旧統一教会に対する解散命令についての会長談話


本年3月25日、東京地方裁判所は、世界平和統一家庭連合(以下「旧統一教会」という。)が「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をした」(宗教法人法第81条第1項第1号)と認め、旧統一教会に対して宗教法人法に基づく解散を命じる決定をした。同決定においては、その信者により行われた不法行為に該当する献金勧誘等の行為は、「コンプライアンス宣言前後の約40年の長期間にわたり、全国的な範囲で行われており、総体として、類例のない膨大な規模の被害を生じさせたものといえ、同宣言後についてみても、その被害は縮小傾向にあるものの、近時まで途切れることなく続いており、なお看過できない程度の規模の被害が生じている」と厳しく指摘されている。


当連合会は、旧統一教会の問題を含む霊感商法等の悪質商法及びその他反社会的宗教活動による被害の問題について、これまでフリーダイヤル等による無料法律相談の受付を実施し、被害者の救済を確実かつ実効的なものにするための会長声明及び会長談話を公表してきた。また、併せて、1「カルト問題に対して継続的に取り組む組織等を創設することを求める提言」、2023年11月15日付け)、2「宗教等二世の被害の防止と支援の在り方に関する意見書」(同年12月14日付け)及び3「霊感商法等の悪質商法により個人の意思決定の自由が阻害される被害に関する実効的な救済及び予防のための立法措置を求める意見書」(同日付け)により、国に対して必要な立法措置をとることなどを求めてきた。


これらの立法措置の実現や、背景にある根本的問題の解決はいまだ道半ばであるものの、今般、裁判所が多くの被害者やその家族の実情を真摯に受け止め、解散命令に至ったことは被害者救済に向けた重大な契機となり得る。今後は、法整備や問題の解決に向けた動きを一層加速・促進していく必要がある。


解散命令が確定した場合、裁判所により清算人が選任され、清算手続が開始することになる。しかしながら、現行の宗教法人法では清算に関する規定が極めて簡素であり、多数の被害者及び多額の被害の存在が想定される今回のようなケースでは、清算人の円滑な活動、ひいては迅速かつ実効的な被害者救済に支障が生じる懸念がある。また、今回の解散命令を機にようやく声を上げることができる被害者やその家族もいると想定されるところ、これらの方々が法律専門家の援助を適切に受けられるようにするため、「特定不法行為等に係る被害者の迅速かつ円滑な救済に資するための日本司法支援センターの業務の特例並びに宗教法人による財産の処分及び管理の特例に関する法律」の見直しを行い、解散命令確定後についても確定前と同様の法律的な援助を受けられるようにすることが必要かつ重要である。


そのため、当連合会は、「宗教法人から被害を受けた被害者の救済のため、解散命令後の清算に関する立法措置を求める意見書」(2025年2月20日付け)を発出し、必要な立法措置に関する提言を行ったところであるが、改めて、国に対し、清算人がその活動を円滑かつ十分に行うことを可能にするために必要な立法措置を含む環境整備を早急に行うことを求める。


当連合会としても、本決定が認めた類例のない膨大な規模の被害を被った被害者の救済が実現されるよう、引き続き全力で取り組む所存である。



2025年(令和7年)3月26日

日本弁護士連合会
会長 渕上 玲子

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /