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第5期消費者基本計画を踏まえ、地方消費者行政の推進について具体的かつ実効性ある施策を速やかに展開することを求める会長声明


政府は、2025年3月18日、第5期消費者基本計画(以下「基本計画」という。)を閣議決定した。この中に盛り込まれた「地方消費者行政の推進」については、地方公共団体における消費生活相談体制が維持できなくなるおそれがあるという現下の深刻な事態に鑑み、具体的かつ実効性ある施策を速やかに展開すべきである。


すなわち、基本計画は、地方消費者行政について、「消費者被害の情報がPIO-NETを通じて集約・共有され、国及び地方公共団体の消費者行政の企画立案及び執行に活用されるなど、消費者政策の基盤でもあり、その体制整備は引き続き最重要政策課題の一つである。」と位置付けた上で、「消費生活相談の担い手確保が深刻な課題となっている。」との認識を示している。この点は、地方消費者行政の重要性及びその実態を踏まえた適切な指摘である。そして、地方消費者行政強化交付金(以下「交付金」という。)について、「地方公共団体の努力によって築き上げられた行政サービスの水準が低下することのないよう適切な対策を講ずる」とする方針を掲げている点も基本的に評価できるところである。


もっとも、これらの点に関しては、これまで継続的に交付されてきた消費生活相談員の人件費にも活用できる交付金が、2025年度末をもって多くの地方公共団体で終了時期を迎えることに伴い、財政の厳しい地方公共団体において相談体制が維持できなくなるおそれがあるという深刻な事態が生じている。また、消費生活相談員の地位についても、会計年度任用職員制度の導入に伴い、雇用期間の更新回数制限を設ける地方自治体が2018年度13.3%から2024年度34.7%に急増していることなど、不安定な処遇が続いており、この点も相談員の人材確保に困難を来す大きな原因となっている。


したがって、国は、消費生活相談員の人件費にも活用できるこれまでの交付金措置を2026年度以降も継続的に実施するとともに、更新回数制限(雇止め)の抑止に向けた実効性ある働き掛けを行うべきである。その上で、従来のような期限付きの交付金措置ではなく、地方財政法第10条の改正により国がその全部又は相当割合を将来にわたって恒久的に負担する仕組みを検討すること、消費生活相談員の高度な専門性に見合った専門職任用制度の在り方を検討することなど、より抜本的な対策を講じることが必要である。


また、交付金措置の終了は、高齢者見守りネットワークに参画する消費生活サポーターの育成及び連携、適格消費者団体の活動支援及び連携などを含む地方消費者行政全般の施策の縮小・後退につながりかねないという問題もはらんでいる。現在の超高齢社会においては、埋もれがちな消費者被害を見逃すことのないよう、地方の消費生活センターが「待ち」の相談対応のみならず地域の関係者との連携を積極的に拡大し、見守り活動を展開する体制整備を推進する必要がある。そのためにも、国は、地方消費者行政の取組に対し、一層積極的な財政支援を行うべきである。



2025年(令和7年)4月4日

日本弁護士連合会
会長 渕上 玲子

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