高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会 in 奈良
(奈良市)
開催結果
日 時:2020 年 9 月 15 日(火)18:20〜20:30
場 所:奈良県コンベンションセンター 1 階 会議室 101 ほか
参加者数:23 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・榎本 宏(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)ほか
・富森 卓(原子力発電環境整備機構 地域交流部 専門部長)ほか
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
・高レベル放射性廃棄物は、将来世代に負担を先送りしないよう、現世代の責任で、地下深くの
安定した岩盤に埋設する地層処分を行う方針。
・地層処分の実現に向けて、この問題を社会全体で解決しなければならない課題として、受入地
域に対する敬意や感謝の念を持つことが必要との認識が共有されることが重要。このため、広
く全国の皆さまに地層処分に対する理解を深めていただけるよう、全国で対話活動を順次開催
していく。
・高レベル放射性廃棄物は貯蔵施設内では約2mのコンクリートで遮蔽することで、その外側で
は人が作業できるレベルまで影響を低減することができる。放射能は時間ととともに減衰し、
1000 年程度の間に 99%以上は低減し、その後はゆっくりと減少していく。
・長期にわたり放射性物質を閉じ込め、
生活環境から隔離しておくために、
地表から 300m 以上深
い安定した場所へ地層処分する。
・地層処分場は、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設できる施設の建設を 1 か所計画している。
最終処分の事業費は約 3.9 兆円が見込まれている。事業費は、原子力発電に伴う電気料金の一
部として電力会社等から拠出される。
・最終処分の方法は、国際的にも長い間議論が交わされ、宇宙処分、海洋投棄や氷床処分など、
様々な方法が検討されてきたが、長期間にわたる安全上のリスクと、将来世代の負担を小さく
するためには、人間の管理によらない地層処分が最も適切な処分方法であるというのが、各国
共通の考え方となっている。
・日本では、原子力発電所の運転が始まるよりも前から最終処分の方法について検討され、国内
外の専門家の評価を経て、日本においても地層処分が技術的に可能であることが示された。
・地下深部は一般的に安定した環境だが、安全に地層処分を行うためには、火山活動や活断層の
影響など、様々な科学的特性を総合的に評価することが必要。・「地震や火山の多い日本で地層処分を安全に実施できるのか」というご質問を多くいただくが、
こうした地層処分に必要な地質環境について理解を深めていただくため、地層処分を行う際に
考慮しなければならない科学的特性を、既存の全国データに基づき、一律の要件・基準に従っ
て客観的に整理し、全国地図の形で示した「科学的特性マップ」を公表した。マップを活用し
ながら、日本でも地層処分に適した地下環境が広く存在するとの見通しを共有しつつ、社会全
体でどのように実現していくか、皆さまと一緒に考えていきたい。
・安全に地層処分を行うため、NUMOでは様々なリスク要因を抽出し、対応と安全性の確認を
行う。
処分地選定調査に基づいて断層や火山などを避けて場所を選ぶという
「立地による対応」、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計による対応」
、その対策により、安全
性が確保できるかをシミュレーションなどで確認するという「安全性の確認」といった対策を
行う。また、地震・津波、輸送中の安全性についても設計による対応、シミュレーションによ
る安全性確認を行う。
・処分地選定に向けては、まずは国民全体での理解が重要であることから、引き続き全国各地で
の対話活動に取り組んでいく。その上で、いずれかの地域において処分事業に関心を持ってい
ただける自治体が出てきた場合には、地域の皆さまのご意見を伺いながら、法律に基づいた文
献調査、概要調査、精密調査の段階的な調査を行い、最終処分地を選定する。
・文献調査は、全国規模で整備された文献・データに加えて地域固有の文献・データを整理・分
析し、市町村の皆さまに地層処分事業についての理解を深めていただくとともに、次なる調査
を実施するかどうかを検討していただくための材料を集める、事前調査的な位置付け。ボーリ
ングなどの現地作業は一切行わない。調査結果は地域の皆さまにご説明をさせていただき、ご
意見を伺うとともに、当該の市町村長や都道府県知事にご意見を伺い、その意見に反して、次
の段階に進むことはない。
・処分地選定が円滑に行われるためには、地域による主体的な合意形成が図られることが重要。
こうした観点から、文献調査の実施に際しては、処分事業についての情報提供や住民のご意見
を事業に反映する「対話の場」を地域に設置いただき、多様な関係住民の参画を得て、市町村
の将来像などをご議論いただきたいと考えている。こうした取組みは諸外国でも同様に行われ、
事業への地域のご要望の反映など、重要な役割を果たしている。
・最終処分事業は、地域での雇用や経済波及効果が見込まれる大規模な公共事業。NUMO、電
気事業者、
国は連携して、
地域の抱える課題の解決や、
地域の発展ビジョンの実現に取り組む。
