高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会 in 千葉(木更津市)
開催結果
日 時:2020 年 11 月 25 日(水)18:20〜20:30
場 所:木更津商工会館 3 階 第一実習室ほか
参加者数:14 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・逸見 誠(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)
・堀田 喜典(原子力発電環境整備機構 地域交流部 副部長)
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
・高レベル放射性廃棄物は、将来世代に負担を先送りしないよう、現世代の責任で、地下深くの
安定した岩盤に埋設する地層処分を行う方針。
・地層処分の実現に向けて、この問題を社会全体で解決しなければならない課題として、受入地
域に対する敬意や感謝の念を持つことが必要との認識が共有されることが重要。このため、広
く全国の皆さまに地層処分に対する理解を深めていただけるよう、全国で対話活動を順次開催
していく。
・高レベル放射性廃棄物は貯蔵施設内では約2mのコンクリートで遮蔽することで、その外側で
は人が作業できるレベルまで影響を低減することができる。放射能は時間ととともに減衰し、
1000 年程度の間に 99%以上は低減し、その後はゆっくりと減少していく。
・長期にわたり放射性物質を閉じ込め、
生活環境から隔離しておくために、
地表から 300m 以上深
い安定した場所へ地層処分する。
・地層処分場は、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設できる施設の建設を 1 か所計画している。
最終処分の事業費は約 3.9 兆円が見込まれている。事業費は、原子力発電に伴う電気料金の一
部として電力会社等から拠出される。
・最終処分の方法は、国際的にも長い間議論が交わされ、宇宙処分、海洋投棄や氷床処分など、
様々な方法が検討されてきたが、長期間にわたる安全上のリスクと、将来世代の負担を小さく
するためには、人間の管理によらない地層処分が最も適切な処分方法であるというのが、各国
共通の考え方となっている。
・日本では、原子力発電所の運転が始まるよりも前から最終処分の方法について検討され、国内
外の専門家の評価を経て、日本においても地層処分が技術的に可能であることが示された。
・地下深部は一般的に安定した環境だが、安全に地層処分を行うためには、火山活動や活断層の
影響など、様々な科学的特性を総合的に評価することが必要。・「地震や火山の多い日本で地層処分を安全に実施できるのか」というご質問を多くいただくが、
こうした地層処分に必要な地質環境について理解を深めていただくため、地層処分を行う際に
考慮しなければならない科学的特性を、既存の全国データに基づき、一律の要件・基準に従っ
て客観的に整理し、全国地図の形で示した「科学的特性マップ」を公表した。マップを活用し
ながら、日本でも地層処分に適した地下環境が広く存在するとの見通しを共有しつつ、社会全
体でどのように実現していくか、皆さまと一緒に考えていきたい。
・安全に地層処分を行うため、NUMOでは様々なリスク要因を抽出し、対応と安全性の確認を
行う。
処分地選定調査に基づいて断層や火山などを避けて場所を選ぶという
「立地による対応」、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計による対応」
、その対策により、安全
性が確保できるかをシミュレーションなどで確認するという「安全性の確認」といった対策を
行う。また、地震・津波、輸送中の安全性についても設計による対応、シミュレーションによ
る安全性の確認を行う。
・処分地選定に向けては、まずは国民全体での理解が重要であることから、引き続き全国各地で
の対話活動に取り組んでいく。その上で、いずれかの地域において処分事業に関心を持ってい
ただける自治体が出てきた場合には、地域の皆さまのご意見を伺いながら、法律に基づいた文
献調査、概要調査、精密調査の段階的な調査を行い、最終処分地を選定する。
・文献調査は、全国規模で整備された文献・データに加えて地域固有の文献・データを整理・分
析し、市町村の皆様に地層処分事業についての理解を深めていただくとともに、次なる調査を
実施するかどうかを検討していただくための材料を集める、事前調査的な位置付け。ボーリン
グなどの現地作業は一切行わない。調査結果は地域の皆さまにご説明させていただき、ご意見
を伺うとともに、当該の市町村長や都道府県知事にご意見を伺い、その意見に反して、次の段
階に進むことはない。
・処分地選定が円滑に行われるためには、地域による主体的な合意形成が図られることが重要。
こうした観点から、文献調査の実施に際しては、処分事業についての情報提供や住民のご意見
を事業に反映する「対話の場」を地域に設置いただき、多様な関係住民の参画を得て、市町村
の将来像などをご議論いただきたい。
「対話の場」には、私たちから調査の途中経過や結果な
どのご報告や、事業に関するご説明や質疑応答もさせていただきたい。こうした取組みは諸外
国でも同様に行われ、事業への地域のご要望の反映など、重要な役割を果たしている。
・最終処分事業は、地域での雇用や経済波及効果が見込まれる大規模な公共事業。NUMO・電
気事業者・国は連携して、
地域の抱える課題の解決や、
地域の発展ビジョンの実現に取り組む。
・これまで対話活動を進める中で、地層処分事業を「より深く知りたい」との思いから主体的に
活動されている地域団体などの関心グループ (経済団体、大学・教育関係者、NPOなど)
が全国各地に広がりつつある。
・地層処分事業について不明な点、もっと詳しい話を聞いてみたいと関心を持っていただける場
合には、どなたでも説明の機会を設けさせていただくとともに、関連施設の見学にご案内する
など、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応させていただく。
しろまるテーブルでのグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載。
<地層処分事業>
・最終処分費用は 3.9 兆円では足りないのではないのか。
(→回答:)最終処分費用は、現在の知見に基づき、標準的な工程や技術的な条件をもとに算定した
もの。
毎年、
物価指数の変動および利子率等を勘案した見直しが国により行われている。
・処分事業の費用はどこから出ているのか。
(→回答:)最終処分事業に必要な費用は、原子力発電所などの運転実績に応じた金額を原子力事業
者等がNUMOに拠出している。原資は、電気料金の一部として電気の使用者の皆さま
にご負担いただき、NUMOとは別の資金管理機関において適切に管理されている。
・地下 300m では浅すぎるのではないか。
(→回答:)地表から遠ざけて人間の生活環境から隔離する機能を十分確保する必要があるが、一般
的に地下深部になるほど地温が高くなり、人工バリアの機能低下といった安全性に影響
を及ぼす可能性がある。また深くなれば地圧が高くなり、地質によってはトンネルの強
度に影響を及ぼす可能性もある。したがって一概に深ければ良いというわけではなく、
地質構造に応じて最適な処分深度を設定することになる。
・処分施設はいつまでに完成する必要があるか。
(→回答:)最終処分の実現に向けて計画的に進めていくことは重要であるが、スケジュールありき
で考えても全国での理解が進むものではなく、むしろ、期限があることで地域の意向に
反して一方的に物事を推し進められてしまうのではないかと受け止められてしまう可能
性もある。いずれにしても現世代の責任として地層処分の実現に向けた取組を進めてい
くことが不可欠であり、引き続き、全国の皆さまに地層処分についてご理解いただける
ように努めていく。
<リスクと安全性>
・科学的特性マップでは、地下水の影響は考慮されていないのではないか。
(→回答:)科学的特性マップは、日本の地質環境に関する科学的特性を、既存の全国データに基づ
き一定の要件・基準に従って客観的に整理し、全国地図の形にしたもの。地層処分につ
いては、地下水の動きなども考慮する必要があるが、全国的なデータが極めて限られて
おり、全国一律の明確な基準を設定することが難しいため、科学的特性マップに反映し
ないこととなった。なお、処分場における深部地下水の性状・挙動等に関する影響につ
いては、今後の処分地選定調査における個別地点毎の詳細な調査を行った上で評価して
いくこととなる。
・ヨーロッパに比べて日本の地層は若い。変動帯の日本で地層処分ができるのか。
(→回答:)一概に新しい地層が悪いというわけではない。ヨーロッパならどこでも地層処分ができ
て、日本ではいずれの場所でも地層処分ができないというわけではない。例えば北欧の
地層は古いが氷河期時代の氷がある分、隆起速度が速いなど地域によって個性がある。
日本周辺のプレートの動きについては、
その方向や速さ
(数cm/年)
は数百万年前からほ
とんど変化がなく、こうしたプレートの動きに関係する活断層や火山活動などの現象は
今後も 10 万年程度はほとんど変化しないと考えられており、
日本でも地層処分は可能と
考えている。
・埋設後のモニタリングについては、どう考えているか。
(→回答:)人間が管理することなく、高レベル放射性廃棄物を地上の生活環境から隔離し、閉じ込
めることができるというのが地層処分の基本的な考え方であり、地層処分施設を適切に
設計することにより、人間社会による管理を不要とするのが、地層処分の安全の考え方
である。その上で、埋設後のモニタリングの期間や方法などは、今後策定される規制基
準の中で具体化されていくものであるが、地元の皆さまにも安心していただけるよう、
ご相談しながら考えていきたい。
・オーバーパックの強度を教えてほしい。
(→回答:)
ガラス固化体の放射能が大きく減衰するまでの期間は 1000 年程度であることから、
オー
バーパックの設計耐用年数としては最低 1000 年を考え、
それ以上の安全裕度を確保して
設計している。
・将来的に放射性物質が生活圏に達した場合の人体への影響が心配だが大丈夫か。
(→回答:)将来的に放射性物質が生活圏に達した場合でも、人体への影響は問題ないレベルになる
と考えている。
例えば、
処分してから 1000 年後にすべてのガラス固化体が地下水に接す
るような厳しい条件でシミュレーションを行った場合、地下水が地表付近に到達し、水
や農産物の摂取による被ばく線量は、
日本人が受ける自然放射線量 2.4mSV/年に比べて
も十分に低い値である。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・調査を受け入れた自治体には、どれくらいの交付金が支払われるのか。
(→回答:)文献調査の段階では 1 年で最大 10 億円、調査期間で最大 20 億円、概要調査の段階では
1 年で最大 20 億円、調査期間で最大 70 億円の交付金を活用できる制度になっている。
・調査にいったん応じると断りにくくなるのではないか。
(→回答:)最終処分法上では、概要調査や精密調査に進むかどうかの際には当該市町村長と都道府
県知事のご意見を聴くこととなっており、反対の場合には先に進まない。地域の皆さま
にご理解やご協力をいただくことが重要であり、そのために対話活動を通じて丁寧に情
報提供を行っていきたい。
・風評被害が心配。調査を受け入れるだけで風評被害が出ると思っている。
(→回答:)まず、調査段階では放射性廃棄物は一切持ち込まない。そのうえで、風評被害を防ぐた
めには、事業を受け入れていただく地域だけでなく、その他の地域の方々に、こうした
調査の位置づけなどの情報が正確に伝わることが重要と考える。大都市等を含めて、1
人でも多くの方に地層処分の仕組みや安全確保策について理解を深めていただけるよう、
わかりやすい情報提供と全国的な対話活動を進めていく。
<その他>・もんじゅは稼働していないため、
すべての使用済燃料をリサイクルして使用すること不可能であり、
その場合には再処理せずにそのまま処分するのか。六ヶ所村の再処理工場が稼働していないなど核
燃料サイクルは破綻している。
(→回答:)
もんじゅは廃止するものの高速炉の研究は諸外国との協力等により継続していく。
また、
再処理により取り出したプルトニウムは、プルサーマル発電により利用することとして
おり、高浜、玄海、伊方発電所などで使用実績がある。再処理施設は規制委員会の審査
を経て 2022 年度上期の竣工を目指しているところであり、
再処理の技術そのものは確立
されている。
なお、国の基本方針では「幅広い選択肢を確保する観点から、直接処分など代替処分オ
プションに関する調査・研究を推進する」としており、直接処分についても日本原子力
研究開発機構(JAEA)が研究を行っている。
・ガラス固化体はどこで製造されているか。
(→回答:)これまでは、イギリスおよびフランスに再処理を委託していたが、青森県六ヶ所村にあ
る日本原燃の再処理工場の操業開始後は当該施設で製造されることになる。
・ガラス固化体は安全なのか。
(→回答:)ガラス固化体はウランやプルトニウムなどの核分裂する核種がほとんど含まれていない
ため、臨界状態になることはなく、また、物理的、化学的に安定しているため、爆発す
ることもない。しかしながら、製造直後のガラス固化体からは強い放射線が出るため、
ガラス固化体自体が安全というわけではないが、コンクリートなどで遮蔽することによ
り、その影響を小さくすることができる。実際に青森県六ヶ所村の一時貯蔵施設では、
ガラス固化体を厚さ約 2mのコンクリートにより、しっかりと遮蔽することで安全に貯
蔵されている。
以 上

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