高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会 in 北海道(室蘭市)開催結果
日 時:2020 年 1 月 25 日(土)13:20〜16:00
場 所:室ガス文化センター(室蘭市文化センター) 4 階 大会議室
参加者数:26 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・来島 慎一(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)
・富森 卓(原子力発電環境整備機構 地域交流部 部長)
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
・高レベル放射性廃棄物は、将来世代に負担を先送りしないよう、現世代の責任で、地下深くの
安定した岩盤に埋設する地層処分を行う方針。
・地層処分の実現に向けて、この問題を社会全体で解決しなければならない課題として考えてい
ただき、受入地域に対する敬意や感謝の念を持つことが必要との認識が共有されることが重要。
このため、広く全国の皆さまに地層処分に対する理解を深めていただけるよう、全国で対話活
動を順次開催していく。・高レベル放射性廃棄物の放射能は時間ととともに減衰し、
1000 年程度の間に 99%以上は低減し、
その後はゆっくりと減少していく。
・最終処分の方法は、
国際的にも長い間議論が交わされ、
宇宙処分、
海洋底処分や氷床処分など、
様々な方法が検討されてきたが、長期間にわたる安全上のリスクと、将来世代の負担を小さく
するためには、人間の管理によらない地層処分が最も適切な処分方法であるというのが、各国
共通の考え方となっている。
・地層処分では、地下 300m より深い安定した環境で、長期にわたり放射性物質を閉じ込め、生活
環境から隔離していく。
・日本では、原子力発電所の運転が始まるよりも前から最終処分の方法について検討され、国内
外の専門家の評価を経て、日本においても地層処分が技術的に可能であることが示された。
・地層処分場は、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設できる施設の建設を 1 か所計画している。
最終処分事業費は約 3.8 兆円が見込まれている。事業費は、原子力発電に伴う電気料金の一部
として電力会社等から拠出される。
・地下深部は一般的に安定した環境だが、安全に地層処分を行うためには、火山活動や活断層の
影響など、様々な科学的特性を総合的に評価することが必要。・「地震や火山の多い日本で地層処分を安全に実施できるのか」というご質問を多くいただくが、
こうした地層処分に必要な地質環境について理解を深めていただくため、地層処分を行う際に
考慮しなければならない科学的特性を、既存の全国データに基づき、一律の要件・基準に従っ
て客観的に整理し、全国地図の形で示した「科学的特性マップ」を公表した。マップを活用し
ながら、日本でも地層処分に適した地下環境が広く存在するとの見通しを共有しつつ、社会全
体でどのように実現していくか、皆さまと一緒に考えていきたい。
・安全に地層処分を行うため、NUMOでは様々なリスク要因を抽出し、対応と安全性の確認を
行う。
処分地選定調査に基づいて断層や火山などを避けて場所を選ぶという
「立地による対応」、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計による対応」
、その対策により、安全
性が確保できるかをシミュレーションなどで確認するという「安全性の確認」といった対策を
行う。また、地震・津波、輸送中の安全性についても設計による対応、シミュレーションによ
る安全性確認を行う。
・処分地選定に向けては、まずは国民全体での理解が重要であることから、ひきつづき全国各地
での対話活動に取り組んでいく。その上で、いずれかの地域において処分事業に関心を持って
いただける自治体が出てきた場合には、地域のみなさまのご意見を伺いながら、法律に基づい
た文献調査、概要調査、精密調査の段階的な調査を行い、最終処分地を選定する。
・文献調査は、事業を深く知っていただき、更なる調査を実施するかどうかを検討してもらうた
めの、材料を集める事前調査的な位置付け。ボーリングなどの現地作業は行わない。調査結果
は地域の皆さまに公表してご意見を伺うとともに、当該の市町村長や都道府県知事にご意見を
伺い、反対の意向が示された場合は次の段階に進むことはない。
