科学的特性マップに関する対話型全国説明会 in 北海道(函館市)開催結果
日 時:2019 年 6 月 4 日(火)18:20〜20:30
場 所:函館北洋ビル 8 階 大ホール
参加者数:19 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・吉村 一元(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策技術室長)
・水野 敦(原子力発電環境整備機構 地域交流部 部長)
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
1資源エネルギー庁の主な説明内容
・高レベル放射性廃棄物は、将来世代に負担を先送りしないよう、現世代の責任で、地下深くの
安定した岩盤に埋設する地層処分を行う方針。
・地層処分の実現に向けて、この問題を社会全体で解決しなければならない課題として考えてい
ただき、受入地域に対する敬意や感謝の念を持つことが必要との認識が共有されることが重要。
このため、広く全国の皆さまに地層処分に対する理解を深めていただけるよう、全国で対話活
動を順次開催していく。・高レベル放射性廃棄物の放射能は時間ととともに減衰し、
1000 年程度の間に 99%以上は低減し、
その後はゆっくりと減少していく。地層処分は、長期間にわたる安全上のリスクを小さくし、
将来世代の負担を小さくする処分方法との考え方が国際的に共有されている。日本では、地下
300m より深い安定した岩盤に埋設することで、人間の管理に依らず、長期にわたり放射性物質
を閉じ込め、生活環境から隔離していく考えである。
・地下深部は一般的に安定した環境だが、安全に地層処分を行うためには、火山活動や活断層の
影響など、様々な科学的特性を総合的に評価することが必要。
・科学的特性マップは、地層処分を行う際に考慮しなければならない科学的特性を、既存の全国
データに基づき、一律の要件・基準に従って客観的に整理し、全国地図の形で示し、地層処分
に対する国民理解を深めるために公表したもの。マップ公表をきっかけに、全国での対話活動
を重ねていく中で、やがて処分事業に関心を持っていただける自治体が出てきた場合、法律に
基づく 3 段階の処分地選定調査を実施し、個別地点において安全に地層処分が実施できるかど
うかを詳細に調査していく。・「地震や火山の多い日本で地層処分を安全に実施できるのか」というご質問を多くいただくが、
マップを活用しながら、日本でも地層処分に適した地下環境が広く存在するとの見通しを共有
しつつ、社会全体でどのように実現していくか、皆さまと一緒に考えていきたい。
2原子力発電環境整備機構(NUMO)の主な説明内容
・地下深部の岩盤は、1酸素が少ないため金属が腐食しにくく、万が一、放射性物質が漏出した
場合でも、2地下水の流れが遅く、また、3岩盤が放射性物質を吸着し、放射性物質の移動を
遅らせることができる(天然バリア)
。放射能が大きく減少するまでの期間、少なくとも 1000
年間は放射性物質をしっかり密封するために、ガラス固化体をオーバーパックという金属容器
(厚さ約 20cm)に格納し、粘土でできた緩衝材(厚さ約 70cm)で包む(人工バリア)
。このよ
うに、
「天然バリア」と「人工バリア」を組み合わせ、様々な対策を組み合わせることで、人
間の生活環境から隔離し閉じ込める。
・地層処分場は、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設できる施設の建設を 1 か所計画している。
処分場を閉鎖した後も、一定期間は規制当局の安全規制に従い、万が一のことに備える。
最終処分事業費は約 3.8 兆円が見込まれている。事業費は、原子力発電に伴う電気料金の一部
として電力会社等から拠出される。
・安全に地層処分を行うため、処分地選定調査の中で、断層や火山などを避けて場所を選ぶとい
う「立地による対応」
、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計による対応」、その対策により、安全性が確保出来るかをシミュレーションなどで確認するという「安全性の
確認」
といった作業を繰り返し行う。
地震・津波、
輸送中の安全性についても設計による対応、
シミュレーションによる安全性確認を行う。
・文献調査は、学術論文等から地域の地質環境等を可能な限り把握し、概要調査を行う候補地区
を絞り込むもので、ボーリングなどの現地作業は行わない。調査結果は地域住民に公表してご
意見を伺うとともに、当該の市町村長や都道府県知事に意見を伺い、反対の意向が示された場
合は次の段階に進むことはない。
・処分地選定が円滑に行われるためには、地域による主体的な合意形成が図られることが重要。
こうした観点から、
処分事業についての情報提供や住民のご意見を事業に反映する
「対話の場」
が地域に設置され、多様な関係住民が参画し、積極的な活動が行われることが望ましい。こう
した取組みは諸外国でも同様に行われ、地域要望の事業への反映など、重要な役割を果たして
いる。
・さらに、フィンランドやスウェーデンなど先行する海外では、地層処分事業が地域に与える社
会経済的影響についても評価が行われ、雇用の創出などの経済効果が期待されている。また、
処分場立地による農業、観光業、不動産価値へのマイナス影響などは確認されていない。NU
MOは、
