高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会 in 青森
(弘前市)
開催結果
日 時:2019 年 12 月 22 日(日)13:30〜16:00
場 所:ヒロロ 4 階 市民文化交流館ホール
参加者数:33 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・那須 良(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課長)
・伊藤 眞一(原子力発電環境整備機構 理事)
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
・高レベル放射性廃棄物は、将来世代に負担を先送りしないよう、現世代の責任で、地下深くの
安定した岩盤に埋設する地層処分を行う方針。
・地層処分の実現に向けて、この問題を社会全体で解決しなければならない課題として考えてい
ただき、受入地域に対する敬意や感謝の念を持つことが必要との認識が共有されることが重要。
このため、広く全国の皆さまに地層処分に対する理解を深めていただけるよう、全国で対話活
動を順次開催していく。・高レベル放射性廃棄物の放射能は時間ととともに減衰し、
1000 年程度の間に 99%以上は低減し、
その後はゆっくりと減少していく。
・最終処分の方法は、
国際的にも長い間議論が交わされ、
宇宙処分、
海洋底処分や氷床処分など、
様々な方法が検討されてきたが、長期間にわたる安全上のリスクと、将来世代の負担を小さく
するためには、人間の管理によらない地層処分が最も適切な処分方法であるというのが、各国
共通の考え方となっている。
・地層処分では、地下 300m より深い安定した環境で、長期にわたり放射性物質を閉じ込め、生活
環境から隔離していく。
・日本では、原子力発電所の運転が始まるよりも前から最終処分の方法について検討され、国内
外の専門家の評価を経て、日本においても地層処分が技術的に可能であることが示された。
・地層処分場は、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設できる施設の建設を 1 か所計画している。
最終処分事業費は約 3.8 兆円が見込まれている。事業費は、原子力発電に伴う電気料金の一部
として電力会社等から拠出される。
・地下深部は一般的に安定した環境だが、安全に地層処分を行うためには、火山活動や活断層の
影響など、様々な科学的特性を総合的に評価することが必要。・「地震や火山の多い日本で地層処分を安全に実施できるのか」というご質問を多くいただくが、
こうした地層処分に必要な地質環境について理解を深めていただくため、地層処分を行う際に
考慮しなければならない科学的特性を、既存の全国データに基づき、一律の要件・基準に従っ
て客観的に整理し、全国地図の形で示した「科学的特性マップ」を公表した。マップを活用し
ながら、日本でも地層処分に適した地下環境が広く存在するとの見通しを共有しつつ、社会全
体でどのように実現していくか、皆さまと一緒に考えていきたい。
・安全に地層処分を行うため、NUMOでは様々なリスク要因を抽出し、対応と安全性の確認を
行う。
処分地選定調査に基づいて断層や火山などを避けて場所を選ぶという
「立地による対応」、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計による対応」
、その対策により、安全
性が確保できるかをシミュレーションなどで確認するという「安全性の確認」といった対策を
行う。また、地震・津波、輸送中の安全性についても設計による対応、シミュレーションによ
る安全性確認を行う。
・処分地選定に向けては、まずは国民全体での理解が重要であることから、ひきつづき全国各地
での対話活動に取り組んでいく。その上で、いずれかの地域において処分事業に関心を持って
いただける自治体が出てきた場合には、地域のみなさまのご意見を伺いながら、法律に基づい
た文献調査、概要調査、精密調査の段階的な調査を行い、最終処分地を選定する。
・文献調査は、事業を深く知っていただき、更なる調査を実施するかどうかを検討してもらうた
めの、材料を集める事前調査的な位置付け。ボーリングなどの現地作業は行わない。調査結果
は地域の皆さまに公表してご意見を伺うとともに、当該の市町村長や都道府県知事にご意見を
