環境アセスメント迅速化手法のガイド
-前倒環境調査の方法論を中心に-
地熱発電所 総論
国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構
New Energy and Industrial Technology Development Organization iはじめに
2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災以降、我が国のエネルギー政策は根本から見直しされるこ
ととなり、再生可能エネルギーに対する国民の期待はこれまでにないほど高まっている。
2012 年 7 月から施行された再生可能エネルギーの「固定価格買取制度」がインセンティブとなって再生
可能エネルギー発電が導入され、2017 年 3 月時点までに新たに運転を開始した設備は約 3,500 万 kW で
あり、一定の政策効果が得られているが、導入された設備の大半は太陽光発電であり、地熱発電の今後さ
らなる導入拡大が期待されている。
2013 年 6 月に閣議決定された「日本再興戦略」では、再生可能エネルギー導入の拡大・促進を図るた
め、風力発電及び地熱発電の環境アセスメントの迅速化、すなわち、「3、4 年程度かかるとされる手続期間
の半減を目指すこと」が政府目標とされた(なお、2017 年 6 月 9 日閣議決定の「未来投資戦略 2017」でも
「環境アセスメント迅速化手法の一般化」が記載)。
しろまる「日本再興戦略(抄)」(2013 年 6 月閣議決定)
・再生可能エネルギー導入のための規制・制度改革等
地熱発電への投資を促進する。環境アセスメントの迅速化(3、4 年程度かかるとされる手続期間の半
減を目指す)や、既存の温泉井戸を活用した小型地熱発電の推進のための保安規制合理化等の規制・
制度改革、地域の方々の理解促進等に取り組む。
この政府目標を踏まえ、経済産業省と環境省により、審査期間の短縮を始めとした様々な取組が進めら
れている。
また、資源エネルギー庁が設置した「風力・地熱発電に係る環境影響評価手続の迅速化等に関する研
究会(2013 年 12 月〜2014 年 3 月)」において、「通常、方法書手続において調査の対象や方法が確定し
た後に行われる現況調査や予測・評価等(以下「現況調査等」という)を、配慮書手続や方法書手続に先行
して、あるいは同時並行で進める手法」 すなわち 「前倒環境調査」の有効性と実施にあたっての課題が
検討された。その結論として、前倒環境調査の各種課題の解決方法を実証事業により検証すること及び方
法論に関する知見をとりまとめることが必要であることが確認された。この内容は、「前倒環境調査の取組に
向けて(風力・地熱発電に係る環境影響評価手続の迅速化等に関する研究会、2014 年 3 月)(以下「研究
会報告」という。)」として公表されている。
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では、この研究会報告を踏まえ、
2014 年度から 2017 年度までに、前倒環境調査を適用した環境影響評価の期間短縮を行う上での課題等
の特定、解決及び更なる短縮化を図るために、「方法書手続に係る経済産業大臣の通知又は勧告から準
備書の届出までの期間を8ヶ月以内とすること」を目指した「環境アセスメント調査早期実施実証事業(以下
「実証事業」という。)」を実施した。また、実証事業の検証結果等に基づいて前倒環境調査の方法論をとり
まとめるため、「環境アセスメント前倒データベース化事業(以下「データベース化事業」という。)」を実施し
た。データベース化事業では、各種専門分野の委員から構成される「環境アセスメント調査早期実施実証
事業ステアリング委員会」を設置して指導・助言を得ている。
データベース化事業においては、これまで、実証事業による検証結果等に基づき、適切かつ迅速な環
境影響評価の実施に向けて、「前倒環境調査の方法論」に関する知見を中間的にとりまとめ、2017 年 3 月
に「前倒環境調査のガイド 2016 年度中間とりまとめ」を、2017 年 12 月に「前倒環境調査のガイド 2017 年
度中間とりまとめ」を公表してきた。本書は、2017 年度までに終了した実証事業の検証等から得られた知見
に基づき、配慮書手続や方法書手続に先行又は同時並行で現況調査等を実施する前倒環境調査の方法
論を中心として、適切かつ迅速な環境影響評価の手法をとりまとめたものである。 ii最後に、実証事業の検証及び本書の作成にあたり、多くの有益なご助言をいただいた「環境アセスメント
調査早期実施実証事業ステアリング委員会」の委員の皆様、経済産業省商務情報政策局産業保安グルー
プ電力安全課、環境省大臣官房環境影響評価課の皆様には深く御礼を申し上げます。また、本書の作成
にご協力いただいた日本地熱協会の皆様、そのほか本書の作成に関わった多くの方々に心より感謝する
ものです。
環境アセスメント調査早期実施実証事業 ステアリング委員会
委 員 所属 (2018 年 2 月 20 日時点)
赤松 友成
国立研究開発法人 水産研究・教育機構 中央水産研究所
海洋・生態系研究センター 生態系モデルグループ 主任研究員
飯田 誠
東京大学 先端科学技術研究センター附属
産学連携新エネルギー研究施設 特任准教授
糸井 龍一 九州大学 名誉教授
落合 博明 一般財団法人 小林理学研究所 協力研究員
〇 河野 吉久 一般財団法人 電力中央研究所 名誉研究アドバイザー
にじゅうまる 田中 充 法政大学 社会学部 教授
松田 裕之 横浜国立大学大学院 環境情報研究院 教授
丸山 康司 名古屋大学大学院 環境学研究科 教授
森本 幸裕 京都学園大学 バイオ環境学部 特任教授
由井 正敏 一般社団法人 東北地域環境計画研究会 会長
注 1) にじゅうまる:委員長 〇:副委員長 (委員の並びは氏名のアイウエオ順)
注 2) 運営事務局:株式会社 建設環境研究所 iii本書の適用範囲
・本書は、地熱発電の導入支援のため、事業者を主たる対象として、現行制度における「適切かつ迅速
な環境影響評価の進め方」について、前倒環境調査の方法論を中心に、その基本的考え方や具体的
な留意事項を解説した「ガイド」である。
・法に基づく環境影響評価手続は、「発電所アセス省令*1
」「発電所アセス手引*2
」等に基づき、適切に
実施することが原則である。前倒環境調査を適用した環境影響評価手続も、この原則に基づいて適切
に実施する必要がある。
*1:「発電所の設置又は変更の工事の事業に係る計画段階配慮事項の選定並びに当該計画段 階
配慮事項に係る調査、予測及び評価の手法に関する指針、環境影響評価の項目並びに当該項
目に係る調査、予測及び評価を合理的に行うための手法を選定するための指針並びに環境の保
全のための措置に関する指針等を定める省令」(1998 年 6 月 12 日 通商産業省令第 54 号)
*2:「発電所に係る環境影響評価の手引」(経済産業省商務流通保安グループ電力安全課、2019 年
3 月改訂)
・前倒環境調査を適用した環境影響評価の迅速化は、期間短縮のメリットがある一方、調査方法等への
意見・勧告等が出揃う前に調査に着手することから、調査方針や地点設定等において手戻りが生じるリ
スクを伴う手法でもある。リスクの回避のためには、最終的には活用しないデータとなる可能性があって
も「広め」「多め」の調査を行っておくという対応が考えられるが、現況調査等のコストは増大してしまう。
どこまでリスクテイクするかは、制度上、環境影響評価の実施主体である事業者の判断に委ねられる。
・また、地熱発電事業における前倒環境調査では、環境影響評価手続の迅速化だけでなく、事業計画
の検討段階から環境配慮を織り込むために必要な情報を先行取得することの意義が大きい。費用対効
果を検討しつつ、的確な適用を進めることが望ましい。本書は、そのための判断材料を提供するもので
ある。
・なお、個々の事業ごとに事業特性及び地域特性は異なる。事業を取り巻く状況によっては、環境影響
評価の迅速化を図ることが拙速になる場合もあり得る(地元住民から「事業ありき」との誤解を受けるよう
な場合等)。この点に留意し、個別事業ごとに適切な環境影響評価を実施する必要がある。
ガイドの構成
・ガイドは全4巻の構成である。風力発電と地熱発電では、事業特性や地域特性、事業の進め方や地域
コミュニケーションのあり方等が異なり同時に論じることはできないため、個別に編纂した。それぞれに、
「総論」と「技術事例集」の2巻構成とした。
・「総論」は、現行制度下での環境影響評価の適切かつ迅速な進め方について、その方法論をとりまとめ
たものである。「技術事例集」は、総論を簡潔にするため予備知識や解説が必要になる技術的な側面
について巻を分けてとりまとめたものである。なお、いずれの巻も独立して参照できることを編集方針と
した。
データベースの公開
・実証事業で得られた環境情報は、環境省の「環境アセスメントデータベース‘EADAS’」
(https://www2.env.go.jp/eiadb/ebidbs/)に提供している。 iv 目 次
第 1 章 適切かつ迅速な環境影響評価 の実施と前倒環境調査...................................................1
1.1 地熱発電事業の一般的事業工程 ...................................................................................1
1.2 前倒環境調査の定義 ...................................................................................................2
1.2.1 前倒環境調査とは何か.........................................................................................2
1.2.2 前倒環境調査の法的な位置づけ ...........................................................................2
1.3 前倒環境調査の適用とその課題.....................................................................................4
1.3.1 環境影響評価手続の所要期間..............................................................................4
1.3.2 軌道修正と手戻りの事例.......................................................................................5
1.3.3 対象事業実施区域の変更.....................................................................................6
1.3.4 専門家等との連携の状況......................................................................................7
1.3.5 地域コミュニケーションの状況................................................................................8
1.4 前倒環境調査の基本的考え方.......................................................................................9
1.4.1 前倒環境調査の適用とその課題(要約)..................................................................9
1.4.2 前倒環境調査の基本的考え方 ..............................................................................9
第 2 章 適切かつ迅速な環境影響評価の進め方 .................................................................... 13
2.1 前倒環境調査の実施における総合的判断...................................................................... 13
2.2 前倒環境調査の組み立て方........................................................................................ 13
2.2.1 調査計画の検討手順 ......................................................................................... 13
