科学的特性マップに関する対話型全国説明会 in 広島(福山市)開催結果
日 時:2019 年 9 月 1 日(日)13:30〜16:00
場 所:福山商工会議所 本所ビル 1F 102 会議室
参加者数:21 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・逸見 誠(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)
・吉見 修(原子力発電環境整備機構 地域交流部 部長)
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
1資源エネルギー庁の主な説明内容
・高レベル放射性廃棄物は、将来世代に負担を先送りしないよう、現世代の責任で、地下深くの
安定した岩盤に埋設する地層処分を行う方針。
・地層処分の実現に向けて、この問題を社会全体で解決しなければならない課題として考えてい
ただき、受入地域に対する敬意や感謝の念を持つことが必要との認識が共有されることが重要。
このため、広く全国の皆さまに地層処分に対する理解を深めていただけるよう、全国で対話活
動を順次開催していく。・高レベル放射性廃棄物の放射能は時間ととともに減衰し、
1000 年程度の間に 99%以上は低減し、
その後はゆっくりと減少していく。地層処分は、長期間にわたる安全上のリスクを小さくし、
将来世代の負担を小さくする処分方法との考え方が国際的に共有されている。日本では、地下
300m より深い安定した岩盤に埋設することで、人間の管理に依らず、長期にわたり放射性物質
を閉じ込め、生活環境から隔離していく考えである。
・地下深部は一般的に安定した環境だが、安全に地層処分を行うためには、火山活動や活断層の
影響など、様々な科学的特性を総合的に評価することが必要。
・科学的特性マップは、地層処分を行う際に考慮しなければならない科学的特性を、既存の全国
データに基づき、一律の要件・基準に従って客観的に整理し、全国地図の形で示し、地層処分
に対する国民理解を深めるために公表したもの。マップ公表をきっかけに、全国での対話活動
を重ねていく中で、やがて処分事業に関心を持っていただける自治体が出てきた場合、法律に
基づく 3 段階の処分地選定調査を実施し、個別地点において安全に地層処分が実施できるかど
うかを詳細に調査していく。・「地震や火山の多い日本で地層処分を安全に実施できるのか」というご質問を多くいただくが、
マップを活用しながら、日本でも地層処分に適した地下環境が広く存在するとの見通しを共有
しつつ、社会全体でどのように実現していくか、皆さまと一緒に考えていきたい。
2原子力発電環境整備機構(NUMO)の主な説明内容
・地下深部の岩盤は、1酸素が少ないため金属が腐食しにくく、万が一、放射性物質が漏れ出し
た場合でも、2地下水の流れが遅く、また、3岩盤が放射性物質を吸着し、放射性物質の移動
を遅らせることができる
(天然バリア)。放射能が大きく減少するまでの期間、
少なくとも 1000
年間は放射性物質をしっかり密封するために、ガラス固化体をオーバーパックという金属容器
(厚さ約 20cm)に格納し、粘土でできた緩衝材(厚さ約 70cm)で包む(人工バリア)
。このよ
うに、
「天然バリア」と「人工バリア」を組み合わせ、様々な対策を組み合わせることで、人
間の生活環境から隔離し閉じ込める。
・地層処分場は、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設できる施設の建設を 1 か所計画している。
処分場を閉鎖した後も、一定期間は規制当局の安全規制に従い、万が一のことに備える。
最終処分事業費は約 3.8 兆円が見込まれている。事業費は、原子力発電に伴う電気料金の一部
として電力会社等から拠出される。
・安全に地層処分を行うため、処分地選定調査の中で、断層や火山などを避けて場所を選ぶとい
う「立地による対応」
、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計による対応」、その対策により、安全性が確保できるかをシミュレーションなどで確認するという「安全性の
確認」
といった作業を繰り返し行う。
地震・津波、
輸送中の安全性についても設計による対応、
シミュレーションによる安全性確認を行う。
・文献調査は、学術論文等から地域の地質環境等を可能な限り把握し、概要調査を行う候補地区
