高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会 in 沖縄(那覇市)
開催結果
日 時:2020 年 12 月 19 日(土)13:30〜16:00
場 所:沖縄県青年会館 2 階 大ホールほか
参加者数:14 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・青田 優子(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)
・石崎 清司(原子力発電環境整備機構 地域交流部 課長代理)
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
・高レベル放射性廃棄物は、将来世代に負担を先送りしないよう、現世代の責任で、地下深くの
安定した岩盤に埋設する地層処分を行う方針。
・地層処分の実現に向けて、この問題を社会全体で解決しなければならない課題として、受入地
域に対する敬意や感謝の念を持つことが必要との認識が共有されることが重要。このため、広
く全国の皆さまに地層処分に対する理解を深めていただけるよう、全国で対話活動を順次開催
していく。
・高レベル放射性廃棄物は貯蔵施設内では約2mのコンクリートで遮蔽することで、その外側で
は人が作業できるレベルまで影響を低減することができる。放射能は時間ととともに減衰し、
1000 年程度の間に 99%以上は低減し、その後はゆっくりと減少していく。
・長期にわたり放射性物質を閉じ込め、
生活環境から隔離しておくために、
地表から 300m 以上深
い安定した場所へ地層処分する。
・地層処分場は、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設できる施設の建設を 1 か所計画している。
最終処分の事業費は約 3.9 兆円が見込まれている。事業費は、原子力発電に伴う電気料金の一
部として電力会社等から拠出される。
・最終処分の方法は、国際的にも長い間議論が交わされ、宇宙処分、海洋投棄や氷床処分など、
様々な方法が検討されてきたが、長期間にわたる安全上のリスクと、将来世代の負担を小さく
するためには、人間の管理によらない地層処分が最も適切な処分方法であるというのが、各国
共通の考え方となっている。
・日本では、原子力発電所の運転が始まるよりも前から最終処分の方法について検討され、国内
外の専門家の評価を経て、日本においても地層処分が技術的に可能であることが示された。
・地下深部は一般的に安定した環境だが、安全に地層処分を行うためには、火山活動や活断層の
影響など、様々な科学的特性を総合的に評価することが必要。・「地震や火山の多い日本で地層処分を安全に実施できるのか」というご質問を多くいただくが、
こうした地層処分に必要な地質環境について理解を深めていただくため、地層処分を行う際に
考慮しなければならない科学的特性を、既存の全国データに基づき、一律の要件・基準に従っ
て客観的に整理し、全国地図の形で示した「科学的特性マップ」を公表した。マップを活用し
ながら、日本でも地層処分に適した地下環境が広く存在するとの見通しを共有しつつ、社会全
体でどのように実現していくか、皆さまと一緒に考えていきたい。
・安全に地層処分を行うため、NUMOでは様々なリスク要因を抽出し、対応と安全性の確認を
行う。
処分地選定調査に基づいて断層や火山などを避けて場所を選ぶという
「立地による対応」、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計による対応」
、その対策により、安全
性が確保できるかをシミュレーションなどで確認するという「安全性の確認」といった対策を
行う。また、地震・津波、輸送中の安全性についても設計による対応、シミュレーションによ
る安全性の確認を行う。
・処分地選定に向けては、まずは国民全体での理解が重要であることから、引き続き全国各地で
の対話活動に取り組んでいく。その上で、いずれかの地域において処分事業に関心を持ってい
ただける自治体が出てきた場合には、地域の皆さまのご意見を伺いながら、法律に基づいた文
献調査、概要調査、精密調査の段階的な調査を行い、最終処分地を選定する。
