高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会 in 鳥取(倉吉市)
開催結果
日 時:2020 年 12 月 2 日(水)18:20〜20:30
場 所: 倉吉未来中心 2 階 セミナールーム 3 ほか
参加者数:12 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・青田 優子(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)
・井上 雄介(原子力発電環境整備機構 地域交流部 課長代理)
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
・高レベル放射性廃棄物は、将来世代に負担を先送りしないよう、現世代の責任で、地下深くの
安定した岩盤に埋設する地層処分を行う方針。
・地層処分の実現に向けて、この問題を社会全体で解決しなければならない課題として、受入地
域に対する敬意や感謝の念を持つことが必要との認識が共有されることが重要。このため、広
く全国の皆さまに地層処分に対する理解を深めていただけるよう、全国で対話活動を順次開催
していく。
・高レベル放射性廃棄物は貯蔵施設内では約2mのコンクリートで遮蔽することで、その外側で
は人が作業できるレベルまで影響を低減することができる。放射能は時間ととともに減衰し、
1000 年程度の間に 99%以上は低減し、その後はゆっくりと減少していく。
・長期にわたり放射性物質を閉じ込め、
生活環境から隔離しておくために、
地表から 300m 以上深
い安定した場所へ地層処分する。
・地層処分場は、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設できる施設の建設を 1 か所計画している。
最終処分の事業費は約 3.9 兆円が見込まれている。事業費は、原子力発電に伴う電気料金の一
部として電力会社等から拠出される。
・最終処分の方法は、国際的にも長い間議論が交わされ、宇宙処分、海洋投棄や氷床処分など、
様々な方法が検討されてきたが、長期間にわたる安全上のリスクと、将来世代の負担を小さく
するためには、人間の管理によらない地層処分が最も適切な処分方法であるというのが、各国
共通の考え方となっている。
・日本では、原子力発電所の運転が始まるよりも前から最終処分の方法について検討され、国内
外の専門家の評価を経て、日本においても地層処分が技術的に可能であることが示された。
・地下深部は一般的に安定した環境だが、安全に地層処分を行うためには、火山活動や活断層の
影響など、様々な科学的特性を総合的に評価することが必要。・「地震や火山の多い日本で地層処分を安全に実施できるのか」というご質問を多くいただくが、
こうした地層処分に必要な地質環境について理解を深めていただくため、地層処分を行う際に
考慮しなければならない科学的特性を、既存の全国データに基づき、一律の要件・基準に従っ
て客観的に整理し、全国地図の形で示した「科学的特性マップ」を公表した。マップを活用し
ながら、日本でも地層処分に適した地下環境が広く存在するとの見通しを共有しつつ、社会全
体でどのように実現していくか、皆さまと一緒に考えていきたい。
・安全に地層処分を行うため、NUMOでは様々なリスク要因を抽出し、対応と安全性の確認を
行う。
処分地選定調査に基づいて断層や火山などを避けて場所を選ぶという
「立地による対応」、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計による対応」
、その対策により、安全
性が確保できるかをシミュレーションなどで確認するという「安全性の確認」といった対策を
行う。また、地震・津波、輸送中の安全性についても設計による対応、シミュレーションによ
る安全性の確認を行う。
・処分地選定に向けては、まずは国民全体での理解が重要であることから、引き続き全国各地で
の対話活動に取り組んでいく。その上で、いずれかの地域において処分事業に関心を持ってい
ただける自治体が出てきた場合には、地域の皆さまのご意見を伺いながら、法律に基づいた文
献調査、概要調査、精密調査の段階的な調査を行い、最終処分地を選定する。
・文献調査は、全国規模で整備された文献・データに加えて地域固有の文献・データを整理・分
析し、市町村の皆様に地層処分事業についての理解を深めていただくとともに、次なる調査を
実施するかどうかを検討していただくための材料を集める、事前調査的な位置付け。ボーリン
グなどの現地作業は一切行わない。調査結果は地域の皆さまにご説明させていただき、ご意見
を伺うとともに、当該市町村長や都道府県知事にご意見を伺い、その意見に反して、次の段階
に進むことはない。
・処分地選定が円滑に行われるためには、地域による主体的な合意形成が図られることが重要。
こうした観点から、文献調査の実施に際しては、処分事業についての情報提供や住民のご意見
を事業に反映する「対話の場」を地域に設置いただき、多様な関係住民の参画を得て、市町村
の将来像などをご議論いただきたい。
「対話の場」には、私たちから調査の途中経過や結果な
どのご報告や、事業に関するご説明や質疑応答もさせていただきたい。こうした取組みは諸外
国でも同様に行われ、事業への地域のご要望の反映など、重要な役割を果たしている。
・最終処分事業は、地域での雇用や経済波及効果が見込まれる大規模な公共事業。NUMO・電
気事業者・国は連携して、
地域の抱える課題の解決や、
地域の発展ビジョンの実現に取り組む。
・これまで対話活動を進める中で、地層処分事業を「より深く知りたい」との思いから主体的に
活動されている地域団体などの関心グループ (経済団体、大学・教育関係者、NPOなど)
が全国各地に広がりつつある。
・地層処分事業について不明な点、もっと詳しい話を聞いてみたいと関心を持っていただける場
合には、どなたでも説明の機会を設けさせていただくとともに、関連施設の見学にご案内する
など、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応させていただく。
しろまるテーブルでのグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載。
<地層処分事業>
・既に発生した高レベル放射性廃棄物の処分は必要だと思うが、その発生原因である原子力発電を止
めるべきではないか。これ以上増えることに対して国民の合意が得られない。
(→回答:)資源の乏しい日本において、国民生活や産業活動を守るという責任あるエネルギー政策
を実現するためには、原子力発電への依存度は可能な限り低減していくが、ゼロにする
わけにはいかない。経済性や温暖化対策の問題にも配慮しつつ、エネルギー供給の安定
性を確保するためには、安全最優先という大前提のもと原子力を活用していかざるを得
ない。また、原子力発電を止める・止めないにかかわらず、すでに高レベル放射性廃棄
物があることは事実であり、
現世代の責任で地層処分を進める必要があると考えている。・現在日本国内にあるガラス固化体のうち、
国内で再処理されたものと、
海外で再処理されたものは、
それぞれ何本あるのか。
(→回答:)国内の再処理によるガラス固化体は、日本原子力研究開発機構(JAEA)による 316
本と日本原燃のアクティブ試験による 346 本である。海外(イギリスとフランス)で再
処理されたものは 1,830 本である。合計で現在日本国内にあるガラス固化体は 2,492 本
である。
・地層処分事業の費用は、電気代に上乗せされているのか。
(→回答:)最終処分事業に必要な費用は、原子力発電所などの運転実績に応じた金額を原子力事業
者等がNUMOに拠出している。原資は、電気料金の一部として電気の使用者の皆さま
にご負担いただいている。
・いつまでに処分するという目標のスケジュールはあるのか。我々世代が消費した電気のために発生
した廃棄物の処分を将来世代に背負わせないよう、計画的に目標を立てて進めてほしい。
(→回答:)最終処分の実現に向けて計画的に進めていくことは重要であるが、スケジュールありき
で考えても全国での理解が進むものではなく、むしろ、期限があることで地域の意向に
反して一方的に物事を推し進められてしまうのではないかと受け止められてしまう可能
性もある。いずれにしても現世代の責任として地層処分の実現に向けた取組みを進めて
いくことが不可欠であり、引き続き、全国の皆さまに地層処分についてご理解いただけ
るよう努めていく。
・ガラス固化体 40,000 本以上を貯蔵できる処分場を全国で 1 か所つくる計画とのことだが、
現在の原
子力発電所の稼働状況を考慮した場合、40,000 本はいつ頃に到達する予定か。
(→回答:)東日本大震災後の原子力発電所の稼働状況を踏まえると、推定が難しいところ。なお、
一般的に 100 万 kW 級の原子力発電所 1 基が 1 年間稼働すれば約 20〜30 本のガラス固化
体が発生することとなる。
・処分場の建設後は誰がいつまで責任を持って管理するのか。
(→回答:)処分事業における責任は事業の実施主体であるNUMOが負う。安全規制への適合・遵
守にとどまることなく、
安全性の向上に向けて不断に取り組む義務を有している。
また、
原子力損害賠償制度に基づく賠償責任を負うが、NUMOが対応困難な事故等が発生し
た場合や、
NUMOが解散した後については、
国が必要な措置を講じることとしている。
<リスクと安全性>
・処分場は活断層から何 km 離す必要があるのか。
(→回答:)科学的特性マップでは、破砕帯の幅は、既存研究で示されているものより保守的に大き
くとり、断層長さの 1/100 程度として設定されており、この幅を「好ましくない特性が
あると推定される地域」として示している。廃棄体や処分施設が受ける地震の影響につ
いては、個別地点における詳細な処分地選定調査の中で、過去の地震の履歴などを綿密
に調査・評価し、対策を講じていくことになる。
・万一の事故のケースはどのように検討しているのか。
(→回答:)地層処分における様々なリスク要因を抽出し、通常起こることは考えられない万が一の
事故も想定し、例えば、調査で見つからなかった断層が処分場を直撃した場合などもシ
ミュレーションを行った上でなお、地上の生活環境への放射線による影響を確認するな
ど、様々なシナリオの検証を積み重ね、必要な安全対策を講じていく。また、オーバー
パックが搬送作業中に落下する事象についてもシミュレーションによる検討を行ってお
り、その場合にもオーバーパックの一部は変形するものの、ガラス固化体への影響は生
じないことを確認している。
・ユーラシア大陸の北の方はあまり動かないと思うが、日本はどこでも地下水が出るのであれば日本
での地層処分は危険ではないのか。