処分場建設までに本社を当該地域に移し、
地元雇用や地元発注に最大限取り組むなど、
地域の発展に貢献していく。処分地選定では、こうした地域経済への効果や影響も含め、総合
的に判断していただく。
・地層処分事業について不明な点、もっと詳しい話を聞いてみたいと関心を持っていただける場
合には、どなたでも説明の機会を設けさせていただくとともに、関連施設の見学にご案内する
など、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応をさせていただく。
しろまるテーブルでのグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載。
<地層処分事業>
・地層処分以外の方法は検討したのか。
(→回答:)原子力発電が開始された 1960 年代から、高レベル放射性廃棄物の最終処分については、
様々な検討がなされてきた。その中で、氷床処分、海洋底処分、宇宙処分などが候補と
して検討された。氷床処分と海洋底処分については国際条約で不可能となり、宇宙処分
は発射時の信頼性やコスト面などから現実的ではないと判断されている。地層処分は人
間の生活環境から隔離することができ、元来、地層が持っている閉じ込め機能により、
人による継続的な管理が不要になるため、現在、最も適切な方法であるとの基本的な考
え方が世界各国で共有されている。
・将来、ロケット技術が向上して最も有利な処分方法になるのではないか。
(→回答:)現時点で最良の処分方法は地層処分であると考えるが、今後、宇宙処分を含めて地層処
分以外の優れた処分技術を否定するものではない。こうした考えから、将来世代が選択
できるようにするため、処分場を埋め戻して閉鎖するまでは、最終処分の手段を変更で
きることを担保しており、
埋設したガラス固化体を回収できる技術の研究も進めている。
・3 段階の調査はどのような工程で進めるのか。
(→回答:)文献調査はその地域の過去の文献などによって、机上調査によって処分地候補となる可
能性のある範囲の評価を行う。概要調査はボーリングなどによって実際の現地の地質環
境の調査を開始する。その後、精密調査段階では実際に試験的な地下施設を建設し、よ
り具体的な調査や試験を行っていく。
・説明資料に調査に係る年数の記載がないがなぜか。
(→回答:)3 段階の処分地選定調査のそれぞれに要する期間は、調査対象の地域の地質環境等にも
よると考えられ、一律の年数を確実に示すことは難しい。パンフレットなど一部には記
載しているが、示している年限はあくまでも目安として記載している。
・その場に処分場があったことを将来世代にどうやって伝えるのか。将来世代の言語の変化も考慮し
て、例えば 50 年ごとに最新の言語で記録を書き換えるなどの対処が必要ではないか。
(→回答:)地層処分においては、処分場を埋め戻した後に、将来、温泉や鉱物資源の探査の目的で
ボーリング孔を掘るような活動が行われるリスクを最小限とするため、鉱物資源が存在
する地域を避けること、記録を保存すること、処分場の性能に影響を与える地域を保護
区域に指定してそのことを知らせる標識を設置することにより地下に影響を与える人
間活動が行われないような対策を検討していく。
・ガラス固化体からどういった放射線が出てくるのか。
(→回答:)ガラス固化体には多数の放射性物質が含まれているため、ベータ線、ガンマ線等、様々
な放射線が出ている。
・埋設後、1000 年間にもわたってモニタリングなどの管理をする必要があるのか。
(→回答:)地層処分場を埋め戻した後は、埋設したガラス固化体を能動的に管理することは行わな
い。地層処分は、地下深部のものを閉じ込める機能によって、人間による継続した管理
を行うことなく処分することが基本的な考え方である。なお、埋設後は地域のご関心に
沿って、放射性物質が漏れ出していないかモニタリングをすることも考えられる。
・長期の事業に対して誰が責任を取れるのか。
(→回答:)特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(最終処分法)によって、最終処分事業が原
因となる事故については、
NUMOが一義的な責任をとることが定められている。
また、
仮にNUMOが業務を実施できなくなった場合についても、国が必要な措置をとること
が同様に法律によって定められている。
・福島第一原子力発電所の事故に伴い発生したデブリの対応はNUMOが行うのか。
(→回答:)東京電力福島第一原子力発電所の事故によって発生したデブリの処理については、当事
者である東京電力および国が責任を持って取り組んでいる。
・1 か所の処分場しか計画していないのであれば廃棄物の総量を管理すべき。第 2 処分場の必要の有
無も曖昧にしたままで、行き当たりばったりで事業を進めているようにしか思えない。
(→回答:)
ガラス固化体 40,000 本以上を埋設できる施設を全国で1か所作ることを想定しているが、
実際の処分場の規模や設計の詳細については、処分地選定調査を経た上で、規制機関の審
査に申請時までに検討を行うこととなる。諸外国では、当初計画より廃棄物の発生量が変
化する見込みとなった場合には、処分場の規模を見直すなどの取組も行われている。
<リスクと安全性>
・高レベル放射性廃棄物のリスクについて、1000 年や 1 万年といった時間軸で説明されてもリアリ
ティがない。
(→回答:)確かに自分たちが生きている間よりも遥か長い期間のことではないので実感しにくいか
もしれない。長期の安全性については、様々なリスク要因を洗い出し、現在研究を行っ
ている地下研究所で得られた知見などを取り入れながらシミュレーションをしている。
今後も、説明内容などを常に見直していきながら、分かりやすく皆さんに知っていただ
けるよう努力していきたい。
・科学的特性マップの要件に、津波や液状化が含まれないのはなぜか。
(→回答:)科学的特性マップは、全国一律で整備されている地層処分に関する科学的特性を一定の
要件・基準に従って客観的に整理したものである。津波や液状化の影響は、地上施設を
高台に設置するなどの工学的対策により対応が可能であることから、科学的特性マップ
の基準に含まれていない。
・科学的特性マップには北海道の放射性廃棄物の持込み拒否条例が考慮されていない。
(→回答:)科学的特性マップは、地層処分を実施するうえで考慮すべき、火山や断層といった科学
的特性を既存の全国データに基づき、一定の要件・基準に従って客観的に整理し全国地
図の形にしたものであり、全国の皆さまに日本の地質環境等に関する理解を深めていた
だくことを目的にしたものであることから、ご指摘の点については考慮されていない。
・想定外の火山の噴火なども考えられ、絶対に安全とは言えないと思う。
(→回答:)精密な調査を行い、そのような可能性が低い場所を処分地として選定する。絶対安全は
ないが、我々はリスクを最小に抑えるように最大限の努力をしていく。
・一度埋設するとその後検査ができない。地上保管して、例えばオーバーパックを 100 年ごとに取り
替えるほうが良いのではないか。
(→回答:)地層処分は人工バリアと天然バリアにて多重に放射性物質を防護し、検査などの人間に
よる管理を必要としない方法である。長期にわたる地上保管は災害やテロなどのリスク
がある。
・オーバーパックを炭素鋼としている理由は。チタンのほうが耐食性は良いのでは。
(→回答:)チタンはその高い耐食性を発揮できる環境条件が炭素鋼と比較して狭いという特徴など
から、
現時点では炭素鋼を基本に考えている。
ただし、
炭素鋼に確定したわけではなく、
銅などの材料の適用もオプションとして検討している。
・将来もっと良い処分方法が確立したら立ち止まって戻ると言っていたが、どういうことか。
(→回答:)事業を前の段階に戻す可逆性と、そのために廃棄物を回収する回収可能性の考え方があ
り、国が定めた最終処分に関する基本方針に明記されている。今後、将来世代の選択肢
を残すという視点から、処分場を埋め戻して閉鎖するまでは回収可能性を維持すること
としている。
・六ヶ所再処理工場が完成を何度も延期するなど、原子力業界の技術的な内容の説明は信用ができな
い。地層処分事業も技術的には問題ないとの一点張りだが、必ずトラブルは起きるし問題が発生す
ると思う。
・科学は推理力、創造力だと思う。100%断言はできないが、過去の科学者たちも「〜だろう」という
予測を立てて取り組んでいる。この事業もやってみなければ分からないこともあると思うが、先送
りできない問題なので頑張ってほしい。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・どの自治体からも手が挙がらない場合はどうするのか。
(→回答:)世界で唯一処分場の建設を開始しているフィンランドも、地層処分を行うと決めてから
30 年以上の歳月をかけて、国民理解、地域理解に弛まぬ努力を重ねてきた。いずれは調
査に関心をお示しいただける地域が出てくるよう、まずは全国各地できめ細かく対話活
動に取り組んでいく。
・1000 年以上先の将来まで考慮しなければならないことから、次の世代となる子供への教育が必要で
はないか。
(→回答:)最終処分事業は、建設期間も含めて 100 年程度の長期にわたってつづく事業であり、次
世代への教育は大変重要なものと考えている。そうしたことから、NUMOとしては、
小・中学生向けの基本教材を開発し、教育関係者に提供しているほか、職員を高校、大
学等に派遣して出前授業も行っている。事業の人材確保という観点からも次世代への教
育は重要と考えている。
・原子力問題と地層処分はカテゴリ分けし、別途、それぞれに特化した対話の場を設けた方が良いと
思う。
<その他>
・NUMOはどのような組織か。
(→回答:)
「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」に基づいて国の認可を受けて 2000 年に設
立された法人であり、電力会社からの拠出金で運営している組織である。
・青森県で一時貯蔵しているガラス固化体は、処分場が決まらなかったらどうするのか。
(→回答:)青森県と六ヶ所村と電力事業者の間で結ばれている協定が遵守されるよう、国及びNU
MOとしても、最終処分場の確保に向けてしっかりと取り組んでいきたい。
・福島第一原子力発電所の事故による人体への放射線障害の有無については、正しく理解する必要が
ある。NUMOはもっとそれを伝えるべき。
・処分の問題は大切だし重要だと思っているが、高レベル放射性廃棄物を出している原子力発電を止
めてから話すことだと思う。それぞれ携わる業務は違っても原子力問題は切り離せないことだと思
うので、職員の方はそこまで考えて覚悟を持って取り組むべきだと思う。
以 上

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