2.2.2 事業計画と対象事業実施区域の設定................................................................... 14
2.2.3 地域の環境情報の収集...................................................................................... 14
2.2.4 環境影響評価の項目の設定 ............................................................................... 15
2.2.5 調査地域・調査手法等の設定.............................................................................. 17
2.2.6 前倒環境調査の実施工程の考え方...................................................................... 18
2.2.7 柔軟な軌道修正................................................................................................ 20
2.2.8 事後的な対応 ................................................................................................... 20
2.2.9 専門家等との連携.............................................................................................. 21
2.2.10 地域コミュニケーション ...................................................................................... 22
2.2.11 先行成果活用 ................................................................................................. 23
2.2.12 共同事実確認(JFF)の活用............................................................................... 24
2.3 前倒環境調査の全体計画モデル ................................................................................. 26
第 3 章 各論 〜項目別の迅速化の考え方と留意事項〜 .......................................................... 29
3.1 大気環境 (硫化水素) ............................................................................................... 30
3.1.1 項目選定の考え方............................................................................................. 30
3.1.2 前倒環境調査の着手時期................................................................................... 30
3.1.3 留意事項.......................................................................................................... 30
3.2 大気環境 (騒音・振動) [参考項目外] ......................................................................... 32
3.2.1 項目選定の考え方............................................................................................. 32
3.2.2 前倒環境調査の着手時期................................................................................... 32
3.2.3 留意事項.......................................................................................................... 32
3.3 水環境 (水の汚れ)................................................................................................... 33
3.3.1 項目選定の考え方............................................................................................. 33
3.3.2 前倒環境調査の着手時期................................................................................... 33
3.3.3 留意事項.......................................................................................................... 33
3.4 その他の環境 (温泉)................................................................................................ 33
3.4.1 項目選定の考え方............................................................................................. 33
3.4.2 前倒環境調査の着手時期................................................................................... 34
3.4.3 留意事項.......................................................................................................... 34
3.5 その他の環境 (地形及び地質) ................................................................................... 34
3.5.1 項目選定の考え方............................................................................................. 34
3.5.2 前倒環境調査の着手時期................................................................................... 35
3.5.3 留意事項.......................................................................................................... 35
3.6 その他の環境 (地盤変動).......................................................................................... 35
3.6.1 項目選定の考え方............................................................................................. 35
3.6.2 前倒環境調査の着手時期................................................................................... 36
3.6.3 留意事項.......................................................................................................... 36
3.7 動物:全般 ............................................................................................................... 36
3.7.1 項目選定の考え方............................................................................................. 36
3.7.2 前倒環境調査の着手時期................................................................................... 37
3.7.3 留意事項.......................................................................................................... 37
3.8 動物 (鳥類 : 希少猛禽類)........................................................................................ 38
3.8.1 項目選定の考え方............................................................................................. 38
3.8.2 前倒環境調査の着手時期................................................................................... 38
3.8.3 留意事項.......................................................................................................... 39
3.9 植物:植生、植物相.................................................................................................... 40
3.9.1 項目選定の考え方............................................................................................. 40
3.9.2 前倒環境調査の着手時期................................................................................... 41
3.9.3 留意事項.......................................................................................................... 41
3.10 生態系................................................................................................................... 42
3.10.1 項目選定の考え方 ........................................................................................... 42
3.10.2 前倒環境調査の着手時期................................................................................. 42
