高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会 in 兵庫
(西宮市)
開催結果
日 時:2019 年 12 月 11 日(水)18:20〜20:30
場 所:西宮市フレンテホール
参加者数:18 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・来島 慎一 (経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)
・富森 卓(原子力発電環境整備機構 地域交流部 部長)
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
・高レベル放射性廃棄物は、将来世代に負担を先送りしないよう、現世代の責任で、地下深くの
安定した岩盤に埋設する地層処分を行う方針。
・地層処分の実現に向けて、この問題を社会全体で解決しなければならない課題として考えてい
ただき、受入地域に対する敬意や感謝の念を持つことが必要との認識が共有されることが重要。
このため、広く全国の皆さまに地層処分に対する理解を深めていただけるよう、全国で対話活
動を順次開催していく。・高レベル放射性廃棄物の放射能は時間ととともに減衰し、
1000 年程度の間に 99%以上は低減し、
その後はゆっくりと減少していく。
・最終処分の方法は、
国際的にも長い間議論が交わされ、
宇宙処分、
海洋底処分や氷床処分など、
様々な方法が検討されてきたが、長期間にわたる安全上のリスクと、将来世代の負担を小さく
するためには、人間の管理によらない地層処分が最も適切な処分方法であるというのが、各国
共通の考え方となっている。
・地層処分では、地下 300m より深い安定した環境で、長期にわたり放射性物質を閉じ込め、生活
環境から隔離していく。
・日本では、原子力発電所の運転が始まるよりも前から最終処分の方法について検討され、国内
外の専門家の評価を経て、日本においても地層処分が技術的に可能であることが示された。
・地層処分場は、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設できる施設の建設を 1 か所計画している。
最終処分事業費は約 3.8 兆円が見込まれている。事業費は、原子力発電に伴う電気料金の一部
として電力会社等から拠出される。
・地下深部は一般的に安定した環境だが、安全に地層処分を行うためには、火山活動や活断層の
影響など、様々な科学的特性を総合的に評価することが必要。・「地震や火山の多い日本で地層処分を安全に実施できるのか」というご質問を多くいただくが、
こうした地層処分に必要な地質環境について理解を深めていただくため、地層処分を行う際に
考慮しなければならない科学的特性を、既存の全国データに基づき、一律の要件・基準に従っ
て客観的に整理し、全国地図の形で示した「科学的特性マップ」を公表した。マップを活用し
ながら、日本でも地層処分に適した地下環境が広く存在するとの見通しを共有しつつ、社会全
体でどのように実現していくか、皆さまと一緒に考えていきたい。
・安全に地層処分を行うため、NUMOでは様々なリスク要因を抽出し、対応と安全性の確認を
行う。
処分地選定調査に基づいて断層や火山などを避けて場所を選ぶという
「立地による対応」、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計による対応」
、その対策により、安全
性が確保できるかをシミュレーションなどで確認するという「安全性の確認」といった対策を
行う。また、地震・津波、輸送中の安全性についても設計による対応、シミュレーションによ
る安全性確認を行う。
・処分地選定に向けては、まずは国民全体での理解が重要であることから、ひきつづき全国各地
での対話活動に取り組んでいく。その上で、いずれかの地域において処分事業に関心を持って
いただける自治体が出てきた場合には、地域のみなさまのご意見を伺いながら、法律に基づい
た文献調査、概要調査、精密調査の段階的な調査を行い、最終処分地を選定する。
・文献調査は、事業を深く知っていただき、更なる調査を実施するかどうかを検討してもらうた
めの、材料を集める事前調査的な位置付け。ボーリングなどの現地作業は行わない。調査結果
は地域の皆さまに公表してご意見を伺うとともに、当該の市町村長や都道府県知事にご意見を
伺い、反対の意向が示された場合は次の段階に進むことはない。
・処分地選定が円滑に行われるためには、地域による主体的な合意形成が図られることが重要。
こうした観点から、
処分事業についての情報提供や住民のご意見を事業に反映する
「対話の場」
が地域に設置され、多様な関係住民が参画され、積極的な活動が行われることが望ましい。こ
うした取組みは諸外国でも同様に行われ、地域のご要望の事業への反映など、重要な役割を果
たしている。
・最終処分事業は、地域での雇用や経済波及効果が見込まれる大規模事業。NUMO、電気事業