・これまで対話活動を進める中で、地層処分事業を「より深く知りたい」との思いから主体的に
活動されている地域団体などの関心グループ (経済団体、大学・教育関係者、NPOなど)
が全国各地に広がりつつある。
・地層処分事業について不明な点、もっと詳しい話を聞いてみたいと関心を持っていただける場
合には、どなたでも説明の機会を設けさせていただくとともに、関連施設の見学にご案内する
など、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応させていただく。
しろまるテーブルでのグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載。
<地層処分事業>
・処分場は 1 か所で足りるのか。
(→回答:)現在ある使用済燃料をすべてガラス固化体として換算し、今あるガラス固化体と合わせ
ると約 26,000 本。一方、100 万 kW 級の原子力発電所を 1 年間運転するとガラス固化体
が約 20〜30 本発生する。今後の原子力発電所の再稼働等の状況にもよるが 40,000 本以
上のガラス固化体を埋設できる処分場が1か所あれば、処分は可能と考えている。
・地層処分の検討はいつから始まったのか。
(→回答:)日本における高レベル放射性廃棄物の最終処分の方法については、原子力委員会におい
て 1962 年に処分方針の検討が開始される等、
原子力発電が始まる前から取り組んできた。
1976 年には原子力委員会より地層処分を基本的な方針とすることが決定され、
その方針
に従って研究開発が進められてきた。
・処分場をいつまでにつくるという計画はあるのか。
(→回答:)高レベル放射性廃棄物の最終処分は将来世代に先送りすることなく、原子力発電の恩恵
を受けた現世代で道筋をつくるべきだと考えている。
2015 年に閣議決定した基本方針に
基づき、スケジュールありきではなく、国民の皆さまに事業をご理解頂くことを重視し
て取り組んでいる。
・ガラス固化体を 30〜50 年貯蔵する貯蔵施設はどこにあるのか。
(→回答:)青森県六ヶ所村である。
<リスクと安全性>
・日本には火山や断層が多くあるため地層の変化が心配。
(→回答:)日本は 4 つのプレートに囲まれているため火山や断層が多いことは事実だが、火山や断
層は活動する場所が限られているため、これらを避けて安定した地下深部に処分場を設
置することは可能と考えている。
・テロ対策はどのように考えているか。
(→回答:)警備体制や治安当局との連携体制の強化、外部からの攻撃に対する設計による対応など
を考えている。
・日本は地下水が多いので地層処分には適していないのではないか。
(→回答:)日本に限らず、ほとんどの地域で地下水が存在するが、一般的に、地下深部では岩盤が
水を通しにくく、また水を流そうとする力も小さいことから、地下水の流れは非常に遅
い。操業中は、排水設備の設置や湧水対策などの工学的手法により対策を講じる。埋設
後は、岩盤と埋め尽くされた坑道の圧力差がほとんどなくなるため、再び地下水の流れ
は元の非常に遅い状態に戻る。人工バリアも設置するため、廃棄体から放射性物質が漏
れ出た場合でも地上に達して人間に影響を与える可能性はほとんどない。
・海から 20km 以内が好ましいということだったが、奈良県内に出来る可能性は少ないのか。
(→回答:)科学的特性マップでは奈良県内でも、南西部の一部がグリーン沿岸部(海岸から 20km
以内)となっている。地層処分に好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い地域
(グリーンの地域)も多く存在する。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・処分場は原子力発電所の地下につくればいいのではないか。
(→回答:)個別の地域について適性があるかどうかは、その地域における詳細な処分地選定調査を
実施して検討していくこととなる。地下深部の安定性が求められる点で発電所とは異な
るため、原子力発電所の立地地域が必ずしも地層処分の処分地として適しているとは限
らない。
・原子力発電が稼働している限り、今後も高レベル放射性廃棄物は増えていく訳で、原子力発電の再
稼働と切り離して地層処分の話だけをしても、受け入れてもらえないのではないか。
(→回答:)資源の乏しい日本において、国民生活や産業活動を守るという責任あるエネルギー政策
を実現するためには、原子力発電への依存度は可能な限り低減していくが、ゼロにする
わけにはいかない。また、原子力発電を止める・止めないにかかわらず、すでに高レベ
ル放射性廃棄物があることは事実であり、現世代の責任で地層処分を進める必要がある
と考えている。
・原子力発電所や高速増殖炉もんじゅで起きた事故は地層処分場では起きないことを積極的に説明し
ていくべきである。・世の中の人が地層処分を理解していない。
子供への教育を考えているが、
今の教科の中では難しい。
<その他>
・地層処分場の建設地が決まっていない中での原子力発電の再稼働や、福島第一原子力発電所事故に
よる影響、広島・長崎での原子力爆弾の被ばく者を対象とした研究などによる低線量被ばく影響の
今後の進展、より安全にエネルギーを生み出す方法の獲得に対する日本政府の展望が出されていな
いことに対して不安に感じている。今後の人口が減少していくことから省エネルギー化を推進すべ
きだと思う。
以 上

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