3.10.3 留意事項 ........................................................................................................ 42
3.11 景観...................................................................................................................... 43
3.11.1 項目選定の考え方 ........................................................................................... 43
3.11.1 前倒環境調査の着手時期................................................................................. 43
3.11.2 留意事項 ........................................................................................................ 44
3.12 人と自然との触れ合いの活動の場............................................................................... 46
3.12.1 項目選定の考え方 ........................................................................................... 46
3.12.2 前倒環境調査の着手時期................................................................................. 46
3.12.3 留意事項 ........................................................................................................ 46
3.13 工事の実施:大気環境 (窒素酸化物・粉じん・騒音・振動等)............................................ 47
3.13.1 項目選定の考え方 ........................................................................................... 47
3.13.2 前倒環境調査の着手時期................................................................................. 47
3.13.3 留意事項 ........................................................................................................ 47
3.14 工事の実施:水環境 (水の濁り)................................................................................. 47
3.14.1 項目選定の考え方 ........................................................................................... 47
3.14.2 前倒環境調査の着手時期................................................................................. 48
3.14.3 留意事項 ........................................................................................................ 48
3.15 工事の実施:廃棄物等・温室効果ガス・放射線の量......................................................... 48
3.15.1 項目選定の考え方 ........................................................................................... 48
3.15.2 前倒環境調査の着手時期................................................................................. 48
3.15.3 留意事項 ........................................................................................................ 49
第 4 章 今後の課題 .......................................................................................................... 51
4.1 前倒環境調査の適用事例と知見の蓄積......................................................................... 51
4.2 調査・予測等に係る知見の蓄積.................................................................................... 51
4.3 環境保全措置の事例の蓄積........................................................................................ 51
巻末資料
資料 1. 地熱発電事業に係る環境影響評価について................................................. 巻末資料 1
資料 2. 環境影響評価の参照資料リスト................................................................... 巻末資料 9
資料 3. 環境影響評価の担当部署リスト..................................................................巻末資料 17
【全4巻の構成】
環境アセスメント迅速化手法のガイド -前倒環境調査の方法論を中心に-
風力発電所 総論
技術事例集
地熱発電所 総論 【本書】
技術事例集
第1章 適切かつ迅速な環境影響評価の実施と前倒環境調査1第 1 章 適切かつ迅速な環境影響評価
の実施と前倒環境調査
本章では、地熱発電事業における適切かつ迅速な環境影響評価の実施に向け、「前倒環境調査」を導
入することの課題と意義について述べる。
1.1 地熱発電事業の一般的事業工程
環境影響評価法の対象となる地熱発電所(新設)の一般的な事業工程では、地元理解を得た上で、2 年
程度をかけて調査(地表調査、掘削調査等)を行ったのち、3 年程度をかけて探査(調査井掘削等)を実施
し、資源量や経済性等を評価して事業化の判断を行う。その後、3〜4 年程度の環境影響評価手続を実施
したのち、3〜4 年程度の開発及び設置工事を経て、運転開始に至る(図 1-1)。
環境影響評価の手続期間は、特に迅速化を図っていない一般的な工程(以下、「一般工程」という。)で
は 3〜4 年程度を要するものと想定される(図 1-2;法定日数以外は一定の仮定をおいて作成)。
地熱発電の事業特性の一つとして、運転開始までのリードタイムが長いことが挙げられ、その工程の中
でも環境影響評価に要する期間が相対的に長く、その迅速化を図ることが重要となっている。
図 1-1 地熱発電事業の一般的事業工程1
*1:研究会報告2
を参考にして設定した仮定は、次のとおりである。
・現況調査の期間:猛禽類調査を 2 営巣期(18 ヶ月)実施すると仮定。
・図書の作成期間:配慮書・方法書は 3 ヶ月、準備書は 6 ヶ月、評価書は 1 ヶ月と仮定。
図 1-2 環境影響評価の所要期間(一般工程)1「総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 新エネルギー小委員会配布資料」(第 1 回:
2014 年 6 月 17 日)
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/shoene_shinene/shin_ene/001_haifu.html2「前倒環境調査の取組に向けて」
(風力・地熱発電に係る環境影響評価手続の迅速化等に関する研究会、2014 年 3月)方法書の確定〜準備書の届け出 : 24 ケ月
配慮書手続きの開始〜評価書の確定 : 47 ケ月
月数 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 13 14 15 16 17 18 19 23 24 25 26 27 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47
手続 評価書
検討 配慮書作成 方法書作成
調査 評価書作成↑
1年目 2年目 3年目 4年目
配慮書 方法書2922
12 21 28
20 30
準備書
現況調査等
準備書作成
第1章 適切かつ迅速な環境影響評価の実施と前倒環境調査2配慮書方法書現況調査、予測・評価等
準備書評価書現況調査、予測・評価等一般工程前倒環境調査の工程イメージ配慮書方法書準備書評価書通常、3〜4年程度かかるとされる手続期間
:手続
活用 活用
1.2 前倒環境調査の定義
1.2.1 前倒環境調査とは何か
環境影響評価手続は、一般工程としては図 1-3 の上段の手順で進行する。この手順において、現況調
査は、方法書手続により住民・知事意見や大臣勧告を踏まえて確定した項目及び手法に基づいて実施す
る。現況調査の結果に基づき、環境影響の予測・評価等を行って準備書を作成し準備書手続を行う(発電
所に係る環境影響評価手続の全体フローは図 1-4 を参照)。
これに対し、「前倒環境調査」とは、図 1-3 の下段に示すとおり、現況調査や予測・評価等(以下「現況調
査等」という)の作業を、配慮書手続や方法書手続に先行して、あるいは同時並行で進める手法である。現
況調査等の結果は、配慮書手続、方法書手続に活用することが望ましい。
図 1-3 前倒環境調査の定義
1.2.2 前倒環境調査の法的な位置づけ
環境影響評価法では、「方法書手続」により住民・知事意見及び大臣勧告を聞くプロセスを経た上で、
「環境影響評価の項目並びに調査、予測及び評価の手法を選定(法第 11 条)」し、「選定した項目及び手
法に基づいて、...環境影響評価を行わなければならない(法第 12 条)」と規定されている。
ただし、方法書手続の終了前から必要な調査を行うことや、既存の情報を活用して環境影響評価を実施
することが制限されているものではない。このため、前倒環境調査で得られた調査データが、方法書手続
を経て選定した項目及び手法と同等のものである限り、これを用いて環境影響評価手続を行うことに環境
影響評価制度上、問題はない。また、前倒環境調査の結果を配慮書段階や方法書段階に活用することに
よって、事業のできるだけ早期の段階から、環境配慮を反映したよりよい事業計画とすることができるメリット
がある。一方、方法書手続の完了よりも前から現況調査等に着手するため、一般・知事意見、大臣勧告等
による追加調査等の「手戻り」が発生するリスクをはらんでいることや、地域住民等に「事業ありき」「アセス軽
視」「地元軽視」等の疑念をもたらす可能性があることに留意する必要がある。
なお、当然ながら、前倒環境調査を適用する場合においても、環境影響評価法の枠組みに従って「発
電所アセス省令」3
、「発電所アセス手引」4
をはじめ、経済産業省や環境省等が提供している行政の参照資
料を踏まえて環境影響評価手続を実施する必要がある。3「発電所の設置又は変更の工事の事業に係る計画段階配慮事項の選定並びに当該計画段階配慮事項に係る調査、
予測及び評価の手法に関する指針、環境影響評価の項目並びに当該項目に係る調査、予測及び評価を合理的に行
うための手法を選定するための指針並びに環境の保全のための措置に関する指針等を定める省令」
(1998 年 6 月
12 日 通商産業省令第 54 号)4「発電所に係る環境影響評価の手引」
(経済産業省商務流通保安グループ電力安全課、2019 年 3 月改訂)
