科学的特性マップに関する対話型全国説明会 in 新潟(上越市)開催結果
日 時:2019 年 9 月 8 日(日)13:30〜16:00
場 所:上越文化会館 1 階 中ホール
参加者数:28 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・江橋 健(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)
・羽多野 佳二(原子力発電環境整備機構 地域交流部 部長)
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
1資源エネルギー庁の主な説明内容
・高レベル放射性廃棄物は、将来世代に負担を先送りしないよう、現世代の責任で、地下深くの
安定した岩盤に埋設する地層処分を行う方針。
・地層処分の実現に向けて、この問題を社会全体で解決しなければならない課題として考えてい
ただき、受入地域に対する敬意や感謝の念を持つことが必要との認識が共有されることが重要。
このため、広く全国の皆さまに地層処分に対する理解を深めていただけるよう、全国で対話活
動を順次開催していく。・高レベル放射性廃棄物の放射能は時間ととともに減衰し、
1000 年程度の間に 99%以上は低減し、
その後はゆっくりと減少していく。地層処分は、長期間にわたる安全上のリスクを小さくし、
将来世代の負担を小さくする処分方法との考え方が国際的に共有されている。日本では、地下
300m より深い安定した岩盤に埋設することで、人間の管理に依らず、長期にわたり放射性物質
を閉じ込め、生活環境から隔離していく考えである。
・地下深部は一般的に安定した環境だが、安全に地層処分を行うためには、火山活動や活断層の
影響など、様々な科学的特性を総合的に評価することが必要。
・科学的特性マップは、地層処分を行う際に考慮しなければならない科学的特性を、既存の全国
データに基づき、一律の要件・基準に従って客観的に整理し、全国地図の形で示し、地層処分
に対する国民理解を深めるために公表したもの。マップ公表をきっかけに、全国での対話活動
を重ねていく中で、やがて処分事業に関心を持っていただける自治体が出てきた場合、法律に
基づく 3 段階の処分地選定調査を実施し、個別地点において安全に地層処分が実施できるかど
うかを詳細に調査していく。・「地震や火山の多い日本で地層処分を安全に実施できるのか」というご質問を多くいただくが、
マップを活用しながら、日本でも地層処分に適した地下環境が広く存在するとの見通しを共有
しつつ、社会全体でどのように実現していくか、皆さまと一緒に考えていきたい。
2原子力発電環境整備機構(NUMO)の主な説明内容
・地下深部の岩盤は、1酸素が少ないため金属が腐食しにくく、万が一、放射性物質が漏れ出し
た場合でも、2地下水の流れが遅く、また、3岩盤が放射性物質を吸着し、放射性物質の移動
を遅らせることができる
(天然バリア)。放射能が大きく減少するまでの期間、
少なくとも 1000
年間は放射性物質をしっかり密封するために、ガラス固化体をオーバーパックという金属容器
(厚さ約 20cm)に格納し、粘土でできた緩衝材(厚さ約 70cm)で包む(人工バリア)
。このよ
うに、
「天然バリア」と「人工バリア」を組み合わせ、様々な対策を組み合わせることで、人
間の生活環境から隔離し閉じ込める。
・地層処分場は、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設できる施設の建設を 1 か所計画している。
処分場を閉鎖した後も、一定期間は規制当局の安全規制に従い、万が一のことに備える。
最終処分事業費は約 3.8 兆円が見込まれている。事業費は、原子力発電に伴う電気料金の一部
として電力会社等から拠出される。
・安全に地層処分を行うため、処分地選定調査の中で、断層や火山などを避けて場所を選ぶとい
う「立地による対応」
、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計による対応」、その対策により、安全性が確保できるかをシミュレーションなどで確認するという「安全性の
確認」
といった作業を繰り返し行う。
地震・津波、
輸送中の安全性についても設計による対応、
シミュレーションによる安全性確認を行う。
・文献調査は、学術論文等から地域の地質環境等を可能な限り把握し、概要調査を行う候補地区
を絞り込むもので、ボーリングなどの現地作業は行わない。調査結果は地域の皆さまに公表し
てご意見を伺うとともに、当該の市町村長や都道府県知事にご意見を伺い、反対の意向が示さ
れた場合は次の段階に進むことはない。
・処分地選定が円滑に行われるためには、地域による主体的な合意形成が図られることが重要。
こうした観点から、
処分事業についての情報提供や住民のご意見を事業に反映する
「対話の場」
が地域に設置され、多様な関係住民が参画され、積極的な活動が行われることが望ましい。こ
うした取組みは諸外国でも同様に行われ、地域のご要望の事業への反映など、重要な役割を果
たしている。
・さらに、フィンランドやスウェーデンなど先行する海外では、地層処分事業が地域に与える経