・文献調査は、全国規模で整備された文献・データに加えて地域固有の文献・データを整理・分
析し、市町村の皆様に地層処分事業についての理解を深めていただくとともに、次なる調査を
実施するかどうかを検討していただくための材料を集める、事前調査的な位置付け。ボーリン
グなどの現地作業は一切行わない。調査結果は地域の皆さまにご説明させていただき、ご意見
を伺うとともに、当該市町村長や都道府県知事にご意見を伺い、その意見に反して、次の段階
に進むことはない。
・処分地選定が円滑に行われるためには、地域による主体的な合意形成が図られることが重要。
こうした観点から、文献調査の実施に際しては、処分事業についての情報提供や住民のご意見
を事業に反映する「対話の場」を地域に設置いただき、多様な関係住民の参画を得て、市町村
の将来像などをご議論いただきたい。
「対話の場」には、私たちから調査の途中経過や結果な
どのご報告や、事業に関するご説明や質疑応答もさせていただきたい。こうした取組みは諸外
国でも同様に行われ、事業への地域のご要望の反映など、重要な役割を果たしている。
・最終処分事業は、地域での雇用や経済波及効果が見込まれる大規模な公共事業。NUMO・電
気事業者・国は連携して、
地域の抱える課題の解決や、
地域の発展ビジョンの実現に取り組む。
・これまで対話活動を進める中で、地層処分事業を「より深く知りたい」との思いから主体的に
活動されている地域団体などの関心グループ (経済団体、大学・教育関係者、NPOなど)
が全国各地に広がりつつある。
・地層処分事業について不明な点、もっと詳しい話を聞いてみたいと関心を持っていただける場
合には、どなたでも説明の機会を設けさせていただくとともに、関連施設の見学にご案内する
など、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応させていただく。
しろまるテーブルでのグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載。
<地層処分事業>
・処分場は 1 か所で足りるのか。
(→回答:)現在、貯蔵・管理されている使用済燃料をすべて再処理したと仮定してガラス固化体と
して換算し、
すでに貯蔵・管理されているガラス固化体と合わせると約 26,000 本相当と
なる。
40,000本以上のガラス固化体を埋設できる処分場を1か所つくることとしている。
・40,000 本はいつ頃に到達する予定か。
(→回答:)東日本大震災後の原子力発電所の稼働状況を踏まえると、推定が難しいところ。
一般的に 100 万 kW 級の原子力発電所 1 基が 1 年間稼働すれば約 20〜30 本のガラス固化
体が発生することとなる。
・なぜ地下に処分するのか。
(→回答:)地層には放射性物質を閉じ込める機能があり、さらに放射性物質の閉込めをより確実に
するためにさまざまな人工的な対策を施す。放射性物質をガラスの中に閉じ込め地下水
に溶け出しにくくするためのガラス固化、ガラス固化体を地下水と触れにくくするため
の厚い金属容器
(オーバーパック)、地層中への放射性物質の移動を遅らせる緩衝材(ベントナイト)によって、長期間にわたり放射性物質を人間の生活環境から隔離し、その
動きを抑え閉じ込める。
・緩衝材におけるベントナイトの比率はどのようになっているのか。
(→回答:)ベントナイトが約 70%、砂が約 30%である。
・ベントナイトが膨張した力で、オーバーパックや周りの岩盤が壊されないのか。
(→回答:)ベントナイトの膨張による圧力も考慮して設計を行う。
・ガラス固化体の大きさはどれくらいか。
(→回答:)キャニスタに入った状態で、直径 43cm、高さ 134cm 程度である。
・地上施設を撤去後、地下に廃棄物が埋まっていることがわからなくなるのではないか。
(→回答:)地層処分においては、処分場を埋め戻した後に、将来、温泉や鉱物資源の探査の目的で
ボーリング孔を掘るような活動が行われるリスクを最小限とするため、鉱物資源等が存
在する地域を避けること、記録を保存すること、処分場の性能に影響を与える地域を保
護区域に指定してそのことを知らせる標識を設置することにより、地下に影響を与える
人間活動が行われないような対策を検討していく。
・原子力発電のコストは他の発電コストと比べてどう違うか。そのコストに最終処分費用は含まれて
