佐賀県東松浦郡玄海町
文 献 調 査 計 画 書
2024 年 5 月 31 日
原子力発電環境整備機構
目 次
はじめに ............................................................................1
1 文献調査の位置付け ...............................................................2
2 文献調査の項目 ...................................................................2
3 文献調査対象地区 .................................................................3
4 文献調査の進め方 .................................................................6
5 文献・データの収集 ...............................................................6
6 文献・データに基づく評価 .........................................................7
7 地域の皆さまへのご説明、ご意見のお伺い ...........................................7 1はじめに
地層処分の対象となる放射性廃棄物の最終処分に当たっては、
「特定放射性廃棄物
の最終処分に関する法律(平成 12 年法律第 117 号)」(以下「最終処分法」という。)に基づき、段階的に調査(文献調査、概要調査、精密調査)を進めていくこととし
ています。
2024 年 5 月 16 日に、佐賀県東松浦郡玄海町(以下「玄海町」という。
)から、玄
海町全域における文献調査の実施についての国からの申入れを受諾する文書(以下
「受諾文書」という。
)が提出されたことを受け、原子力発電環境整備機構(以下
「機構」という。
)は、玄海町にて文献調査を実施するため、その計画書を作成しま
した。
機構は、玄海町が受諾文書において経済産業省へ以下の 3 点を遵守するよう求め
ていることも十分認識の上、文献調査を進めてまいります。
1.特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(平成12年法律第117号)第
4条第5項に規定されている、
「当該概要調査地区等の所在地を管轄する都道
府県知事及び市町村長の意見を聴き、これを十分に尊重」する条文を踏まえ、
経済産業大臣として、当該都道府県知事又は市町村長の意見に反して、概要
調査地区等の選定を行わないこと。
2.文献調査の進捗状況や最終処分の技術的、学術的な問題や安全性等について、
科学的な根拠を明確にし、地域住民に対し正しい情報を提供するとともに、
事業推進の賛否に片寄らない中庸な対話活動の徹底を図ること。
3.文献調査の受け入れに伴い、風評被害が発生することがないよう、国が責任
を持って正しい情報の発信などの対策を行うこと。 21 文献調査の位置付け
文献調査とは、全国各地での対話活動の中で、地域の地質を詳しく知りたい市町
村があれば、どの市町村に対しても、地域の地質に関する文献・データを調査分析
して情報提供することにより、地層処分事業について理解を深めていただくための
ものであり、いわば対話活動の一環です。また、調査期間中、放射性廃棄物は一切
持ち込みません。
文献調査は、地質図や学術論文などの文献・データをもとにした机上調査であり、
ボーリング調査などの現地作業は行いません。更なる調査(概要調査)の実施につ
いて、ご検討をいただくための材料を集める、事前調査としての位置付けです。
したがって、文献調査は、最終処分施設建設地の選定に直結するものではなく、
次の概要調査に進もうとする場合には、都道府県知事と市町村長のご意見を聴き、
これを十分に尊重することとしており、当該都道府県知事又は市町村長のご意見に
反して、先へ進みません(図 1)。調査の実施に際しては、地層処分事業に関心を示していただいた地域に、事業を
更に深く知っていただくとともに、文献調査の進捗状況や地域課題の解決事例など
多様な情報を継続的に共有していきます。加えて、地域の要望を踏まえた対話を行
う場の創設に向けて検討を行い、場の設置を目指してまいります(詳細は 7 章参照)。図 1 最終処分施設建設地選定の流れ
2 文献調査の項目
最終処分法では、「活断層」など文献調査で調査する事項と、それらが満たすべ