を絞り込むもので、ボーリングなどの現地作業は行わない。調査結果は地域の皆さまに公表し
てご意見を伺うとともに、当該の市町村長や都道府県知事にご意見を伺い、反対の意向が示さ
れた場合は次の段階に進むことはない。
・処分地選定が円滑に行われるためには、地域による主体的な合意形成が図られることが重要。
こうした観点から、
処分事業についての情報提供や住民のご意見を事業に反映する
「対話の場」
が地域に設置され、多様な関係住民が参画され、積極的な活動が行われることが望ましい。こ
うした取組みは諸外国でも同様に行われ、地域のご要望の事業への反映など、重要な役割を果
たしている。
・さらに、フィンランドやスウェーデンなど先行する海外では、地層処分事業が地域に与える経
済社会的影響についても評価が行われ、雇用の創出などの経済効果が期待されている。また、
処分場立地による農業、観光業、不動産価値へのマイナス影響などは確認されていない。NU
MOは、
処分場建設までに本社を当該地域に移し、
地元雇用や地元発注に最大限取り組むなど、
地域の発展に貢献していく。処分地選定では、こうした地域経済への効果や影響も含め、総合
的に判断していただく。
・地層処分事業について不明な点、もっと詳しい話を聞いてみたいと関心を持っていただける場
合には、どなたでも説明の機会を設けさせていただくとともに、関連施設の見学にご案内する
など、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応させていただく。
しろまるテーブルでのグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載。
<地層処分事業>
・ガラス固化体は、どれくらいのペースで発生するのか。
(→回答:)東日本大震災以降の原子力発電所の稼働状況を踏まえると想定は難しいが、一般的
に 100 万 kW 級の原子力発電所 1 基が 1 年間稼働すれば約 20〜30 本のガラス固化体
が発生することとなる。
・地上で長期保管を行えばよいのではないか。
(→回答:)高レベル放射性廃棄物の放射能は、短期間で比較的早く減少しながらも、長く残
存する。地上施設で長期保管する場合、それが人間の生活環境に影響を及ぼさな
くなるまで、
数万年の長期間にわたり地上施設を維持・管理していく必要があり、
その間には施設の修復や建て替えも必要となる。さらに地上保管の場合、地震、
津波、台風などの自然現象による影響や、戦争、テロ、火災などといった人間の
行為の影響を受けるリスクがある。長期にわたり、このようなリスクを念頭に管
理を継続する必要がある地上施設を残すことは、将来の世代に負担を負わせ続け
ることとなり、現実的ではない。このため、人の管理を必要としない最終的な処
分(最終処分)を行うべきであるというのが国際的にも共通した認識となってい
る。
・万一の事故が起きた場合、誰が責任をとるのか。
(→回答:)処分事業における責任は事業の実施主体であるNUMOが負う。安全規制への適
合・遵守にとどまることなく、安全性の向上に向けて不断に取り組む義務を有し
ている。また、NUMOは原子力損害賠償制度に基づく賠償責任を負うが、
NUMOが対応困難な事故等が発生した場合や、
NUMOが解散した後については、
国が必要な措置を講じることとなる。
<リスクと安全性>
・地下 300m 以深とあるが、深いほうがより安全なのではないか。
(→回答:)地表から遠ざけ人間の生活環境から隔離する機能を十分確保する必要があるが、
一般に地下深部になるほど地温が高くなり、人工バリアの機能低下といった安全
性に影響を及ぼす可能性がある。また深くなれば地圧が高くなり、トンネルの強
度に影響を及ぼす問題も生じる。したがって一概に深ければ良いというわけでは
なく、地質構造に応じて最適な処分深度を設定することになる。
・破砕帯から地下水が噴出しても大丈夫なのか。
(→回答:)異常出水の可能性を低減させるために、十分な調査を行い、水を通しやすい比較
的規模の大きな破砕帯を避けるように処分場の設計を行う。余裕を持った排水設
備の準備や、湧水量を減少させる対策等を必要に応じて実施する。
・地震や火山の多い日本で、地層処分が安全に実現できるのか。
(→回答:)ヨーロッパと比較し、日本は地震や火山が多いという指摘があるものの、プレート
の動きに関係する活断層や火山活動などの現象は今後も 10 万年程度はほとんど変
