特許出願非公開制度について
内閣府・特許庁(特許出願非公開制度担当)
目次1特許出願非公開制度の概要 【00:00〜14:05】
外国出願に関するその他の留意事項(優先権証明書の発行留保)
【27:06〜33:06】
2 外国出願禁止(第一国出願義務) 【14:06〜27:05】
第一次審査 【33:07〜39:16】4135 保全審査(第二次審査) 【39:17〜41:25】
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特許出願非公開制度の概要2 2. 重要物資の安定的な供給の確保に関する制度(第2章)
国民の生存や、国民生活・経済活動に甚大な影響のある物資の安定供給の確保を図るため、特定重要物資の指定、民間事業
者の計画の認定・支援措置、特別の対策としての政府による取組 等を措置。
法律の趣旨
1. 基本方針の策定 等(第1章)
・経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する基本方針を策定。
・規制措置は、経済活動に与える影響を考慮し、安全保障を確保するため合理的に必要と認められる限度において行わなければならない。
法律の概要
経済安全保障推進法の概要(1/2)
(経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律)
国際情勢の複雑化、社会経済構造の変化等に伴い、安全保障を確保するためには、経済活動に関して行われる国家及び国民の安
全を害する行為を未然に防止する重要性が増大していることに鑑み、安全保障の確保に関する経済施策を総合的かつ効果的に推進
するため、基本方針を策定するとともに、安全保障の確保に関する経済施策として、所要の制度を創設する。
事業者の計画認定・支援措置
特定重要物資の指定 政府による取組
・国民の生存に必要不可欠又は国民
生活・経済活動が依拠している物資
で、安定供給確保が特に必要な物資
を指定
・民間事業者は、特定重要物資等の供給確保計画を
作成し、所管大臣が認定
・認定事業者に対し、安定供給確保支援法人等による
助成やツーステップローン等の支援
・特別の対策を講ずる必要がある
場合に、所管大臣による備蓄等
の必要な措置
その他
・所管大臣によ
る事業者への
調査
3. 基幹インフラ役務の安定的な提供の確保に関する制度(第3章)
基幹インフラの重要設備が我が国の外部から行われる役務の安定的な提供を妨害する行為の手段として使用されることを防止す
るため、重要設備の導入・維持管理等の委託の事前審査、勧告・命令 等を措置。
・対象事業:法律で対象事業の外縁(例:電気事
業)を示した上で、政令で絞り込み
・対象事業者:対象事業を行う者のうち、主務省令で
定める基準に該当する者を指定
事前届出・審査
審査対象
・重要設備の導入・維持管理等の委託に関
する計画書の事前届出
・事前審査期間:原則30日(場合により、
短縮・延長が可能)
勧告・命令
・審査の結果に基づき、妨害行為を防止するた
め必要な措置(重要設備の導入・維持管
理等の内容の変更・中止等)を勧告・命令3 5. 特許出願の非公開に関する制度(第5章)
安全保障上機微な発明の特許出願につき、公開や流出を防止するとともに、安全保障を損なわずに特許法上の権利を得られる
ようにするため、保全指定をして公開を留保する仕組みや、外国出願禁止 等を措置。
4. 先端的な重要技術の開発支援に関する制度(第4章)
先端的な重要技術の研究開発の促進とその成果の適切な活用のため、資金支援、官民伴走支援のための協議会設置、調査
研究業務の委託(シンクタンク) 等を措置。
外国出願禁止
補償
技術分野等によるスクリーニング
(第一次審査)
・特許庁は、特定技術分野に属する発明の特
許出願を内閣府に送付
保全審査(第二次審査)
1国家及び国民の安全を損なう事態を生ず
るおそれの程度
2発明を非公開とした場合に産業の発達に
及ぼす影響 等 を考慮
・指定の効果:出願の取下げ
禁止、実施の許可制、開示
の禁止、情報の適正管理等保全指定
・個別プロジェクトごとに、研究代表者の同意を得て設置
・構成員:関係行政機関の長、研究代表者/従事者 等
・相互了解の下で共有される機微情報は構成員に守秘義務
官民パートナーシップ(協議会) 調査研究業務の委託
(シンクタンク)
・重要技術の調査研究を一定の能力を有する