伺い、反対の意向が示された場合は次の段階に進むことはない。
・処分地選定が円滑に行われるためには、地域による主体的な合意形成が図られることが重要。
こうした観点から、
処分事業についての情報提供や住民のご意見を事業に反映する
「対話の場」
が地域に設置され、多様な関係住民が参画され、積極的な活動が行われることが望ましい。こ
うした取組みは諸外国でも同様に行われ、地域のご要望の事業への反映など、重要な役割を果
たしている。
・最終処分事業は、地域での雇用や経済波及効果が見込まれる大規模事業。NUMO、電気事業
者、国は連携して、地域の抱える課題の解決や、地域の発展ビジョンの実現に取り組む。
・これまで対話活動を進める中で、地層処分事業を「より深く知りたい」との思いから主体的に
活動されている地域団体などの関心グループ (経済団体、大学・教育関係者、NPOなど)
が全国各地に広がりつつある。
・地層処分事業について不明な点、もっと詳しい話を聞いてみたいと関心を持っていただける場
合には、どなたでも説明の機会を設けさせていただくとともに、関連施設の見学にご案内する
など、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応させていただく。
しろまるテーブルでのグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載。
<地層処分事業>
・なぜ地層処分なのか。
(→回答:)
原子力発電が開始された 1960 年代から、
高レベル放射性廃棄物の最終処分については、
様々な検討がなされてきた。その中で、氷床処分、海洋底処分、宇宙処分、地層処分が
候補として検討された。氷床処分と海洋底処分については国際条約で不可能となり、宇
宙処分は発射時の信頼性やコスト面などから現実的ではないと判断された。
地層処分は
人間の生活環境から隔離することができ、
元来、
地層が持っている閉じ込め機能により、
人による継続的な管理が不要になるため、現在、最も適切な方法であるとの基本的な考
え方が世界各国で共有されている。
・処分場はどれくらいの広さなのか。
(→回答:)地上施設が 1〜2 km2程度・地下施設が 6〜10 km2程度である。
・処分場は 1 か所で足りるのか。
(→回答:)現在ある使用済燃料をすべてガラス固化体として換算し、今あるガラス固化体と合わせ
ると約 25,000 本となる。40,000 本以上のガラス固化体を埋設できる処分場を 1 か所つ
くることとしている。
・埋設後は一切管理しないのか。
(→回答:)人間が管理することなく、高レベル放射性廃棄物を地上の生活環境から隔離し、閉じ込
めることができるというのが地層処分の基本的な考え方であり、地層処分施設を適切に
設計することにより、人間社会の管理による不確実性を排除するという点も、地層処分
の安全の考え方である。なお、建設・操業(埋設作業を行う期間)から閉鎖(管理の終
了)までの間は、放射線を常時モニタリングすることにより施設周辺に放射線の影響が
ないことを確認し、また、埋設後のモニタリングの期間や方法などは、今後策定される
規制基準の中で具体化されていくことが考えられるが、地元の皆さまにも安心していた
だけるよう、ご相談しながら考えていきたい。
・長期間にわたる責任は誰が負うのか。
(→回答:)処分事業における一義的責任は事業の実施主体であるNUMOが負う。安全規制への適合・
遵守にとどまることなく、
安全性の向上に向けて不断に取り組む義務を有している。
また、NUMOは原子力損害賠償制度に基づく賠償責任を負うが、NUMOが対応困難
な事故等が発生した場合や、NUMOが解散した後については、国が必要な措置を講じ
ることとなる。
・現世代の責任というが、処分し終わるのは次の世代である。
(→回答:)現世代の責任として、現時点で最良の処分方法と考えられている地層処分を進めて、次
の世代に問題を先送ることがないよう、解決の道筋をつけることが重要であり、そのた
めに理解活動を進めているところ。
・青森県との約束を守るための今後のスケジュールは。
(→回答:)今後の進め方については、先日行われた国の審議会でも議論されたところ。地層処分事
業について「より深く知りたい」団体に対する情報提供を強化し全国各地でグループの
数が拡大することを目指し、2020 年以降、複数の地域が文献調査に関心を示していただ
けるようになることを目指している。