化しないと考えられており、その傾向を考慮し、日本でも活断層や火山を避けて処
分場を建設することは可能と考えている。
・日本の岩種はヨーロッパとは異なると思うが、安全に地層処分を行うことは可能か。
(→回答:)数万年以上にわたり高レベル放射性廃棄物を人間の生活環境に影響を及ぼさないよ
うに隔離し閉じ込めるためには、例えば、埋設箇所の地質環境が、酸素が少なく地
下水の流れが緩慢といった閉じ込め機能を確保するとともに、地層の長期安定性を
確保することが必要。こうした条件を満たす場所であれば、岩石の種類にかかわら
ず、安全な地層処分を行うことは可能ということがこれまでの研究成果として確認
されており、日本でも安全に地層処分を実施することは可能である。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・福山市で説明会を開くことについてどのようなプロセスで決まったのか。
(→回答:)対話型全国説明会は、国民の皆さまに地層処分事業に対する理解と関心を深めてい
ただくため、全国各地で開催している。開催地の選定については、人口や交通の便
などの地域のバランスを考慮しつつ、開催場所の確保や周知・広報の準備などを終
えたところから順次開催することとしている。
・処分場を受け入れた場合のメリットは何か。
(→回答:)最終処分地が決まった場合には、NUMOは本拠をその地域に移転し、NUMO職
員や関連事業者は地域の一員として地域の発展に貢献する。また、NUMO・電気
事業者・国は、雇用の創出や生活の向上ならびに国内外との交流拡大など、地域の
持続的な発展に資する総合的な支援策について、自治体や地域住民との対話を通じ、
その地域のニーズを汲み取りながら具体化し、地域と共生していく。こうした支援
策の1つとして、処分地選定調査の段階から、国の交付金制度が活用できる。具体
的には、文献調査の段階では 1 年で最大 10 億円、調査期間で最大 20 億円。概要調
査の段階では 1 年で最大 20 億円、調査期間で最大 70 億円となる。
・文献調査の結果は公開するのか。
(→回答:)文献調査の結果を地域住民に公開して、十分にご説明する。
・地層処分は長期にわたる事業であるので、次世代層の理解を得ることが重要である。次世代層
にはどのように働きかけているのか。
(→回答:)学校での出前授業や、移動型の模型展示車によるイベント出展を全国各地で行うな
ど、次世代層にも広くこの事業を知っていただけるよう取り組んでいる。次世代層
からのご理解を得ることは重要であると考えており、今後も広報活動について工夫
していきたい。
<その他>
・まず、高レベル放射性廃棄物の発生原因である原子力発電を止めるべきではないか。
(→回答:)資源の乏しい日本において、国民生活や産業活動を守るという責任あるエネルギ
ー政策を実現するためには、原子力発電への依存度は可能な限り低減していくが、
ゼロにするわけにはいかない。経済性や温暖化対策の問題にも配慮しつつ、エネ
ルギー供給の安定性を確保するためには、安全最優先という大前提のもと原子力
を活用していかざるを得ない。また、原子力発電を止める・止めないにかかわら
ず、すでに高レベル放射性廃棄物があることは事実であり、現世代の責任で地層
処分を進める必要があると考えている。
・説明が専門的すぎてわかりにくい。技術的なことだけでなく、文章の専門家みたいな人も入れ
て、わかりやすい説明に努めるべき。
(→回答:)専門的な説明にならないよう心掛けているが、今後ともできるだけ分かりやすい
説明に努めていきたい。・「プレートの大きさに比べれば処分場は点のようなもの」は、何が言いたいのかわからない。
危険なものを「点のようなもの」と矮小化してごまかしているように思える。
(→回答:)長期間の処分を考えた時に、処分場が避けるべき断層や火山を避けられるのかと
いうご質問を受けることが多い。断層や火山の形成される位置は、プレートの大
きさのスケール(例えば数十km四方の範囲など)で偏在している。それらの要素
を避けて数km四方の地層処分場を選ぶという視点から考えると、処分場は断層や
火山の影響がある区画以外の面積部分に比べて、処分場に必要な面積は非常に小
さいということを伝えたかった。矮小化の意図は一切無いが、分かり易い返答の
ためのご指摘と受け止めたい。
以 上

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