いるのか、いくらで計算されているのか。
(→回答:)2015 年に国が行った試算では、原子力発電のコストは kWh 当たり 10.1 円以上であり、
石炭火力や太陽光発電など他の電源より安いという結果が出ている。この試算には発電
所の建設費用だけでなく、廃炉や賠償などに係る費用や、地層処分に係る費用なども含
まれている。
・原子力発電コスト 10.1 円には処分費用も含まれているのか。
(→回答:)核燃料サイクル費用 1.5 円/kWh の内訳として、バックエンド費用 0.6 円の中に高レベ
ル廃棄物費用 0.04 円が含まれている。
・処分事業の費用は、税金から支出されているのか。
(→回答:)最終処分事業に必要な費用は、原子力発電所などの運転実績に応じた金額を原子力事業
者等が拠出している。原資は、電気料金の一部として皆さまにご負担いただき、NUM
Oとは別の資金管理機関において適切に管理されている。
・地層処分に係る費用 3.9 兆円の内訳は。
(→回答:)事業に伴う技術開発費、調査費および用地取得費、設計および建設費、操業費、解体お
よび閉鎖費、モニタリング管理費、プロジェクト管理費などの費用が含まれている。
<リスクと安全性>
・地震の影響が心配。
(→回答:)地震の影響については、処分地選定調査の中で過去の地震の履歴を調査・評価し、工学
的対策で安全が確保できるかを検討していく。また、一般的に地上に比べて地下の揺れ
は 1/3 から 1/5 程度であることがこれまでの調査から判明しており、地下深部の処分施
設に地上と同程度の大きな影響が及ぶことは考えにくい。
・現在の技術で安全な地層処分は可能か。
(→回答:)
日本においても長年の研究成果を踏まえ、1999 年に地層処分が技術的に実現可能である
との見通しが得られている。この研究成果は海外からも評価をいただいている。また、
国内では、青函トンネルなどの地下構造物の建設実績も多数あり、処分場建設のための
技術力は十分あるものと国内外の専門家により評価されている。
・日本に地層処分に適した地域はないのでは。
(→回答:)日本周辺のプレートの動きについては、その方向や速さ(数cm/年)の傾向は数百万年前
からほとんど変化がなく、こうしたプレートの動きに関係する活断層や火山活動などの
現象は今後も 10 万年程度はほとんど変化しないと考えられており、
日本でも地層処分は
可能と考えている。個別の地域について適性があるかどうかは、その地域における詳細
な処分地選定調査を実施して検討していくことになる。
・想定外の事態が発生するのではないか。国やNUMOが安全と言っても信用できない。
(→回答:)リスクゼロは不可能という認識のもと、我々はリスクを最小に抑えるように最大限の努
力をしていく。例えば、すべてのガラス固化体が破損して地下水の通り道が地上までで
きてしまう場合など、発生する可能性が限りなく低いケースについてもシミュレーショ
ンを行い、その結果が地上の人間への放射能による影響について安全基準を満たしてい
るかなど、様々なリスクを洗い出し、最悪のケースについて検証を行っている。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・処分場建設を受け入れた地域にはどのようなメリットがあるのか。
(→回答:)
地層処分事業は 100 年以上にわたる事業であり、
調査〜操業に伴い、
地域の雇用・税収・
資材調達等の経済波及効果が見込まれる。また、最終処分地が決まった場合には、
NUMOは本拠をその地域に移転し、NUMO職員や関連事業者は地域の一員として事
業を遂行し、地域の発展に貢献していく。処分施設の建設や操業には、高度な技術を支
える人材が相当数必要であり、雇用の創出や生活の向上ならびに国内外との交流拡大な
ど、地域の持続的な発展に資する総合的な支援策について、自治体や地域住民の皆さま
との対話を通じ、その地域のニーズを汲み取りながら具体化し、地域と共生していく。
・なぜ那覇市で説明会を開催するのか。
(→回答:)地層処分を実現するためには、地層処分について、一人でも多くの方に関心や理解を深
めていただくことが重要。対話型全国説明会はこうした考え方にもとづき、全国の各地
で開催している。地域バランスを考慮しつつ、開催場所の確保や周知・広報の準備等、