・直接処分は検討しないのか。
(→回答:)国の基本方針では「幅広い選択肢を確保する観点から、直接処分など代替処分オプショ
ンに関する調査・研究を推進する」としており、直接処分についてもJAEAが研究を
行っている。
<リスクと安全性>
・日本では地下水はどこにでもある。地下施設に影響がないところはなく、地層処分は日本では無理
ではないか。
(→回答:)地下水は、どのような地域であっても多かれ少なかれ存在するが、地下深部では岩盤
が水を通しにくく、
また地下水で満たされた地下環境では、
地下水は非常にゆっくりと
動くことになる。
処分場における深部地下水の影響については、
建設・操業時における
影響と、閉鎖後の影響の観点が存在するが、建設・操業時については、排水や止水処理
などのこれまで他の地下施設でも利用されてきた工学的措置によって対応可能である
ことが示されており、
閉鎖後については、
地下水の流れはもとのとおりに動きが遅くな
る。
いずれにしても、
今後の処分地選定調査段階で地下水の性状・挙動等を調査した上
で評価していくこととなる。
・なぜ処分場建設地は海に近い方がよいのか。
(→回答:)埋設する廃棄物を船で運搬すること、また港から処分場までの陸上輸送時や積み下ろ
しの作業などの核セキュリティ上の観点から、海から 20km 以内であればより望ましい
と考えられ、科学的特性マップ上は濃いグリーンで表示されている。
・様々な災害が増えている中、地層処分を行っても大丈夫なのか。
(→回答:)地上保管の方が、地震、津波、台風などの自然現象による影響や、戦争、テロ、火災な
どといった人間の行為の影響を受けるリスクが高い。長期にわたり、このようなリスク
を念頭に管理を継続する必要がある地上施設を残すことは、将来の世代に負担を負わせ
続けることとなり、現実的ではない。このため、人の管理を必要としない地層処分を選
択するのが国際的にも共通した認識となっている。
・弘前は安定した地盤であるため、弘前で地層処分すべきだ。
・青森県六ヶ所村の貯蔵施設では、製造直後のガラス固化体を実際に貯蔵し運用している。地層処分
のために 50 年程度冷却した後のガラス固化体であれば温度もかなり下がっている。製造直後のも
のを地上保管している現状よりも地層処分の方が安全だと思う。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・処分場を受け入れた場合のメリットは何か。
(→回答:)最終処分地が決まった場合には、NUMOは本拠をその地域に移転し、NUMO職員や
関連事業者は地域の一員として地域の発展に貢献する。また、NUMO・電気事業者・
国は、雇用の創出や生活の向上ならびに国内外との交流拡大など、地域の持続的な発展
に資する総合的な支援策について、自治体や地域住民との対話を通じ、その地域のニー
ズを汲み取りながら具体化し、地域と共生していく。こうした支援策の1つとして、処
分地選定調査の段階から、
国の交付金制度も活用できる。
具体的な地域が出てきた際は、
その地域にとって何が良いのか、持続性や親和性はあるか等も考えながら、対話の場な
どでご相談したい。
・処分施設を受け入れる地域に対する地域共生や交付金等の支援は大切だが、調査だけで交付金がで
るというのは、むしろ逆効果になることもあるのではないか。
(→回答:)文献調査開始に伴い地域に設置される「対話の場」などを通じて継続的な対話を進め、
処分事業に関する理解を深めていただくのみならず、地域の発展ビジョンを議論してい
くことが重要だと考えている。交付金はそのためのツールの一つである。最終処分施設
が実現すれば日本全国がその恩恵を受けることになるので、国全体の課題を解決するた
めにご協力いただく地域の皆さまには、社会として適切に便益を還元していくことが必
要と考え、調査の段階から交付金を活用できる制度となっている。
・地層処分に関するデジタルコンテンツは YouTube 等でどんどん流すと良い。
(→回答:)過去に制作したものは既に YouTube に掲載しており、順次公開している。是非NUMO
のホームページからご覧いただきたい。
・NUMOは定期的に会報等を発行しているのか。
(→回答:)約 2 週間に 1 度のペースでメールマガジンを発信している。
・ガラス固化体を青森県からの搬出期限の約束を守るためには、国が候補地点を決めて進めていくよ
うなことが必要ではないか。
