科学的特性マップに関する対話型全国説明会 in 愛知(岡崎市)開催結果
日 時:2019 年 9 月 7 日(土)13:30〜16:00
場 所:岡崎商工会議所 1 階 大ホール
参加者数:29 名
当日の概要:
(1)映像(
「地層処分」とは・・・?)
(2)地層処分の説明
・逸見 誠(経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐)
・水野 敦(原子力発電環境整備機構 地域交流部 部長)
(3)テーブルでのグループ質疑
しろまる資源エネルギー庁・原子力発電環境整備機構(NUMO)からの説明
1資源エネルギー庁の主な説明内容
・高レベル放射性廃棄物は、将来世代に負担を先送りしないよう、現世代の責任で、地下深くの
安定した岩盤に埋設する地層処分を行う方針。
・地層処分の実現に向けて、この問題を社会全体で解決しなければならない課題として考えてい
ただき、受入地域に対する敬意や感謝の念を持つことが必要との認識が共有されることが重要。
このため、広く全国の皆さまに地層処分に対する理解を深めていただけるよう、全国で対話活
動を順次開催していく。・高レベル放射性廃棄物の放射能は時間ととともに減衰し、
1000 年程度の間に 99%以上は低減し、
その後はゆっくりと減少していく。地層処分は、長期間にわたる安全上のリスクを小さくし、
将来世代の負担を小さくする処分方法との考え方が国際的に共有されている。日本では、地下
300m より深い安定した岩盤に埋設することで、人間の管理に依らず、長期にわたり放射性物質
を閉じ込め、生活環境から隔離していく考えである。
・地下深部は一般的に安定した環境だが、安全に地層処分を行うためには、火山活動や活断層の
影響など、様々な科学的特性を総合的に評価することが必要。
・科学的特性マップは、地層処分を行う際に考慮しなければならない科学的特性を、既存の全国
データに基づき、一律の要件・基準に従って客観的に整理し、全国地図の形で示し、地層処分
に対する国民理解を深めるために公表したもの。マップ公表をきっかけに、全国での対話活動
を重ねていく中で、やがて処分事業に関心を持っていただける自治体が出てきた場合、法律に
基づく 3 段階の処分地選定調査を実施し、個別地点において安全に地層処分が実施できるかど
うかを詳細に調査していく。・「地震や火山の多い日本で地層処分を安全に実施できるのか」というご質問を多くいただくが、
マップを活用しながら、日本でも地層処分に適した地下環境が広く存在するとの見通しを共有
しつつ、社会全体でどのように実現していくか、皆さまと一緒に考えていきたい。
2原子力発電環境整備機構(NUMO)の主な説明内容
・地下深部の岩盤は、1酸素が少ないため金属が腐食しにくく、万が一、放射性物質が漏れ出し
た場合でも、2地下水の流れが遅く、また、3岩盤が放射性物質を吸着し、放射性物質の移動
を遅らせることができる
(天然バリア)。放射能が大きく減少するまでの期間、
少なくとも 1000
年間は放射性物質をしっかり密封するために、ガラス固化体をオーバーパックという金属容器
(厚さ約 20cm)に格納し、粘土でできた緩衝材(厚さ約 70cm)で包む(人工バリア)
。このよ
うに、
「天然バリア」と「人工バリア」を組み合わせ、様々な対策を組み合わせることで、人
間の生活環境から隔離し閉じ込める。
・地層処分場は、ガラス固化体を 40,000 本以上埋設できる施設の建設を 1 か所計画している。
処分場を閉鎖した後も、一定期間は規制当局の安全規制に従い、万が一のことに備える。
最終処分事業費は約 3.8 兆円が見込まれている。事業費は、原子力発電に伴う電気料金の一部
として電力会社等から拠出される。
・安全に地層処分を行うため、処分地選定調査の中で、断層や火山などを避けて場所を選ぶとい
う「立地による対応」
、選んだ場所に応じて人工バリアを設計するという「設計による対応」、その対策により、安全性が確保できるかをシミュレーションなどで確認するという「安全性の
確認」
といった作業を繰り返し行う。
地震・津波、
輸送中の安全性についても設計による対応、
シミュレーションによる安全性確認を行う。
・文献調査は、学術論文等から地域の地質環境等を可能な限り把握し、概要調査を行う候補地区
を絞り込むもので、ボーリングなどの現地作業は行わない。調査結果は地域の皆さまに公表し
てご意見を伺うとともに、当該の市町村長や都道府県知事にご意見を伺い、反対の意向が示さ
れた場合は次の段階に進むことはない。
・処分地選定が円滑に行われるためには、地域による主体的な合意形成が図られることが重要。
こうした観点から、
処分事業についての情報提供や住民のご意見を事業に反映する
「対話の場」