・処分地選定が円滑に行われるためには、地域による主体的な合意形成が図られることが重要。
こうした観点から、
処分事業についての情報提供や住民のご意見を事業に反映する
「対話の場」
が地域に設置され、多様な関係住民が参画され、積極的な活動が行われることが望ましい。こ
うした取組みは諸外国でも同様に行われ、地域のご要望の事業への反映など、重要な役割を果
たしている。
・最終処分事業は、地域での雇用や経済波及効果が見込まれる大規模事業。NUMO、電気事業
者、国は連携して、地域の抱える課題の解決や、地域の発展ビジョンの実現に取り組む。
・これまで対話活動を進める中で、地層処分事業を「より深く知りたい」との思いから主体的に
活動されている地域団体などの関心グループ (経済団体、大学・教育関係者、NPOなど)
が全国各地に広がりつつある。
・地層処分事業について不明な点、もっと詳しい話を聞いてみたいと関心を持っていただける場
合には、どなたでも説明の機会を設けさせていただくとともに、関連施設の見学にご案内する
など、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応させていただく。
しろまるテーブルでのグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載。
<地層処分事業>
・人の目で監視できるように地上で保管し続けた方が安全なのではないか。
(→回答:)
高レベル放射性廃棄物の放射能は、
短期間で比較的早く減少しながらも、
長く残存する。
地上施設で長期保管する場合、それが人間の生活環境に影響を及ぼさなくなるまで、数
万年の長期間にわたり地上施設を維持・管理していく必要があり、その間には施設の修
復や建て替えも必要となる。さらに地上保管の場合、地震、津波、台風などの自然現象
による影響や、
戦争、
テロ、
火災などといった人間の行為の影響を受けるリスクがある。
長期にわたり、このようなリスクを念頭に管理を継続する必要がある地上施設を残すこ
とは、将来の世代に負担を負わせ続けることとなり、現実的ではない。このため、人の
管理を必要としない最終的な処分(最終処分)を行うべきであるというのが国際的にも
共通した認識となっている。
・40,000 本以上処分できる処分場を 1 か所選定してもすぐに場所が足りなくなるのではないか。
(→回答:)100 万 kw 級の原子力発電所を 1 年間運転するとガラス固化体が 20〜30 本生じることと
なる。現在の再稼働の状況を踏まえるとスケジュールの想定は難しい。いずれにせよ、
段階的な処分地選定調査を経て、処分場の建設許可を規制当局に申請する際には、その
時点で将来的に発生すると見込まれる廃棄物を十分に処分できる規模の施設を建設し
ていくことになると認識。
・いつになったらできるのか。地層処分事業のスケジュールはあるのか。
(→回答:)最終処分の実現に向けて計画的に進めていくことは重要だが、スケジュールありきで考
えても全国での理解が進むものではなく、むしろ、期限があることで、地域のご意向に
反して一方的に物事を推し進められてしまうのではないかと受け止められてしまう可能
性もある。
いずれにしても現世代の責任として地層処分を実現することが不可欠であり、
引き続き、全国の皆さまに地層処分についてご理解いただくとともに、いずれかの地域
で調査を受け入れていただけるよう努めていく。
・幌延の研究施設がNUMOの地層処分になるのではないか。
(→回答:)幌延の研究施設はJAEAが所有しており、JAEAは地元自治体と「当該施設を処分
場にしない」旨の協定を交わしていることから、NUMOが当該施設を引き取って処分
場にすることはない。
・埋めた後の監視体制はどうか。
(→回答:)処分場の埋設後については、十分な時間をかけて安全を監視する。その期間や方法など
は、今後策定される規制基準の中で具体化されていくものであるが、地元の皆さまにも
安心していただけるよう、ご相談しながら考えていきたい。
・地層処分に係る費用約 3.8 兆円の費用の内訳は。
(→回答:)事業に伴う技術開発費、調査費および用地取得費、設計および建設費、操業費、解体お
よび閉鎖費、モニタリング管理費、プロジェクト管理費などの費用である。
・事業費用は電気料金に転嫁されるのではないか。
(→回答:)事業費用は原子力発電所等の稼働実績に伴って電力会社等から拠出されており、電気料
金を通じて、原子力発電を利用している利用者の皆様にご負担いただいている。東日本
大震災以前、原子力発電が全国的に稼働している際には、一般的な家庭で毎月 20 円程
度を処分費用としてご負担いただいていた。
・海外の国に最終処分をお願いすればよいのではないか。
(→回答:)使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する国際条約に基づいて、自国で発生
した高レベル放射性廃棄物は自国で処分することが原則であり、日本においても、他の
原子力利用国と同様に、国内で地層処分を進めていく必要がある。
・高レベル放射性廃棄物の中にはどのような核種が含まれているのか。
(→回答:)ガラス固化体の放射能が高い初期のころは、セシウム 137 やストロンチウム 90 など、半
減期は短いが放射能の高い核種がガラス固化体の放射能の大きさを決めている。一方、
10 万年よりも先をみると、半減期が短い核種の放射能は大きく減衰するため、ネプツニ
ウム237やジルコニウム93などの比較的放射能は高くないが半減期が長い核種が支配的
になる。
・地層処分では新たな技術が開発されたとき、取り出すことは可能か。
(→回答:)地層処分を前提としつつも、将来世代が最良の処分方法を選択できるようにすることを
基本的な方針とし、回収可能性に関する研究開発を進めているところ。その際に必要と
なる緩衝材の除去技術などの回収方法の要素技術の開発を進めているところ。
・地層処分における責任は誰が負うのか。
(→回答:)処分事業における一義的責任は事業の実施主体であるNUMOが負う。安全規制への適
合・遵守にとどまることなく、
安全性の向上に向けて不断に取り組む義務を有している。
また、NUMOは原子力損害賠償制度に基づく賠償責任を負うが、NUMOが対応困難
な事故等が発生した場合や、NUMOが解散した後については、国が必要な措置を講じ
ることとなる。
・高レベル放射性廃棄物の最終処分は、我々の世代で何とかしないといけない問題だ。
<リスクと安全性>
・科学特性マップに地下水の基準はないのか。
(→回答:)科学的特性マップは、地層処分に関係する科学的特性を、既存の全国データに基づき一
定の要件・基準に従って客観的に整理し、全国地図の形にしたもの。地下水の動きなど
も考慮は必要であるが、全国的なデータが極めて限られており、その挙動や特性につい
ては、現地調査等で個別地点毎に調査・評価が必要。そのため、全国一律の明確な基準
を設定することが難しいため、科学特性マップには反映しないこととなった。処分場に
おける深部地下水の影響については、今後の処分地選定調査段階で地下水の性状・挙動
等を調査した上で評価していくこととなる。
・隆起、侵食等は考慮しているのか。
(→回答:)隆起・侵食については、埋設後長期の安定性の観点から検討している。将来 10 万年間に
おいて 300m 以上の侵食量が発生する可能性の高い場所をマップに示している。
・ドイツではアッセに処分した中低レベルの廃棄物から放射性物質が漏れ周辺の岩盤を汚染したこと
から、汚染した土砂も含めて廃棄体を取り出すことになった。日本の地層処分でもそのようなこと
が起きないのか、また、廃棄体を定置した後に漏れていることがわかったらどのように対応するの
か。
(→回答:)ドイツのアッセでの経験などを踏まえ、世界各国は処分方法を改善してきたし、日本も
それらを参考にしてきた。まず、高レベル放射性廃棄物の処分であれば、日本では高レ
ベル放射性廃液をガラス原料と混ぜ合わせてステンレス製の容器に入れて固化した廃棄
体(ガラス固化体)を鉄製のオーバーパックに入れて地下に持ち込むため、アッセでの
事例のように放射性廃棄物が容易に漏れ出すことはない。万一、廃棄体の製造や定置の
過程で問題があった場合、廃棄体を再度取り出して回収する技術も検討され実現性は確
認されている。したがってアッセのような事態が生じることは考えにくい。
・揺れの大きさ(最大加速度)が 1/3 でも、震度はあまり変わらないのではないか。
(→回答:)揺れの大きさ(最大加速度)と、被害や体感との間には、ある程度の相関はあるので、
これが 1/3 になれば、地震の影響も緩和される。また、坑道を埋め戻し、処分施設閉鎖
後は、廃棄体と周りの岩盤が一緒に動くため、地下深部の廃棄体に地上と同程度の大き
な影響が及ぶことは考えにくい。
・リスクはゼロではない。
(→回答:)リスクゼロは不可能という認識のもと、我々はリスクを最小に抑えるように最大限の努
力をしていく。
・ヨーロッパに比べて日本の地層は若い。変動帯の日本で地層処分ができるのか。
(→回答:)一概に新しい地層が悪いというわけではない。ヨーロッパならどこでも地層処分ができ
て、日本ではいずれの場所でも地層処分ができないというわけではない。例えば北欧の
地層は古いが氷河期時代の氷がある分、隆起速度が速いなど地域によって個性がある。
日本周辺のプレートの動きについては、
その方向や速さ
(数cm/年)
は数百万年前からほ
とんど変化がなく、こうしたプレートの動きに関係する活断層や火山活動などの現象は
今後も 10 万年程度はほとんど変化しないと考えられており、
日本でも地層処分は可能と
考えている。
・科学的特性マップは、とりあえず出したかったのだろうが内容が不完全だ。グリーンエリアが広す
ぎる。こんなに適地があるわけがない。
(→回答:)科学的特性マップは国の審議会のワーキンググループにて作成され、国から既存の公表
された全国データに基づいて示したもの。地層処分についてより深く知っていただくこ
とが目的であり、調査の候補地を絞り込んだり、これを元に安全性を評価したりする性
質のものではない。大まかに言えば、全国データから主要な火山や断層等を避けて示し
たのがグリーンのエリアである。勿論、このすべてに処分場に適したエリアというわけ
ではなく、文献調査を受け入れていただいた地域においては、詳細に調査し、評価して
いくことが必要である。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・説明会はグリーン地域のみで開催するべきだ。
(→回答:)地層処分を実現するためには、地層処分について、一人でも多くの方に関心や理解を深
めていただくことが重要。対話型全国説明会はこうした考え方にもとづき、全国の各地
で開催している。人口や交通の便などの地域バランスを考慮しつつ、マップ上のグリー
ンの地域に限らず、開催場所の確保や周知・広報の準備などを終えたところから順次開
催することとしている。
・本日の説明会の様子はどのように報告するのか。
(→回答:)参加人数やいただいた主なご意見は、後日NUMOのホームページに掲載する。
・学習支援事業をもっと広めてほしい。子供たちには、地層処分は単に安全だということや、
いい点のみを教えるのではなく、地層処分の懸念点もしっかり伝えるべき、そのような情報の
中で、子供たち自身で判断できるような学習の支援をお願いしたい。
(→回答:)地層処分事業について知っていただくために、対話型全国説明会だけでなく、人が集ま
る場所での広報、ホームページや SNS を通じた情報発信、学校などへの出前授業、地層
処分展示車の展開など様々な取り組みを進めており、
いただいたご意見も踏まえながら、
さらに社会全体で関心を持ってもらえるように取り組んでいきたい。
・私は原子力には反対だが、なんでもかんでも反対ではない。このような対話の機会は非常に大事だ
と思う。ひざを交えて、率直に意見を言い合える場があるのは良い。これまでの原子力行政にはそ
れがなかった。
<その他>
・まず、高レベル放射性廃棄物の発生原因である原子力発電を止めるべきではないか。
(→回答:)資源の乏しい日本において、国民生活や産業活動を守るという責任あるエネルギー政策
を実現するためには、原子力発電への依存度は可能な限り低減していくが、ゼロにする
わけにはいかない。経済性や温暖化対策の問題にも配慮しつつ、エネルギー供給の安定
性を確保するためには、安全最優先という大前提のもと原子力を活用していかざるを得
ない。また、原子力発電を止める・止めないにかかわらず、すでに高レベル放射性廃棄
物があることは事実であり、
現世代の責任で地層処分を進める必要があると考えている。
・地産地消の考えから、原子力発電所のある地域で処分するのが良いのではないか。
(→回答:)全国で説明会等を行っていると様々な声がある。原子力発電所の地域でも処分場の誘致
に前向きな発言もあれば、発電で貢献したのだから処分は他の地域でやってほしいとい
う発言もある。また、個別の地域について適性があるかどうかは、その地域における詳
細な処分地選定調査を実施して検討していくこととなる。地下深部の安定性が求められ
る点で発電所とは異なるため、原子力発電所の地域が必ずしも地層処分の処分地として
適しているとは限らない。
・NUMOはどういう組織なのか。国の機関なのか民間企業なのか。
(→回答:)NUMOは地層処分を行うことを目的として、経済産業大臣の認可を受け、電気事業者
等によって設立された法人である。国の機関ではなく、電力会社等からの拠出金で運営
している組織である。
以 上

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