(→回答:)文献調査地点を見つけるまでに時間がかかっており青森県の皆さまには大変ご心配をお
かけしている。東洋町での反省等も踏まえ、最終処分の実現には広く全国の皆さまのご
理解を得ることが重要と考えており、現在はこのような丁寧な対話を積み重ねていると
ころ。最終処分は 100 年にわたる事業であり、それだけの長期事業について、地域の皆
さまのご理解なく強引に推し進めるようなことは不可能だと考えている。全国の皆さま
に最終処分事業について知っていただく活動が大切だと考えている。
・地層処分は長期にわたる事業であるので、次世代層の理解を得ることが重要である。次世代層には
どのように働きかけているのか。
(→回答:)学校での出前授業や、移動型の模型展示車によるイベント出展を全国各地で行うなど、
次世代層にも広くこの事業を知ってもらえるよう取り組んでいる。次世代層からの理解
を得ることは重要であると考えており、今後も広報活動について工夫していきたい。
・地上保管している現状と比べれば、地層処分する方がよほど安全。青森県は最終処分場にしないと
の約束があるが、個人的には処分場を建設しても良いのではないかと思うこともある。
(→回答:)国と県との約束があるので、それを違えて青森に設置することはない。
・NUMOの対話型全国説明会のグループ質疑における、参加者の質問や疑問を模造紙の上で見える
化して共有できたことは評価できる。このような地道な取り組みを熱心に行っていることは誇りに
思っても良いと感じる。
・冒頭の映像(15 分)はよくできていると思ったし、内容もよく分かった。
・10 年ほど前、説明会に参加した際に比べ、今回は多少説明が改善されたように思う。
・インターネット環境がない人も多いので、インターネット以外の情報へのアクセス方法、問合せ方
法が必要。
・選挙公報紙のように全世帯にいきわたる情報媒体だと、地層処分について広く知ってもらえると思
う。
・伝える広報ではなく、伝わる広報を意識して説明してもらいたい。
・今回の対話型説明会のような活動は大切であり、今後も継続すべきだと思う。
<その他>
・NUMOは国の機関か。
(→回答:)国の機関ではない。国から認可された法人であり、電力会社からの拠出金で運営してい
る組織である。
・風評被害の影響はないのか。
(→回答:)風評被害を防ぐためには、地域内外の皆さまに、地層処分を適切に行えば、放射性物質
により地域の自然環境や農水産品等が汚染されることはないという情報が正確に伝わる
ことが重要と考えており、より多くの方に地層処分の仕組みや安全確保策について理解
を深めていただけるよう、情報提供と対話活動を進めていく。
・国民は誰も最終処分場は受け入れないと思うが、一方で、地上に廃棄物を置いたままにしておくの
も危険であり、ジレンマを感じる。このような状況で、さらに廃棄物を生み出し続ける原子力発電
を続けることは反対である。まず、高レベル放射性廃棄物の発生原因である原子力発電を止めるべ
きではないか。
(→回答:)資源の乏しい日本において、国民生活や産業活動を守るという責任あるエネルギー政策
を実現するためには、原子力発電への依存度は可能な限り低減していくが、ゼロにする
わけにはいかない。経済性や温暖化対策の問題にも配慮しつつ、エネルギー供給の安定
性を確保するためには、安全最優先という大前提のもと原子力を活用していかざるを得
ない。また、原子力発電を止める・止めないにかかわらず、すでに高レベル放射性廃棄
物があることは事実であり、
現世代の責任で地層処分を進める必要があると考えている。
・原子力発電が始まったときには最終処分について考えていなかったのか。
(→回答:)
原子力発電の利用が始まる 1966 年よりも前から、
放射性廃棄物の最終処分方法について
は様々な検討がなされてきた。氷床処分・海洋底処分・宇宙処分・地層処分が候補とし
て検討されたが、氷床処分と海洋底処分については国際条約で禁止され、宇宙処分は発
射時の信頼性やコスト面などから現実的ではないと判断された。こうした検討を経て、
現在は地層処分が現時点で最も適切な方法であるとの基本的な考え方が世界各国で共有
されている。
・CO2 を地下に貯留する実験が進められているが、地下深く活用するという点では高レベル放射性廃
棄物の地層処分と同じであるのに、これに対しては反対の声が出ていない。国民感覚の矛盾を感じ
る。
以 上

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