高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会 in 広島(東広島市)
開催結果
日 時:2020 年 10 月 14 日(水)18:20〜20:30
場 所:広島テクノプラザ 第 1 研修室ほか
参加者数:11 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・逸見 誠(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)ほか
・富森 卓(原子力発電環境整備機構 地域交流部 専門部長)ほか
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
・高レベル放射性廃棄物は、将来世代に負担を先送りしないよう、現世代の責任で、地下深くの
安定した岩盤に埋設する地層処分を行う方針。
・地層処分の実現に向けて、この問題を社会全体で解決しなければならない課題として、受入地
域に対する敬意や感謝の念を持つことが必要との認識が共有されることが重要。このため、広
く全国の皆さまに地層処分に対する理解を深めていただけるよう、全国で対話活動を順次開催
していく。
・高レベル放射性廃棄物は貯蔵施設内では約2mのコンクリートで遮蔽することで、その外側で
は人が作業できるレベルまで影響を低減することができる。放射能は時間ととともに減衰し、
1000 年程度の間に 99%以上は低減し、その後はゆっくりと減少していく。
・長期にわたり放射性物質を閉じ込め、
生活環境から隔離しておくために、
地表から 300m 以上深
い安定した場所へ地層処分する。
・地層処分場は、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設できる施設の建設を 1 か所計画している。
最終処分の事業費は約 3.9 兆円が見込まれている。事業費は、原子力発電に伴う電気料金の一
部として電力会社等から拠出される。
・最終処分の方法は、国際的にも長い間議論が交わされ、宇宙処分、海洋投棄や氷床処分など、
様々な方法が検討されてきたが、長期間にわたる安全上のリスクと、将来世代の負担を小さく
するためには、人間の管理によらない地層処分が最も適切な処分方法であるというのが、各国
共通の考え方となっている。
・日本では、原子力発電所の運転が始まるよりも前から最終処分の方法について検討され、国内
外の専門家の評価を経て、日本においても地層処分が技術的に可能であることが示された。
・地下深部は一般的に安定した環境だが、安全に地層処分を行うためには、火山活動や活断層の
影響など、様々な科学的特性を総合的に評価することが必要。・「地震や火山の多い日本で地層処分を安全に実施できるのか」というご質問を多くいただくが、
こうした地層処分に必要な地質環境について理解を深めていただくため、地層処分を行う際に
考慮しなければならない科学的特性を、既存の全国データに基づき、一律の要件・基準に従っ
て客観的に整理し、全国地図の形で示した「科学的特性マップ」を公表した。マップを活用し
ながら、日本でも地層処分に適した地下環境が広く存在するとの見通しを共有しつつ、社会全
体でどのように実現していくか、皆さまと一緒に考えていきたい。
・安全に地層処分を行うため、NUMOでは様々なリスク要因を抽出し、対応と安全性の確認を
行う。
処分地選定調査に基づいて断層や火山などを避けて場所を選ぶという
「立地による対応」、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計による対応」
、その対策により、安全
性が確保できるかをシミュレーションなどで確認するという「安全性の確認」といった対策を
行う。また、地震・津波、輸送中の安全性についても設計による対応、シミュレーションによ
る安全性確認を行う。
・処分地選定に向けては、まずは国民全体での理解が重要であることから、引き続き全国各地で
の対話活動に取り組んでいく。その上で、いずれかの地域において処分事業に関心を持ってい
ただける自治体が出てきた場合には、地域の皆さまのご意見を伺いながら、法律に基づいた文
献調査、概要調査、精密調査の段階的な調査を行い、最終処分地を選定する。
・文献調査は、全国規模で整備されたデータに加えて地域固有の文献・データを整理・分析し、
