全国知事会会長メッセージ
令和7年9月3日、全国知事会会長に就任いたしました長野県知事の阿部守一です。
地方自治一筋に40年以上取り組んできた経験を活かして、各知事の皆様のご協力とご支援を賜りながら、会長としての職務に全身全霊で臨んでまいります。
全国知事会の目指すべきあり方、いわばスローガンは、「現場から、日本を動かす。」です。
戦後80年という歴史的転換点にある今、政治・行政の停滞は許されません。国民・住民の皆様の希望と不安とを熟知した各知事の皆様と力を合わせて、地方自治の現場から日本を動かし、明るい未来を切り拓いてまいります。
我が国は、少子化による急速な人口構造の変化、気候変動の深刻化、生成AIをはじめとする技術革新、そして経済・安全保障分野での国際秩序の揺らぎなど、かつてないほど大きな変化の渦中にあります。こうした時代に求められているのは、これまでの常識や価値観にとらわれない発想の転換、すなわちパラダイムチェンジです。
そのためには、国の動きを待つ姿勢ではなく、私たち都道府県知事が責任と覚悟を持って、社会変革の動きをつくり出す必要があります。国への政策提言機能を強化し、現場発の「政策提言」と都道府県の「率先行動」に取り組むとともに、政党との対話や経済界等との共創を積極的に行い、複雑な社会課題の解決に取り組んでまいります。
また、国に対しては、人口減少対策や国・地方の役割分担の改革などについて、党派を超えた政策論議と、長期的なビジョンのもとでの構造的な改革を強く求めてまいります。
さらに、全国市長会、全国町村会や三議長会との連携を強化し、基礎自治体とともに、より厚みのある地域経営を実現してまいります。
こうした基本姿勢のもと、重点的に取り組むテーマとして、次の4つの分野に力を注いでまいります。
1 人口減少対策
若者や女性に選ばれる地域づくり、子どもを安心して産み育てることができる環境づくり、都市と地方がともに発展できる分散型社会の構築、そして人口減少下でも持続可能な社会づくりなどに取り組んでまいります。
2 ジェンダー平等の推進
性別による固定的役割分担意識やアンコンシャスバイアスの解消、女性の正社員化や賃金上昇の促進、仕事と子育ての両立支援などを推進してまいります。
3 国・地方の役割分担の改革
ナショナルスタンダードと言える業務を国の事務とするなどの再整理や、国の過度な関与の見直し、業務に見合った財源のあり方の検討など、制度の構造的な改革を国に対して提案してまいります。
4 地方自治・民主主義のアップデート
参議院議員選挙区の合区解消、国会に対する地方意見反映の仕組みづくり、被選挙権年齢の引き下げ、統一地方選挙などのあり方の改革などに取り組んでまいります。
私はかつて『社会を変えよう 現場から』という著書で、現場の力による社会の変革を訴えました。変革は、いつの時代も現場から始まる。今もその信念は揺るぎません。現場とは、日々汗を流して働く人々の働く場であり、子どもたちが夢を育む学校であり、命と向き合う医療や介護の最前線です。現場には国民・住民の切実な声や悩みがある一方、未来への希望の種が息づいています。私たちが真に向き合うべきなのは、そうした小さな声、小さな希望です。それをすくい取り、形にし、政策として結実させる―――それこそが、地方自治に携わる私たちの責務です。
「現場から、日本を動かす。」という旗印のもと、知事会の先頭に立ち、日本の変革に全力を尽くす覚悟でございます。すべての知事の皆様と力を合わせ、現場の英知で日本を創り治すべく、誠心誠意責任を持ってこの任にあたってまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
全国知事会会長