発表者名:八木 啓介
団体名 :株式会社JERA
発表日 :7月18日
グリーンイノベーション基金事業/
大規模水素サプライチェーンの構築/
水素発電技術(混焼、専焼)の実機実証/
大規模水素サプライチェーン構築に係る水素混焼発電の技術検証
NEDO水素・燃料電池成果報告会2024
発表No.B1-15
連絡先:技術経営戦略部
株式会社JERA
https://www.jera.co.jp/contact/ 2事業概要
1. 期間
開始 :2021年10月
終了(予定): 2028年度
2. 最終目標
天然ガス焚GTコンバインドサイクルで水素30Vol%混焼実証を行うことにより
実運用上の課題を抽出し解決を図ることで、火力発電における水素燃料の利用技術確立すること。
最終目標達成のために以下の内容を検討
・水素混焼実証試験の対象機を当社発電所より選定
・ガスタービンの仕様に合致した改造範囲及び内容の技術的検討を行い、他対象機への展開可能性を評価
・水素性状評価(別事業「大規模水素サプライチェーンの構築に係る技術開発/大規模水素サプライチェーンの構築に
係る水素品質に関する研究開発」で実施中)の結果を基に、水素供給設備の合理的な仕様の確定
3.成果・進捗概要
2022年度までに実施したフィージビリティスタディ(FS)の結果、MCHや副生水素に含まれる微量物質(ベンゼン、ト
ルエン等)により、燃料系統内部でガム状物質が生成され、ノズル部や燃料流路に飛来・蓄積した場合の運用への懸
念が抽出された。このため多様な水素源への対応を目指し別事業にて水素性状評価を実施している。
水素性状評価と並行して、本事業では水素供給設備や燃焼器改造に関するFSを再度実施している。 31.事業の位置付け・必要性(背景・社会情勢)
2020年10月26日の菅総理大臣の所信表明演説において、脱炭素社会の実現を目指すことが示され、同年12月25日に「2050年カーボン
ニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が策定され、アンモニア、水素は水素社会への移行期では主力となる脱炭素燃料と位置付けられた。
(注記)1:2050年に発電用500~1000万t(「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」より引用)
(注記)2:「クリーンエネルギー戦略」より引用
出典:2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 (経済産業省)
⚫ 市場機会:発電用として、水素1,000万t/y(注記)1、アンモニアは3,000万t/y(注記)2の活用が見込まれている。
⚫ 2035年ビジョン実現に向けたJERA成長戦略:
・CO2排出原単位に関して、当社は、2030年度に国全体の火力発電からの排出原単位と比べて20%減
国の目標値である46%削減については、エネルギー基本計画を始めとした政策議論の動向に注力し、更なる低減策を検討して行く。 41.事業の位置付け・必要性(市場のターゲット)
セグメント分析 ターゲットの概要CO2排出量日本の化石燃料発電容量
水素専焼
化石燃料発電出力構成のセグメンテーション
石炭
4,312万kW
水素
30vol%
 化石燃料発電の半数を占める液化天然ガス(LNG)の
グリーン燃料の転換(水素・アンモニア)に注力。LNG8,201万kW
アンモニア専焼LNG70vol%
石油他
3,551万kW53%29%19%石油他CCUSカーボンニュートラルにおける各部門の水素利用用途および最大需要想定
出典:今後の水素施策の課題と対応の方向性中間整理(案)「第25回水素・燃料電池戦略協議会」
アンモニア混焼20%混焼率
向上
市場概要と目標とするシェア・時期
 日本の化石燃料発電電力容量より、 LNG・石炭が全て水素・アンモニアに転換された場合
、最大約12,500万kWのCO2フリー電気の発電が可能と想定。
 水素の需要は2050年において発電用の潜在国内水素需要(一定の仮説に基づく導入量)
は約500〜1,000万t/y程度(注記)1になると想定。
 発電用の燃料アンモニアの国内需要は、2050年で3,000万t/y(注記)2を想定。
約500~
1000万t/y
約600万t/y
約700万t/y
出典:電力広域的運用推進機関「2021年度年次報告書 供給計画の取りまとめ」
(注記)1:「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」より引用
(注記)2:「クリーンエネルギー戦略」より引用
電力市場における水素・アンモニア電気をターゲット 51.事業の位置付け・必要性(経営資源・ポジショニング)05000
10000
15000
20000
25000
30000
35000
他社に対する比較優位性
自社の強み、弱み(経営資源)
自社の強み