市町村の皆さまに地層処分事業についての理解を深めていただくとともに、次なる調査を実施
するかどうかを検討していただくための材料を集める、事前調査的な位置付け。ボーリングな
どの現地作業は一切行わない。調査結果は地域の皆さまにご説明をさせていただき、ご意見を
伺うとともに、当該の市町村長や都道府県知事にご意見を伺い、その意見に反して、次の段階
に進むことはない。
・処分地選定が円滑に行われるためには、地域による主体的な合意形成が図られることが重要。
こうした観点から、文献調査の実施に際しては、処分事業についての情報提供や住民のご意見
を事業に反映する「対話の場」を地域に設置いただき、多様な関係住民の参画を得て、市町村
の将来像などをご議論いただきたい。こうした取組みは諸外国でも同様に行われ、事業への地
域のご要望の反映など、重要な役割を果たしている。
・最終処分事業は、地域での雇用や経済波及効果が見込まれる大規模な公共事業。NUMO、電
気事業者、
国は連携して、
地域の抱える課題の解決や、
地域の発展ビジョンの実現に取り組む。
・これまで対話活動を進める中で、地層処分事業を「より深く知りたい」との思いから主体的に
活動されている地域団体などの関心グループ (経済団体、大学・教育関係者、NPOなど)
が全国各地に広がりつつある。
・地層処分事業について不明な点、もっと詳しい話を聞いてみたいと関心を持っていただける場
合には、どなたでも説明の機会を設けさせていただくとともに、関連施設の見学にご案内する
など、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応させていただく。
しろまるテーブルでのグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載。
<地層処分の概要>
・処分場の建設および維持にかかるコストを教えてほしい。
(→回答:)処分事業の費用は全体で約 3.9 兆円と試算している。その内訳としては技術開発費、調
査費および用地取得費、設計および建設費、操業費、解体および閉鎖費、モニタリング
管理費、プロジェクト管理費などの費用である。
・地上保管のまま、処分場をつくらないという選択肢はないのか。
(→回答:)地上保管のまま、処分場をつくらないという選択肢は考えていない。高レベル放射性廃
棄物の放射能は、短期間で比較的早く減少しながらも、長く残存する。地上施設で貯蔵
管理する場合、施設の修復や建て替えが必要になるとともに、地震、津波、台風などの
自然現象による影響や、戦争、テロ、火災などといった人間の行為の影響を受けるリス
クがある。長期にわたり、このようなリスクを念頭に管理を継続する必要のある地上施
設を残すことは、将来の世代に負担を負わせ続けることとなり、現実的ではない。この
ため、人の管理を必要としない最終的な処分方法である地層処分が最も適切であるとい
うのが、国際的にも共通した認識となっている。ただし、将来の科学技術の進展を否定
するものではなく、今後より良い処分方法が実用化された場合等に将来世代が最良の処
分方法を選択できるようにするため、国の基本方針において最終処分施設の閉鎖までの
間は廃棄体の回収可能性を確保するとの考えを盛り込んでいる。
・ガラス固化体 40,000 本はいつ頃に到達予定か。処分場は1か所で足りるのか。
(→回答:)かつて原子力発電が全体の発電量の約 3 割を占めていた頃は、2021 年頃に 40,000 本に
到達する見込みだったが、現時点では原子力発電所の稼働が少ないため、時期を見通す
ことは難しい。一般的に 100 万 kW 級の原子力発電所 1 基が 1 年間稼働すれば約 20〜30
本のガラス固化体が発生することとなる。現在ある使用済燃料(約 19,000t)をすべて再
処理してガラス固化体として換算し、今あるガラス固化体(約 2,500 本)と合わせると約
26,000 本相当となる。日本では 40,000 本以上のガラス固化体を埋設できる処分場を1
か所つくることとしている。
・遠い将来に処分場の存続に関する記録が喪失した場合、後世の人が知らずに採掘するおそれがある
ため、対策をしっかり検討していただきたい。数万年先のことを考えると、看板やモニュメントで
は不十分である。
(→回答:)ご指摘の点は重要な課題と認識しており、世界各国とも連携しながら、実効性のある対
策を検討していきたい。