(→回答:)地下水は、フィンランドやスウェーデンを含め、どのような地域であっても多かれ少な
かれ存在する。地下深部では岩盤が水を通しにくく、また地下水で満たされた地下環境
では、地下水は非常にゆっくりと動くことになる。処分場における深部地下水の影響に
ついては、建設・操業時における影響と、閉鎖後の影響の観点が存在するが、建設・操
業時については、排水や止水処理などのこれまで他の地下施設でも利用されてきた工学
的措置によって対応可能であることが示されており、閉鎖後については、地下水の流れ
はもとのとおりに動きが遅くなる。いずれにしても、今後の処分地選定調査段階で地下
水の性状・挙動等を調査した上で評価していくこととなる。
・日本には火山や地震もあり、降水量も多いが、10 万年単位の安全を保証できるのか。
(→回答:)地層処分を行う理由の一つは、地下深部が地表部よりも火山、地震や豪雨などの自然災
害の影響を受けにくいことが挙げられる。また、地層処分に求められる安全確保の期間
は数万年以上と非常に長く、実験などで直接的に確かめることはできないため、コンピ
ューターによるシミュレーションを実施し、人や環境への影響を評価し、安全規制当局
が定める基準を満足することを確かめることとしており、こうした方法は国際的にも共
通した考え方である。
・科学的特性マップについて、東日本大震災などが考慮されていないのと、天正地震や東南海地震な
どが考慮されていないのはなぜか。
(→回答:)科学的特性マップは、日本の地質環境に関する科学的特性を、既存の全国データに基づ
き一定の要件・基準に従って客観的に整理し、全国地図の形にしたもの。地層処分につ
いては、地震の影響についても考慮する必要があるが、廃棄体や処分施設が受ける地震
の影響については、個別地点における詳細な処分地選定調査の中で、過去の地震の履歴
などを綿密に調査・評価し、対策を講じていくこととしているため、科学的特性マップ
には反映されていない。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・処分場は山間部がいいのか、海の近くがいいのか。
(→回答:)廃棄物の貯蔵場所からの輸送については、海上輸送を想定していることや、港湾から処
分場までは陸上輸送を想定しているため、海岸からの輸送距離は短い方が安全上好まし
い。また、一般的に、山間部で地形の勾配がきつい場所は、
「動水勾配」という地下水を
動かす力が大きくなり、地下水の動きが早くなるというデメリットも考えられる。
・最終処分場の建設同意の対象は、都道府県知事と立地市町村長だけか、それとも周辺市町村が含ま
れるのか。
(→回答:)最終処分法上では、概要調査や精密調査に進むかどうかの際には、当該調査の受入れに
ご協力いただく市町村長ならびに都道府県知事のご意見を聴き、それを尊重することが
規定されている。法律上、周辺の市町村の意向を確認することは規定されていないが、
周辺地域の理解も得ていくことは重要と考えている。
・文献調査で当該自治体の首長と知事の意見が異なった場合はどうするのか。
(→回答:)
文献調査は、
手続き上は市町村長の応募等によって開始できることとなっている。
なお、
次の概要調査や精密調査に進むかどうかの際には、当該市町村長ならびに知事のご意見
を聴き、それを尊重することとなっているため、知事又は市町村長が反対の場合には、
その先の調査には進まない。
・子供たちへの教育の観点でどのような取組みを行っているのか。
(→回答:)学校での出前授業や、移動型の模型展示車によるイベント出展を全国各地で行うなど、
次世代層にも広くこの事業を知ってもらえるよう取り組んでいる。
・説明会の内容は公開されるのか。他の部屋で議論された内容も知りたい。
(→回答:)説明会の議事概要については、後日、NUMOのホームページに掲載し、公開する。
・地層処分は地元住民の理解を得ずに推進されるのではと危惧していた。今日の説明を聞き安心した
が、良いことも悪いことも包み隠さずに説明していただきたい。
(→回答:)良いことも悪いことも事実をお伝えし、誠実に対応してまいりたい。
<その他>
・地層処分を進めている国は事故を起こしていない国であり、原子力政策の信頼が失われている日本
において事業を進めることに安全面から疑問である。
(→回答:)福島第一原子力発電所の事故については、重く受け止めている。一度失った信頼の回復
は容易ではないと考えており、誠実な対応を少しずつ積み重ねていきたい。なお、安全
性に絶対はなく、リスクはゼロにはならないという考えのもと、安全性が損なわれない
よう十分配慮しながら、安全評価を行ない、リスクをできるだけ小さくしていく。
・1966 年に原子力発電が始まったときに最終処分に関する議論はあったのか。
(→回答:)原子力発電の利用が開始された 1966 年より前の 1962 年から、高レベル放射性廃棄物の
最終処分の方法について検討がなされてきた。当初は海洋に処分することが世界的に考え
られていたが、海洋に廃棄物を処分することは適切ではないとの考えにより、ロンドン条
約で禁止された。その後、地下に埋設することが検討され、地層処分は人間の生活環境か
ら隔離することができ、元来、地層が持っている閉じ込め機能により、人による継続的な
管理が不要になるため、現在、最も適切な処分方法であるとの基本的な考え方が世界各国
で共有されている。
以 上

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /