科学的特性マップに関する対話型全国説明会 in 鹿児島(霧島市)開催結果
日 時:2019 年 5 月 26 日(日)13:30〜16:00
場 所:国分シビックセンター(霧島市コンベンション施設)2F 多目的ホール
参加者数:26 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・那須 良(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策 課長)
・宇田 剛(原子力発電環境整備機構 理事)
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
1資源エネルギー庁の主な説明内容
・高レベル放射性廃棄物は、将来世代に負担を先送りしないよう、現世代の責任で、地下深くの
安定した岩盤に埋設する地層処分を行う方針。
・地層処分の実現に向けて、この問題を社会全体で解決しなければならない課題として考えてい
ただき、受入地域に対する敬意や感謝の念を持つことが必要との認識が共有されることが重要。
このため、広く全国の皆さまに地層処分に対する理解を深めていただけるよう、全国で対話活
動を順次開催していく。・高レベル放射性廃棄物の放射能は時間ととともに減衰し、
1000 年程度の間に 99%以上は低減し、
その後はゆっくりと減少していく。地層処分は、長期間にわたる安全上のリスクを小さくし、
将来世代の負担を小さくする処分方法との考え方が国際的に共有されている。日本では、地下
300m より深い安定した岩盤に埋設することで、人間の管理に依らず、長期にわたり放射性物質
を閉じ込め、生活環境から隔離していく考えである。
・地下深部は一般的に安定した環境だが、安全に地層処分を行うためには、火山活動や活断層の
影響など、様々な科学的特性を総合的に評価することが必要。
・科学的特性マップは、地層処分を行う際に考慮しなければならない科学的特性を、既存の全国
データに基づき、一律の要件・基準に従って客観的に整理し、全国地図の形で示し、地層処分
に対する国民理解を深めるために公表したもの。マップ公表をきっかけに、全国での対話活動
を重ねていく中で、やがて処分事業に関心を持っていただける自治体が出てきた場合、法律に
基づく 3 段階の処分地選定調査を実施し、個別地点において安全に地層処分が実施できるかど
うかを詳細に調査していく。・「地震や火山の多い日本で地層処分を安全に実施できるのか」というご質問を多くいただくが、
マップを活用しながら、日本でも地層処分に適した地下環境が広く存在するとの見通しを共有
しつつ、社会全体でどのように実現していくか、皆さまと一緒に考えていきたい。
2原子力発電環境整備機構(NUMO)の主な説明内容
・地下深部の岩盤は、1酸素が少ないため金属が腐食しにくく、万が一、放射性物質が漏出した
場合でも、2地下水の流れが遅く、また、3岩盤が放射性物質を吸着し、放射性物質の移動を
遅らせることができる(天然バリア)
。放射能が大きく減少するまでの期間、少なくとも 1000
年間は放射性物質をしっかり密封するために、ガラス固化体をオーバーパックという金属容器
(厚さ約 20cm)に格納し、粘土でできた緩衝材(厚さ約 70cm)で包む(人工バリア)
。このよ
うに、
「天然バリア」と「人工バリア」を組み合わせ、様々な対策を組み合わせることで、人
間の生活環境から隔離し閉じ込める。
・地層処分場は、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設できる施設の建設を 1 か所計画している。
処分場を閉鎖した後も、一定期間は規制当局の安全規制に従い、万が一のことに備える。
最終処分事業費は約 3.8 兆円が見込まれている。事業費は、原子力発電に伴う電気料金の一部
として電力会社等から拠出される。
・安全に地層処分を行うため、処分地選定調査の中で、断層や火山などを避けて場所を選ぶとい
う「立地による対応」
、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計による対応」、その対策により、安全性が確保出来るかをシミュレーションなどで確認するという「安全性の
確認」
といった作業を繰り返し行う。
地震・津波、
輸送中の安全性についても設計による対応、
シミュレーションによる安全性確認を行う。
・文献調査は、学術論文等から地域の地質環境等を可能な限り把握し、概要調査を行う候補地区
を絞り込むもので、ボーリングなどの現地作業は行わない。調査結果は地域住民に公表してご