者に委託、守秘義務を求める
国による支援
・重要技術の研究開発等に対する
必要な情報提供・資金支援等
経済安全保障推進法の概要(2/2)
(経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律)
法律の概要(続き)
施行期日
・公布(令和4年5月18日)後6月以内〜2年以内 (注記)段階的に施行4 特許出願の非公開制度を導入することにより、
公にすることにより国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明が記載されている特許出願につき、出願公開等
の手続を留保するとともに、その間、必要な情報保全措置を講じることで、特許手続を通じた機微な技術の公開や情報流出を防止。
これまで安全保障上の観点から特許出願を諦めざるを得なかった発明者に特許法上の権利を受ける途を開く。
趣旨
概要
3.保全審査(第二次審査) 【第67条】
・「保全審査」(=発明の情報を保全することが適当と認められるかの審査)における考慮要素
1 国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれの程度
2 発明を非公開とした場合に産業の発達に及ぼす影響 等
➤ 内閣府は、審査に当たり、国の機関や外部の専門家の協力を得、また、国の関係機関に協議
➤ 保全指定をする前に、出願人に対し、特許出願を維持するかの意思確認を実施
2.技術分野等によるスクリーニング(第一次審査) 【第66条】
・特許庁は、公にすることにより国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明が含まれ得る技術分野((注記))に
属する発明が記載されている特許出願を、内閣府に送付
(注記) 特定技術分野(政令で指定):核技術、先進武器技術等の中から下記312の観点を踏まえて絞り込んだもの
➤ 第一次・第二次審査中及び保全指定中は、出願公開及び特許査定を留保
1.特許出願の非公開に関する基本指針を策定 【第65条】5特許出願の非公開制度の概要(1/2)
(経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律 第5章)
令和6年5月1日
4.保全指定 【第70条】
・「保全対象発明」を指定、出願人に通知
(注記) 指定の期間:1年以内。以後、1年ごとに延長の要否を判断
(注記) 指定の効果:
➤ 出願の取下げ禁止 【第72条】 ➤ 発明情報の適正管理義務 【第75条】
➤ 発明の実施の許可制 【第73条】 ➤ 他の事業者との発明の共有の承認制 【第76条】
➤ 発明内容の開示の原則禁止 【第74条】 ➤ 外国への出願の禁止 【第78条】
5.外国出願禁止(第一国出願義務) 【第78条】
・日本でした2の技術分野に属する発明については、まず日本に出願しなければならないこととする第一国出願義務を規定
(特許庁に対し、該当するかどうかを事前確認可能 【第79条】)
6.補償 【第80条】
・発明の実施の不許可等により損失を受けた者に対し、通常生ずべき損失を補償
概要(続き)
施行期日6特許出願の非公開制度の概要(2/2)
(経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律 第5章)
保全審査
指定中は、
・出願取下げ不可
・実施は許可制
・開示は原則禁止
・適正管理義務
・他者への共有は承認制
・外国出願禁止
通常の特許手続(特許法)特許出願(年間約30万件)出願公開審査請求指定解除(注記)出願から1年6か月経過 又は
出願公開請求があった場合
特許査定
又は
拒絶査定保全指定3か月以内特許庁内閣府の審査部門
(注記)1年ごとに延長の要否を判断
出願
取下げ
第一次審査
機微性の検討
・出願人との対話
・専門家からの聴取
・特許庁に情報提供依頼
・防衛省等に意見照会など
産業への影響等の検討
・出願人との対話
・専門家からの聴取
・関係省庁に意見照会など
国内出願後、保全審査に付されず、又は
10か月以内に保全指定されなければ禁止は自動的に解除
指定せず
実施制限等により
出願人が受ける
通常生ずべき損失を補償総合評価による判断(注記)禁止対象に当たるかどうかの事前確認制度あり出願人の意思確認通常の特許手続へ通常の特許手続へ
(注記)指定解除から3か月以内
(保全指定中も可)
特定技術分野該当発明は、
外国出願禁止
(第一国出願義務)
(注記)出願から3年以内
・特定技術分野に該当
又は
・出願人からの申出書類送付
(注記)本制度により出願公開、特
許査定、拒絶査定が留保され
る期間においても、その他の特
許手続(手続補正、出願審
査請求、拒絶理由通知等)
は留保されない
→「保全審査」が開始後も、
特許庁に対する特許手続は
通常通り可能7特許出願の非公開制度 手続フロー図
特定技術分野と付加要件の考え方
(1) 特定技術分野の選定の考え方(第2章第1節(2))
国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明((注記))が含まれ得るか
(注記) 安全保障上の機微性が極めて高いもの。具体的には、
・ 我が国の安全保障の在り方に多大な影響を与え得る先端技術
(いわゆるゲーム・チェンジャーと呼ばれる将来の戦闘様相を一変させかねない武器に用いられ得る先端技術や、
宇宙・サイバー等の比較的新しい領域における深刻な加害行為に用いられ得る先端技術等)
・ 我が国の国民生活や経済活動に甚大な被害を生じさせる手段となり得る技術
(大量破壊兵器への転用が可能な核技術等) (第1章第2節(1))
経済活動やイノベーションへの影響
の両方を考慮し、真に保全指定の対象となる発明が含まれ得る領域を選定。
発明
技術分野
保全審査に
付される発明
特定技術分野及び付加要件のイメージ
(斜線部分が保全審査に付される範囲)特定技術分野
産業の発達に及ぼす
影響が大きい技術分野
(2) 付加要件の考え方(第2章第2節)
保全指定をした場合に産業の発達に及ぼす影響が大きい技術分野については、
発明の経緯や研究開発の主体等の技術分野以外の要件(「付加要件」)を定めて
絞り込み、保全審査に付す。
(例) 当初から防衛・軍事の用に供する目的で開発された場合
国の委託事業において開発された場合 等
くろまる 基本指針において示した考え方8 特定技術分野の概要
【我が国の国民生活や経済活動に甚大な被害を生じさせる手段となり得る技術が含まれ得る分野(注記)
(20)ウラン・プルトニウムの同位体分離技術
(21)使用済み核燃料の分解・再処理等に関する技術
(22)重水に関する技術
(23)核爆発装置に関する技術
くろまる 特定技術分野:(1)~(25)の技術分野について、国際特許分類(又はこれに準じて細分化したもの)に従って規定。
(政令で示す国際特許分類はスライド23を参照)
(10)~(19):保全指定をした場合に産業の発達に及ぼす影響が大きいと
認められる技術分野 → 付加要件を適用
(10)スクラムジェットエンジン等に関する技術
(11)固体燃料ロケットエンジンに関する技術
(12)潜水船に関する技術
(13)無人水中航走体等に関する技術
(14)音波を用いた位置測定等の技術であって潜水船等に関するもの
(15)宇宙航行体の熱保護、再突入、結合・分離、隕石検知に
関する技術
(16)宇宙航行体の観測・追跡技術
(17)量子ドット・超格子構造を有する半導体受光装置等に
関する技術
(18)耐タンパ性ハウジングにより計算機の部品等を保護する技術
(19)通信妨害等に関する技術
(24)ガス弾用組成物に関する技術
(25)ガス、粉末等を散布する弾薬等に関する技術
【我が国の安全保障の在り方に多大な影響を与え得る先端技術が含まれ得る分野(注記)
(1)航空機等の偽装・隠ぺい技術
(2)武器等に関係する無人航空機・自律制御等の技術
(3)誘導武器等に関する技術
(4)発射体・飛翔体の弾道に関する技術
(5)電磁気式ランチャを用いた武器に関する技術
(6)例えばレーザ兵器、電磁パルス(EMP)弾のような
新たな攻撃又は防御技術
(7)航空機・誘導ミサイルに対する防御技術
(8)潜水船に配置される攻撃・防護装置に関する技術
(9)音波を用いた位置測定等の技術であって武器に関するもの
(注記) 上記(1)~(19)、(20)~(25)について、主にどちらの考え方に着目して選定したものであるかを記載。9Point
付加要件一覧
我が国の防衛又は外国の軍事の用に供するための発明
1防衛・軍事
くろまる 付加要件:1〜3のいずれかに該当する発明であること。
国又は国立研究開発法人による特許出願(国又は国立研究開発法人以外の者と共同でした
