科学的特性マップに関する対話型全国説明会 in 北海道(釧路市)開催結果
日 時:2019 年 8 月 26 日(月)18:20〜20:30
場 所:道東経済センタービル 5 階 大会議室
参加者数:31 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・来島 慎一(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)
・水野 敦(原子力発電環境整備機構 地域交流部 部長)
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
1資源エネルギー庁の主な説明内容
・高レベル放射性廃棄物は、将来世代に負担を先送りしないよう、現世代の責任で、地下深くの
安定した岩盤に埋設する地層処分を行う方針。
・地層処分の実現に向けて、この問題を社会全体で解決しなければならない課題として考えてい
ただき、受入地域に対する敬意や感謝の念を持つことが必要との認識が共有されることが重要。
このため、広く全国の皆さまに地層処分に対する理解を深めていただけるよう、全国で対話活
動を順次開催していく。・高レベル放射性廃棄物の放射能は時間ととともに減衰し、
1000 年程度の間に 99%以上は低減し、
その後はゆっくりと減少していく。地層処分は、長期間にわたる安全上のリスクを小さくし、
将来世代の負担を小さくする処分方法との考え方が国際的に共有されている。日本では、地下
300m より深い安定した岩盤に埋設することで、人間の管理に依らず、長期にわたり放射性物質
を閉じ込め、生活環境から隔離していく考えである。
・地下深部は一般的に安定した環境だが、安全に地層処分を行うためには、火山活動や活断層の
影響など、様々な科学的特性を総合的に評価することが必要。
・科学的特性マップは、地層処分を行う際に考慮しなければならない科学的特性を、既存の全国
データに基づき、一律の要件・基準に従って客観的に整理し、全国地図の形で示し、地層処分
に対する国民理解を深めるために公表したもの。マップ公表をきっかけに、全国での対話活動
を重ねていく中で、やがて処分事業に関心を持っていただける自治体が出てきた場合、法律に
基づく 3 段階の処分地選定調査を実施し、個別地点において安全に地層処分が実施できるかど
うかを詳細に調査していく。・「地震や火山の多い日本で地層処分を安全に実施できるのか」というご質問を多くいただくが、
マップを活用しながら、日本でも地層処分に適した地下環境が広く存在するとの見通しを共有
しつつ、社会全体でどのように実現していくか、皆さまと一緒に考えていきたい。
2原子力発電環境整備機構(NUMO)の主な説明内容
・地下深部の岩盤は、1酸素が少ないため金属が腐食しにくく、万が一、放射性物質が漏出した
場合でも、2地下水の流れが遅く、また、3岩盤が放射性物質を吸着し、放射性物質の移動を
遅らせることができる(天然バリア)
。放射能が大きく減少するまでの期間、少なくとも 1000
年間は放射性物質をしっかり密封するために、ガラス固化体をオーバーパックという金属容器
(厚さ約 20cm)に格納し、粘土でできた緩衝材(厚さ約 70cm)で包む(人工バリア)
。このよ
うに、
「天然バリア」と「人工バリア」を組み合わせ、様々な対策を組み合わせることで、人
間の生活環境から隔離し閉じ込める。
・地層処分場は、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設できる施設の建設を 1 か所計画している。
処分場を閉鎖した後も、一定期間は規制当局の安全規制に従い、万が一のことに備える。
最終処分事業費は約 3.8 兆円が見込まれている。事業費は、原子力発電に伴う電気料金の一部
として電力会社等から拠出される。
・安全に地層処分を行うため、処分地選定調査の中で、断層や火山などを避けて場所を選ぶとい
う「立地による対応」
、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計による対応」、その対策により、安全性が確保出来るかをシミュレーションなどで確認するという「安全性の
確認」
といった作業を繰り返し行う。
地震・津波、
輸送中の安全性についても設計による対応、
シミュレーションによる安全性確認を行う。
・文献調査は、学術論文等から地域の地質環境等を可能な限り把握し、概要調査を行う候補地区
を絞り込むもので、ボーリングなどの現地作業は行わない。調査結果は地域住民に公表してご
意見を伺うとともに、当該の市町村長や都道府県知事に意見を伺い、反対の意向が示された場
合は次の段階に進むことはない。
・処分地選定が円滑に行われるためには、地域による主体的な合意形成が図られることが重要。
こうした観点から、
処分事業についての情報提供や住民のご意見を事業に反映する
「対話の場」
が地域に設置され、多様な関係住民が参画し、積極的な活動が行われることが望ましい。こう
した取組みは諸外国でも同様に行われ、地域要望の事業への反映など、重要な役割を果たして
いる。
・さらに、フィンランドやスウェーデンなど先行する海外では、地層処分事業が地域に与える社
