心
を持ち、調査の過程で候補地が絞られ、最終的に1つの地域が選ばれている。日本もできるだ
け多くの地域が関心を持つことが望ましい。
・地層処分にあたって考慮すべき地質環境の科学的特性について、全国でほぼ同じ精度で作成さ
れている既存のデータをもとに、日本全国を4種類に区分した「科学的特性マップ」を 2017 年
7 月に公表した。
マップにより、
日本でも地層処分に好ましい特性が確認できる可能性が高い地
下環境が広く存在するとの見通しを共有する。
・処分地選定としては、文献調査、概要調査、精密調査の段階的な調査を行い、最終処分地を選
定する。この調査期間中、放射性廃棄物を持ち込むことは一切ない。
・文献調査は、関心を持っていただけた地域のみなさまに、地域の地下の状況や、事業をより深
く知っていただき、次のステップである概要調査に進むかどうかの判断をいただく材料を提供
し、理解活動の促進を図るもの。概要調査に進もうとする場合には、改めて都道府県知事と当
該市町村長のご意見を伺い、その意見に反して、先に進むことはない。
・2020 年 11 月に、北海道の寿都町と神恵内村の 2 町村において、文献調査を開始した。2021 年
4 月から 2 町村で「対話の場」を開催している。
「対話の場」を通じ、逐次情報提供を行い、地
域住民のみなさまの間で継続的な対話が行われ、議論を深めていただくことが重要と考えてい
る。
「対話の場」では、参加された方々が主体となって、処分事業などについて議論を深めてい
ただくため、また、賛否に偏らない自由な議論ができるように取り組んでいる。2 町村に設置さ
れた「対話の場」では、町や村の将来のまちづくりに関する議論も始まっている。
・地層処分場として、
ガラス固化体を 40,000 本以上埋設する施設を全国で 1 か所つくる計画であ
る。
・安全に地層処分を行うため、NUMOでは様々なリスク要因を抽出し、対応と安全性の確認を
行う。
処分地選定プロセスにおける調査により、
断層や火山などを避けて場所を選ぶという
「立
地による対応」
、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計による対応」
、その対
策により、安全性が確保できるかをシミュレーションなどで確認するという「安全性の確認」
といった対策を行う。また、地震・津波、輸送中の安全性についても設計による対応、シミュ
レーションによる安全性確認を行う。また、地層処分の技術開発については、国やJAEAな
どの関係機関と連携して、技術開発を実施している。技術的な課題を整理し、最新の技術開発
動向を踏まえた安全確保の考え方やその手法を、
「包括的技術報告書」として取りまとめ、NU
MOのホームページに掲載している。今後も、より実践的な技術開発に取組み、技術的信頼性
の更なる向上を目指す。
・最終処分事業は 100 年以上の長期にわたるため、地域の発展を支えてこそ、安定的な運営がで
きる。NUMOは、調査の開始に伴い、地域にコミュニケーションのための拠点を設置し、事
業に関する様々なご質問にお答えするとともに、住民のみなさまと共に、地域の発展に向けた
議論に貢献していく。
・これまで対話活動を進める中で、地層処分事業を「より深く知りたい」との思いから主体的に
活動されている地域団体、大学・教育関係者、NPOなどのグループが全国各地に広がりつつ
ある。
・地層処分事業についてご不明な点や疑問点や、またもっと詳しい話を聞いてみたいと関心を持
っていただける場合には、一般の方でも、自治体の方でも国やNUMOからご説明させていた
だく機会を設けさせていただくとともに、関連施設の見学にご案内するなど、ご関心やニーズ
に応じて、柔軟に対応させていただく。
しろまるグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載
<地層処分事業>
・地層処分事業の費用が約 4 兆円とのことだが,そのランニングコストなどの試算は行っている
のか。
(→回答:)最終処分費用は、現在の知見に基づき、標準的な工程や技術的な条件をもとに算
出したものである。
毎年、
物価指数の変動および利子率等を勘案した見直しを行
っている。
・事業費は約 4 兆円とのことだが、その原資は何か。
(→回答:)最終処分事業に必要な費用は、原子力発電所などの運転実績に応じた金額を原子力
事業者などが拠出している。原資は、電気料金の一部として電気をご利用の方にご
負担いただいている。
・科学的特性マップと同様のものを海外でも作っているのか。
(→回答:)各国で国内の地質環境等の特性に関するマップ化が行われている。例えば、英国で
はスクリーニングと称して国内の地質環境特性を、フィンランドでは特に断層に注
目し、国内の断層分布状況をマップ化している。
・ガラス固化体 40,000 本以上を埋設する施設はどのくらいの期間にわたり稼働するのか。
(→回答:)処分場の操業から閉鎖に至るまで 50 年以上かかる。地層処分事業全体としては 100
年以上と長期にわたる。
・ガラス固化体以外の使用済MOX燃料や原子力発電所の事故で生じた放射性廃棄物などの
処分もNUMOが行うのか。
(→回答:)NUMOが地層処分するのは、使用済燃料を再処理工場で再処理した後に残っ
た廃液をガラスに溶かし込んだガラス固化体と地層処分相当TRU廃棄物であ
り、使用済MOX燃料や原子力発電所の事故で生じた放射性廃棄物については