者、国は連携して、地域の抱える課題の解決や、地域の発展ビジョンの実現に取り組む。
・これまで対話活動を進める中で、地層処分事業を「より深く知りたい」との思いから主体的に
活動されている地域団体などの関心グループ (経済団体、大学・教育関係者、NPOなど)
が全国各地に広がりつつある。
・地層処分事業について不明な点、もっと詳しい話を聞いてみたいと関心を持っていただける場
合には、どなたでも説明の機会を設けさせていただくとともに、関連施設の見学にご案内する
など、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応させていただく。
しろまるテーブルでのグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載。
<地層処分事業>・六ヶ所村の再処理工場が稼働していないのに、
なぜ約 2,500 本のガラス固化体が発生しているのか。
(→回答:)
再処理工場は原子力規制委員会の安全審査を経て 2021 年度上期の竣工を目指している段
階であるが、これまでに行われた実用化に向けた試験を通して製造されたガラス固化体
が既に存在している。これ以外にも、茨城県東海村における研究拠点で製造されたガラ
ス固化体や、海外(フランス及びイギリス)に再処理を委託して製造されたガラス固化
体があり、合わせて約 2,500 本が既に存在している。
・処分場は1か所で足りるのか。
(→回答:)現在ある使用済燃料をすべてガラス固化体として換算し、今あるガラス固化体と合わせ
ると約 25,000 本。40,000 本以上のガラス固化体を埋設できる処分場を 1 か所つくるこ
ととしている。
・いつまでに処分場を建設しないといけないのか。
(→回答:)最終処分の実現に向けて計画的に進めていくことは重要だが、スケジュールありきで考
えても全国での理解が進むものではなく、むしろ、期限があることで、地域の意向に反
して一方的に物事を推し進められてしまうのではないかと受け止められてしまう可能性
もある。いずれにしても現世代の責任として地層処分を実現することが不可欠であり、
引き続き、全国の皆さまに地層処分についてご理解いただくとともに、いずれかの地域
で調査を受け入れていただけるよう努めていく。
・フィンランドやスウェーデンなどの海外先進事例を参考としているのか。
(→回答:)処分場所決定プロセスや技術的な面で多くの共通部分がある。NUMOでは世界各国の
地層処分の実施主体と協力して地層処分に関する研究、情報交換などを行っている。
<リスクと安全性>
・リスクはゼロではない。一番こわいのは何が起こるかわからないこと。
(→回答:)リスクゼロは不可能という認識のもと、我々は複数のリスクを想定し、最小に抑えるよ
うに最大限の努力をしていく。
・将来、長期間にわたる安全をどのように確認するのか。
(→回答:)将来、長期にわたる安全については、火山活動や活断層の影響を避けるなどして注意深
く処分地を選び、放射性物質を閉じ込める機能(天然バリア)と、さらに放射性物質の
閉じ込めをより確実にするために人工的に施される人工バリアを組み合わせた多重バ
リアシステムを構築する。これにより、放射性物質を地層に閉じ込め、生活環境から隔
離することで安全を確保する。
地層処分に求められる安全確保の期間は、
数万年以上と
非常に長く、
実験などで直接的に確かめることはできない。
そこでコンピュータ上でシ
ミュレーションを実施し、
人や環境への影響を評価し、
安全規制当局が定める基準を満
足することを確かめることになる。
こうした手法は諸外国でも用いられているので、シナリオ設定やシミュレーションプログラムの開発・検証などは、国際的に連携・協力を
しながら進めている。
・テロなど人為的なリスクにどう対処するのか。
(→回答:)
高レベル放射性廃棄物であるガラス固化体は、
国際規則に基づく安全規制体系によって、
その貯蔵・輸送時においては不法移転および妨害破壊行為から防護すること、それを扱
う施設にあっては、
これを妨害破壊行為から防護することが求められており、
このため、
物理的防護目的のために立ち入りが制限され、管理された区域に置くことが要求されて
いる。地層処分場への輸送、地層処分場の施設はこれらの規則にしたがって設計・建設・
管理される。なお、地層処分では、地下 300m より深い場所に放射性廃棄物を埋設し、坑
道を埋め戻すので、処分されたガラス固化体は、不法移転や妨害破壊行為を受けにくい
と言える。サイバーテロ対策も含め、原子力施設で採用されるテロ対策を参考に今後具
体化を進めていく。
・科学的特性マップは候補地を絞り込むために公表したのか。
(→回答:)科学的特性マップは地層処分について知っていただくことが目的であり、候補地を絞り
込んだり自治体に調査をお願いしたりすることが目的ではない。科学的特性マップのグ
リーンエリアすべてが処分場に適したエリアというわけではなく、詳細に調査し、評価
していくことが必要である。
・グラウチング(止水処理)が活用されて 50 年ほどしかたっていないが、グラウチングの耐久性につ