ものを除く。)に係る発明
2国・国研
以下のいずれかの適用を受けた特許出願に係る発明
日本版バイ・ドール制度(産業技術力強化法第17条)
産業技術力強化法第17条第1項第1〜4号に規定する条件を受託者が約する場合に、各省庁が政府資金を供与して
行っている委託研究開発(国立研究開発法人等を通じて行うものを含む。)に係る知的財産権について、100%受
託者(民間企業等)に帰属させうる(受託者が特許出願人となりえる)こととする制度。
科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律第22条
国の委託研究であって、本邦法人と外国法人等が共同して行うものの成果に係る知的財産権について、国がその一部の
みを受託者から譲り受けることができる(国と受託者の共同出願となりえる)とする制度。
3国の委託等
(注記)3の場合、特許出願の願書に以下のような記載が必要。
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】
令和しろまる年度、しろまるしろまる省、しろまるしろまる委託事業(又は請負事業)、産業技術力強化法第17条第1項の適用を受ける特許出願10Point
外国出願禁止(第一国出願義務)11(注)以降のスライドにおいて、「特定技術分野に属する発明」とは、
付加要件の対象分野については、付加要件も満たす発明を意味するものとして説明
外国出願禁止の対象となるか確認したい場合
日本国内でした発明であって公になっていないものが、特定技術分野に属する発明であるときは、
政令で定める例外を除き、外国出願((注記))が禁止(第78条)12自分の出願したい発明が外国出願禁止の対象となるか確認したい場合、
どのようにしたらよいか?
((注記))外国出願には特許協力条約(PCT)に基づく国際出願も含まれる
2.外国出願の禁止に関する事前確認
1.日本への第一国出願
(第一次審査・保全審査)
方法
外国出願事前確認のための申出書の提出
★書面手続
特許出願
★オンライン手続or書面手続
手続
日本語 or 英語
日本語
言語
申出書が特許庁に届いた日から10開庁日程度
(注記)特許庁が内閣府に確認を求めない場合、
添付書類が長大ではない場合 等
出願日から3か月以内(第一次審査)
出願日から10か月以内(保全審査)など
(注記)詳細はスライド13参照
判断期間
25,000円
14,000円(出願料金)
手数料
・特許庁が特定技術分野に属する発明であると判断した場合、内
閣府が「公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び
国民の安全に影響を及ぼすものでないことが明らか」と判断しない限
り外国出願不可。
・特許請求の範囲は記載不要。
特定技術分野に属する発明でも、
保全指定されなかったものは外国出願が可
能となる。
留意点
Point
日本へ第一国出願後、外国出願が可能となる条件
外国出願が可能となる条件(以下のいずれかを満たす場合)
1 出願日から3か月以内に第66条第3項の通知(特許庁から
内閣府へ送付した旨の通知)が発せられなかった
2 第66条第10項の通知(特許庁から内閣府へ送付しなかった
旨の通知)がされた(注記)2は申出がある場合のみ通知される
3 出願日から10か月経過した(保全指定された場合や10か月
経過前に出願の却下・放棄・取下げがあった場合を除く。)又
は保全指定する必要がない旨の通知(第71条)がされた
4 保全指定が解除された
5 保全指定の期間が満了した
各手段において、以下の場合には外国出願の禁止に該当しないこととなる。
日本へ第一国出願後、一定の条件を満たせば、特定技術分野に属する発明であっても、
外国出願が可能となる
第一次審査の結果、
保全審査に付されなかった場合13 14
日本へ出願していれば、保全審査の結果、
外国出願OKとなる場合であっても、外国
出願事前確認では外国出願NGの回答にな
ることがあります。よって、特定技術分野
に該当する可能性が低くないと考える場合
は、日本での権利取得を望むか否かに関わ
らず、外国出願事前確認制度を利用するよ
りも、はじめから日本への出願をすること
も一案として考えられます。
日本でも特許権
取得を望むか
出願人が外国出願を検討する場合の判断フロー例
第一次審査
特許庁
保全審査
内閣府
保全指定