が地域に設置され、多様な関係住民が参画され、積極的な活動が行われることが望ましい。こ
うした取組みは諸外国でも同様に行われ、地域のご要望の事業への反映など、重要な役割を果
たしている。
・さらに、フィンランドやスウェーデンなど先行する海外では、地層処分事業が地域に与える経
済社会的影響についても評価が行われ、雇用の創出などの経済効果が期待されている。また、
処分場立地による農業、観光業、不動産価値へのマイナス影響などは確認されていない。NU
MOは、
処分場建設までに本社を当該地域に移し、
地元雇用や地元発注に最大限取り組むなど、
地域の発展に貢献していく。処分地選定では、こうした地域経済への効果や影響も含め、総合
的に判断していただく。
・地層処分事業について不明な点、もっと詳しい話を聞いてみたいと関心を持っていただける場
合には、どなたでも説明の機会を設けさせていただくとともに、関連施設の見学にご案内する
など、ご関心やニーズに応じて、柔軟に対応させていただく。
しろまるテーブルでのグループ質疑
(注記)主なものをテーマ別に記載。
<地層処分事業>
・オーバーパックの材質は何か。
(→回答:)現在の設計では、炭素鋼を想定している。
・ガラス固化体が 40,000 本以上になるのはいつ頃か。
(→回答:)かつて原子力発電が全体の発電量の約 3 割を占めていた頃は、2021 年頃に 40,000 本に
到達する見込みだったが、現時点では原子力発電所の稼働が少ないため、時期を見通す
ことは難しい。一般的に 100 万 kW 級の原子力発電所 1 基が 1 年間稼働すれば約 20〜30
本のガラス固化体が発生することとなる。
<リスクと安全性>
・科学的特性マップの活断層は、何を根拠に策定したものか。まだ確認されていない活断層がある
のではないか。
(→回答:)科学的特性マップでは、全国の活断層を網羅的に整備した産業技術総合研究所の活断層
データベースに記載されている情報を一定の基準に基づき使用している。ご指摘のとお
り、科学的特性マップに掲載されていない活断層も存在するものと考えられる。そうし
た活断層の存在やその影響範囲については、処分地選定調査で地震波探査やボーリング
調査を実施して評価を行い、対応を検討する。
・北欧などの岩盤は日本より割れ目が少なく安定だと思うが、日本でも大丈夫と言えるのか。
(→回答:)
割れ目が少ないと同じ地下水流量を流すために割れ目内の流速は大きくなるため、
一概に少ない割れ目がいいとは言えない。このような割れ目の特性を含めて岩盤
の特性をしっかり評価し、安全性を確認する。ヨーロッパでも割れ目がある岩盤
はある。ヨーロッパならどこでも地層処分ができて、日本ではいずれの場所でも
地層処分ができないというわけではない。ヨーロッパの地層は古いが氷河期時代
の氷がある分、隆起速度が速いなど地域によって個性がある。日本周辺のプレー
トの動きについては、その方向や速さ(数cm/年)は数百万年前からほとんど変化
がなく、こうしたプレートの動きに関係する活断層や火山活動などの現象は今後
も 10 万年程度はほとんど変化しないと考えられており、
日本でも地層処分は可能
と考えている。
・火山は考慮しているのか。姶良カルデラ等もっと広い範囲を設定すべきでは。
(→回答:)科学的特性マップでは、第四紀火山の中心から半径 15km 以内の範囲とその範囲を
超えるカルデラの範囲について、地下深部の長期安定性等の観点から「好ましく
ない特性があると推定される地域」としている。第四紀火山の中心及び個別火山
体の分布に基づくと、約 97%の火山で、火山中心から半径 15km 以内の範囲内に個
別火山体が収まっている。日本周辺のプレートの動きについては、その方向や速
さ(数cm/年)は数百万年前からほとんど変化がなく、こうしたプレートの動きに
関係する活断層や火山活動などの現象は今後も 10 万年程度はほとんど変化しない
と考えられている。個別の地域における火山噴火の影響については、その地域に
おける詳細な処分地選定調査を実施して検討していくことになる。
・地温による影響は考慮しているのか。日本は地下深く掘ればどこでも温泉が出るくらい地温が
高いはず。
(→回答:)地層処分システムに著しい熱的影響を及ぼす地熱活動により、閉じ込め機能が喪失
されないよう、地温による影響も考慮している。具体的には地熱活動に係る基準で
は、約 15°C/100m より大きな地温勾配の範囲を地下深部の長期安定性等の観点から
好ましくない特性があると推定される地域に分類している。約 15°C/100m の設定に
当たっては、ガラス固化体の発熱も考慮している。地温の高い場所は火山の周辺が
多く、全国いたるところ地温が高いわけではない。
・日本では地下水はどこにでもある。施設に影響がないところはなく、放射性物質の完全な封じ
込めなどできないのではないか。
