発表者名:川崎重工業(株) 山口 正人
団体名:川崎重工業株式会社
株式会社神戸製鋼所
発表日:2024年7月19日(金)
水素社会構築技術開発事業/地域水素利活用技術開発/
水素CGS(注記)の地域モデルにおける水素燃料供給システムの効率化・高度化
に向けた技術開発
NEDO水素・燃料電池成果報告会2024
発表No.B2-7
連絡先:
川崎重工業株式会社 水素戦略本部 山口
E-mail:yamaguchi_masato@global.kawasaki.com
TEL:078-921-1615
(注記) CGS : コージェネレーションシステム
事業概要
1. 期間
開始 : 2023年6月
終了(予定): 2025年3月
2. 最終目標
 「液化水素」のポンプ昇圧と冷熱回収ができる中間媒体式液化水素気化器(IFV:Intermediate Fluid
Vaporizer)を組み合わせた燃料供給システムを実際のガスタービン発電設備に適用し、その有効性につい
て検証する。
 将来的なガスタービン発電の大型化に向けて、本燃料供給システムにおける各種のデータ取得とともに、
システム構成や運用に関するノウハウを獲得する。
 臨界圧以上における液化水素気化器の伝熱挙動を確認し、幅広い運転圧力範囲における課題点の抽出・検
証を行う。
3.成果・進捗概要
 「神戸水素CGS実証設備」に「液化水素ポンプ」、「中間媒体式液化水素気化器」を設置するための基本
検討・設計を完了、長納期品の発注を行うとともに、設置に向けた詳細設計を開始
 「液化水素ポンプ」方式による効率向上を検証するため、水素ガスタービン運用時における所内消費動
力や運用コストを比較するベースデータとして、現状の水素ガス圧縮機方式における4半期毎の諸データ
を取得
 「中間媒体式液化水素気化器」の詳細設計を完了し、高圧ガス保安協会殿による設計審査合格証を得た
うえで製作を開始 2
本事業を実施する背景や目的(1/2)31.事業の位置付け・必要性
 「水素CGSの地域モデル確立に向けた技術開発・研究」等で、水素専焼・混焼運転が可能な
「水素ガスタービン発電装置」の開発を進め、社会実装に耐え得るレベルの技術開発に目途付
けが完了した。社会実装を進める上で「水素燃料供給系」を含めた全体システムで経済性や
CO2排出量低減効果等を考慮する必要がある。
1 液化水素ポンプによる水素圧縮動力の低減
現状のシステムでは、燃料水素をガスタービン供給圧まで昇圧する「水素ガス圧縮機」を使
用しており、昇圧動力に多大な電力を消費し、システム全体の効率・経済性を悪化させる要
因となっている。水素発電は水素を大量に消費することから、キャリアとして「液化水素」
を適用することが有効である。本課題を解決する方策として「液化水素」の特性を活かして
「液」の状態のままポンプで昇圧することで、昇圧に要する動力の大幅な低減が期待できる。
水素ガス
圧縮機
液化水素
ポンプ
中間媒体
式気化器
動力:大 動力:小
現状の水素燃料供給系
ガスター
ビンへ
昇圧 昇圧 ガス化
冷熱
新たな水素燃料供給系
1圧縮動力の低減
ガスター
ビンへ
液化水素
空温式
気化器
ガス化
貯槽
液化水素
貯槽
2冷熱の取出し
本事業を実施する背景や目的(2/2)
1.事業の位置付け・必要性
2 中間媒体式気化器による冷熱の取出し
「液化水素」は液化時に使用したエネルギーの一部を「冷熱」の状態で保有しており、冷熱
エネルギーをガス化時に回収した「冷熱」を冷凍・冷蔵・冷却等に有効利用することで、新
たな付加価値として収入やCO2の低減が期待できる。「液化水素の気化器」として、液化水素
の冷熱を有効利用でき、将来のガスタービンの大型化に対応もできる「中間媒体式気化器」
が最も適していると考えられる。
 「水素燃料供給系」にこれらの「液化水素ポンプ」、「中間媒体式気化器」の実機を適用し、
実運転における基本性能や冷熱取り出し能力等を確認することは有意義である。42中間媒体式気化器
1液化水素ポンプ
出典:日機装株式会社 52 .研究開発マネジメントについて(1/3)
研究開発の目標と目標設定の考え方(川崎重工業)
<目標>
 「液化水素」のポンプ昇圧と冷熱回収ができる中間媒体式液化水素気化器を組み合わせた燃料
供給システムを実際のガスタービン発電設備に適用し、その有効性について検証する。
 将来的なガスタービン発電の大型化に向けて、本燃料供給システムにおける各種のデータ取得
とともに、システム構成や運用に関するノウハウを獲得する。
<目標設定の考え方>
1 新たに液化水素ポンプ、中間媒体式気化器を適用するため設備改修を実施する必要がある。
2 新たな水素供給システムの有効性を確認するため、適用前のシステムとの比較を実施する。そ
のため適用前の燃料供給システムについても、運転時の消費動力等のデータを取得しておく必
要がある。
3 ガスタービン発電の大型化に向け、ガスタービンの各種運転条件に要求される燃料供給能力に
問題がないことを確認する必要がある。
4 ガスタービンへの安定的な燃料供給を実現するための水素供給システムのシステム構成ならび
に運転におけるノウハウを獲得する必要がある。 62 .研究開発マネジメントについて(2/3)
研究開発の目標と目標設定の考え方(神戸製鋼所)
<目標>
 水素の臨界圧(約1.3MPa)以上の圧力における伝熱性能および熱歪の検証を行い、将来的なガ
スタービン発電向中・大型液化水素気化器の最適化設計を目的としたデータの蓄積を図る。
 実際のガスタービン発電設備の運用パターンに応じた中間媒体式液化水素気化器の気化性能、
熱歪、冷熱取出量等の挙動を検証し、商業機運転に向けたノウハウを獲得する。
<目標設定の考え方>
1 水素社会構築技術開発事業 大規模水素エネルギー利用技術開発「液化水素冷熱の利用を可能と
する中間媒体式液化水素気化器の開発」において、臨界圧以下における伝熱性能等の基礎デー
タが取得出来たが、ガスタービン発電で必要とされる臨界圧以上でのデータが必要となる。
2 臨界圧以上でのデータ取得のためには、液化水素ポンプが設置される設備に組み込むための中
間媒体式液化水素気化器を製作する必要がある。
3 将来的な中・大型ガスタービン発電に向けて、実際のガスタービンの運転パターンにおける気
化特性、熱歪挙動および冷熱取出量の安定性を確認する必要がある。
4 得られたデータを基に、商業規模のガスタービン向中間媒体式液化水素気化器の試設計を行い、
設計的課題の有無を検証する必要がある。
「神戸水素CGS実証プラント」概要
液化水素貯蔵供給設備
ガスタービン発電設備
排熱ボイラ設備
水処理設備
液化水素貯蔵供給設備24m3液水タンク容量
2,500Nm3/h
(225kg/h)
水素ガス
最大供給能力
ガスタービン発電設備
M1A-17
使用ガスタービン
1,800kW
最大発電能力
6,600V
発電電圧
排熱ボイラ設備
水管式
ボイラ形式
150m2
ボイラ伝熱面積
5 ton/h
最大蒸気発生能力
0.95MPaG
定格蒸気圧力
2 .研究開発マネジメントについて(3/3)7地図出典:国土地理院ウェブサイト
(https://maps.gsi.go.jp)
神戸市ポートアイランド地区 82 .研究開発マネジメントについて
研究開発のスケジュール
2024年度
2023年度4Q3Q2Q1Q4Q3Q2Q1Q
A. 気化器の設計・製作
(神戸製鋼所)
B. 実証設備の改修
(川崎重工業)
C. 気化器の実証
(神戸製鋼所)
D. ガスタービン発電設備の実証
(川崎重工業)
E. 大型機の試設計
(神戸製鋼所)
F. コスト面や総合効率の比較・評価
(川崎重工業)
G. 水素CGS事業化および他地域への
横展開に向けた要件の整理
(川崎重工業)
設計及び材料調達
製作
設計及び機器調達
設備改修・試運転
応力解析 気化性能・応力の確認
高温期
データ取得・検証
運転試験
大型機の試設計
コスト面や総合効率の比較・評価
水素CGS事業化および他地域への横展開に向けた要件の整理
冷熱利用の可能性確認
中間期 低温期 中間期2 92 .研究開発マネジメントについて
研究開発の実施体制
・実証設備の改修
・ガスタービン発電設備の実証
・水素CGS事業化および他地域への
横展開に向けた要件の整理
神戸製鋼所
川崎重工業
【幹事事業者】
神戸市NEDO助成