第1章 適切かつ迅速な環境影響評価の実施と前倒環境調査3一般(住民等)
一般意見の提出
一般意見の提出
一般意見の提出
一般への周知
図 1-4 発電所に係る環境影響評価の手続フロー(第一種事業)55「発電所 環境アセスメント情報サービス」
(経済産業省 HP、2018 年 3 月 28 日時点)に加筆。
http://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/electric/detail/index_assessment.html現況調査。前倒環境調査は、配慮書手続や方法書
手続に先行または同時並行で環境影響評
価のための現況調査等を実施するもの。
調査、予測・評価の結果は、配慮書手続・
方法書手続に活用することができる。
第1章 適切かつ迅速な環境影響評価の実施と前倒環境調査41.3 前倒環境調査の適用とその課題
本節では、研究会報告6
に基づき、2014 年度から 2017 年度まで NEDO 事業として実施した「環境アセス
メント調査早期実施実証事業(地熱発電事業は 2 事業。以下「実証事業」という。)」の検証から得られた知
見により、手法としての前倒環境調査の適用とその課題について述べる。
1.3.1 環境影響評価手続の所要期間
(1) 実証事業
実証事業では、環境影響評価手続の期間短縮の成果目標を、「方法書手続の終了から準備書手続の
開始までの期間を 8 ヶ月以内とすること」と設定している。
成果目標「8 ヶ月以内」に対する所要期間は、達成事例では 7.5 ヶ月、未達成事例では 8.3 ヶ月、平均で
は 7.9 ヶ月であった(表 1-1)。未達成要因は、配慮書手続の段階で、知事意見・大臣意見において、自然
度の高い植生の改変を回避するよう指摘されたことによる。当該事例では、この意見を受け、施設配置計
画の見直しを行い、方法書以降は修正した事業計画に基づいて手続を進めている。
表 1-1 実証事業2事例における期間短縮の達成状況
成果目標 * 実証事業 結果 実績 平均
8 ヶ月以内
事例A 未達成 8.3 ヶ月
7.9 ヶ月
事例B 達成 7.5 ヶ月
*:成果目標:方法書に係る経済産業大臣の通知又は勧告から準備書
の届出までの期間を「8 ヶ月以内」とする。
図 1-5 実証事業における期間短縮の成果目標
(2) 適用とその課題
実証事業における期間短縮目標の未達成要因は、自然度の高い植生への影響回避を図ったことによる
もので、手続工程の遅延はわずかであったが、方法書〜準備書の工程遅延に繋がった。自然度の高い植
生等 「重大な環境影響の回避」は、本来、配慮書を作成する段階で検討するもので、事業の実施に伴い
不可逆的な影響を受ける可能性がある重要な環境要素(自然度の高い植生、猛禽類営巣地、地域を代表
する景観等)については、その面積規模の大小にかかわらず、早期の段階から存在を把握し、影響を回避
するよう事業計画に織り込んでおく必要がある。その点からも、前倒環境調査を適用して早期から環境に係
る情報を収集することは、環境影響評価手続の短縮(延滞防止)につながると考えられる。6「前倒環境調査の取組に向けて」
(風力・地熱発電に係る環境影響評価手続の迅速化等に関する研究会 2014 年 3月)成果目標
8ヶ月以内
配慮書方法書現況調査、予測・評価等
準備書評価書現況調査、予測・評価等一般工程前倒環境調査の工程イメージ配慮書方法書準備書評価書通常、3〜4年程度かかるとされる手続期間
:手続
活用 活用
第1章 適切かつ迅速な環境影響評価の実施と前倒環境調査51.3.2 軌道修正と手戻りの事例
(1) 「軌道修正」「手戻り」とは
前倒環境調査を適用する場合には、方法書手続により環境影響評価の項目及び調査・予測等の手法を
確定する前から現況調査等を開始するため、平行して事業計画 7
の検討が進捗すること、配慮書手続・方
法書手続を通じて一般・知事意見、大臣勧告等が出されること等から、最終的な事業計画に対応して調査
内容や調査地点の追加・変更等、現況調査等の「軌道修正」が生じる場合がある。
軌道修正のうち、新たな調査項目・調査範囲の追加や長期間を要する調査・予測等の追加等に伴い、
前倒環境調査を前提とした手続工程に遅延が生じるものを、本書では 「手戻り」 と言う。
(2) 実証事業
事例Aでは、配慮書に対する知事意見・環境大臣意見の指摘に伴い、自然度の高い植生への影響を回
避するため、事業計画発電所施設の配置計画を見直した。その結果として、当初検討していた調査計画
に対し、調査地点の追加等の軌道修正があった。また、影響を回避する施設配置を検討するため、「重要
な植生」の分布状況を確認する補足調査も追加している。これらの結果、方法書の公告が 0.5 ヶ月遅延し、
準備書の公告が 3 ヶ月遅れることになった。結果として、目標とした「配慮書〜準備書 8 ヶ月」をわずかに
超過した。その他の軌道修正として、文献調査や専門家等助言を踏まえ、事業者判断により調査項目や時
期を追加したが、これらについては環境影響評価手続の工程に影響を及ぼすことはなかった。
事例Bは、発電所を新設する事業ではなく、リプレース(既設発電設備の老朽化に伴い発電所を更新す
る事業、以下同様)であり、既存施設供用中に取得した環境情報に基づく施設配置検討や環境配慮等が
なされた事業計画となっていたことから、軌道修正等は発生しなかった。
表 1-2 軌道修正・手戻りの発生(実証事業)
実証事業 調査項目 軌道修正・手戻りの内容 事由 変更時期 アセス工程への影響
事例A
陸産貝類調査
・調査対象項目として新規
追加 【軌道修
正】
・文献調査により重要種
の確認記録を確認。
配慮書前
・工程遅滞等の影響
なし
「人と自然との
触れ合いの活
動の場」の調査・調査時期の追加(夏季)
【軌道修正】
・聞取り調査により利用
者数が夏季に多いこと
を把握。
配慮書前
・工程遅滞等の影響
なし
魚類調査
・調査地点の追加
【手戻り】
・事業計画(取水地点)
の変更に伴う追加
方法書
手続前
・方法書手続(公告)
を遅延(0.5 ヶ月)
底生動物調査
・調査地点の追加
【手戻り】
・事業計画(取水地点)
の変更に伴う追加
方法書
手続前
・方法書手続(公告)
を遅延(0.5 ヶ月)
水質調査
・調査地点の追加
【手戻り】
・事業計画(対象事業
実施区域)の変更に
伴う追加
方法書
手続前
・方法書手続(公告)
を遅延(0.5 ヶ月)
植物調査
・補足調査の追加
【手戻り】
・配慮書手続で大臣意
見として出された、「オ
オシラビソ群落の改変
の原則回避」に対応
するため
方法書
手続前
・方法書手続(公告)
を遅延(0.5 ヶ月)
事例B (調査項目や時期の追加等は発生していない。)7事業計画 : 発送電の計画、発電所本館(タービン建屋)
・坑井基地・冷却塔等の施設やその配置、施設を結ぶパ
イプラインや場内道路、建設工事の内容や工程、資材置場や工事用ヤードの配置、工事用道路の設定等、事業
に係る計画全体を指す。
第1章 適切かつ迅速な環境影響評価の実施と前倒環境調査6(3) 適用とその課題
実証事業では、結果的には、環境影響評価手続を大きく遅滞させるような手戻りは生じなかった。ただし、
方法書公告の 0.5 ヶ月の遅れが、準備書の公告段階では 3 ヶ月に広がった。事業計画に変更が生じると、
予測・評価の工程にも遅延発生等の影響が及ぶためである。
また、実証事業では、事業計画の検討の当初から重要な保全対象の存在を把握し、重大な環境影響が
生じないよう計画検討に織り込んでおくことが重要であることが示唆された。配慮書作成段階における重要
な保全対象への配慮の有無が、手戻りの発生にそのまま繋がる結果となっている。
1.3.3 対象事業実施区域の変更
(1) 実証事業
事業段階(環境影響評価の手続段階)の進行に伴う対象事業実施区域の変遷をみると(表 1-3)、事例A
では、準備書段階で面積が増加した。これは、進入用道路の周辺を広めに対象事業実施区域に含めたた
めであり、直接改変区域等を拡大したものではなかった。本来、配慮書に示された事業実施想定区域に対
し、方法書手続以降に示される対象事業実施区域が拡大することは、事業影響の回避・低減を図るための
環境影響評価手続上、想定されていない(影響を回避・低減するために対象事業実施区域を縮小すること
は有り得る)。事業計画については、当初から工事用道路、工事用ヤード等の「工事中の一時的な影響の
みが想定される場所」も対象事業実施区域に含めた記載としておく必要がある。
なお、地熱発電事業の特性から、対象事業実施区域は、事業化の判断に至った坑井基地の配置によっ
て設定されるため、環境影響評価手続を開始する段階では概ね固まっており、準備書段階等、手続の後
半以降に変動することは少ないと考えられる。それだけに、「手戻り」を回避するため、事業計画検討の初
期段階から、工事用ヤードや工事用道路等を含めておくよう留意することが重要である。
表 1-3 対象事業実施区域の変遷(実証事業)
実証事業1当初計画2配慮書段階3方法書段階4準備書段階
事例 A
約 15ha
(83%)
約 15ha
(83%)
約 15ha
(83%)
約 18ha
(100%)
事例B
約 13.9ha
(96%)
約 14.5ha
(100%)
約 14.5ha
(100%)
約 14.5ha
(100%)*1:(%)は準備書段階を 100%とした場合の対象事業実施区域の相対値。
【事例A:配慮書への知事・大臣意見により施設配置計画を見直し ⇒ 期間短縮目標超過】
しろまる配慮書手続の段階で、知事意見・大臣意見で、自然度の高い植生(オオシラビソ群落)の改変を原則回
避するよう指摘された。このため、オオシラビソ群落を改変しないように施設配置計画を再検討した。その
結果、事業計画の変更に対応して環境影響調査の地点等を追加・変更する手戻りが生じた。この影響に
より、方法書の公告が半月、準備書の公告が当初予定から 3 ヶ月、遅延することとなった。
【事例B:前倒環境調査結果を踏まえ植物重要種に配慮した施設配置計画策定 ⇒ 期間短縮目標達成】
しろまる対象事業実施区域は国定公園内(第一種特別地域)であり、前倒環境調査により「国立・国定公園内指
定植物(重要な種)」の生育を確認したため、方法書に記載した事業計画では、伐採面積を最小化した
施設配置計画とし、環境を改変する区域の面積を低減させた(配慮書段階:約 2,000 m2 ⇒ 方法書段
階:約 600 m2)。ただし、事業影響を低減する方向の計画変更であり、この計画変更に伴って環境影響評
価に係る現況調査の項目・地点・時期・回数等の追加・変更等に波及することはなかった。その結果、環
境影響評価手続は、当初設定工程通りに進行することができた。
第1章 適切かつ迅速な環境影響評価の実施と前倒環境調査7(2) 適用とその課題
地熱発電事業においては、前倒環境調査を企画する場合、対象事業実施区域は限定されていることか
ら、調査対象範囲は自ずと決まってくる。ただし、配慮書段階における事業実施想定区域の設定にあたり、
工事用道路や施工ヤード等の工事関連区域を含めておくことに留意が必要である。
1.3.4 専門家等との連携の状況
(1) 実証事業
実証事業では、専門家等に意見聴取した項目は、動物、植物、景観、人と自然との触れ合いの活動の
場等、自然環境分野に関するものを主体としていた。実施時期は、前倒環境調査の準備段階から準備書
段階まで継続的であった(表 1-4)。
事例Aでは、前倒環境調査の計画時(調査準備段階)、結果の整理・とりまとめ段階(調査実施段階)、
予測・評価の段階(準備書段階)に専門家への意見聴取を行っている。対象項目は、動物、植物、景観、
「人と自然との触れ合いの活動の場」等、自然環境項目を主体としていた。特に、動物については、構成要
素となる動物種群毎に専門性のある有識者に意見聴取する必要があるため、のべ回数が多くなっている。
事例Bでは、本事業がリプレースを行うものではあるが、専門家への意見聴取について新設事業との差
別化は図らない方針と言うことであったが、既設発電所の撤去後に再整備するという事業計画から、新たな
環境改変箇所は少なく、結果として専門家等への意見聴取機会は少なくて済んだということであった。
(2) 適用とその課題
実証事業では、地熱発電の事業立地特性を反映し、動植物や景観等については調査結果に応じて柔
軟に追加調査や対策検討を行う必要があり、その内容も固定的、定例的なものではないため、前倒環境調
査の準備段階、実施段階から準備書段階まで、継続的に意見聴取を行っている。特に、前倒環境調査の
結果を事業計画に反映させる必要も生じることから、前倒環境調査を適用する場合には、早期からの専門
家等との連携が重要である。
表 1-4 専門家等への意見聴取の調査項目別回数
意見聴取した調査項目
実証事業
事例A 事例B調査準備段階調査実施段階準備書段階調査準備段階調査実施段階準備書段階
大気質
騒音・振動
水質・温泉
地形及び地質 1 1
動物 9 7 3 1 1 1
植物 3 3 3 1 1 1
生態系
景観 3 1
人と自然との触れ合いの活動の場 3 1
延べ回数 19 10 9 2 2 2
延べ回数(合計) 38 6
第1章 適切かつ迅速な環境影響評価の実施と前倒環境調査81.3.5 地域コミュニケーションの状況
(1) 実証事業