き要件(地層の著しい変動の記録がないことなど)を定めています。
また、2022年8月に原子力規制委員会も、文献調査及びその後の調査において、
「断層等」や「火山現象」などに関して考慮すべき事項(以下「考慮事項」とい 3う。)を定めています1。これらを踏まえて、2023年11月に資源エネルギー庁により、「文献調査段階の評
価の考え方」が取りまとめられ、その中で、「断層等」や「マグマの貫入と噴出」
など、項目ごとの基準などについてまとめられています。詳しい内容は、資源エネ
ルギー庁が公表した「文献調査段階の評価の考え方」の資料をご覧ください。
機構は、「文献調査段階の評価の考え方」に従って、文献・データを収集し、評
価・検討を実施します。
3 文献調査対象地区
機構は、文献調査の開始に当たり、全国規模で整備された文献・データをもとに
作成された科学的特性マップに照らして、調査の実施見込みを確認しました。
その結果から、玄海町全域を文献調査対象地区とします。また、沿岸海底下2
につ
いても文献調査対象地区に含めることとします。
調査の実施見込みは、以下のように確認しました。
 科学的特性マップ作成に用いられた文献・データの更新状況を確認した結果、
玄海町に関する情報は科学的特性マップ作成時から一部が更新されているも
のの、科学的特性マップの特性区分への影響はなく、玄海町における科学的
特性マップの特性区分は現在でも変わりがない。
 科学的特性マップにおいて、玄海町には「地下深部の長期安定性等の観点か
ら好ましくない特性があると推定される地域」
(マップ上の表示色はオレンジ)
がなく、
「将来の掘削可能性の観点から好ましくない特性があると推定される
地域」
(マップ上の表示色はシルバー)3
があるとされている(図 2)。 「将来の掘削可能性の観点から好ましくない特性があると推定される地域」
(マップ上の表示色はシルバー)は資源が存在しうる範囲を広範的に示した
ものであり、その全域で鉱物資源が存在することが確証されている訳ではな
く、科学的特性マップにおける鉱物資源の基準において「当該地域内におい
ては、鉱物の存在が確認されていない範囲もあり、調査をすればそうした範
囲が確認できうることに留意する必要がある。
」とされている。
 さらに、科学的特性マップ作成に当たって参照された資料によれば、玄海町
の南部の一部が炭田分布域とされているのみであり、
「鉱物の存在が確認され
ていない範囲が確認できうる」と考えられる(図 3)。 したがって、玄海町は文献調査の実施見込みがあることを確認した。1原子力規制委員会(2022)特定放射性廃棄物の最終処分における概要調査地区等の選定
時に安全確保上少なくとも考慮されるべき事項
2 全国規模で整備された文献・データが十分ではないことから、科学的特性マップでは対
象とされていない(海域のうち陸域から連続して「好ましくない特性があると推定され
る」海域については、連続する陸域と同じ特性区分としている)。3 科学的特性マップの「将来の掘削可能性の観点から好ましくない特性があると推定され
る地域」
(地図上の表示色はシルバー)を作成するに当たって使用された「日本炭田図
(第 2 版)
(地質調査所,1973)
」において、玄海町は炭田分布域となっている。 4玄海町における科学的特性マップの特性区分の状況
科学的特性マップの特性区分は以下のとおり。
 玄海町における「好ましくない特性があると推定される地域(将来の掘削可
能性の観点)」「鉱物資源」に関する「好ましくない特性があると推定される地域」がある。
 「鉱物資源」に関する個別条件図における玄海町の「好ましくない特性がある
と推定される地域」
玄海町は「鉱物資源」のうちの「炭田」に関する「好ましくない特性がある
と推定される地域」である。
図 2 玄海町における科学的特性マップの特性区分の
状況と「好ましくない特性があると推定される地域」
図はいずれも、左:科学的特性マップ又は個別条件図(縮尺 200 万分の 1)の抜粋、
右:左図を約 4 倍したもの。
(注記)資源エネルギー庁ウェブサイト 科学的特性マップ公表用サイトより
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/rw/kagak
utekitokuseimap/index.html10km5034°N 130°E20km010km5034°N 130°E
0 20km
玄海町
玄海町 5・玄海町付近の炭田の分布状況
科学的特性マップ作成に当たり、埋蔵炭量が示されている炭田の対象範囲の確認
時に参照された「日本鉱産誌V-a 石炭」
(地質調査所編纂,1960)中の「第V-1 図
九州の炭田および含炭地分布図」では、図 3 のとおり、玄海町のうち南部の一部の
みが炭田分布域とされていることから、玄海町には「鉱物の存在が確認されていな
い範囲が確認できうる」と考えられる。
図 3 「日本鉱産誌V-a石炭」の「第V-1 図
九州の炭田および含炭地分布図」の玄海町付近
玄海町 64 文献調査の進め方
(1)文献調査の開始
文献調査の計画を公表するとともに、地域の皆さまに計画について
ご説明します。
(2)文献・データの収集
「文献調査段階の評価の考え方」に従って、地質図や学術論文など、
必要な文献・データを収集し情報を整理します。
(3)文献・データに基づく評価
収集した文献・データを用いて、火山や活断層などについて評価を
実施します。あわせて地層処分の仕組みや文献調査の進捗などについ
て、対話を行う場などで地域の皆さまにご説明します。
(4)報告書の作成/地域の皆さまへのご説明
文献調査で評価した結果や、概要調査地区の候補は、対話を行う場
などで地域の皆さまにご説明し、頂いたご意見などを踏まえつつ、報
告書を作成します。報告書は、公告・縦覧するとともに、あらためて
地域の皆さまにご説明する機会を設け、ご意見を伺います。
5 文献・データの収集
評価に必要と考えられ、品質が確保され、一般的に入手可能で公開された文献調
査対象地区に関連した文献・データを収集し、一つひとつ詳しく調べていきます。
文献調査対象地区に関連する文献・データとしては、地質などに関して、学会や
国の研究機関により地域別に整備されている文献・データや、特定の地域に関する
学術論文が考えられます。
火山や活断層などの活動は広域に及ぶ可能性があります。そのため、必要に応じ、
文献調査対象地区のみでなく、当該市町村の外側も含め、その周辺についても文
献・データを収集する可能性があります。
文献調査において評価に用いた文献・データについては、報告書に引用文献とし
て取りまとめ公表します。
文献・データの収集に当たっては、機構が幅広く収集しますが、情報のご提供が
あった場合は、個別に対応させていただきます。対話を行う場などを通じたコミニケシン 76 文献・データに基づく評価
「文献調査段階の評価の考え方」に基づいて、文献・データを収集し、抽出した
情報を用いて、以下の評価・検討を実施し、概要調査地区の候補を検討します。
(1)最終処分法に対応した項目など
最終処分法や「考慮事項」で求められている以下の項目を調査し、
「文献調
査段階の評価の考え方」に定められた基準に照らして評価します。
 地震・活断層
 噴火
 隆起・侵食
 第四紀の未固結堆積物
 鉱物資源
 地熱資源
(2)技術的観点からの検討
地下の状況、地質環境特性を取りまとめ、放射性物質の閉じ込め機能、地下
施設の建設可能性の観点から適性を検討します。
(3)経済社会的観点からの検討
土地利用に関する法規制の状況について確認し、あわせて、土地利用制限が
ある場合の許認可手続等を検討します。
評価・検討した結果は、報告書に取りまとめ、その要約書とともに公表します。
7 地域の皆さまへのご説明、ご意見のお伺い
機構は、地域の皆さまが中心となって、事業について賛否を問わずご議論いただ
くこと、そして、そのご意見を今後の地層処分事業に反映していくことが重要と考
えています。そのために、地域の多様な住民の皆さまにご参加いただき、地層処分
事業について知っていただくとともに、地域の将来に関する議論を支援していきま
す。
こうした議論を進めていくために、機構は玄海町と相談しながら、地域の要望を
踏まえた対話を行う場の創設に向けて検討を行い、場の設置を目指します。その中
で、地層処分の技術・安全性を含む事業内容や海外の事例、文献調査の進捗状況・
結果などを丁寧にご説明しながら、地域の皆さまの関心に丁寧にお答えしていきま
す。
加えて、地域の関心やニーズに応じて、地域活性化やまちづくりなど地域の将来
像についてもご議論いただけるよう、関連する国の制度や地域課題の解決事例など
の情報提供を行い、地域における取組を支援していきます。 8また、対話を行う場での説明や議論の内容は、ホームページに掲載するなど広く
住民の皆さまにもお知らせし、共有していきます。
機構は、こうした対話を行う場などを通じて、地域と継続的な対話を進めていき
ます。
原子力発電環境整備機構(NUMO)
Nuclear Waste Management Organization of Japan
〒108-0014 東京都港区芝 4-1-23 三田NNビル2F
地域交流部 電 話 03-6371-4003(平日 10:00〜17:00)
F A X 03-6371-4101

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