意見を伺うとともに、当該の市町村長や都道府県知事に意見を伺い、反対の意向が示された場
合は次の段階に進むことはない。
・処分地選定が円滑に行われるためには、地域による主体的な合意形成が図られることが重要。
こうした観点から、
処分事業についての情報提供や住民のご意見を事業に反映する
「対話の場」
が地域に設置され、多様な関係住民が参画し、積極的な活動が行われることが望ましい。こう
した取組みは諸外国でも同様に行われ、地域要望の事業への反映など、重要な役割を果たして
いる。
・さらに、フィンランドやスウェーデンなど先行する海外では、地層処分事業が地域に与える社
会経済的影響についても評価が行われ、雇用の創出などの経済効果が期待されている。また、
処分場立地による農業、観光業、不動産価値へのマイナス影響などは確認されていない。NU
MOは、
処分場建設までに本社を当該地域に移し、
地元雇用や地元発注に最大限取り組むなど、
地域の発展に貢献していく。処分地選定では、こうした地域経済への効果や影響も含め、総合
的に判断していただく。
・地層処分事業について不明な点、もっと詳しい話を聞いてみたいと関心を持っていただける場
合には、どなたでも説明の機会を設けさせていただくとともに、関連施設の見学にご案内する
など、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応をさせていただく。
しろまるテーブルでのグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載。
<地層処分事業>
・原子力発電が開始した時、高レベル放射性廃棄物はどう処理するつもりだったのか。
(→回答:)原子力発電が開始された 1966 年より前の 1962 年から高レベル放射性廃棄物の最終処分
については様々な検討がなされており、当時は海洋に投棄することが世界的に考えられ
ていた。その他にも、氷床処分、海洋底処分、宇宙処分が候補として検討されたが、国
際条約や処分の信頼性、コスト面などから、現在、地層処分が最も適切な方法であると
の基本的な考え方が世界各国で共有されている。
・海外の国に最終処分をお願いすればよいのではないか。
(→回答:)国際条約における、自国で発生した高レベル放射性廃棄物は自国で処分するという原則
も踏まえ、責任を持って国内で地層処分を進めていくことが重要と考えている。
・処分場の深さは、なぜ地下 300m なのか。
(→回答:)300m とは、人間の地下開発が 300m 以深にほとんど及んでいないことや、諸外国での検
討状況を踏まえて法律で設定された最小の深さであり、処分地選定調査において地質を
調査した上で、処分に適した深さに処分することになる。なお、深ければ深い方が適し
ているというわけではなく、深いと逆に地温が高くなり、人工バリアの機能低下といっ
た安全性に影響を及ぼす可能性がある。
・地層処分における責任は誰が負うのか。
(→回答:)処分事業における一義的責任は事業の実施主体であるNUMOが負う。安全規制への適合・
遵守にとどまることなく、
安全性の向上に向けて不断に取り組む義務を有している。
また、NUMOは原子力損害賠償制度に基づく賠償責任を負うが、NUMOが対応困難
な事故等が発生した場合や、NUMOが解散した後については、国が必要な措置を講じ
ることが法律で定められている。
・NUMOは国の外郭団体なのか。
(→回答:)国の機関ではない。国から認可された法人であり、電力会社からの拠出金で運営してい
る組織である。
・事業の財源はどうなっているのか。
(→回答:)最終処分事業に必要な費用は、原子力発電所などの運転実績に応じた金額を原子力事業
者等が拠出している。原資は、電気料金の一部として皆さまにご負担いただき、NUM
Oとは別の資金管理機関において適切に管理されている。
・長期にわたる問題であり、非常に重要と思っている。本気で取り組んでほしい。
<リスクと安全性>
・火山についてはどのように考えているのか。
(→回答:)
科学的特性マップは火山の中心から半径 15km の範囲を
「好ましくない特性があると推定
される範囲」としている。個別の地域における火山噴火の影響については、その地域に
おける詳細な処分地選定調査を実施して検討していくことになる。
・数万年先のことは確かめられない。安全性を確認するための実験はしたのか。
(→回答:)将来、長期にわたる安全については、火山活動や活断層の影響を避けるなどして注意深
く処分地を選び、閉じ込め機能に十分な余裕を持たせた人工バリアを設置することによ