指定解除
期間満了
外国出願事前確認
外国出願OK 外国出願OK
外国出願OK外国出願NG保全審査に送られない 保全指定されない
出願予定の発明が
特定技術分野に属する
発明に該当しそうか
外国出願OK外国出願可能
の回答
外国出願不可
の回答
該当しない
ことが明らか
該当する可能性が低くない
望む
望まない
外国出願OK 該当する可能性が低い
Point
特許出願
(参考)保全指定の単位
保全指定されるのは「発明」単位(「出願」単位ではない)
保全対象発明
(保全指定された発明)
保全指定されなかった発明
保全指定中、この「出願」は出願公開されず、特許
査定・拒絶査定もされない
(ただし、査定前まで実体審査を進めることは可能)
保全指定されなかった発明を外国出願したり、
分割出願して権利化を目指したりすることは可能15 外国出願に関するその他の留意事項
(優先権証明書の発行留保)16 優先権
証明書
[概要]
パリ条約による優先権とは、第一国に出願した者が、第一国に出願した書類に記載した事項の範囲
内で優先期間内に第二国に出願をした場合に、第二国における出願の新規性・進歩性等が、第一
国に出願をした日(優先日)を基準に判断されるという制度(パリ条約第4条)。
第二国で優先権主張された発明が第一国に出願した書類に記載した事項の範囲内であることを確
認できるよう、第一国は優先権証明書(第一国の出願内容を証明する書類)を発行する仕組み
優先権主張
第一国出願
(日本)
第二国出願
優先日
優先期間(特許は12か月)
日本の出願全体の内容が含まれる
日本出願の範囲から外国出願が禁止される部分を除外して
第二国へ出願(適法な外国出願(注記))
日本の出願に保全対象の発明が含まれる場合、
(第二国への出願が適法でも)優先権証明書を通じて外国へその内容が伝わる恐れ17パリ条約による優先権制度により生じ得る問題
(注記)以下のような発明に係る外国出願
・保全審査の結果、保全対象外となった発明
・当初から外国出願可能な発明
優先権証明書の発行に関する問題への対処
適法に外国出願がなされた場合、優先権証明書は発行すべき
一方で、優先権証明書に保全対象の発明をそのまま記載することは防ぐべき
基本的な考え方
特許
出願
内閣府へ
送付
3保全対象発明をマスクして優先権証明書を発行
(注記)出願人が外国庁で不利な扱いを受けないよう、
マスクした事情を説明する文書も併せて交付予定
2保全審査の結果が出るまで発行を留保
1第一次審査の結果が出るまで発行を留保
第一次
審査中
出願日から
3か月以内
保全審査中
出願日から10か月以内
保全指定中
保全指定
第一次審査は全出願が対象 ⇒ 第一次審査中は一律に優先権証明書の発行を留保
(参考)出願から3か月以内の発行件数は約3,000件で全出願の約1%(2021年度) 18
(注記)1、2の期間に出願
取下・放棄・却下された
場合、全体をマスクして
優先権証明書を発行
Point
(補足)優先権証明書の電子的交換(DAS)の場合19WIPO DAS
1特許出願
2アクセスコード発行
(第一次審査・保全審査中は発行を留保)
4優先権証明書要求
5優先権証明書応答
第一国(日本)
出願時に提出(提出方法は国によって異なる)
・アクセスコード
・優先基礎の区分(特許・実用新案・意匠等)
出願人
(注記)第一国が採用しているシステムにより、
1〜3の手続が一部異なる場合があります。
第二国
3特許出願
優先権証明書(アクセスコード)の発行の留保の影響
外国出願の禁止の対象となる発明でない限り、第一次審査・保全審査中(発行留保中)
でも、外国出願自体は可能
ただし、日本への出願後、第一次審査・保全審査完了前に外国出願する場合は、優先権
証明書(アクセスコード)は第一次審査・保全審査完了まで発行できないため、外国出願
後に追って提出する必要がある
(参考)外国出願後の優先権証明書(アクセスコード)を追って提出可能な期間
根拠法令
提出期限
対象国・機関
特許規則§1.55(f)現実の出願日から4か月又は優先日から16か月の
何れか遅く終わる期間内
米国
規則53(1)
優先日から16か月以内
欧州(EPO)
専利法30条
優先日から16か月以内
中国
特許法54条5項
優先日から16か月以内
韓国20 第一次審査21 22
含まない
第一次審査の概要(出願日から3か月以内に特許庁で実施)
保全審査に付する
ことを求める申出
(第66条第2項)
があるか
内閣府へ送付
(保全審査へ)
(注記)出願人等には書留で通知
内閣府へ送付対象外
(注記)第66条第10項の申出がある場合のみ
出願人等に通知(オンライン通知に対応)
特定技術分野に属する発明を含むか
保全審査に付する
必要がないことが
明白か
申出なし
申出あり
含む 明白
明白でない 23(参考)政令で示す国際特許分類
政令で示す内容の概要
付加要件
政令第12条第1項各号
分野
項番
B64及びF41H3/00が付与される技術の分野ー14号
航空機等の偽装・隠ぺい技術1B64C39/02、B64U又はG05Dが付与され、かつ、F41又はF42が付与される技術の分野ー15号、16号、19号、20号、30号、
35号
武器等に関係する無人航空機・自律制御等の技術2F41G7が付与される技術の分野
F42B15が付与される技術の分野ー32号、39号
誘導武器等に関する技術3F42B10が付与される技術の分野ー37号
発射体・飛翔体の弾道に関する技術4F41B6が付与される技術の分野ー31号
電磁気式ランチャを用いた武器に関する技術5F41H13が付与される技術の分野ー34号
例えばレーザ兵器、電磁パルス(EMP)弾のような新たな攻撃又は防
御技術6F41H11/02が付与される技術の分野ー33号
航空機・誘導ミサイルに対する防御技術7B63G8/28からB63G8/33までのいずれかが付与される技術の分野ー13号
潜水船に配置される攻撃・防護装置に関する技術8B63C7/26、B63C11/48、G01S1/72からG01S1/82までのいずれか、G01S3/80からG01S3/86までのいずれか、
G01S5/18からG01S5/30までのいずれか、G01S7/52からG01S7/64までのいずれか又はG01S15が付与され、かつ、F41が付
与される技術の分野ー4号、7号、25号、26号、27号、
28号、29号
音波を用いた位置測定等の技術であって武器に関するもの9F02K7/14が付与される技術の分野
しろまる
23号
スクラムジェットエンジン等に関する技術10F02K9/08からF02K9/40までのいずれかが付与される技術の分野
しろまる
24号
固体燃料ロケットエンジンに関する技術11B63B3/13 が付与される技術の分野
B63G8/00からB63G8/26までのいずれか又はB63G8/34、B63G8/38若しくはB63G8/39が付与される技術の分野
しろまる
2号、13号
潜水船に関する技術12B63C11/00及びG05Dが付与される技術の分野
しろまる5号無人水中航走体等に関する技術13B63C7/26、B63C11/48、G01S1/72からG01S1/82までのいずれか、G01S3/80からG01S3/86までのいずれか、
G01S5/18からG01S5/30までのいずれか、G01S7/52からG01S7/64までのいずれか又はG01S15が付与され、かつ、B63Gが
付与される技術の分野
しろまる
3号、6号、8号、9号、10号、
11号、12号
音波を用いた位置測定等の技術であって潜水船等に関するもの14B64G1/58、B64G1/62、B64G1/64又はB64G1/68が付与される技術の分野
しろまる
17号
宇宙航行体の熱保護、再突入、結合・分離、隕石検知に関する技術15
B64G3が付与される技術の分野
しろまる
18号
宇宙航行体の観測・追跡技術16G01J1/02からG01J1/08までのいずれか、H01L27/14からH01L27/148までのいずれか又はH01L31/08からH01L31/119ま
でのいずれかが付与される技術の分野のうち、量子ドット又は超格子に関するもの
しろまる
40号、45号、46号
量子ドット・超格子構造を有する半導体受光装置等に関する技術17G06F21/86又はG06F21/87が付与される技術の分野
しろまる
41号
耐タンパ性ハウジングにより計算機の部品等を保護する技術18H04K3が付与される技術の分野
しろまる
47号
通信妨害等に関する技術19B01D59が付与される技術の分野のうち、ウラン又はプルトニウムに関するものー1号
ウラン・プルトニウムの同位体分離技術20G21C19/33からG21C19/50までのいずれかが付与される技術の分野ー42号