整ったところから順次開催していくこととしている。
・文献調査が開始から処分場閉鎖まで最短でどれくらいの期間を要するのか。
(→回答:)調査は合わせて約 20 年間程度の期間を要すると想定されている。処分場の建設、操業
および閉鎖までの期間を含めると、全体で 100 年程度と考えている。
・今後、地層処分事業はどのように進むのか。
(→回答:)自治体から応募いただいた後、または国からの申入れを自治体に受け入れていただいた
後、最終処分法に基づき、地下深部の安定性等について、文献による調査(文献調査)、地表からのボーリング等による調査
(概要調査)、地下の調査施設における調査
(精密調
査)といった段階的に技術的な調査を行い、処分施設建設地を選定する。これらの調査
期間中は放射性廃棄物を一切持ち込まない。次の調査段階に進もうとする際には当該市
町村長や都道府県知事の意見を聴くこととしており、地元の方々のご意見を踏まえて知
事や市町村長などが反対であれば、先には進まない。いずれにしても、地域の皆さまに
ご理解やご協力をいただくことが重要であり、そのために対話活動を通じて丁寧に情報
提供を行い、ご意見を伺っていきたい。
・処分地の選定においては反対する意見も取り入れて議論をすべき。
(→回答:)文献調査を実施する自治体で設置される「対話の場」において、様々な意見を持つ地元
の方に議論いただき、地域の皆さまに総合的にご判断いただけるよう努めたい。
・どのように関心グループは活動をしているのか。どのような関連施設があるのか。
(→回答:)地層処分事業を勉強したい団体からのお申し出があれば、専門家を派遣した勉強会や関
連施設の見学会の実施、学校等の教育機関への出前授業などの活動も積極的に実施して
おり、関心グループはその内容をもとに、情報発信などを行っている。なお、関連施設
としては、北海道に幌延深地層研究センターがある。
<その他>
・処分場の場所を決めてから、原子力発電を行うべきではなかったのか。
(→回答:)原子力発電所の運転を開始した 1966 年より前の 1962 年に廃棄物の処分方法について検
討を開始しており、当時は海洋で処分することが世界的に考えられていた。その後、海
洋に廃棄物を処分することは適切ではないとの考え方により、地下に埋めることが検討
され、
1976 年から研究開発が進められた。
1999 年には日本においても地層処分を事業化
の段階に進めるための信頼性ある技術基盤が整備されたことが示されている。地層処分
は人間の生活環境から隔離することができ、元来、地層が持っている閉じ込め機能によ
り、人による継続的な管理が不要になるため、日本でも世界各国と同様に、地層処分が
現時点で最も適切な方法であるとの結論に至った。
・なぜ原子力を利用するのか。
(→回答:)資源の乏しい日本において、原子力は、安全確保を大前提としたうえで、安定的かつ安
価な電気の供給、気候変動問題への対応、エネルギーの海外依存度を考えれば、責任あ
るエネルギー政策を実行するためには、欠かすことができないと考えている。
・まず、高レベル放射性廃棄物の発生原因である原子力発電を止めるべきではないか。
(→回答:)原子力発電を止める・止めないにかかわらず、すでに高レベル放射性廃棄物があること
は事実であり、現世代の責任で地層処分を進める必要があると考えている。
・NUMOは国の機関か。
(→回答:)NUMOは地層処分を行うことを目的として、国から認可された法人であり、電気事業
者等によって設立された法人である。
・貯蔵施設で冷やすならば、ガラス固化体が発している熱をエネルギーとして利用できないのか。
(→回答:)ガラス固化体は、製造直後は表面温度が 200°C以上あり、約 2kW の熱エネルギーを持っ
ているが、現在の技術において、他に利用できるほどのエネルギー量、密度はない。
・外国の放射性廃棄物が持ち込まれることはないのか。
(→回答:)
「放射性廃棄物は発生した国において処分されるべき」との国際条約の原則があり、諸外
国の発電に伴い発生した放射性廃棄物が持ち込まれることはない。また、原子力を進め
てきた日本としても、諸外国と同様に、責任を持って、自国での処分に向けた取組を進
めている。
以 上

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