(→回答:)地下水は、どのような地域であっても多かれ少なかれ存在するが、地下深部では岩
盤が水を通しにくく、また水を流そうとする力も小さいことから、地下水の流れは
1年間に数 mm 程度と非常に遅い。地下施設の建設中や廃棄物の埋設中は、地下ト
ンネルと岩盤に圧力差が生じ、その結果、岩盤中のすき間からトンネル内に地下水
が流入しやすくなるため、排水設備の設置や湧水対策などの工学的手法により対策
を講じる。
埋設後は、
岩盤と埋め尽くされた坑道の圧力差がほとんどなくなるため、
再び地下水の流れは元の非常に遅い状態に戻る。日本においても専門家や研究機関
による 20 年以上にわたる研究の結果、1999 年に日本でも地層処分が技術的に実現
可能であるとの見通しが得られており、この研究成果は海外の専門家からも確認を
受けている。
・埋設後のモニタリングについては、どう考えているか。
(→回答:)モニタリングの期間や方法などは、今後策定される規制基準の中で具体化されてい
くものであるが、地元の皆さまにも安心していただけるよう、ご相談しながら考え
ていきたい。
<対話活動、文献調査、地域共生>
・説明会の開催地はどのような基準で決めているのか。
(→回答:)対話型全国説明会は全国各地で開催しており、人口や交通の便などの地域バランス
を考慮しつつ、開催場所の確保や周知・広報の準備などを終えたところから順次開
催している。
・調査に同意する地域は現れないと思う。その場合、どうするのか。
(→回答:)
文献調査に入る手続きについては、
自治体からNUMOに応募していただく場合と、
地域における活動状況を踏まえて、国から調査への協力をお願いする場合の2つを
想定している。国とNUMOは調査を受け入れていただける地域が出てくるように、
これまで以上に全国各地できめ細かく地層処分についての様々な対話活動に取り組
んでいく。
・このような少人数の説明会を開催するだけで理解が進むとは思えない。単なるアリバイづくり
ではないのか。
(→回答:)アリバイ作りのために説明会を実施しているものではない。また、アリバイをつく
れば事業が進むものでもない。地層処分については全国の皆さまに理解していただ
くことが必要であり、今後も対話型全国説明会だけでなく、様々な方法により理解
活動を行っていく。
<その他>
・電気は足りており、原子力は不要なのではないか。
(→回答:)現在、火力発電所で焚き増しを行い対応しているが、それに伴う電気料金の上昇や
エネルギーの安定供給、地球温暖化対策の面でリスクにさらされている。徹底した
省エネの推進や再エネの最大限の導入も図っていくが、省エネには国民生活の利便
性や企業の経済活動との関係で限界があり、再エネについても、気象条件に左右さ
れる供給の不安定性やコスト高という課題があり、今すぐ原子力を代替できるもの
ではない。
・もんじゅが廃止され、六ヶ所村の再処理工場も稼働していないなど、原子燃料サイクルは破綻して
いるのではないか。
(→回答:)
もんじゅは廃止するものの高速炉の研究は諸外国との協力等により継続していく。
また、
再処理により取り出したプルトニウムは、プルサーマル発電により利用することとして
おり、高浜、玄海、伊方発電所などで使用実績がある。再処理施設は規制委員会の審査
を経て 2021 年度上期の竣工を目指しているところであり、再処理の技術そのものは
確立されている。
・原子力発電が始まったときには最終処分について考えていなかったのか。
(→回答:)原子力発電の利用が始まる 1966 年よりも前の 1962 年から、放射性廃棄物の最終処
分方法については様々な検討がなされてきた。氷床処分・海洋底処分・宇宙処分・
地層処分が候補として検討されたが、氷床処分と海洋底処分については国際条約で
禁止され、宇宙処分は発射時の信頼性やコスト面などから現実的ではないと判断さ
れた。こうした検討を経て、日本でも、世界各国と同様に、地層処分が現時点で最
も適切な方法であると考えている。
・まず、高レベル放射性廃棄物の発生原因である原子力発電を止めるべきではないか。
(→回答:)資源の乏しい日本において、国民生活や産業活動を守るという責任あるエネルギー
政策を実現するためには、原子力発電への依存度は可能な限り低減していくが、ゼ
ロにするわけにはいかない。経済性や温暖化対策の問題にも配慮しつつ、エネルギ
ー供給の安定性を確保するためには、安全最優先という大前提のもと原子力を活用
していかざるを得ない。また、原子力発電を止める・止めないにかかわらず、すで
に高レベル放射性廃棄物があることは事実であり、現世代の責任で地層処分を進め
る必要があると考えている。
以 上

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /