防災庁構想に対する意見書
本意見書について
日弁連は、2025年6月20日付けで「防災庁構想に対する意見書」を取りまとめ、同月23日付けで内閣総理大臣、衆議院議長及び参議院議長宛てに提出しました。
本意見書の趣旨
1 政府は、防災庁の基本的姿勢として、以下の事項を考慮すべきである。
(1) 被災者の生命の保護のみならず、被災者の人権保障及び個人の尊厳保持を主たる目的とすること
(2) 防災・復旧・復興の各段階におけるあらゆる施策において、分野横断的に女性や要配慮者などの多様な視点からの検討を組み込むこと
(3) 防災のみならず、災害時の初動・応急・復旧、被災者の生活再建及び復興まちづくり等に至る災害サイクル全体が対象であることを明確にすること
(4) 関係省庁間で縦割り行政の弊害が生じないよう、復興庁の検証を行った上で、関係省庁に対して必要な権限を付与して強力な相互の連携体制をとること
(5) 地方自治体との関係では、防災減災・災害対応・被災地支援・事前復興対策等に取り組む各地方自治体の意向を十分尊重し、各地方自治体の活動を最大限に支援する姿勢で連携を図ること
2 政府は、以下の項目を防災庁の重要な任務に掲げるべきである。
(1) 「災害関連死」の発生を防止するため被災地の環境を整備し、関連死と思しき事案が発生した場合には地方自治体の迅速かつ的確な対応を支援し、その情報を集約・分析・活用して再発防止策に万全を尽くすこと
(2) 「災害ケースマネジメント」の着実な実施のため、人材育成や官民連携等の事前準備、発災後の実施体制の構築支援、被災者の人権を十分考慮した上で支援に必要な個人情報の共有、具体的な支援を十分に行うこと
(3) 「災害に関する情報」をできる限り早期かつ的確に発信するとともに、デマを防ぎ、また、国の発する通知等を公表するオープンガバナンスを徹底し、過去の災害経験を継承するシンクタンク機能を具備すること
(4) 「人材育成」につき、災害専門職の育成、全国の地方自治体職員の災害対応力向上、子どもに対する災害教育の普及、市民が災害を「自分事」と捉えるための啓発活動等によって、社会全体の防災力を高めること
3 政府は、防災庁の組織・体制につき、以下のようにすべきである。
(1) 組織は内閣ではなく内閣府に置き、これに対応する特命担当大臣を任命し、その活動を支える人的体制を整備し、十分な予算を確保し、平時から防災減災対策や事前復興対策等の活動を行うこと
(2) 首都直下地震、南海トラフ巨大地震等の国難級の巨大災害に対する備えだけではなく、毎年のように頻発する国難級に至らないレベルの災害についても制度・人員・財源の点で十分な体制を整えること
(※(注記)本文はPDFファイルをご覧ください)