いてどう考えているのか。
(→回答:)グラウチングは処分場の操業中に行う安全対策であり、そもそも数十年の耐久性があれ
ば十分である性質のもの。処分場の操業中の期間にグラウチングが劣化にまで至るとは
想定していないが、劣化した場合は再グラウチング等の対策を講じる。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・無人島ならば、搬入もたやすいし、受け入れてもらいやすいのではないか。
(→回答:)個別の地域について適性があるかどうかは、その地域における詳細な処分地選定調査を
実施して検討していくことになる。なお、無人島もどこかの自治体に属しており、その
地域の理解が必要であることにはかわりがない。
・エネ庁は文献調査を申し入れる場所を既に決めているのではないか。
(→回答:)そのようなことはない。
・電気の消費が多い都会で行うべきではないか。
(→回答:)個別の地域について適性があるかどうかは、その地域における詳細な処分地選定調査を
実施して検討していくことになる。
・青森県に貯蔵しているガラス固化体は結果として、地上保管をしているようなものだ。地層処分の
場所が決まらない間、青森県に負担を強いている点が気がかりである。
(→回答:)青森県六ヶ所村の高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターでは、30〜50 年間を管
理期間とした上で、冷却のための一時保管がされている。最終処分の実現に向けて、
関係者の理解を得ることを怠って性急に事業を進めるのではなく、まずは広く国民理
解を深めていくことが重要であり、地道な対話活動を積み重ねていくことが結果的に
は最終処分の実現へとつながるものと考えている。
・安全評価の結果を示して、
「放射性物質が漏れだすが影響は最小限で、安全です」といわれても、そ
のように思えない。安全評価の結果を示すよりも、多くの安全対策を講じていますという説明のほ
うが、多くの方に信用してもらえると思う。
(→回答:)地層処分の安全確保の考え方に沿って、適切な立地地点を選び、多くの工学的な安全対
策を講じ、安全評価のシミュレーションを行うという繰り返しの確認を行う。
こうした複合的な安全確保の取り組みについて、丁寧に分かりやすくお伝えできる
よう、ひきつづき説明内容の改善などに努めたい。
・以前応募があった高知県東洋町の教訓を生かすべきである。
(→回答:)地層処分に向けて、これまで唯一、2007 年に高知県東洋町から応募いただいたが、
国やNUMOから十分な情報提供や意見交換ができず、安心と信頼を得ることがで
きないまま応募手続きが先行してしまい、結果、町を二分する論争となり、最終的
に応募が取り下げられ、さらに、受入れ反対の動きは町内だけに留まらず、広く県
内や隣県の自治体まで広がった経緯がある。こうした経緯を踏まえ、地層処分を社
会全体の課題として考えていただき、受入地域に対する敬意や感謝の念を持つこと
が必要であるとの認識が広く共有されるよう、まずは全国の皆様に地層処分につい
て理解を深めていただくことを目指し、対話活動に取り組んでいるところ。
<その他>
・風評被害対策についてはどうするのか。
(→回答:)風評被害を防ぐためには、事業を受入れていただく地域のみならず多くの方々に、地層
処分を適切に行えば、本来、放射性物質により地域の自然環境や農水産品等が汚染され
ることはないという情報が正確に伝わることが重要と考える。大都市等を含めて、1 人
でも多くの方に地層処分の仕組みや安全確保策について理解を深めていただけるよう、
わかりやすい情報提供と全国的な対話活動を進めていく。
・今ある廃棄物を処分することは仕方がないが、これ以上増やすべきではない。原子力発電は不要な
のではないか。
(→回答:)現在、火力発電所で焚き増しを行い対応しているが、安定供給、地球温暖化対策の面で
リスクにさらされている。徹底した省エネの推進や再エネの最大限の導入も図っていく
が、省エネには国民生活の利便性や企業の経済活動との関係で限界があり、再エネにつ
いても、気象条件に左右される供給の不安定性やコスト高という課題があり、今すぐ原
子力を代替できるものではない。
・地層処分を受け入れる地域の立候補を待つのではなく、もっとスピード感をもって課題が解決でき
るように取り組んでほしい。
(→回答:)2015 年に新たな基本方針を閣議決定し、国が前面に立って取り組むこととした。そ
の具体的な取り組みとして、2017 年 7 月に科学的特性マップを公表し、地層処分に
対して関心や理解を深めていただけるよう、全国各地で対話活動に取り組んでいる。
引き続き、スピード感をもって一つ一つの取組を進められるよう努力していく必要
があると感じている。一方で、理解を伴わず事業を進めることはできるものではな
い。丁寧な対話を重ね、一歩ずつ着実に進めてまいりたい。
以 上

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