科学的特性マップに関する対話型全国説明会 in 山梨(富士吉田市)開催結果
日 時:2019 年 10 月 27 日(日)13:30〜16:00
場 所:富士吉田市民会館 会議室 1〜3
参加者数:8 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・榎本 宏(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)
・羽多野 佳二(原子力発電環境整備機構 地域交流部 部長)
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
1資源エネルギー庁の主な説明内容
・高レベル放射性廃棄物は、将来世代に負担を先送りしないよう、現世代の責任で、地下深くの
安定した岩盤に埋設する地層処分を行う方針。
・地層処分の実現に向けて、この問題を社会全体で解決しなければならない課題として考えてい
ただき、受入地域に対する敬意や感謝の念を持つことが必要との認識が共有されることが重要。
このため、広く全国の皆さまに地層処分に対する理解を深めていただけるよう、全国で対話活
動を順次開催していく。・高レベル放射性廃棄物の放射能は時間ととともに減衰し、
1000 年程度の間に 99%以上は低減し、
その後はゆっくりと減少していく。地層処分は、長期間にわたる安全上のリスクを小さくし、
将来世代の負担を小さくする処分方法との考え方が国際的に共有されている。日本では、地下
300m より深い安定した岩盤に埋設することで、人間の管理に依らず、長期にわたり放射性物質
を閉じ込め、生活環境から隔離していく考えである。
・地下深部は一般的に安定した環境だが、安全に地層処分を行うためには、火山活動や活断層の
影響など、様々な科学的特性を総合的に評価することが必要。
・科学的特性マップは、地層処分を行う際に考慮しなければならない科学的特性を、既存の全国
データに基づき、一律の要件・基準に従って客観的に整理し、全国地図の形で示し、地層処分
に対する国民理解を深めるために公表したもの。マップ公表をきっかけに、全国での対話活動
を重ねていく中で、やがて処分事業に関心を持っていただける自治体が出てきた場合、法律に
基づく 3 段階の処分地選定調査を実施し、個別地点において安全に地層処分が実施できるかど
うかを詳細に調査していく。・「地震や火山の多い日本で地層処分を安全に実施できるのか」というご質問を多くいただくが、
マップを活用しながら、日本でも地層処分に適した地下環境が広く存在するとの見通しを共有
しつつ、社会全体でどのように実現していくか、皆さまと一緒に考えていきたい。
2原子力発電環境整備機構(NUMO)の主な説明内容
・地下深部の岩盤は、1酸素が少ないため金属が腐食しにくく、万が一、放射性物質が漏出した
場合でも、2地下水の流れが遅く、また、3岩盤が放射性物質を吸着し、放射性物質の移動を
遅らせることができる(天然バリア)
。放射能が大きく減少するまでの期間、少なくとも 1000
年間は放射性物質をしっかり密封するために、ガラス固化体をオーバーパックという金属容器
(厚さ約 20cm)に格納し、粘土でできた緩衝材(厚さ約 70cm)で包む(人工バリア)
。このよ
うに、
「天然バリア」と「人工バリア」を組み合わせ、様々な対策を組み合わせることで、人
間の生活環境から隔離し閉じ込める。
・地層処分場は、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設できる施設の建設を 1 か所計画している。
処分場を閉鎖した後も、一定期間は規制当局の安全規制に従い、万が一のことに備える。
最終処分事業費は約 3.8 兆円が見込まれている。事業費は、原子力発電に伴う電気料金の一部
として電力会社等から拠出される。
・安全に地層処分を行うため、処分地選定調査の中で、断層や火山などを避けて場所を選ぶとい
う「立地による対応」
、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計による対応」、その対策により、安全性が確保出来るかをシミュレーションなどで確認するという「安全性の
確認」
といった作業を繰り返し行う。
地震・津波、
輸送中の安全性についても設計による対応、
シミュレーションによる安全性確認を行う。
・文献調査は、学術論文等から地域の地質環境等を可能な限り把握し、概要調査を行う候補地区
を絞り込むもので、ボーリングなどの現地作業は行わない。調査結果は地域住民に公表してご
意見を伺うとともに、当該の市町村長や都道府県知事に意見を伺い、反対の意向が示された場
合は次の段階に進むことはない。
・処分地選定が円滑に行われるためには、地域による主体的な合意形成が図られることが重要。
こうした観点から、
処分事業についての情報提供や住民のご意見を事業に反映する
「対話の場」
が地域に設置され、多様な関係住民が参画し、積極的な活動が行われることが望ましい。こう
した取組みは諸外国でも同様に行われ、地域要望の事業への反映など、重要な役割を果たして
いる。
・さらに、フィンランドやスウェーデンなど先行する海外では、地層処分事業が地域に与える社
会経済的影響についても評価が行われ、雇用の創出などの経済効果が期待されている。また、
処分場立地による農業、観光業、不動産価値へのマイナス影響などは確認されていない。NU
MOは、
処分場建設までに本社を当該地域に移し、
地元雇用や地元発注に最大限取り組むなど、
地域の発展に貢献していく。処分地選定では、こうした地域経済への効果や影響も含め、総合
的に判断していただく。
・地層処分事業について不明な点、もっと詳しい話を聞いてみたいと関心を持っていただける場
合には、どなたでも説明の機会を設けさせていただくとともに、関連施設の見学にご案内する
など、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応をさせていただく。
しろまるテーブルでのグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載。
<地層処分事業>
・処分場は 1 か所になるのか。
(→回答:)
現在ある使用済燃料約 18,000 トンをすべて再処理してガラス固化体として換算し、
今あ
