線路をまもる"ひと" 〜災害時の対応〜
2021年8月14日 午前5時20分ごろ、西鉄天神大牟田線 紫駅~朝倉街道駅間で線路の一部が約10mにわたって崩れているのが確認されました。福岡県で前日8月13日から降り続いた猛烈な雨によりレールを支える土砂の流出が起きたことが崩落の原因です。
天神大牟田線は修復作業のため終日運休し、運行再開は翌日から。8月14日当日の復旧作業について、現場での対応に当たった方々に話を聞きました。
―――――まず、異常を発見した経緯を教えてください。
菅:記録的な豪雨の際には、雨の影響で崩壊しやすい要注意箇所を定めていて、そこを重点的に確認しながら対応しています。大型の線状降水帯がくるのはわかっていたので、保線課と西鉄エンジニアリングでは数日前から当直を増員して対応できる体制をとっていました。その日の当直者が始発前の福岡(天神)行回送列車の先頭車両に添乗して線路を確認していたところ、現場の異常を発見しました。今回は要注意箇所ではない箇所での崩壊でした。
志波:私は添乗者からの第一報を受けて現地確認を指示され、直ちに現場へ向かいました。被害状況を計測し、体制をとっていた筑紫事務所に報告、復旧に必要な協力会社の手配をしてもらいました。その時点で始発から電車を止めたので、大事には至らずにすみました。
―――――始発前に崩壊を確認できたのですね。それから復旧作業はどのような流れで行われたのでしょうか。
菅:私は6時30分くらいに事務所に出勤しましたが、そのときには復旧計画の作成が既に進められていました。復旧工事には重機を使用するので、管轄の警察署へ周辺道路の通行止めの手続き、河川にかかわるということで、河川管理事務所への連絡、そして鉄道設備を取り扱うに際して必要な国への報告を手分けして行いました。こうした復旧計画の作成や関係各所への連絡を保線課全員で進め、9時00分から現地で復旧作業を始めました。
平嶋:私の経験上、土砂が流れるというのは2~3年に1回くらいは起こります。ですが、こんなに大規模なものは初めてに近いものだったかもしれません。
―――――そういった災害時はどういった優先順位で進めていかれるのでしょうか。
平嶋:これまでの経験に基づいて、現場を見極めながら復旧計画を詰めていきます。
菅:大雨で川の水位も上がっていて、計画通りの場所には土のうが置けず、大型クレーンの据え付けもままならないなど、万全の状態ではなかったため、土のうを安全に置ける状況を見極めながら始めていきました。このような中でも安全を最優先に、二次災害が起きないよう足元を固めながら丁寧かつ確実な作業を重ね、速やかに復旧できるよう、その場その場でクレーンのオペレーター、作業員と話し合いながら進めていきます。今回、現場で担当した作業員とは10年以上の付き合いで、これまで様々な作業を一緒にしてきたこともあり、どんな作業やどんな判断に長けているかも把握していました。それも安全な作業につながっていますね。
―――――復旧はどのようなやり方なんでしょうか。
菅:置けるところから、土のうをどんどん積んでいきました。土のう1つは2トンくらいの重量がありますが、水流があるところに土のうを置いても流れていくので、まだ水がつかってないところに積んで少しずつ足場を組んでいきます。雨がやむと川の水位がぐんと下がるので、そのタイミングで一気に積んでいきました。おおむね土台ができたところで、線路の石を積んで線路を引き直して、という順番で作業を行い、結局その日積んだ土のうは100個近くになりました。
崩落が判明した当日は終日運休しましたが、発見から約12時間後に線路の応急処置を済ませて、21時には試運転を行いました。
―――――スピード対応で終わらせたのですね。それ以降はどう進めていくのでしょうか。
菅:当然その日の対応で終わりではありません。翌日からは、応急処置だったものをしっかり補修、改善していく作業が始まります。
緊急対応で協力会社の保有する土のうも全て使い切っていたので、新たな土のうの製作やそれを運搬するトラックの手配なども大急ぎでお願いしました。その補修も入れて、ようやく完全復旧に至ります。
他にも、天神大牟田線全線での点検も行い、改めて安全の確認を行いました。
平嶋:大雨が降りしきる中での作業は気を配る場面も多く、水位が減った状態でやりたい、というのが本音でした。それでも翌朝の運転再開に間に合わせるために隅々まで目を光らせました。
始発前に異常を確認し、その後の作業でも二次災害につながることなく復旧活動を行えたのは日常から安全を優先してくまなく目を光らせているからこそ。
西鉄電車では今後も、"安全を最優先"という意識を常に忘れず、電車の「安全・安心」な運行を継続してまいります。