実証事業では、法で定められた説明会の他に、配慮書手続の前、方法書手続の前に、住民への説明会
を自主的に実施していた。また、地方公共団体との協議を手続の進行に合わせて早期から実施していた。
事例Aでは、手続の初期段階において説明会や地方公共団体打合せを重点的に実施した。
事例Bは、リプレースを行うもので、既設の発電所の建設前から稼働中にかけての長きに亘って充実した
地域コミュニケーションを図ってきていたことから地元理解が醸成されており、リプレースに係る事業説明を
円滑に進めることができた。
(2) 適用とその課題
実証事業では、配慮書手続の前の段階から住民や地方公共団体への説明を行っている。前倒環境調
査を適用する場合、法的な手続開始(配慮書の公告)より前に現地立ち入り及び現地調査を開始するため、
地元住民等への事業計画や環境影響評価手続の工程等についての十分な説明が重要である。また、必
要な地元説明の実施方法や行政手続きの申請等が円滑に進むよう、地方公共団体との協議・調整が必要
である。
環境影響評価手続に関しては、前倒環境調査の着手時点など早期の段階から、審査部局と事業計画
の検討工程や手続工程に関する情報を共有する等の連携関係を構築し、手続中も円滑なコミュニケーショ
ンを維持することが重要である。特に、手続の進行では日程的余裕の確保が重要である。さらに、審査の
段階では、環境影響を回避・低減するための事業計画の検討・修正プロセス等についての情報開示が重
要である。
表 1-5 住民説明会の回数(法定回数を除く)
時期
区分
住民等への説明会のタイミング
配慮書手続 方法書手続 準備書手続
前 中 前 中 前 中
実証事業
事例A 2
事例B 1
表 1-6 地方公共団体との打合せ回数
時期
区分
配慮書手続前配慮書手続中方法書手続前方法書手続中準備書手続
前 合計
県 市町村 県 市町村 県 市町村 県 市町村 県 市町村
実証事業
事例A 3 6 2 2 2 2 2 19
事例B 2 2 1 1 1 1 8
*1:事例による関連地方公共団体数の違いを考慮し、
「ステップ数」を集計。
【地域の専門家に同行していただく調査】 【複数の専門家への合同意見聴取】
しろまる事例Aでは、現地調査の効果的・効率的な手法が確立、一般化していない陸産貝類について、地元専
門家に現地調査に同行してもらい、調査の精度、成果水準を確保していた。
しろまる同じく事例Aでは、複数の専門家の合同ヒアリングを開催し、同じ類型区分の環境要素に生息する種に
対する事業影響の総合的な予測や、同一の環境基盤に生息する複数の重要種を包括的に保全する手
法について、各種群の専門家の立場からの助言、それらを複合、最適化した環境保全措置案の検討に
資する情報の統合整理を図っていた。
第1章 適切かつ迅速な環境影響評価の実施と前倒環境調査91.4 前倒環境調査の基本的考え方
1.4.1 前倒環境調査の適用とその課題(要約)
前節の事例分析に基づく前倒環境調査の適用とその課題について要約する。
1 実証事業では、方法書手続の完了から準備書手続の開始までの所要期間は、目標とした 8 ヶ月以
内に対して平均 7.9 ヶ月であり、設定目標は概ね達成可能な水準であると判断された。
2 前倒環境調査を適用する場合、調査項目の追加や調査内容の変更等の「軌道修正」や、それが手
続工程の遅延につながる「手戻り」等が生じる可能性がある。実証事業では、大きな手戻りは生じてい
なかったが、配慮書段階での大臣意見等により、自然度の高い植生の改変を回避するよう指摘された
ため、事業計画の見直しを行うことになった例がある。
3 大きな手戻りが生じる要因は、専門家等の助言や知事意見・大臣勧告等により、事業計画の大幅な
見直しが必要になる場合、これに伴い長期間の追加調査等が必要になる場合である。そして、事業計
画の見直しは、事業実施に伴い不可逆的な改変影響が及びそうな「重大な保全対象」が存在するにも
かかわらず、計画検討時に勘案、配慮されていない場合に求められる。重大な保全対象としては、「自
然度の高い植生」「希少猛禽類等の営巣地)「地域の優れた景観」等である。これらの項目については、
早い段階から予備調査(文献調査、聞取り調査)を実施し、必要に応じて現地調査も行って、その存在
を事業化判断や事業計画に反映し、重大な環境影響を回避することが重要である。この手順を踏むこ
とが、結果的に環境影響評価手続の迅速化、事業の早期運用開始に繋がる。
4 事業計画検討のできる限り早い段階から環境配慮を反映させていくことは、事業工程全体の迅速化
のために重要である。そのための環境情報を得る際に、後の手戻り等がないように、各項目の開始時
期を考慮しておくことが合理的である。そのため、事業性調査からの事業計画の検討工程、環境影響
評価手続の工程、前倒環境調査の実施工程の3つの工程を俯瞰的に見通し、計画的に前倒環境調査
を進めることが重要である。具体的な推奨工程を、第2章で紹介する。
5 専門家等との連携は、実証事業では、早期の段階から連携が図られていた。地熱発電所に係る環
境影響評価においては、調査・予測等の手法が十分確立されていない分野もあり、早期段階からの専
門家等との連携は重要である。特に、自然環境分野(動物、植物、生態系、景観、人と自然との触れ合
いの活動の場等)については、顕在化している現象と発生要因の関連等に未解明なことが多いため、
専門家等と適切に連携したい。また、硫化水素の着地濃度のシミュレーション等、日進月歩で技術革新
が進んでいる項目もあるので、先端情報を的確にキャッチアップし、効率的効果的な対応を図りたい。
6 地域コミュニケーションの状況については、実証事業では、早期の段階から地域住民や地方公共団
体とのコミュニケーションが図られていた。前倒環境調査の結果を活用することにより、配慮書における
重大な環境影響の回避の検討や、方法書における項目及び手法の妥当性の根拠をデータで示せるメ
リットがある。また、地方公共団体の審査部局と事業計画や手続工程等の情報共有を図り、日程的余裕
のある手続の進行に努めることが重要である。
1.4.2 前倒環境調査の基本的考え方
(1) 前倒環境調査の開始時点
地熱発電事業の一般的工程では、地域とのコミュニケーションを図りながら、長期間にわたる事業性調
査(資源調査)を行い、その結果を踏まえて事業化判断を行う。その過程においては坑井調査が重要であ
第1章 適切かつ迅速な環境影響評価の実施と前倒環境調査10る。調査井を選定、調査し、その性状が事業化にふさわしいと判断された場合には、調査井をそのまま生
産井として活用するケースが多い。生産井が決定すると、坑井基地、発電所建屋、冷却塔等の施設配置や、
これらを結ぶパイプライン等が決定するため、この段階以降には施設配置計画等を見直す余地が少ない
場合が多いと想定される。したがって、調査井の掘削位置の設定以前に、少なくとも「事業影響を回避すべ
き重要な保全対象」が調査井掘削候補地付近に分布していないことを確認しておく必要がある。また、この
段階で、法令等に基づく土地利用制限(特に、自然公園の特別保護地区8
、保安林9
や「緑の回廊 10
」等
の指定林分、自然環境保全地域11
等)の有無・内容を把握し、状況に応じて現地立入作業、試錐掘削や伐
採の許可申請、指定解除等の相談など、適切な手続を踏む必要がある。以上2点の把握は、文献調査、聞
取り調査等の概括的な概況調査でこと足りる場合が多いが、たいへん重要な情報なので、的確に把握し、
事業化を判断する際の材料の一つにすると良い。事業計画の熟度が高まってから重大な保全対象の存在
や土地利用制限等を把握した場合には、たいへん大きな手戻りが生じることもあるので注意が必要である。
なお、本書で解説している「前倒環境調査」は、上記の概況調査を経て坑井調査を行い事業化の判断
がなされた後に、事業計画に対応して進める環境影響評価の現況調査等を前倒して進めることを指す。こ
の現況調査等は、一般工程では「環境影響評価方法書」の手続により調査内容等を決定するものであるが、
環境影響評価手続の迅速化、ならびに、計画検討段階から環境配慮を織り込むため、前倒しの実施を提
起したものである。そして、計画検討段階からの環境配慮も、環境保全上の課題に先回りに対処することで、
環境影響評価手続の遅滞や手戻りを予防し、運転開始までの期間の縮減を図るものである。
図 1-6 前倒環境調査の適用の考え方128「自然公園法」
(1957 年 6 月、法律第 161 号。最終改正 2014 年 6 月)9「森林法」
(1951 年 6 月、法律第 249 号。最終改正 2016 年 5 月)10「緑の回廊」林野庁HP http://www.rinya.maff.go.jp/j/kokuyu_rinya/sizen_kankyo/corridor.html11「自然環境保全法」
(1972 年 6 月、法律第 85 号。最終改正 2014 年 6 月)12環境省:
「平成 22 年度 地熱発電に係る環境影響審査手法調査業務報告書」
(株式会社プレック研究所、2013 年 3
月)に加筆。
・環境影響評価のための
現況調査の前倒し実施
事業性調査:資源調査段階 建設段階 操業段階
建設工事 運用
発電所
関連施設
パイプライン等
工事用ヤード
工事用道路
環境影響評価
保守管理
増設・補充井
整備
リプレース
坑井調査
試錘掘削
工事
概況調査・空中調査・地表調査
地質調査
地質分布、
地質構造、
断裂系構造、
地質年代、
変質帯区分等物理調査
重力構造、
岩盤密度、
比抵抗、
地下断裂構
造、破砕帯
分布 等総合解析・評価立地条件
経済条件
地化学調査
岩石、土壌、
土壌ガス、
自然噴気、
温泉、地下
水 等
地質構造の
把握
貯留層構造、
基盤構造等熱源の
把握
温度、規模、
活動度 等
熱水系の
把握
地表水、地
下水の動き
評価
貯留層評価
地質構造
確認
経済性評価調査結果を事業計画に反映
前倒環境
調査資料調査・予察探査計画環境影響評価段階
坑井調査
地質
坑内検層
注水試験
噴出試験
性状調査
環境影響評価の実施
環境保全措置
等の実施
事後調査
環境監視 等配慮書手続方法書手続準備書手続評価書手続
現況調査
予測・評価等報告書公表事業計画、設計、
工事計画の検討
事業化の判断調査井掘削位置の選定
・重要な保全対象の有無確認
・地域制指定状況の確認
予備調査 *
*予備調査により把握した地域制指定(土地利用制限等)の状況に応じ、坑井調査に必要な許認可手続も行う。
第1章 適切かつ迅速な環境影響評価の実施と前倒環境調査11(2) 前倒環境調査の基本的考え方
前倒環境調査の考え方として重要なポイントは、次のとおりである。
1 地熱発電事業に係る環境影響評価においては、事業特性上、坑井基地等の確定後には施設配置
等を見直す余地が限定されることから、方法書段階・準備書段階において事業計画の大幅な見直しを
求められる手戻りを防止するため、坑井調査の開始時点(調査井掘削地点の選定段階)、または坑井
調査の結果を踏まえて事業化の判断が高まった時点から、前倒環境調査に着手することが望ましい。
特に、予備調査として、事業実施に伴って不可逆的な影響を及ぼしてしまいそうな「重要な保全対象」
が事業地一帯に分布していないか確認し、事業化の判断材料とする必要がある。また、調査井掘削地
点の選定に先立ち、関連機関等に許認可申請を行うため、法令等に基づく土地利用制限の有無や内
容等について確認し、状況に応じた必要な対応を図るよう留意する。
本格的な前倒環境調査(環境影響評価手続に用いるデータを取得する現況調査等)は、坑井調査
結果を踏まえて事業化の判断がなされてから実施すると良い。調査結果は、環境影響評価手続に用い
ることはもちろん、事業計画検討に反映させることが重要である。したがって、前倒環境調査を適用する
場合には、事業計画の検討工程、環境影響評価手続の工程、前倒環境調査の実施工程の3つの工程
を俯瞰的に見通し、的確な工程計画を策定する必要がある。
2 前倒環境調査は、環境影響評価手続の期間を短縮できるメリットがある。ただし、通常の環境影響評
価手続と同程度の水準の調査を行うことが前提であり、その開始時期を前倒しするものである。
3 前倒環境調査は、単に環境影響評価手続の迅速化のためだけに行うのではなく、その調査結果を
活用して事業計画検討の早期段階から環境配慮を反映し、より適切な事業計画とすることに資する取
組とすることが重要である。
4 前倒環境調査を適用する場合は、調査及び予測・評価等の適切な水準を確保し、手戻り等を防止
するため、専門家等との連携が重要である。
5 前倒環境調査は、方法書手続を経て環境影響評価の項目及び手法を確定させる前から現況調査
等を開始するため、丁寧な地域コミュニケーションを図ることが必要である。説明会等においては、前倒
環境調査の結果を活用することにより、事業計画における環境配慮の内容や方法書の妥当性の根拠
等をデータで示すことができる。
第1章 適切かつ迅速な環境影響評価の実施と前倒環境調査12引用・参考文献
・「総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 新エネルギー小委員会配布資料」
(第 1 回:2014 年 6 月 17 日)
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/shoene_shinene/shin_ene/001_haifu.html
・「前倒環境調査の取組に向けて」(風力・地熱発電に係る環境影響評価手続の迅速化等に関する研究会、
2014 年 3 月)
・「発電所の設置又は変更の工事の事業に係る計画段階配慮事項の選定並びに当該計画段階配慮事項
に係る調査、予測及び評価の手法に関する指針、環境影響評価の項目並びに当該項目に係る調査、
予測及び評価を合理的に行うための手法を選定するための指針並びに環境の保全のための措置に関
する指針等を定める省令」(1998 年 6 月 12 日 通商産業省令第 54 号)
・「発電所に係る環境影響評価の手引」(経済産業省商務流通保安グループ電力安全課、2019 年 3 月改訂)・「発電所 環境アセスメント情報サービス」(経済産業省 HP)
http://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/electric/detail/index_assess
ment.html
・「自然公園法」 (1957 年 6 月、法律第 161 号。最終改正 2014 年 6 月)
・「森林法」 (1951 年 6 月、法律第 249 号。最終改正 2016 年 5 月)
・「緑の回廊」 (林野庁HP http://www.rinya.maff.go.jp/j/kokuyu_rinya/sizen_kankyo/corridor.html)
・「自然環境保全法」 (1972 年 6 月、法律第 85 号。最終改正 2014 年 6 月)
・「環境省委託事業報告書:平成 22 年度 地熱発電に係る環境影響審査手法調査業務報告書」 (株式会
社プレック研究所、2013 年 3 月)
第2章 適切かつ迅速な環境影響評価の進め方13第 2 章 適切かつ迅速な環境影響評価の進め方
本章では、前倒環境調査の方法論を中心に、適切かつ迅速な環境影響評価の組み立て方や手順につ
いて提示する。ここで提示する方法論は、実証事業の検証により得られた知見に基づいて構築したもので
あり、環境影響評価手続の実施主体である事業者に、基本的考え方と判断材料を提供するものである。
2.1 前倒環境調査の実施における総合的判断
地熱発電事業では、個々の事業ごとに事業特性及び地域特性は大きく異なる。事業を取り巻く状況によ
っては、環境影響評価手続の迅速化を図ること、前倒環境調査を適用することが、地域樹民から「事業あり
き」の誤解を受けるなど、拙速になる場合があり得る。
この点に留意し、事業ごとに「適切な環境影響評価」を実施することを第一に考えることが望ましい。迅速
化はその上での取組であり、無理な迅速化を図ることは避ける必要がある。
一方、前倒環境調査には、現況調査等で得られる情報を事業計画に反映させることで、より環境に配慮
した計画の策定を可能にするという効用もある。配慮書や方法書に係る地域コミュニケーションに際し、前
倒環境調査で得られた現況データに基づく議論ができ、より具体的、詳細な意見交換を進めることも可能と
なる。
前倒環境調査の適用には、方法書手続完了前に現況調査等に着手することによる「手戻り」のリスクを伴
うことになるが、上記のような効用もあるため、リスクを負いつつ迅速化を図るのか、一般工程に沿った手順
通りに現況調査等を行うのか、しっかりと判断する必要がある。それは、環境影響評価手続の実施主体で
ある事業者の判断に委ねられる。事業の事業特性及び地域特性をよく見極め、事業計画検討の難易度や、
調査等の手戻りリスクとその防止策に係るコストの負担、供用後に問題が顕在化する可能性等も含め、前
倒環境調査の適用可否を総合的に判断することが重要である。
2.2 前倒環境調査の組み立て方
2.2.1 調査計画の検討手順
実証事業からの知見に基づき、前倒環境調査の調査計画の検討手順を提示する。
前倒環境調査の計画策定に着手する「開始時点」として、坑井調査の開始時点、または同調査の結果を
踏まえて事業化の判断がなされた時点が想定される。坑井調査における調査井の位置選定と併せて、地
域の環境情報の収集・整理を行い、前倒環境調査の全体計画を検討することが望ましい。
前倒環境調査の調査計画の組み立ては、手順に分解すると表 2-1 に示すとおりとなる。
まず、調査・予測等の前提となる事業計画を設定し、それに基づいて方法書段階での対象事業実施区
域を想定する(ステップ 1)。次に、地域の環境情報を収集して、地域の環境保全上の課題を抽出する(ス
テップ 2)。これらの情報に基づいて、環境影響評価の項目、調査地域・調査手法、前倒環境調査の工程
を設定し(ステップ 3)、専門家等の助言を得て、前倒環境調査の調査計画を作成する(ステップ 4)。
作成した調査計画に基づき、現況調査等を開始する。現況調査等を進める中で、重大な環境影響が把
握された場合は、それをフィードバックして事業計画を修正する(ステップ 1 にフィードバック)。フィードバッ
クのタイミングとして、配慮書への反映、方法書への反映が重要である。
事業計画の修正に伴い、必要に応じて、当初の調査計画を柔軟に軌道修正する(項目の追加・変更、
調査地域・調査手法の追加・変更、前倒環境調査の工程の追加・変更等)。軌道修正にあたっては、専門
家等の助言を得ることが重要である。
第2章 適切かつ迅速な環境影響評価の進め方14表 2-1 前倒環境調査の調査計画の組み立ての手順
手順 項目 内容・摘要
ステップ1事業計画の設定
対象事業実施区域の設定
・事業計画の仮設定。許認可を含めた全体工程の中での検討が重要。
ステップ2地域の環境情報の収集
・文献・資料調査
・聞き取り調査
・地域の環境情報を広範に収集。
・特に、環境保全上重要な環境要素の有無と内容の把握が重要。
ステップ3環境影響評価の項目の設定
調査地域・調査手法の設定
前倒し工程の設定・方法書手続=スコーピングを前倒しで実施する手順に相当。
環境保全
上の課題を網羅した適切な調査計画にすることが重要。
・現況調査等の進行中の軌道修正が可能な柔軟な工程設定が必要。
ステップ4専門家等の助言 ・地域の環境情報の補足。技術的な助言の取得。
実施
段階
調査計画の確定 ⇒ 現地調査等の実施 ⇒ 調査結果より必要な事前予測の実施
重大な環境影響を回避する事業計画の修正 ⇒ 当初調査計画の柔軟な軌道修正【ステップ 1 へ】
*1:手順の全体にわたり、先行する他事業における都道府県や経済産業省環境審査顧問会の審査での指摘事項や住
民・知事意見及び大臣勧告の内容に関する事例研究を行い、参考にすることが有効である。
2.2.2 事業計画と対象事業実施区域の設定
環境影響評価手続を開始するにあたり、まず重要なのは、調査・予測等の前提となる事業計画を設定す
ることである。
事業計画については、特に施設の配置計画と工事計画が重要で、施設の設置や搬入路等の工事に伴
う環境の改変や環境影響が想定される区域を明確にする必要がある。さらに、一時的な資材置き場や残土
等の受入地を含め、事業に係る全ての空間を包括する「対象事業実施区域」を明示する。
後の方法書に記載する事業計画は、その後の手続で大きな修正・変更が生じないように、地域の環境保
全上重要な保全対象がある場合には、その改変を回避する措置を含め、環境配慮事項を十分に反映した
熟度にすることが重要である。例えば、実証事業では、自然度の高い植生の改変を回避するため、施設配
置計画を見直している。
したがって、当初から、環境配慮事項を十分に反映した適切な事業計画を方法書に記載することを念頭
に置いた、全体工程の「総合調整」が重要である。具体的には、平行して進行する3つの工程、「事業計画
の検討工程」、「前倒環境調査を含めた現況調査等ならびに環境影響評価の全体工程」、「公表・縦覧や
関係機関との調整を含めた環境影響評価手続の工程」の相互のタイミングを、必要とされる事業計画の熟
度も考慮しながら、計画的・戦略的に組み立てること、また、全体の調査・検討を進める中で柔軟に調整・
軌道修正していくことが重要である。
2.2.3 地域の環境情報の収集
設定した対象事業実施区域を中心に、環境情報の調査対象区域を広域的に設定し、文献・資料調査、
聞き取り調査を行う。前倒環境調査の調査計画を検討するにあたっては、まず地域の環境情報を広く収集
し、環境保全上重要な環境要素の有無と内容を把握することが重要である。
なお、これらの地域の環境情報は、後に、手続に用いる図書(配慮書、方法書等)において、地域の自
然的状況及び社会的状況として記載する情報として活用できる。
地域の環境情報を収集する際には、地域の環境保全上重要な保全対象が十分に把握できるように、特
に、事業計画に早期に反映しておくことが必要な環境要素(自然度の高い植生、猛禽類、景観等)につい
て漏れのないように留意することが重要である。
第2章 適切かつ迅速な環境影響評価の進め方15文献・資料調査は、環境省の環境アセスメントデータベース"EADAS13
"等の国機関の資料、該当する地
域のレッドデータブック等の都道府県・市区町村の資料等、地域の地誌や自然誌等の文献・資料等から、
環境情報を収集・整理するものである。聞き取り調査は、文献・資料調査の結果を補完するものである。地
域の専門家や自然保護団体等から聞き取りを行い、地域の環境保全上重要な環境要素の有無や内容に
関する情報を収集し、文献・資料調査の結果と合わせて、地域の環境情報として整理する。
2.2.4 環境影響評価の項目の設定
地域の環境情報の収集・整理の結果を踏まえて、前倒環境調査の調査計画を策定する。この調査計画
をここでは便宜上、「当初調査計画」と呼ぶことにする。
当初調査計画の立案において重要なことは、地域の環境情報と専門家等の助言を踏まえ、環境保全上
重要な項目や影響を及ぼすおそれのある項目等に重点化し、影響が極めて小さい、もしくは想定されない
項目については簡略化することを検討していくプロセスである。環境影響評価の制度においては、この手
順を"スコーピング"といい、本来は方法書段階の手続として行うものである。前倒環境調査を適用する場
合には、それを当初調査計画の策定段階において行うことになる。専門家の助言を踏まえて、的確なスコ
ーピングを行うことが重要である。
環境影響評価の項目は、「発電所アセス省令」14
の別表第四に示された「参考項目」を参考にしながら、
「発電所アセス手引」15
を踏まえて、事業特性及び地域特性をよく見極めて適切に設定する必要がある。
実証事業における環境影響評価の項目の選定状況を表 2-2 に示す。
項目選定表はマトリックス形式である。表頭項目は「影響要因」であり、個別事業ごとに必要な工種等を、
「工事の実施」または「土地又は工作物の存在及び供用」に大別した上で列挙する。表側項目は「環境要
素」であり、影響を受けるおそれがあると想定される要素を列挙する。表中のグレーのハッチが付されてい
る箇所が、発電所アセス省令の参考項目である。13「環境アセスメントデータベース"EADAS"」(環境省大臣官房環境影響評価課) https://www2.env.go.jp/eiadb/ebidbs/14「発電所の設置又は変更の工事の事業に係る計画段階配慮事項の選定並びに当該計画段階配慮事項に係る調査、
予測及び評価の手法に関する指針、環境影響評価の項目並びに当該項目に係る調査、予測及び評価を合理的に行
うための手法を選定するための指針並びに環境の保全のための措置に関する指針等を定める省令」
(1998 年 6 月
12 日 通商産業省令第 54 号)15「発電所に係る環境影響評価の手引」
(経済産業省商務流通保安グループ電力安全課、2019 年 3 月改訂)
【事業特性・地域特性に応じた予測・評価項目の選定】
しろまる事例Aでは、大気環境について、参考項目には挙げられていない「冷却塔から排出される蒸気に
よる樹木への着氷」の影響を予測・評価した。大気環境では、蒸気に含まれる硫化水素について
は参考項目に記載されているが、「着氷」については、当該事例独自の選定項目である。
しろまるこの事例では、調査・予測等の結果、樹木が白煙に触れる範囲はブナ・ダケカンバ群落の限定的
な範囲であること、重要な群落であるオオシラビソ群落への影響は想定されないこと、冷却塔は
排出される蒸気の拡散効果が十分に得られる高さとすることにより影響の低減を図れることか
ら、冷却塔から排出される蒸気による樹木への着氷影響は少ないものと予測した。ただし、予測
には不確実性を伴うことから、運転開始後に環境監視を行うこととした。
第2章 適切かつ迅速な環境影響評価の進め方16表 2-2 環境影響評価の項目の選定(地熱発電事業)
:参考項目
数字:実証事業において予測・評価項目に選定した事例数
赤字:参考項目だが、実証事業2事例のいずれも選定しなかった項目
青字:参考項目ではないが、実証事業において選定した事例があった項目
* :供用後の騒音、振動は、参考項目に挙げられておらず、実証事業においても選定されなかったが、選定した事例がある。地熱流体の採取及び熱水の還元排ガス排水硫化水素 2
窒素酸化物 2
粉じん等 2
騒音 騒音 2 1 *
振動 振動 2 *
水の汚れ 0
水の濁り 2
その他 温泉 2
地形
及び地質
重要な地形及び地質 0
地盤 地盤変動 2
重要な種及び注目すべ
き生息地2 2重要な種及び重要な群落2 2
地域を特徴づける生態系2 2
主要な眺望点及び景観
資源並びに主要な眺望
景観2主要な人と自然との触
れ合いの活動の場2 0産業廃棄物 2 2
残土 2
影響要因の区分
環境要素の区分
工事の実施
土地又は工作物の
存在及び供用工事用資材等の搬出入造成等の施工による一時的な影響地形改変及び施設の存在
施設の稼働廃棄物の発生
環 境 の 自 然 的 構成 要素 の良
好 な 状 態 の 保 持を 旨と して
調 査 、 予 測 及 び評 価さ れる
べき環境要素
大気質
水質
水環境
その他
の環境
大気環境
環境への負荷の量の程度に
より予測及び評価されるべ
き環境要素
廃棄物等
生 物 の 多 様 性 の確 保及 び自
然 環 境 の 体 系 的保 全を 旨と
し て 調 査 、 予 測及 び評 価さ
れるべき環境要素
動物
植物
生態系
人 と 自 然 と の 豊か な触 れ合
い の 確 保 を 旨 とし て調 査、
予 測 及 び 評 価 され るべ き環
境要素
景観
人と自然との触れ合い
の活動の場
第2章 適切かつ迅速な環境影響評価の進め方172.2.5 調査地域・調査手法等の設定
(1) 調査地域
調査地域の広さに関して、「発電所アセス手引」16
には距離の記載はない。ただし、他事業の環境影響評
価等の指針類には、特に動植物に関して距離の目安が掲載されているものがある。
当初調査計画の調査地域についても、後の手続で確定する「方法書」の内容が結果として包含されてい
れば、追加調査等の「手戻り」は生じないことになる。このため、当初調査計画の調査地域は「広め」に設定
することが想定される。どのくらい「広め」にするかは、手戻り等のリスク対応とコスト増とのトレードオフであり、
個別事業ごと、調査項目ごとに異なる。
実証事業では、他事業の指針・マニュアル類を参考にして調査地域を設定している事例があった。例え
ば、動物、植物の調査地域を「対象事業実施区域から 250m」、猛禽類の調査地域を「対象事業実施区域
から 1.5km」に設定等である。
調査地域は、各調査項目において、影響要因(設備や工事箇所等)に基づいて影響の及ぶ可能性のあ
る最大範囲を論理的に想定し、予測・評価に必要な情報(すなわち調査目的)を明確にし、それを適切に
取得できる範囲を調査地域として設定することが必要である(「技術事例集」を参照)。
(2) 調査・予測等の手法
当初調査計画の調査手法(地点・ルート、時期、時間帯、観測方法等)は、予測手法に対して十分な情
報量を得られる手法であることが必要条件である。
その他、影響があると予測された項目については環境保全措置の検討を行うことから、その検討に必要
な情報量を得ることが必要である。また、環境保全措置の効果に不確実性があると考えられる場合等には
事後調査を計画する必要があることから、事後調査の結果と比較できる建設前のデータを取得することを
考慮し、その比較検討に必要な情報量を併せて得ておくと効率的である。
調査手法は、当該事業の事業特性・地域特性に応じ、保全対象の特性やそれらと影響要因(設備や工
事箇所等)との位置関係等を考慮して、必要な予測手法を設定し、予測に必要な情報を明確にして、それ
を適切に取得できる調査手法を設定することが必要である(参考事例は「技術事例集」を参照)。
表 2-3 調査地域の設定で参考になる他事業の指針類
他事業の指針類 調査地域の設定距離(目安)
道路環境影響評価の技術手法
(国土交通省、2013 年)
【動 物】対象事業実施区域から 250m 程度
【植 物】対象事業実施区域から 100m 程度
【生態系】対象事業実施区域から 250m 程度
面整備事業環境影響評価マニ
ュアル(建設省、1999 年)
【動 物】対象事業実施区域から 200m 程度
【植 物】対象事業実施区域から 200m 程度
【生態系】対象事業実施区域から 200m 程度
猛禽類保護の進め方(改訂版)
(環境省、2012 年)
【猛禽類】
クマタカの非営巣期高利用域の半径 1.5km 程度
と記載があり、
実証事業では、
それを包括する範囲に調
査地域を設定している。
*1:生態系は、選定した注目種等の生態特性により調査地域の設定の考え方が異なる。16「発電所に係る環境影響評価の手引」
(経済産業省商務流通保安グループ電力安全課、2019 年 3 月改訂)
第2章 適切かつ迅速な環境影響評価の進め方182.2.6 前倒環境調査の実施工程の考え方
(1) 基本的な考え方
ここでは、前倒環境調査の実施工程の組み立て方について述べる。なお、前述のとおり、前倒環境調査
の適用については、個別事業ごとに、事業特性や地域特性に基づいて、前倒しによる手戻り等のリスクやリ
スク回避の対応、そのためのコストをどう考えるか等、総合的に判断する必要がある。
前倒環境調査は、各評価項目の現況調査等に要する期間や、調査結果を事業計画に反映させる必要
性、重要性等が異なるため、「着手すると良いタイミング」が異なる。実証事業で得られた知見からは、その
タイミングは大きく4つに区分される(図 2-1、表 2-4)。
図 2-1 前倒環境調査の全体工程の考え方(図 1-6 に加筆)
表 2-4 前倒環境調査の全体工程の考え方(図 2-1 の区分に対応)
区分 着手時期 調査・評価項目の該当例 *1I坑井調査開始
前(調査井掘削
位置の選定時)
事業に伴う影響が不可逆的で重大な対象は、坑井調査開始前に予備調査を行い、調査井選定や事業化
判断に必要な情報を入手する。対象としては「重要な地形・地質」「重要な植生」「希少猛禽類の営巣地」
「地域の優れた景観、視点場や視点場を含む自然歩道等」など。また、坑井調査の実施に当たって関連機
関等に許認可申請を行うため、「地域制指定(法令等に基づく土地利用等の制限)の有無・内容等」を確認
し、状況に応じた必要な対応を図る。II事 業 化 判 断
後、速やかに
調査や予測・評価に長期間を要する対象や、調査結果を事業計画に反映させる必要がある項目は、事業
化の判断がなされたら速やかに現況調査等に着手する。硫化水素、温泉*2
、地盤変動、植生、希少猛禽
類等。III事業計画の熟
度が高まった段
階で着手
多くの項目については、手戻りのリスクを低減するため、調査や予測・評価の前提条件となる事業計画の熟
度が高まってから現況調査等を行うことが合理的。対象としては、水の汚れ、動物(全般)、植物(全般)、生
態系、景観、人と自然との触れ合いの活動の場、工事中の大気環境・水環境・廃棄物、放射線の量等IV方法書手続の
終了後
調査、予測・評価に長期間を要しない項目は、手戻りリスクを回避するため、方法書手続完了後に着手す
ればよい。対象としては、供用後の騒音・振動等。
*1:「該当例」としたのは、当該項目が各区分に該当する可能性があるの意。
*2:ここでは、温泉に係る環境影響評価に用いるデータを取得する調査を指す。当該調査に先立ち、地元協定等に基づく温泉モニタリング
を、別途、事業計画検討初期段階から実施することが標準的である。その場合、温泉モニタリングのデータを環境影響評価に用いるな
ど、効率的な対応を検討すると良い。
・環境影響評価のための
現況調査の前倒し実施
事業性調査:資源調査段階 建設段階 操業段階
建設工事 運用
発電所
関連施設
パイプライン等
工事用ヤード
工事用道路
環境影響評価
保守管理
増設・補充井
整備
リプレース
坑井調査
試錘掘削
工事
概況調査・空中調査・地表調査
地質調査
地質分布、
地質構造、
断裂系構造、
地質年代、
変質帯区分等物理調査
重力構造、
岩盤密度、
比抵抗、
地下断裂構
造、破砕帯
分布 等総合解析・評価立地条件
経済条件
地化学調査
岩石、土壌、
土壌ガス、
自然噴気、
温泉、地下
水 等
地質構造の
把握
貯留層構造、
基盤構造等熱源の
把握
温度、規模、
活動度 等
熱水系の
把握
地表水、地
下水の動き
評価
貯留層評価
地質構造
確認
経済性評価調査結果を事業計画に反映
前倒環境
調査資料調査・予察探査計画環境影響評価段階
坑井調査
地質
坑内検層
注水試験
噴出試験
性状調査
環境影響評価の実施
環境保全措置
等の実施
事後調査
環境監視 等配慮書手続方法書手続準備書手続評価書手続
現況調査
予測・評価等報告書公表事業計画、設計、
工事計画の検討
事業化の判断調査井掘削位置の選定
・重要な保全対象の有無確認
・地域制指定状況の確認
予備調査
区分IV
区分III
区分II
区分I
活 用
第2章 適切かつ迅速な環境影響評価の進め方19(2) 着手するタイミング
1) 区分I
現況調査等のなかでも最も早い段階で実施する必要があるのは、事業に伴う影響が不可逆的で重大な
対象の有無の把握である。対象としては「重要な地形・地質」「重要な植生」「希少猛禽類の営巣地」「地域
の優れた景観、視点場や視点場を含む自然歩道等」などであり、坑井調査開始前に予備調査を行って、
分布の有無や状況を把握し、調査井選定や事業化の判断に反映させる。調査内容としては、多くの場合、
文献調査や聞取り調査で必要な情報を入手できるが、場合によっては現地調査が必要となる。また、坑井
調査の実施に当たって関連機関等に許認可申請を行うため、「地域制(自然公園区域、国有林・保安林、
「緑の回廊」、自然環境保全区域、農振農用地等、法令等に基づく土地利用制限)の指定」の有無・内容等
を把握し、その状況に応じた対応を図る必要がある。
2) 区分II
調査・予測・評価に長期間を要する対象や、調査結果を事業計画に反映させる必要がある項目は、事業
化の判断がなされたら速やかに現況調査等に着手すると良い。対象項目としては、「希少猛禽類」「硫化水
素」「温泉」「地盤変動」「植生」等が挙げられる。事業計画の熟度が高まらないと予測に取り掛かれない項
目もあるが、少なくとも調査には早期に着手したい。また、調査結果を事業計画検討に反映させることで、
事業全体としては運転開始までの期間を縮減できる可能性がある。なお、前倒環境調査を適用したこと、
結果を事業計画に反映させたことやその内容等については、配慮書・方法書段階の手続において積極的
にアピールすると良い。環境意識の高さを評価され、以降の手続が円滑化すると期待される。
3) 区分III
前倒環境調査を適用するにしても、多くの項目については、手戻りのリスクを低減するため、調査や予
測・評価の前提条件となる事業計画の熟度が高まってから現況調査等を行うことが合理的である。特に、現
況調査等の結果によって事業計画の見直し・再編が求められるような項目、現況調査や予測・評価に長期
間を要する項目でなければ、事業計画の概成を待ってから着手しても、環境影響評価期間の延滞にはつ
ながらない。逆に、事業計画が概成していなければ、調査地点の設定等において的確性を欠き、再調査、
追加調査等、大きな手戻りをまねくことになりかねない。そのため、当該項目に係る現況調査等は、早くても
方法書に記載する水準以上に事業計画内容が固まった後、あるいは方法書に対する意見・勧告等が概ね
見えてきてから、求められる調査内容を設定、着手すると良い。ただし、重大な環境影響が予測された場合
には、速やかに事業計画に反映し、影響の回避・低減について検討することが重要である。この区分の対
象項目としては、水の汚れ、動物(全般)、植物(全般)、生態系、景観、人と自然との触れ合いの活動の場、
工事中の大気環境や廃棄物等が挙げられる。
4) 区分IV
最後に、方法書手続の終了(大臣勧告)の後に開始すると良い項目がある(区分IV)。その項目は、調査
や検討に必要な期間が短いことと、事業計画・工事計画等から調査地点・内容等を設定することから、方法
書の大臣勧告後に調査方法等を確定してから調査することで手戻り等のリスクを回避するものである。
【猛禽類調査に求められる2営巣期の調査期間】
しろまる実証事業の事例Bでは、主要対象をクマタカと想定する2営巣期の猛禽類調査を計画した。クマ
タカの繁殖期は長く、2営巣期は少なくとも 20 箇月にわたる。この長い期間を通した調査を行う
ため、全ての調査に先立ち、前倒しで猛禽類調査に着手した。結果的に、2営巣期の調査期間中
にクマタカの繁殖活動の確認はなく、環境改変の回避が必要な場所は特定されなかった。
しろまる希少猛禽類が繁殖活動を行っている場合、営巣地一帯の環境改変を回避するよう事業計画を見直
すことを求められる場合がある。事業計画の見直し内容によっては、さらに2営巣期の追加調査
を求められる場合もある。期間が長大であるため、予備調査によって分布の有無を事前把握し、
事業化判断や事業計画検討に反映しておくことが重要である。
第2章 適切かつ迅速な環境影響評価の進め方202.2.7 柔軟な軌道修正
前倒環境調査の実施中は、配慮書手続・方法書手続が並行して進行することから、調査結果や手続の
結果に応じた柔軟な軌道修正に努める必要がある。調査中の軌道修正にあたっては、各種の参照資料の
記載内容や先行事業の審査の議事録等についての事例研究も有効である。
なお、前倒環境調査によって得られた調査結果は、配慮書手続や方法書手続への活用を積極的に検
討すると良い。前倒環境調査の結果を方法書手続等に明示することで、方法書に記載した調査手法等の
妥当性の根拠を示すことができるためである。