関西電力 岩谷産業
関電エネルギー
ソリューション
・実証場所提供
・社会的受容性の
啓蒙活動
・運用評価
・電力供給に係る支援
・液化水素供給
・設備改修助言
(協力機関・企業)
・運転、点検業務
株式会社
大林組
・インフラ設備提供
・電力/熱供給の運
用サポート
・気化器の設計・製作
・中間媒体式気化器の実証
・大型機の試設計 103.研究開発成果について
A. 中間媒体式液化水素気化器の設計・製作(神戸製鋼所 1/2)
C. 気化器の実証 応力解析
 詳細設計を完了し、高圧ガス保安協会殿の設計審査合格証を得た。
 解析モデルを作成し、熱応力FEM解析に着手した。
液化水素気化器管板近傍温度コンタ図 液化水素気化器管板近傍応力+変形コンタ図 113.研究開発成果について
A. 中間媒体式液化水素気化器の設計・製作(神戸製鋼所 2/2)
 中間媒体式液化水素気化器の製作に着手し、順調に製作が進捗中。 123.研究開発成果について
B. 実証設備の改修(川崎重工業 1/2)
1 基本検討・設計
 神戸水素CGS実証設備に「液化水素ポンプ」、「中間媒体式液化水素気化器」を設置する
ための機器配置や配管フローの基本検討・設計を行った。
2 機器の調達・詳細設計
 長納期品である「液化水素タンク」、「液化水素ポンプ」などの発注を完了
 調達機器の高圧ガス認定取得のための申請書類作成、機械基礎の詳細設計を実施中
液化水素ポンプ用
液化水素貯槽
液化水素ポンプ
中間媒体式気化器
水素ガスタービン
液化水素貯槽
空温式気化器
天然ガス
圧縮機
燃料混合
ユニット
水素ガス
圧縮機 133.研究開発成果について
D. ガスタービン発電設備の実証(川崎重工業 2/2)
 「液化水素ポンプ」方式による効率向上を検証するため、水素ガスタービン運
用時における所内消費動力や運用コストを比較するベースデータとして、現状
の水素ガス圧縮機方式における4半期毎の諸データを取得した。運転条件は下
表の通りであり、高温期、低温期、中間期のデータを幅広く取得できた。
60回
運転回数
279時間
総運転時間
1,372点
データ点数
4 〜37
外気温
運転条件 143.研究開発成果について
成果の普及
神戸製鋼
川崎重工
種別4件論文(査読付き)9件39件
研究発表・講演8件新聞・雑誌等への掲載1件5件
プレスリリース1件展示会への出展2件受賞
297件
(3,300名以上)
現地視察
 国内外より多数の視察者を受入れ。
(設備完成後の2018年2月からの累計で延べ約923回・72ヶ国・8,500名以上)
 コージェネ大賞2023 技術開発部門・理事長賞、第66回「十大新製品賞」増田賞を受賞。
 水素エネルギー活用の普及啓発、社会受容性の向上に向けて積極的に発信・展開。
神戸製鋼
川崎重工1件特許出願(国内) 154.今後の見通しについて
Chevron Phillips×ばつ3
Smurfit Kappa×ばつ5
Sedamyl : ×ばつ1
 今後、神戸水素CGS設備の改修を完了し、「液化水素」のポンプ昇圧と冷熱回収ができる中間媒
体式液化水素気化器を組み合わせた燃料供給システムを実際のガスタービン発電設備に適用し、そ
の有効性について検証を完了予定
 将来的なガスタービン発電の大型化に向けて、本燃料供給システムにおける各種のデータ取得とと
もに、システム構成や運用に関するノウハウを獲得予定
 事業終了後は、世界各地から数十件の水素発電引合到来しており、本実証技術を適用できる可能性
あり
水素CGS設備への燃料供給システム 164.今後の見通しについて
中間媒体式液化水素気化器
 神戸水素CGS設備組込後に所定の実証試験を行い、「中間媒体式液化水素気化器」の基本性能
に関するデータ取得と検証・評価を実施する。
 上記で得られた成果に基づき中規模水素利用ガスタービン用の10,000Nm3/hr クラスの気化器
の試設計を行うことで、大規模水素利用に向けたガスタービン用大容量気化器における課題の
有無を検討する。 17ご清聴ありがとうございました

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