会経済的影響についても評価が行われ、雇用の創出などの経済効果が期待されている。また、
処分場立地による農業、観光業、不動産価値へのマイナス影響などは確認されていない。NU
MOは、
処分場建設までに本社を当該地域に移し、
地元雇用や地元発注に最大限取り組むなど、
地域の発展に貢献していく。処分地選定では、こうした地域経済への効果や影響も含め、総合
的に判断していただく。
・地層処分事業について不明な点、もっと詳しい話を聞いてみたいと関心を持っていただける場
合には、どなたでも説明の機会を設けさせていただくとともに、関連施設の見学にご案内する
など、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応をさせていただく。
しろまるテーブルでのグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載。
<地層処分事業>
・地層処分は、最終処分の手段として最善なのか。
(→回答:)地層処分は人間の生活環境から隔離することができ、元来、地層が持っている閉込め機
能により、人による継続的な管理が不要になるため、現在、最も適切な方法であるとの
基本的な考え方が世界各国で共有されている。
・地下 300m 以深とあるが、深いほうが良いのではないか。
(→回答:)地表から遠ざける隔離機能は十分持たせる必要があるが、一般に地下深部になるほど地
温が高くなり、人工バリアの機能低下といった安全性に影響を及ぼす可能性がある。
したがって、一概に深ければ良いというわけではなく、地質構造に応じて最適な処分深
度を設定することになる。
・地上で保管すべきではないか。
(→回答:)地上で保管するとなると、人間の生活環境により近い場所に放射性物質が留まることに
なるため、長い期間にわたり、安全上のリスクが大きくなるとともに、人による管理が
必要となる。また、何度も建屋の建て直しが生じるなど、後世に大きな負担を残すこと
になる。人の管理を必要としない最終的な処分を行うべきであるというのが国際的にも
共通した認識である。
・事業の財源はどうなっているのか。
(→回答:)最終処分事業に必要な費用は、原子力発電所などの運転実績に応じた金額を原子力事業
者等が拠出している。原資は電気料金の一部として皆さまにご負担いただき、NUMO
とは別の資金管理機関において適切に管理されている。
・地層処分における責任は誰が負うのか。
(→回答:)処分事業における責任は事業の実施主体であるNUMOが負う。安全規制への適合・遵
守にとどまることなく、
安全性の向上に向けて不断に取り組む義務を有している。
また、
原子力損害賠償制度に基づく賠償責任を負うが、NUMOが対応困難な事故等が発生し
た場合や、
NUMOが解散した後については、
国が必要な措置を講じることとしている。
・処分場の場所を決めてから、原子力発電を行うべきではなかったのか。
(→回答:)原子力発電所の運転を開始した 1966 年より前の 1962 年に廃棄物の処分方法について検
討を開始しており、当時は海洋で処分することが世界的に考えられていた。その後、海
洋に廃棄物を処分することは適切ではないとの考え方により、地下に埋めることが検討
され、
1976 年から研究開発が進められた。
1999 年には日本においても地層処分を事業化
の段階に進めるための信頼性ある技術基盤が整備されたことが示されている。
・スウェーデンやフィンランドも再処理を行うのか。
(→回答:)両国とも使用済燃料を再処理せずに地層処分(直接処分)を行う。
<リスクと安全性>
・ヨーロッパに比べて日本の地層は若いため、地層処分はできないのではないか。
(→回答:)地層処分にとって一概に新しい地層が悪いというわけではない。ヨーロッパならどこで
も地層処分ができて、日本ではいずれの場所でも地層処分ができないというわけではな
い。例えば北欧の地層は古いが氷河期時代の氷がある分、隆起速度が速いなど地域によ
って個性がある。日本周辺のプレートの動きについては、その方向や速さ(数cm/年)は
数百万年前からほとんど変化がなく、こうしたプレートの動きに関係する活断層や火山
活動などの現象は今後も 10 万年程度はほとんど変化しないと考えられており、
日本でも
地層処分は可能と考えている。
・直接安全を確認できない地層処分の安全性をどのように担保するのか。
(→回答:)放射性物質が地表まで移動することなど、様々なケースを想定し、シミュレーションに
より安全性を確認する。これは国際的にも共通の考え方。
・埋め戻した後に坑道だった部分から放射性物質が地下水などに表出しないのか。また、坑道に流出
する地下水は止められるのか。
(→回答:)もとの岩盤より透水性が低くなるように、緩衝材と同じくベントナイトを使用して坑道
を埋め戻し、坑道に沿った地下水の移動を抑える。こういった対策を重ねることで、放
射性物質などが人間の生活環境へ速やかに流出することを防ぐことができると考えてい
る。
・処分坑道は地圧で崩落したり思わぬところで突発的に湧水が発生したりして、建設が困難なのでは
ないか。また、地下の地質構造は断層があると予測が難しい。