使用済み核燃料の分解・再処理等に関する技術21C01B5/02が付与される技術の分野ー21号
重水に関する技術22G21J1が付与される技術の分野
G21J3が付与される技術の分野ー43号、44号
核爆発装置に関する技術23C06D7が付与される技術の分野ー22号
ガス弾用組成物に関する技術24F42B5/145が付与される技術の分野
F42B12/46からF42B12/54までのいずれかが付与される技術の分野ー36号、38号
ガス、粉末等を散布する弾薬等に関する技術25付加要件の判断対象
(補足)申出の手続の留意事項
申出書を出願とともに提出
出願人が複数いる場合、出願人全員で申出をする必要がある点に留意
(代理人がいる場合は、全出願人を代理して一人の代理人が手続可能)
第66条第2項の申出(保全審査に付することを求める旨の申出)
出願後の提出も可能
出願日から3か月の経過を待って、内閣府に送付をした旨の通知(第66条第3項の通知)
がなければ、申出をせずとも、保全審査に付されなかったことの把握が可能
3か月の経過を待たずに、内閣府に送付をする場合に該当しない旨の判断をした旨を把握した
い場合(少しでも早く外国出願の手続を進めたい場合など)に有効
第66条第3項の通知は書留で通知するのに対して、第10項の通知はオンラインで受領可能
第66条第10項の申出(送付をしない旨の判断をした旨の通知を求める申出)24いずれの申出もオンラインで可能
保全審査(第二次審査)25 保全審査(特許出願の非公開に関する「基本指針」(令和5年4月28日付け閣議決定)の概要)
保全審査の期間・保全審査の進め方
保全審査の期間については、実質的には、外国出願の禁止が我が国での特許出願後最大10か月
で自動的に解除される仕組みとなっていることから、この期間内に保全審査を終える必要がある。
外国出願の準備を行う特許出願人の実務等にも配慮し、発明の内容等に応じて保全審査の手続
を可能な限り迅速に行うことが求められるものであり、保全指定が不要と判断できる場合には、その
時点で速やかにその旨を特許出願人に通知する。
保全審査に関わることとなる各行政機関においては、平素より保全審査に関する事例の蓄積・知見
の共有等を通じて、保全審査に関わる職員の専門性の向上に努めるとともに、円滑な連携関係を
構築することとする。
資料の提出は、事務負担が大きい場合もあり得るため、保全審査に付された場合に一律に網羅的
な資料提出を求めるのではなく、まずは特許出願人と意思疎通を図り、資料を整える側の負担にも
配慮しながら、真に必要な資料を絞り込んで提出を求める。
意思確認手続
保全対象発明となり得る発明の内容の通知については、発明の内容の公開の禁止といった法的効
果も念頭に、通知に係る発明が明細書等に記載された発明のうちどの発明であるのかが明確になる
形で通知する必要がある。26 ご清聴ありがとうございました
内閣府、特許庁
(特許出願非公開制度担当)
追 加 資 料
2024年2月7日(水)追加
動画の中で特に重要なポイントである外国出願の
禁止につきまして、要点を表裏一枚で印刷できるよ
うにまとめた参考資料を、既存スライド資料の最後
の2スライド(30ページ目、31ページ目)に追加し
ましたのでご活用ください。
令和6年5月1日から、特許出願の非公開制度が施行されます
国内特許のみ
取りたい
国内と外国の両方の特許を取りたい
(注記)1 特許出願に特定技術分野に属する発明が記載されている場合等には、特許庁から内閣府に出願書類を送付して非公開の対象とすべきかの検討をします。この場合、送付をした旨を特許出願人に対して通知します。
(注記)4 国内出願をせずに、外国出願の禁止に該当するか否かについて特許庁長官に確認を求めることができる制度(事前確認制度、手数料25,000円)も新設されます。
ただし、先に国内出願(出願手数料14,000円)をした場合、特定技術分野に該当しても、非公開の対象とすべきかの検討をした結果、対象外と判断されれば、外国出願禁止が解除され、外国出願が可能となりますが、
事前確認制度では、そのような検討を行う過程がないため、特定技術分野に該当するものは、非公開の対象にならないことが明らかであるものを除き、外国出願が禁止される旨の回答となります。
外国特許のみ
取りたい
<国内出願のみ> <国内出願後、パリ優先権
主張をして外国出願>
<国内出願をしていない状態で外国出願>