対象としていない。
<リスクと安全性>
・日本の岩種はヨーロッパとは異なると思うが、安全に地層処分を行うことは可能か。
(→回答:)数万年以上にわたり高レベル放射性廃棄物を人間の生活環境に影響を及ぼさな
いように隔離し閉じ込めるためには、例えば、埋設箇所の地質環境が、酸素が少
なく地下水の流れが緩慢といった閉込め機能を確保するとともに、地層の長期
安定性を確保することが必要。
こうした条件を満たす場所であれば、
岩石の種類
にかかわらず、安全な地層処分を行うことは可能ということが過去の研究成果
として確認されており、日本でも安全に地層処分を実施することは可能である。
・埋めてから他の処分方法の方が安全と分かったらどうするのか。
(→回答:)今後、地層処分よりも良い技術が出てくることを考慮し、将来世代の選択肢を残
すという視点から処分場を埋め戻して閉鎖するまでには「回収可能性」と「可逆
性」
とを維持することを、
国が定めた最終処分法に基づく基本方針に明記してい
る。
・放射性物質はどのようにして岩盤やベントナイトに収着するのか。
(→回答:)地下水に溶け出した放射性物質は、塩を水に溶かした際のように、イオンとなって
プラスやマイナスの電気的性質を持つ。一方で、岩盤やベントナイトも地下水に触
れており、その接触面でプラスやマイナスの電気的性質を持つ部分が存在する。そ
れらの放射性物質と岩盤表面やベントナイトの間で、プラスとマイナスが引かれ合
うことで、放射性物質が岩盤やベントナイトに収着することとなる。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・国の申入れを市町村が受諾する過程はどのようなものか。
(→回答:)当該市町村内の検討状況を踏まえて国から申入れを行い、首長が申入れを受諾
することで文献調査が開始される。
・寿都町及び神恵内村での交付金の使途は何か。
(→回答:)2021 年度の申請では、寿都町は消防士の人件費や保育所運営費などの各種行政
サービス実施に 3.7 億円、基金計上に 5.6 億円となっている。神恵内村の申請
では、
消防用設備の整備や診療所の機器整備などの各種行政サービス実施に 0.4
億円、基金計上に 7.4 億円となっている。
<その他>
・科学的特性マップでは鳥取県は適地ではないのに、なぜ説明会を開催することになったのか。
米子市からの依頼か。
(→回答:)対話型全国説明会は、高レベル放射性廃棄物の地層処分について、広く全国のみ
なさまにご理解を深めていただくべく、全国各地で順次開催しており、文献調査
の受入れをお願いするものではない。米子市からの依頼ではない。
・原子力発電を開始した当時に処分方法についても議論を開始すべき。また、幅広い年齢層に情
報共有するため、様々な方法を駆使して広報活動を加速的に行うべき。
(→回答:)ご理解のとおり、次世代層も含め様々な年齢層の方に地層処分を知って頂くことが
重要と考えている。そのため、今回のような説明会だけではなく、大学や高校等で
教育活動として地層処分を取り上げて頂けるように働きかけたり、そのために利用
できる情報として教材を提供するなどしている。
・もっとたくさんの人の意見を聞きたいので、少人数のテーブル質疑ではなく、30〜50 人規模の
説明会を開催してほしい。
(→回答:)参加者の疑問に丁寧に答えるため、初めて地層処分の説明を聞く方でも気軽の質問
しやすいよう、少人数のグループ質疑の形式をとっている。運営方法は、参加者か
らのご意見も踏まえ、都度、改善を重ねてまいりたい。
・全体説明では表面的な部分しか説明されなかった。不都合な情報や研究成果を隠しているので
はないか。海外での事故など、もっと資料に載せてほしい。
(→回答:)不都合な情報や研究成果を隠すような意図は全くなく、説明会に初めてご参加の方
にもご理解いただきやすいよう、まずは基本的な内容からご説明するように心がけ
て説明会を運営している。より深く知りたいなどのご関心については、NUMOに
ご連絡いただければ、
更にご説明をさせていただく。
地層処分の実現にあたっては、
事業に対する国民全体での理解が重要であり、今後も対話活動を進めていく。資料
に掲載する内容については、参加者のみなさまからのご意見も踏まえ、より分かり
やすいものになるよう、改善してまいる。
・高レベル放射性廃棄物の処分を前提として原発を即時停止しないことが理解できない。
しかし、
GX脱炭素電源法が国会を通った。政府は方針転換を行ったのではないか。
(→回答:)2021 年秋からの資源価格高騰や、昨年 2 月以降のロシアによるウクライナ侵略等に
より、エネルギー情勢は一変。世界のエネルギー需給構造は、歴史的な転換点にあ
り、脱炭素社会の実現とエネルギー安全保障の両立という課題解決に向けて、再エ
ネ、原子力を含めた、あらゆる選択肢を追求していくことが極めて重要である。原
子力については、
「再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を
低減する」ことに加え、安全性の確保を大前提に「必要な規模を持続的に活用して
いく」ことを第 6 次エネルギー基本計画で明記しており、GX基本方針においても
この方針に変更はない。
以上

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