(→回答:)地層処分で対象とする地下深部の岩盤は一般的にしっかり固結しているところを選ぶ。
処分地選定調査では、処分場を建設するうえで適した強度を有する岩盤であるかも確認
する。国内では、青函トンネルなどの地下構造物の建設実績も多数あり、処分場建設の
ための技術力は十分あるものと考えている。また、北海道の幌延と岐阜県の瑞浪には、
地下 300m よりも深い地下研究所が建設されているという実績もある。
・科学的特性マップには地下水や地震のデータがなく、杜撰(ずさん)ではないか。
(→回答:)地下水や地震の影響はマップでは示さない整理としている。地下水のデータは全国規模
のものがないため、概要調査以降で調査することとなる。また、地震については、地下
については揺れが地上に比べて小さくなることが知られている。
埋め戻した後であれば、
廃棄体は岩盤と一体となって揺れるため、破壊されるようなことは考えにくい。操業中
は地上施設と地下施設ともに必要な工学的対応をとる。
・陸上輸送は専用道路を建設するのか。
(→回答:)ガラス固化体は、専用の輸送容器に入れて運搬する。輸送車両も含めると約 150t と非常
に重いため、専用道路により運搬することになると考えている。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・説明会開催の目的は。
(→回答:)科学的特性マップの公表を契機として、地層処分の仕組みや、日本の地質環境などにつ
いて、広く全国の皆さまにご理解を深めていただくべく、全国各地で順次説明会を開催
している。
・全体質疑をなぜ行わないのか。
(→回答:)
地層処分について初めて説明を聞かれる方にも分かりやすく、
また、
限られた時間で様々
な質問や疑問にできるだけきめ細かくお答えするために、質問は全て少人数テーブルで
伺うこととしている。
・説明会を今度どのくらい継続していくのか。
(→回答:)決まった計画はない。地層処分について広く全国の皆さまに関心やご理解を深めていた
だけるよう、全国各地で継続的に実施していく。
・いつまでに地層処分場を見つけると決めているのか。どこからも応募がなかったらどうするのか。
(→回答:)文献調査に応募いただけるよう理解活動を進めている。地域の皆さまのご理解が進んだ
先に応募があると考えており、いつまでにという時期は決めていない。この問題に広く
関心を持っていただけるように、きめ細かく対話活動を進めている。
・掘り出した土砂は、どうするのか。
(→回答:)掘り出した土砂は、地上の敷地内の土砂置き場に保管し、最終的には坑道の埋め戻しに
利用する予定。
・処分場を東京につくればよいのではないか。
(→回答:)処分に適した地盤や必要な面積等が確保できる見込みがあり、かつ地元の方々から地層
処分の受入れにもご理解をいただける地域であれば、発電所立地地域や大都市圏も含め
て処分場の候補地として検討対象となり得る。
・緩衝材は人によってつくられるものであり、将来にわたって安全だとは信じられない。
(→回答:)緩衝材を構成する主な要素であるベントナイトは、もともと自然界に存在する鉱物。
緩衝材に期待する人工バリアとしての安全機能の頑健性に関しては、実験により得ら
れたデータを科学理論や法則に基いて解釈し、それらの理論や法則を適用した長期予
測解析を行い、
「放射性物質を吸着して、その移動を遅らせる」といった機能が長期に
亘って担保されるとの知見を得ている。
・一方的に処分場の候補地に決められることはないのか。
(→回答:)そのようなことはない。反対している地域で無理に進めることはしない。NUMOは地
域の皆さまにご理解いただくための対話活動を積極的に丁寧に実施していく。
<その他>
・まず、高レベル放射性廃棄物の発生原因である原子力発電を止めるべきではないか。
(→回答:)資源の乏しい日本において、国民生活や産業活動を守るという責任あるエネルギー政策
を実現するためには、原子力発電への依存度は可能な限り低減していくが、ゼロにする
わけにはいかない。経済性や温暖化対策の問題にも配慮しつつ、エネルギー供給の安定
性を確保するためには、安全最優先という大前提のもと原子力を活用していかざるを得
ない。また、原子力発電を止める・止めないにかかわらず、すでに高レベル放射性廃棄
物があることは事実であり、
現世代の責任で地層処分を進める必要があると考えている。
・科学的特性マップにより釧路を候補地としているのか。
(→回答:)科学的特性マップは地層処分について知っていただくことが目的であり、候補地を絞り
込んだり自治体に調査をお願いしたりすることが目的ではない。科学的特性マップのグ
リーンエリアすべてが処分場に適したエリアというわけではなく、詳細に調査し、評価
していくことが必要である。
・説明の内容はわかるし、自身がNUMOの立場だったら同じ説明をすると思うが、住民の立場とし
ては納得できない。
(→回答:)さらにご不明な点や疑問点があって、より詳しく話を聞きたいと関心を持っていただけ
るのであれば、いつでも追加説明をさせていただく。
以 上

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