済社会的影響についても評価が行われ、雇用の創出などの経済効果が期待されている。また、
処分場立地による農業、観光業、不動産価値へのマイナス影響などは確認されていない。NU
MOは、
処分場建設までに本社を当該地域に移し、
地元雇用や地元発注に最大限取り組むなど、
地域の発展に貢献していく。処分地選定では、こうした地域経済への効果や影響も含め、総合
的に判断していただく。
・地層処分事業について不明な点、もっと詳しい話を聞いてみたいと関心を持っていただける場
合には、どなたでも説明の機会を設けさせていただくとともに、関連施設の見学にご案内する
など、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応させていただく。
しろまるテーブルでのグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載。
<地層処分事業>
・どうして今頃、地層処分なのか。原子力発電が始まった時に考えるべきことのはずだ。
(→回答:)原子力発電が開始された 1960 年代から高レベル放射性廃棄物の最終処分について
様々な検討がなされてきた。その中で、氷床処分、海洋底処分、宇宙処分、地層処
分が候補として検討された。氷床処分と海洋底処分については国際条約で不可能と
なり、宇宙処分は発射時の信頼性やコスト面などから現実的ではないと判断された。
地層処分は人間の生活環境から隔離することができ、元来、地層が持っている閉じ
込め機能により、人による継続的な管理が不要になるため、現在、最も適切な方法
であるとの基本的な考え方が世界各国で共有されている。
・海外の状況はどうか。
(→回答:)フィンランド、スウェーデンは処分地の建設・選定が進んでおり、フランスも地下
研究所で研究中。スイス・カナダも日本における概要調査の段階に進んでいる。い
ずれの国も、地層処分を選択している。
・地上で保管すべきではないか。
(→回答:)地上で保管するとなると、人間の生活環境により近い場所に放射性物質が留まるこ
とになるため、長い期間にわたり、安全上のリスクが大きくなるとともに、人によ
る管理が必要となる。また、何度も建屋の建て直しが生じるなど、後世に大きな負
担を残すことになる。
人の管理を必要としない最終的な処分を行うべきであるとい
うのが国際的にも共通した認識である。
・処分施設の規模をガラス固化体 40,000 本以上としているのはなぜか。
(→回答:)処分施設の規模とガラス固化体1本当たりの処分費用との関係について分析したと
ころ、
40,000 本程度以上であれば処分単価は処分施設の規模にほとんど影響されな
くなることから、40,000 本以上を前提として設定している。
・ガラス固化体が 40,000 本以上になるのはいつ頃か。
(→回答:)
かつて原子力発電が全体の発電量の約 3 割を占めていた頃は、
平成 33 年頃に 40,000
本に到達する見込みだったが、現時点では原子力発電所の稼働が少ないため、時期
を見通すことは難しい。一般的に 100 万 kW 級の原子力発電所 1 基が 1 年間稼働す
れば約 20〜30 本のガラス固化体が発生することとなる。
・最終処分費用は 3.8 兆円で足りるのか。
(→回答:)最終処分費用は事業の実施に必要なコストを積み上げて算出された上で、毎年、物
価指数の変動および利子率等を勘案した見直しが国により行われている。
<リスクと安全性>
・放射性廃棄物は期間や毒性が通常の廃棄物と大きく異なるので、想定外の事態が発生すると困
る。
(→回答:)地下水に放射性物質が染み出した場合のシミュレーションや、万が一調査で見つか
らなかった断層が処分場を直撃した場合のシミュレーションなど、
様々なリスクパ
ターンを検証し、安全対策を検討している。
・将来、人間が掘り返したりしないのか。
(→回答:)地層処分においては、処分場を埋め戻した後に、将来、温泉や鉱物資源の探査の
目的でボーリング孔を掘るような活動が行われるリスクを最小限とするため、鉱物
資源が存在する地域を避けること、記録を保存すること、処分場の性能に影響を与
える地域を保護区域に指定してそのことを知らせる標識を設置することにより地下
に影響を与える人間活動が行われないような対策を検討していく。また、原子炉等
規制法では、処分場を含めた範囲を規制委員会の許可なく掘削してはならないこと
が規定されている。
・ガラス固化体を輸送する際に、放射線の影響はないのか。
(→回答:)放射線を遮へいし、衝突や火災などの事故時でも放射性物質が漏れないよう、国際
的な基準をクリアした専用容器に入れて輸送する予定。
専用容器を輸送するための
車両や船も特別な安全対策を講じ、さらに専用道路を建設することも考えている。
・埋設後のモニタリングについては、どう考えているのか。
(→回答:)モニタリングの期間や方法などは、今後策定される規制基準の中で具体化されてい
くものであるが、地元の皆さまにも安心していただけるよう、ご相談しながら考え
ていきたい。
・上越には高田平野東縁断層、高田平野西縁断層という大きな断層があるが認識しているか。
(→回答:)両断層とも「科学的特性マップ」に反映されている。
・地上に現れていない断層はどうするのか。
(→回答:)科学的特性マップでは、全国の活断層を網羅的に整備した産業技術総合研究所の活