って確保する。地層処分に求められる安全確保の期間は数万年以上と非常に長く、実験
などで直接的に確かめることはできないため、
コンピュータシミュレーションを実施し、
人や環境への影響を評価し、安全規制当局が定める基準を満足することを確かめる。こ
うした方法は国際的にも共通した考え方。
・科学的特性マップは正しいと言えるのか。反映されていない活断層もあるのではないか。
(→回答:)科学的特性マップは、全国一律に取得されている情報に基づき作成されており、活断層
については全国の活断層を網羅的に整備した産業技術総合研究所の活断層データベー
スを利用している。ご指摘のとおり、科学的特性マップに掲載されていない活断層は存
在するものと考えられるが、そうした活断層の存在やその影響範囲については、処分地
選定調査で物理探査やボーリング調査など詳細な調査を実施することで把握できると
考えている。
・安全確保のための技術を説明されても一般人は理解できないし、
正しいかどうかの判断もできない。
・使用済燃料を中間貯蔵している現在の状況がよっぽどリスクが大きい。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・施設を受け入れることによる交付金やメリットはなにか。
(→回答:)受け入れていただいた地域に対して感謝の念をお示しするとともに、社会として適切に
便益を還元していくために、
雇用の創出や生活の向上ならびに国内外との交流拡大など、
地域の持続的な発展に資する相応の支援策を講じていく必要がある。こうした支援策の
1 つとして、処分地選定調査の段階から、国の交付金制度が活用できる。具体的には、
文献調査の段階では 1 年で最大 10 億円、調査期間で最大 20 億円。概要調査の段階では
1 年で最大 20 億円、調査期間で最大 70 億円となる。
・すでに処分地は決まっているのではないか。
(→回答:)処分地は決まっていない。今は地層処分について全国の方々に広く知っていただくため
に、科学的特性マップを公表し、説明会を開催しているところ。現時点で特定の地域に
受入れをお願いするものではない。
・国有地に立地すればよいのではないか。
(→回答:)国有地でもいずれかの市町村に属しているため、いずれにしても地域の方々のご理解が
必要である。
・処分場を受け入れた自治体の人口が減って自治体がなくなった場合、どうするのか。
(→回答:)処分地が決まれば、NUMOは本拠をその地域に移し、NUMO職員や関連事業者は地
域の住民となる。なお、事業の進展に応じ、NUMO・電気事業者・国が、当該地域の
持続的発展に資する総合的な支援策について、自治体や地域住民との対話を通じ、その
地域のニーズを汲み取りながら、地域と共生していく。
・この説明会は全国で何回開催しているのか。
(→回答:)科学的特性マップが公表された以降の全国説明会としては 89 回目の開催となる。
・なぜ霧島で説明会を開催するのか。
(→回答:)対話型全国説明会は全国の各地で説明会を開催しており、人口や交通の便などの地域バ
ランスを考慮しつつ、開催場所の確保や周知・広報の準備などを終えたところから順次
開催している。現時点で特定の地域において文献調査や処分場受入れに応じてほしいと
お願いするものではない。
・小中学生など、今後の世代にも理解活動を行っていくことが大事である。
・地質関係に知見がある人間としては、地層処分の安全性は明らかであるため、他の公共事業と同様
に淡々と実施していくべき。
<その他>
・電気は足りており、原子力は不要なのではないか。
(→回答:)現在の日本の電力供給は、一見すると何の問題もなく見えるかもしれないが、化石燃料
に 8 割以上も依存する構造となっており、それに伴う電気料金の上昇やエネルギーの安
定供給、地球温暖化対策の面でリスクにさらされている。徹底した省エネの推進や再エ
ネの最大限の導入も図っていくが、省エネには国民生活の利便性や企業の経済活動との
関係で限界があり、再エネについても、気象条件に左右される供給の不安定性やコスト
高という課題があり、今すぐ原子力を代替できるものではない。
・原子力発電をやめてこれ以上廃棄物を発生させないなら、地層処分に賛成である。
(→回答:)原子力発電を止める・止めないにかかわらず、すでに高レベル放射性廃棄物があること
は事実であり。現世代の責任で地層処分を進める必要があると考えている。
・説明会で対応する担当者個人は信頼できると感じるが、国や原子力関連の組織そのものは信用でき
ない。
以 上

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