先に国内出願 先に外国出願
(注記)2 判断期間は、通常は3か月以内ですが、特定技術分野に該当する場合は、非公開の対象とすべきかの検討が必要なため、最長で10か月かかります。
➢ 本制度は、安全保障上拡散すべきでない発明の内容が含まれる特許出願が、出願公開されることを防ぐためのものです。
➢ そのため、非公開の対象となり得る技術分野(特定技術分野、詳細は裏面参照)に該当しない発明の特許出願は、出願から
特許の取得までの流れや出願公開に変更はありません。
➢ 一方で、外国出願の禁止の対象となる場合には注意する必要がありますので、下のフロー図をご参照ください。
(注記)3 一年以下の懲役若しくは五十万円以下の罰金、又はこれを併科。また、対応する国内出願があれば却下される場合があります。
特定技術分野に該当しない発明は、
外国出願(PCT出願含む)可能です。
(日本国内でした発明であって公になっていないもので)
特定技術分野に該当する発明は、
特定技術分野に該当する発明であっても、
先に国内出願し、非公開の対象外と判断されれば、
外国出願禁止が解除され、外国出願できるようになります。
特定技術分野に該当する場合や、判断が付かない場合は、
先に国内出願するのも一案です(注記)4 。
外国出願(PCT出願含む)禁止です。
(違反に対しては罰則(注記)3が科せられます。)
まずは、特定技術分野であるか確認してください(注記)4。
優先権証明書及びアクセスコードについて
本制度により非公開の対象か否かを
判断する間(注記)2 、優先権証明書・アクセス
コードの発行を留保します。
全ての国内出願について、
本制度による審査を行います。
審査の結果、非公開の対象外と判
断されれば、制約なく外国出願でき
るようになります(注記)2。
特定技術分野に該当しない
発明は、
審査結果を待たずに、
外国出願(PCT出願含む)
可能です。
ほとんどの出願において、
本制度について特別な対応は
必要ありません。
必要な場合、出願日から
3か月以内に通知(注記)1します。
さんかく詳細はこちら
内閣府・特許庁
Point
(参考)特定技術分野の概要
【我が国の国民生活や経済活動に甚大な被害を生じさせる手段となり得る技術が含まれ得る分野(注記)
(20)ウラン・プルトニウムの同位体分離技術
(21)使用済み核燃料の分解・再処理等に関する技術
(22)重水に関する技術
(23)核爆発装置に関する技術
(10)スクラムジェットエンジン等に関する技術
(11)固体燃料ロケットエンジンに関する技術
(12)潜水船に関する技術
(13)無人水中航走体等に関する技術
(14)音波を用いた位置測定等の技術であって潜水船等に関するもの
(15)宇宙航行体の熱保護、再突入、結合・分離、隕石検知に
関する技術
(16)宇宙航行体の観測・追跡技術
(17)量子ドット・超格子構造を有する半導体受光装置等に
関する技術
(18)耐タンパ性ハウジングにより計算機の部品等を保護する技術
(19)通信妨害等に関する技術
(24)ガス弾用組成物に関する技術
(25)ガス、粉末等を散布する弾薬等に関する技術
【我が国の安全保障の在り方に多大な影響を与え得る先端技術が含まれ得る分野(注記)
(1)航空機等の偽装・隠ぺい技術
(2)武器等に関係する無人航空機・自律制御等の技術
(3)誘導武器等に関する技術
(4)発射体・飛翔体の弾道に関する技術
(5)電磁気式ランチャを用いた武器に関する技術
(6)例えばレーザ兵器、電磁パルス(EMP)弾のような
新たな攻撃又は防御技術
(7)航空機・誘導ミサイルに対する防御技術
(8)潜水船に配置される攻撃・防護装置に関する技術
(9)音波を用いた位置測定等の技術であって武器に関するもの
(注記) 上記(1)~(19)、(20)~(25)について、主にどちらの考え方に着目して選定したものであるかを記載。
付加要件対象分野
付加要件を満たさないものは、非公
開の対象になりません。外国出願も
禁止されません。
付加要件: 1我が国の防衛又は外国の軍事の用に供するための発明 2国又は国立研究開発法人による発明 3国の委託等に係る発明
特定技術分野:(1)~(25)の技術分野について、国際特許分類(又はこれに準じて細分化したもの)に従って規定。
内閣府・特許庁

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