・処分費用 3.9 兆円は税金で賄われると勘違いしている人が多い。一般の人にも分かるようにしっか
り説明した方がよい。
(→回答:)そのような勘違いをされることがないよう、引き続き、しっかり説明していきたい。
・処分事業は誰かがやらないといけないこと。すでにあるゴミの問題は、我々の世代でしっかりと道
筋をつけるべき。原発反対だから地層処分も反対というのはおかしい。
(→回答:)将来世代に負担を先送りしないよう、現世代の責任で地層処分に向けた取組を確実に進
めていく方針である。
<リスクと安全性>
・処分場の深さを 300m 以深とする根拠は何か。深ければ深い方が良いのか。
(→回答:)300m とは、人間の地下利用が地表から 300m 以上深いところにほとんど及んでいないこ
とや、諸外国での検討状況を踏まえて法律で設定された最小の深さであり、処分地選定
調査において地質を調査した上で、処分に適した深さに処分することになる。なお、深
ければ深い方が適しているというわけではなく、深いと逆に地温が高くなり、人工バリ
アの機能低下といった安全性に影響を及ぼす可能性がある。
・放射線は目に見えないものであり不安なため、モニタリングなどの数値による管理やその情報公開
を徹底してもらえれば安心できる。
(→回答:)建設・操業から閉鎖までの間は、放射線を常時モニタリングすることにより施設周辺に
放射線の影響がないことを確認する。また、施設閉鎖後のモニタリングの期間や方法な
どは、今後策定される規制基準の中で具体化されていくものであるが、地元の皆さまに
も安心していただけるよう、ご相談しながら考えていきたい。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・どの自治体も処分場を受け入れてくれなかったらどうするか、あるいは処分場が見つからなかった
らどうするのか、考えているのか。
(→回答:)高レベル放射性廃棄物はすでに存在しているため、そうならないように、全国各地でき
め細かく地層処分についての対話活動を積み重ねること等により、最終処分場の確保に向けてしっ
かりと取り組んで行きたい。
・交付金によって、処分場の受け入れを地域へ押し付けているような印象を受ける。
(→回答:)地層処分の実現は、国全体の課題を一部の地域の協力を得て解決しようとする話である
ことから、受入れ地域に対して感謝の念を示し、社会として適切に便益を還元していく
観点から、国は電源立地地域対策交付金制度の対象としている。また、交付金は長期事
業である地層処分事業の受入地域の課題を解決し、地域の未来をともに創っていくため
の資源と考えている。
・事業受け入れに伴う風評被害にどう対応するのか。
(→回答:)風評被害を防ぐためには、事業を受け入れていただく地域というよりも、むしろその他
の地域の方々に、地層処分を適切に行えば、本来、放射性物質により地域の自然環境や
農水産品等が汚染されるリスクは極めて小さいという正確な情報が伝わることが重要と
考える。大都市等を含めて、一人でも多くの方に地層処分の仕組みや安全確保策につい
て理解を深めていただくよう、
わかりやすい情報提供と全国的な対話活動を進めていく。
なお、既に処分場を決定しているフィンランドにおいては、農業や観光業に対してマイ
ナス影響が出ることはないと評価している。
・今回の説明会が広く周知されておらず、アクセスの悪い会場での開催で参加人数が少ない。
このような取り組みでは地域住民の理解が広がらないのではないか。
(→回答:)本説明会の周知については、地方新聞、タウン情報誌、地元の交通広告のほか、ポス
ティングによるチラシ配布などを行っている。
また、
本会場は近隣に大学があり、
学生
の参加も期待できたことから選定したものであるが、
今後とも交通アクセスの面も含め、
地域の皆さまが参加しやすい会場を確保していきたい。
なお、
今回の対話型全国説明会
のほかにも、
学校での出前授業、
移動型の模型展示車によるイベント出展を全国各地で
行うなど、次世代層も含め、広くこの事業を知ってもらえるよう取り組んでいる。
<その他>
・北海道神恵内村は、科学的特性マップ上でオレンジの部分が多いが、それでも文献調査ができるの
か。
(→回答:)神恵内村にもグリーンの部分がある。文献調査は、調査の実施見込みについて確認を
行った上で開始することになる。
以 上

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