 国内火力発電設備の約半数容量を保有し、約3
割の電力を供給。
 他社に比べCO2排出量の少ないLNGの比率が高く、
石炭火力においても比較的CO2排出の少ない超々
臨界圧発電方式(USC)が占める割合が大きい。
ターゲットに対する提供価値
 CO2フリー電気の提供
自社の弱み及び対応
 化石燃料による発電が他社より多いためCO2のゼ
ロエミッション化が課題。
 その対策の1つとして、グリーン燃料の導入・拡大を
実施。
当社の発電出力構成 (注記)1
燃料種別 出力(発電端)
石炭
(USC再掲)
1,032万kW
(892万kW)
LNG(液化天然ガス)(注記)2 4,644万kW
重油・原油 900万kW
合計 6,576万kW
(注記)1 2022年3月末時点。建設中含む。共同火力保有分は除く
(注記)2 LPG・都市ガス含む
出典:2021年度決算説明会資料(IR情報、2022年5月)
(参考)全国大の発電出力構成(2021年)
その他 79
新エネ 7629
揚水 2747
一般水力 2175
原子力 3308
LNG 7804
石炭 4836
石油他 2888LNG50%
石油他19%石炭31%石炭16%
(USC14%)
重油・原油14%LNG71%
出典:電力広域的運用推進機関「2022年度年次報告書 供給計画の取りまとめ」
国内火力発電の最大保有の強みを活かして、社会・顧客に対してCO2フリー電気を提供 61.事業の位置付け・必要性(経営ビジョン)
「JERAゼロエミッション2050」を策定
JERAは、2050年時点で、国内外の当社事業から排出されるCO2をゼロとするゼロエミッションに挑戦。
ゼロエミッションは、「再生可能エネルギー」とグリーンな燃料の導入を進めることで、発電時にCO2を排出しない
「ゼロエミッション火力」によって実現。
⇒脱炭素に向けた施策の一つとして本事業を通じてLNG燃料の水素転換を進める。
図 JERA2050ゼロエミッション(日本版ロードマップ)
⚫ 当該変化に対する経営ビジョン: 71.事業の位置付け・必要性(提供価値・ビジネスモデル)
再エネ 電解H2液化/MCH/
アンモニア
貯蔵 海上輸送 JERA
天然ガス 改質
荷揚・
貯蔵
他発電事業者
他産業
気化or脱水素
他国への展開 アンモニア・水素双方
 JERAは、LNGと同様に燃料の上流開発から、輸送・貯蔵、発電・販売までのビジネスモデル(バリューチェーン)を検討。
➢ 発電で使用するには大量のグリーン燃料が必要であり、既存のサプライチェーンでは賄うことができないため、発電燃料用に新
たにサプライチェーンを構築・拡大に挑戦。また、CO2フリー電気を発電するため、実機実証が必要。
ビジネスモデル(検討中)
発電・販売
輸送・貯蔵
燃料上流開発
CCS/EOR
ブルー水素・アンモニア
グリーン水素・アンモニア
水素混焼用燃焼器等を導入し燃焼安定性、運用性の実機検証を行う
JERAが保有するバリューチェーンを用いてCO2フリー価値を提供する事業を創出/拡大 8水素混焼発電技術の検討概要
LNG火力発電所(GTCC型)において、水素と天然ガスを混合燃焼できる燃焼器へ置換し、
2028年度までに体積比約30%(熱量比で約10%相当)の天然ガスを水素に転換した発電を実証予定。
このため水素混焼燃焼器型への改造や水素供給設備が必要。
ノズル改造
(水素混焼用)
引用:三菱重工業HP ならびに
NEDO水素・燃料電池成果報告会2022より抜粋
水素混焼用燃焼器イメージ図
2 .研究開発マネジメント(研究概要)
水素混焼に向けた
主な対応事項 92 .研究開発マネジメント(研究開発の目標)
研究開発内容
実証試験に向けた検討と実証試験におけるKPI、およびKPI設定の考え方 102 .研究開発マネジメント(実施体制)
実施体制図
研究開発項目
大規模需要に対応した水素ガス
タービン発電技術(混焼)の確立
(総事業費/国費負担額)
株式会社JERA
1実機実証試験を担当
(110億円/66億円)
(注記)国費負担額はインセンティブを含む
(注記)金額は、総事業費/国費負担額
組織内体制図
技術経営戦略部
(研究開発責任者)
代表取締役社長 CEO兼COO
奥田 久栄
O&M・エンジニアリング部門
経営企画部門
事業開発部門
連携
最適化部門
連携
技術調査ユニット
政策・技術動向の
調査・分析
技術企画ユニット
技術経営戦略の提言
知財戦略の取纏め
連携
O&M・エンジニアリング
戦略統括部
技術開発ユニット
プロジェクトの取纏め
社内部門間の連携方法
• 社長、関係役員等も参加する定期的な進捗会議等を実施。
• 研究開発段階から将来の社会実装を見据えて取り組むため、O&Mエ
ンジニアリング部門(研究開発部門)と経営企画部門等が情報共有を
密に行うなど連携して推進する。
• 研究開発段階から将来の社会実装を見据えて取り組むため、部門横
断による体制を構築。標準化の方向性・知財戦略についても検討。 112.研究開発マネジメント(経営者等による施策など)