るガラス固化体約 2,500 本と合わせるとガラス固化体は約 25,000 本相当となる。
40,000
本以上のガラス固化体を埋設できる処分場を全国で1か所つくる計画としている。
・NUMOはもともと地層処分を行うことを前提として作られた組織なのか。
(→回答:)NUMOは「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」に基づき、経済産業大臣の
認可を受けて高レベル放射性廃棄物およびTRU廃棄物の地層処分事業を行う実施主体
として 2000 年に設立された。
・電力会社からの拠出金はどのような現状なのか。
(→回答:)最終処分事業に必要な費用については、原子力発電所等の運転実績に応じた金額が毎年
電力会社等からNUMOへ拠出されているが、その原資は電気料金の一部として利用者
の皆さまに負担いただいている。また、最終処分事業に必要な費用は約 3.8 兆円と試算
されている。この最終処分費用は事業の実施に必要なコストを積み上げて算出されてい
る。毎年、人件費や物品費等の変動、消費税等の税率変更等を勘案した見直しが国によ
り行われている。
・税金を地層処分事業へ導入したほうがいいのではないか。
(→回答:)
「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」に基づき、最終処分事業に必要な費用につ
いては、毎年電力会社等からNUMOへ拠出するスキームとなっているため、税金を導
入することは考えていない。
・高レベル放射性廃棄物を人間の見えないところに持っていってはいけない。地上あるいは、浅い地
下に保管し管理し続けるべき。
(→回答:)高レベル放射性廃棄物の放射能は、短期間で比較的早く減少しながらも、長く残存
する。地上で保管するとなると、それが人間の生活環境に影響を及ぼさなくなるま
で、数万年の長期間にわたり地上施設を維持・管理していく必要があり、その間に
は施設の修復や建て替えも必要となる。さらに地上保管の場合、地震、津波、台風
などの自然現象による影響や、戦争、テロ、火災などといった人間の行為の影響を
受けるリスクがある。長期にわたり、このようなリスクを念頭に管理を継続する
必要がある地上施設を残すことは、将来の世代に負担を負わせ続けることとなり、
現実的ではない。このため、人の管理を必要としない最終的な処分を行うべきであ
るというのが国際的にも共通した認識となっている。
<リスクと安全性>
・科学的特性マップに記載されている活断層は少ないのではないか。
(→回答:)科学的特性マップの作成にあたっては、産業技術総合研究所の活断層データベースに記
載されている情報をもとにしている。そのため、当該データベースに記載されていない
活断層については科学的特性マップには考慮されていないが、科学的特性マップだけで
処分地が決定されるわけではなく、法律に基づく段階的な処分地選定調査の中で活断層
などの影響を確認・評価することとしている。
・活断層は調査しても分からないのではないか。
(→回答:)活断層の存在やその影響範囲については、法律に基づく段階的な処分地選定調査で
ボーリング調査や掘削した坑道での調査等を実施することにより確認することができる。
・リスクや安全性の評価は原子力の推進側ではなく中立的な人が行うべきではないか。
(→回答:)リスクや安全性の評価については、中立性を確保するため、結果だけではなくその根拠
情報についても、関連分野の専門家による第三者のレビューを受けている。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・今回の対話型説明会で、参加者を募るためにどのくらい広告を載せているのか。
(→回答:)NUMOのホームページ、メールマガジン、SNSでの周知に加え、地方新聞や自治体
広報誌、地域情報誌、交通広告(電車・バスの車内や、駅構内)など、幅広く周知広報
に努めている。
・対話活動では堅苦しい雰囲気ではなく、楽しく巻き込むようにするべきである。
(→回答:)対話型全国説明会などの実施に際しては、堅苦しい雰囲気と感じられないよう、今後と
も努めていきたい。
・NUMOはもっとお金・人をかけて、広報・理解活動を行うべきではないか。
・対話活動は地層処分だけの問題ではない。日本のエネルギー政策等、もっと広げて対話するべきで
ある。
<その他>
・再生可能エネルギーが伸びているなか、原子力発電所の再稼働は必要ないのではないか。
(→回答:)資源の乏しい日本において、国民生活や産業活動を守るという責任あるエネルギー政策
を実現するためには、原子力発電への依存度は可能な限り低減していくが、ゼロにする
わけにはいかない。経済性や温暖化対策の問題にも配慮しつつ、エネルギー供給の安定
性を確保するためには、安全最優先という大前提のもと原子力を活用していかざるを得
ない。また、原子力発電を止める・止めないにかかわらず、すでに高レベル放射性廃棄
物があることは事実であり、現世代の責任で地層処分を進める必要がある。
・地層処分に代わる技術の研究は行っているのか。
(→回答:)例えば、内閣府の革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)のように、一部の
長寿命核種を短寿命に変換させる研究はあるが、基礎研究の段階であるとともに、全て
の放射性核種を安定な核種に変換することはできず、一部は高レベル放射性廃棄物とし
て残る。そのため、地層処分が不要となるわけではない。
・再処理しての地層処分がその他手法に比べて優れているとのことだが、使用済燃料を乾式キャスク
で地上管理を行うケースについてもコスト評価を行うべきである。
(→回答:)使用済燃料を乾式キャスクにより地上管理を行う場合、人間の生活環境に影響を及ぼさ
なくなるまで数万年といった長期間にわたり地上施設を維持・管理していく必要があり、
その間には施設の修復や建て替えも必要となる。さらに地震、津波、台風等の自然現象
による影響や、戦争、テロ、火災等といった人間の行為の影響を受けるリスクがあるた
め、長期にわたり、このようなリスクを念頭に管理を継続する必要のある地上施設を残
すことは、将来の世代に負担を負わせ続けることになることから、地上管理を行う
ケースは想定していない。
以 上

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