断層データベースに記載されている情報を一定の基準に基づき使用している。ご指
摘のとおり、科学的特性マップに掲載されていない活断層は存在するものと考えら
れる。そうした活断層の存在やその影響範囲については、処分地選定調査で地震波
探査やボーリング調査を実施して評価を行い、対応を検討する。
・緩衝材に地温が悪影響を及ぼさないように岩盤温度の上限値を決めるべきだ。
(→回答:)緩衝材に影響を与えない温度となるよう、その地域の地質環境を踏まえて詳細を設
計していくことになる。
・科学的特性マップは、地域版の詳細なものを用意すべき。
(→回答:)科学的特性マップは、地層処分に関係する科学的特性を、既存の全国データに基づ
き、一定の要件・基準に従って客観的に整理したものであり、さらに詳細な地域の
地質情報については、今後、処分地選定調査の中でしっかりと調査していく方針。
・安全だけを強調するのではなく、リスクについてもしっかりと資料に乗せるべき。資料は安全
とリスクが半分ずつになるよう作成してほしい。
(→回答:)地層処分事業の各段階において、想定されるリスクをしっかりとお示しした上で、
そのリスクに対して講じようとする対策をお示ししているつもりであるが、
参加者
の皆様のご意見も伺いながら、更なる改善を検討してまいりたい。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・説明会をどのように告知したのか。
もっと多くの人が参加するようにしないといけないのでは。
(→回答:)今回の上越会場の告知については、NUMOホームページでの告知以外に新聞や
タウン情報誌で告知を行った。地域によってはバスや電車などの交通広告なども行
っており、今後も広く皆さまの目に留まるよう努めてまいりたい。
・今ある原子力発電所それぞれに処分場をつくってはどうか。
(→回答:)個別の地域について適性があるかどうかは、その地域における詳細な処分地選定調
査を実施して検討していくこととなる。地下深部の安定性が求められる点で発電所
とは異なるため、原子力発電所の立地地域が必ずしも地層処分の処分地として適し
ているとは限らない。
・電力の大量消費地に最終処分場をつくればよいではないか。
(→回答:)処分に適した地盤や必要な面積等が確保できる見込みがあり、かつ地元の方々から
地層処分の受入れにもご理解をいただける地域であれば、発電所立地地域や大都市
圏も含めて処分場の候補地として検討対象となり得る。他方、現時点では特定の地
域を念頭に置いて、押し付け合いの構図をつくるのではなく、まずは、地層処分は
社会全体で取り組む問題であるとの共通認識を持つことを目指したい。
・質問の時間が足りない。
(→回答:)地層処分について初めて説明を聞かれる方にも分かりやすく、また、限られた時間の中
で、様々な質問や疑問にできるだけきめ細かくお答えするために、少人数テーブルで
質問を伺うこととしている。更なるご不明な点や疑問点があれば、お問い合わせをいた
だければ、追加でご説明をさせていただく。
<その他>
・電気は足りており、原子力は不要なのではないか。
(→回答:)現在、火力発電所で焚き増しを行い対応しているが、それに伴う電気料金の上昇や
エネルギーの安定供給、地球温暖化対策の面でリスクにさらされている。徹底した
省エネの推進や再エネの最大限の導入も図っていくが、省エネには国民生活の利便
性や企業の経済活動との関係で限界があり、再エネについても、気象条件に左右さ
れる供給の不安定性やコスト高という課題があり、今すぐ原子力を代替できるもの
ではない。
・原子力発電の費用は安いと言えるのか。
(→回答:)東日本大震災発生後の 2015 年に行ったコスト計算では、最終処分費用や安全対策
費用など、
さまざまなコストを盛り込んだ上で、
kWh 当たり 10.1 円以上という数値
が試算されており、原子力発電は他の電源よりも、なお安いという結果となってい
る。
・もんじゅが廃止され六ヶ所村の再処理工場も稼動しておらず、核燃料サイクルは破綻している
のではないか。
(→回答:)もんじゅは廃止するものの増殖炉の研究は諸外国との協力等により継続していく。
また、再処理で取り出したプルトニウムは、現在ある発電所を使ったプルサーマル
発電で利用し実績もある。日本原燃(株)の再処理施設については、再処理の技術その
ものは確立されており、
規制委員会の審査を経て 2021 年度の竣工を目指している。
・この説明会は地層処分の話をする場で原子力とは切り離して考える問題だというのは理解して
いるが、議論をするためにはどうしても原子力政策から話さないと進まないと思う。
・地層処分の話は、まず再稼働を止めてからにして欲しい。また、上越地区の説明会でそういう
声があることを、NUMO上層部にも伝えて欲しい。
(→回答:)
「よくいただくご質問への回答」にも記載しているとおり、同様のご意見は他会場
でもいただくため、よく認識しているが、既に相当量の使用済み燃料が国内に存在
している以上、再稼働の有無に関わらず、地層処分の実現に向けた道筋をつけてい
かなければならない問題と考えている。
以 上

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