経営者等による具体的な施策・活動方針
• 経営者のリーダーシップ
– 脱炭素に係る取り組みをJERAの重要課題(マテリアリティ)と
して特定
– コーポレートコミュニケーションブック(統合報告書)、プレスリ
リース、ホームページ、CM、社内報等で社内外へ取り組みを発信• 事業のモニタリング・管理
– 本事業を含むゼロエミッション火力に係る取り組みを経営層が定
期的に把握し議論するため、ステアリングコミッティを毎月開催
– 上記ステアリングコミッティにおける議論内容を取り組みに反映
– 事業化を判断するため、技術面のステージゲート判断基準や
KPIを設定
事業の継続性確保の取組
• トランジションファイナンス等により調達した資金も用いて、
取り組みをさらに強力に推進
若手人材の育成
• OJT等にて育成機会を提供 123 .研究開発成果(研究開発の進捗)
・水素混焼用プラントのプロセス設計に関し、2022年度までのFSにて以下内容を実施
◼ 水素供給設備の仕様と機器配置に関する基礎検討
◼ 水素配管追設および発電設備等の基本設計、発電効率や窒素酸化物排出量などの運転特性の検討
◼ 水素供給方法に関して、 2022年5月に改訂された高度化法において、グレーアンモニア・水素を含む全
てのアンモニア・水素を非化石エネルギー源として位置付け、利用促進が進められていることから、既存商
流を最大限活用した供給方法を模索する中で、 MCHや副生水素等に含まれる微量物質(ベンゼン、ト
ルエン等)により、燃料系統内部でガム状物質が生成され、ノズル部や燃料流路に飛来・蓄積した場合
の運用への懸念を抽出。
➢ 別事業にて2023年度より事業用天然ガス火力発電所(コンバインドサイクル)への適用可否評価に
向けた検討を実施。評価結果に応じた最適な設備構成により実証試験を行う。 133 .研究開発成果(研究開発の進捗:課題の抽出)
◼ FSで抽出された課題の1つに、副生水素やMCHに含まれる芳香族物質(BTX)がガスタービン機内でガム化し、燃焼器
のノズル閉塞などを引き起こす懸念が新たに判明した。
◼ 芳香族物質の完全除去には高額な設備(PSA)が必要となるが、ガスタービンの芳香族物質に対する許容値を明らかに
することで設備の経済性(=商用時の競争力)を高めることが可能となる。
評価要否 種類 水素濃度[%] 微量物質[ppm]否液体水素 99.999 ―
LNG由来
(蒸気改質)
98 ―要MCH 99.9
硫黄<0.1
トルエン〜数百ppm
原油由来
副生水素90硫黄〜数ppm
ベンゼン〜数百ppm
トルエン〜数百ppm
キシレン〜数百ppm
【水素性状】 143 .研究開発成果(研究開発の進捗:水素供給方法の検討)
➢ 液体水素にガム化の原因物質を添加することで副生ガスやMCHを模擬できる見通しが得られたことから、液体水素供給設備へ微
量物質添加装置を追設する方法を採用することとした。
➢ 模擬ガスでは添加量のコントロールが可能となり、水素性状評価で得られたガスタービンの許容量を再現可能。
空温式気化器
液体水素タンク
液体水素供給供給
往復動式水素圧縮
【水素供給設備】
天然ガス
ガスタービン
【発電設備】
微量物質添加装置を追加
(MCH・副生ガス等の再現)
水素供給設備に関して
液体水素昇圧ポンプの導入も検討 153.研究開発成果(研究開発スケジュールの見直し)
だいやまーく水素性状評価の追加、ならびに、水素供給方法の見直しにより、スケジュールを見直し。
だいやまーく設備改造に向けた再FSおよび水素性状評価を並行して実施中。
(XX法規制緩和)
2021 2022 2023 2024 2025 2026 2027 2028 2029 2030〜
事業全体
8 9 10 11 12 1 2 3 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q
当初工程
変更後工程
研究開発期間FS社会実装
(大規模
サプライ
チェーンの
連携)
事業化
▼採択
設備改造 実証試験
▼ステージゲート
【ステージゲート判断基準】
• 実機適応可否の判断 (NOx、プラント影響評価)
• 事業予見性の確認 (制度措置含めた事業性判断)
FS 再FS
▼ステージゲート
設備改造 実証
試験 164.今後の見通しについて(今後の課題と対応方針)
実用化・事業化に向けて
だいやまーく 実証試験での運転・運用性を踏まえた事業予見性の評価。
だいやまーく 水素30Vol%転換におけるプラント全体の運転特性(NOx 排出挙動、ガスタービン及び後流機器への
影響等)やプラント全体の運用特性(負荷条件、制御性、危急時対応など)、制約条件など水素混焼
技術の社会実装に向けた課題の抽出。
だいやまーく 水素混焼技術の水平展開により水素社会の実現を加速

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