例えば、猛禽類調査において、営巣地や営巣中心域が対象事業実施区域から離れていることを把握し
た「つがい」については、以後の調査、予測・評価の対象から除外することが考えられる。また、早い段階か
ら情報を開示することで、地域の理解の醸成に寄与することも期待される。(ただし、希少猛禽類をはじめ
希少野生動植物の詳細位置等の情報については、野生生物保護の観点から秘匿が求められるため情報
開示の方法に配慮が必要である。近年は、都道府県や関係省庁の審査時に、環境影響評価図書の非公
開別添資料として提示する方法がとられる場合が多い。)
2.2.8 事後的な対応
方法書手続において、調査地域や調査時期・地点・観測方法等の変更や追加の指摘があった場合、準
備書届出までに補足・追加調査を行って予測・評価に反映させることが基本的な対応である。
しかし、不確実性が残る場合等には、事後調査や環境監視等の「事後的な対応」が必要である。例えば、
不可逆的な影響(改変してしまうと元に戻らないもの)ではない場合であって、調査・予測手法が十分に確
立していない事項あるいは環境保全措置の効果に不確実性がある事項については、事後調査が必要な
場合があると想定される。
事後調査の結果がどうなったのかは、環境影響評価の手続上、報告書手続で公表されることになる。環
境影響評価手続の進行過程では、審査者や地域の利害関係者への十分な説明と理解が必要になると想
定される。
【猛禽類調査の軌道修正】
しろまる生態系・上位性の注目種等として、当初は猛禽類を想定した。専門家からの聞き取り調査の結果、
地形条件等から事業実施想定区域及びその周辺にはクマタカが生息している可能性は低いと考え
られたものの、具体的な情報はないことから、クマタカ等の猛禽類の生息実態を把握することを
目的として 2 営巣期の調査を行う計画とした。
しろまる調査開始後、クマタカの飛翔は確認されたが繁殖行動等は対象事業実施区域近辺では確認されな
かった。一方、事業実施想定区域一帯は複数つがいのノスリの行動圏となっていた。このため、
猛禽類の調査対象はクマタカからノスリに変更した。ノスリは2つがいが生息し、両つがいとも
営巣地を特定された。なお、現地調査は当初計画どおり2営巣期で実施した。
しろまる上位性の注目種等は、クマタカからキツネに変更したが、キツネに対する影響が少ないと判断さ
れたことから、最終的には複数の繁殖つがいが分布するノスリを選定した。これに伴い、ノスリ
の餌資源調査(ネズミ類)を実施した。
第2章 適切かつ迅速な環境影響評価の進め方21事後調査 :予測の不確実性が大きい場合や環境保全措置の効果に係る知見が不十分な場合等に、関連する環境要
素の状況や措置の効果等を把握するために実施する。
環境監視等:事後調査の他に、工事中・供用後の環境の状況をモニタリングするために実施する。
図 2-2 事後的な対応の全体像
2.2.9 専門家等との連携
(1) 基本的な考え方
前倒環境調査を適用する場合、着手時点での適切な調査計画の作成、調査中の妥当性の随時点検及
び調査結果の評価・解釈等の全工程を通じ、手戻り等の防止のために、早い段階から専門家等との連携
体制を構築・維持することが重要である。専門家等からの助言の意義は以下の 3 つに大別できる17。1地域特性に関する実態的な見解(動物・植物・生態系等の固有性、社会的・文化的な固有性等)。
2科学的な見地から環境影響のインパクトを分析し、見解を示すもの。
3利害関係がぶつかる問題について、事業者が価値判断を行う際に参考となるもの。
専門家等との連携は、一般に環境影響評価において重要であるが、地熱発電所に係る環境影響評価
では、調査・予測等の手法が十分確立されていない分野も多いこと等から重要度は高い。
(2) 専門家等との連携にあたっての留意事項
前倒環境調査の準備段階において専門家等から意見聴取すると良い内容を示す(表 2-5)。
ここに例示したのは、前倒環境調査の手戻り等を防止するために、早い段階で検討しておくと良い事項
である。環境影響評価の手続全体の流れの中では、当然ながら、調査結果の妥当性やその解釈のほか、
予測・評価結果についても妥当性を確認することが重要である。
意見聴取にあたっては、事業計画の説明資料、疑問点や課題等をまとめた論点資料を事前に送付して
おくことが効率的である。また、具体的な議論のためには、調査結果のバックデータや現地写真等の補足
資料を準備することも重要である。さらに、生態系など項目間の議論が重要な事項があることから、合同ミ17「前倒環境調査の取組に向けて」
(風力・地熱発電に係る環境影響評価手続の迅速化等に関する研究会、2014 年 3月)評価書
手続
準備書手続
事業着手
工事実施中 供用後
環境保全措置
(回避・低減・代償)
の検討
事後調査
(環境保全措置の効果検証)
に関する検討
環境監視等
(環境状況把握)
着工前の
環境保全
措置
必要に応じ、事
業着手前から環
境監視を実施
報告書公表
着工後の
環境保全
措置
供用後の
環境保全
措置
供用開始
事後調査結果
を踏まえ、環
境保全措置を
追加・修正
事後調査結果
を踏まえ、環
境保全措置を
追加・修正
第2章 適切かつ迅速な環境影響評価の進め方22ーティング形式や委員会形式の必要性も検討する。
表 2-5 専門家等に意見聴取することが推奨される内容 (調査準備段階)
項目 実施時期 意見聴取することが推奨される内容
動物
(猛禽類)
調 査 準 備 段階・希少猛禽類の生息分布、繁殖つがいの生息状況等の地域情報
・猛禽類調査の調査計画の妥当性(時期設定、地点配置等)の確認
中間段階:
1営巣期目
の終了時点
・1営巣期目の調査結果の妥当性及び事業計画に反映する重要な環境情報
・2営巣期目の調査の実施の必要性(繁殖つがいが生息していないと判断できる
かどうか、行動圏解析や予測・評価に必要十分なデータが得られているかどうか等)動物(全般)
調 査 準 備 段階・特に保全重要度の高い動物の生息分布等の地域情報
・調査計画等の妥当性
植物
調 査 準 備 段階・自然度の高い植生の分布、特に保全重要度の高い植物の生育状況等の地域情報・調査計画等の妥当性
生態系
調 査 準 備 段階・地域を特徴づける生態系(重要な環境のまとまりの場)の有無等の地域情報
・調査計画等の妥当性
景観、人と自然との触
れ合いの活動の場
調 査 準 備 段階・景観資源や主要な眺望点と視点場、視点場を含む自然歩道等の地域情報
・重要な人と自然との触れ合いの活動の場等の地域情報
2.2.10 地域コミュニケーション
(1) 基本的考え方
前倒環境調査を適用した適切かつ迅速な環境影響評価手続の実施において、地域コミュニケーション
は重要なテーマである。ただし、地熱発電事業においては、地元理解を前提に事業性調査、資源調査を
進め、坑井調査を経て事業化の判断がなされるため、前倒環境調査を適用しても地域住民・地方公共団
体等からみて、「何の調査が始まったのか分からない」状況に陥るケースは少ない。前倒環境調査として現
況調査等に着手する段階では、「重要な保全対象」に係る予備調査や温泉モニタリングデータ等、ある程
度情報が蓄積されていると考えられるため、これらを公開し、調査結果に基づいて事業計画や環境配慮に
ついて議論していくことが、適切な地域コミュニケーションにつながると考えられる。
1) 配慮書段階
地熱発電事業の配慮書段階では、坑井調査を経て事業化について判断する手順を踏まえると、坑井基
地を始め、主要な施設配置は概ね決まっていると考えられる。したがって、この段階では、予備調査で把握
した事項、それを事業計画にどのように反映したのかを説明することが重要と考えられる。
2) 方法書段階
一般事例をみると、配慮書の「事業実施想定区域」から方法書の「対象事業実施区域」に絞り込むプロセ
スが、事業計画の配慮書レベルから方法書レベルへの絞り込みに対応するという概念は、ステークホルダ
ーに理解されていない傾向がある。このため事業者は、どんな環境影響が予測され、それを回避・低減す
るために、どのように事業計画を見直したのかに関し、丁寧な記載や説明に留意すると良い。
また、必要に応じて、環境影響評価手続とは別途に、事業計画に関する情報提示を心がけること等の取
り組みが、手続の手戻り・長期化等の防止に寄与すると考えられる。
(2) 地域コミュニケーションにあたっての留意事項
地熱発電事業においては、他事業よりも充実した地域コミュニケーションのもとで事業を進めていくが、
事業実施に伴う影響に関するステークホルダーの誤解の払拭、環境に配慮していることの認知と評価を得
第2章 適切かつ迅速な環境影響評価の進め方23ていくことが重要であり、そのためには手持ちの情報を的確なタイミングで公表するよう留意が必要である。
前倒環境調査を適用する場合には、得られた調査結果を事業計画検討や環境影響評価に反映し、環
境保全に関する説明責任を果たしていくことが重要である。したがって、調査結果等を写真や図面等を用
いて判り易く説明すること、その情報にもとづく環境配慮を事業計画にどのように反映させたのかを明示的
に説明すること、その検討プロセスで得た専門家意見等も紹介することに留意すると良い。
2.2.11 先行成果活用
(1) 先行成果活用とは
先行成果活用とは、ここでは、前倒環境調査で得られた情報や先行して行われた評価結果等を、その
後の環境影響評価手続に活用することを指す。類似用語に「ティアリング(tiering)」18
があり、「先行評価の
活用」等と訳され、「環境影響評価の前段階における結果を後段階の手続で活用する」19
という考え方であ
るが、狭義には、現行制度における「配慮書」の段階の調査結果等を方法書、準備書段階の検討に活用
することを指すとされている。本書では錯誤を避けるため、段階を問わず先行成果を活用することを「先行
成果活用」と表し、その有効性を重視して推進を推奨する。「先行成果活用」に期待される効果と活用に当
たっての課題を、表 2-6 に示す。
表 2-6 先行成果活用の考え方と課題
項目 活用可能性
活用の考え方
・前倒環境調査の結果を「配慮書手続」や「方法書手続」等、環境影響評価手続に段階的に活用する。
・環境影響評価だけでなく、事業計画の検討にも、前段階で行った調査・検討の成果は活用していきたい。
期待される効果
・先行成果を環境影響評価手続に活用することで、
環境影響評価を効果的・効率的に実施することとなり、
環境
配慮の充実化に資するとともに、以後の調査の重点化を通じた手続の効率化も期待できると考えられる。地
域への事前説明においても先行成果を活かした説明を行うことで、地域の理解醸成にも寄与することができ
る。
活用にあたって
の課題
・前倒環境調査の開始時期(及び終了時期)のタイミングによっては、
「配慮書」や「方法書」へ前倒環境調査
の結果(現況調査、予測・評価)を十分に反映できないことがあり得る。中途半端な反映は事実誤認を与えか
ねないので行わないこと。
・先行成果を的確に活用するためには、
「配慮書」や「方法書」に反映する内容を検討した上で、それを可能と
する工程を組むことが必要と考えられる。期待される効果を得るにあたっては、
「配慮書」等に対してどのよ
うな記載ぶりとするか、工夫が必要である。
地域コミュニケーションの面からみると、前倒環境調査によりどんな調査結果が得られているのか、それ
に基づいてどのように環境影響を回避・低減したのか等、事業計画の環境面からの検討プロセスを説明す
ることが、地域の理解を醸成する上で重要である。
また、前述のように、特に方法書に記載する事業計画については、配慮書手続を経て、重大な環境影響
を回避した、より良い事業計画としておくことが求められる。
環境影響評価の手続の進行過程を地域コミュニケーションの面から検証した一般事例研究の成果では、
問題が生じた事例では、事業計画の説明段階、配慮書から方法書段階までの過程において、事業計画の
具体的な説明が不十分だったと考えられるケースが多い。また、方法書の記載内容については、省令の文
言準拠に終始せず、一定程度具体性を持った記載や説明が行われないと、地域からの不信感が醸成され
てしまう可能性が高い。この意味でも、先行成果活用により、前倒環境調査の結果を、図書への記載や地
域への説明に役立てることが有効である。18「ティアリング(tiering)
」は、もともとは米国の環境影響評価制度(NEPA)にみえる用語。19「今後の環境影響評価制度の在り方について(答申)」(中央環境審議会、2010 年 2 月 22 日)
第2章 適切かつ迅速な環境影響評価の進め方24(2) 配慮書手続への活用で期待される効果
前倒環境調査を配慮書手続よりも前から実施する場合、調査結果を配慮書に記載し、配慮書における
重大な環境影響の有無の検討に活用することが考えられる。配慮書への先行成果活用で期待される効果
は以下のように想定されている。
・前倒環境調査の結果を踏まえることにより、より精緻に初期段階における重大な環境影響の回避・低減
を行うことができる。
・「配慮書手続」の評価項目について、前倒環境調査の結果を活用した検討が行われている場合には、
「方法書手続」以降の追加的な検討を省略することができる、又は「方法書手続」以降の詳細な現況調
査等により重点的に検討することができる。
・重大な環境影響等の回避・低減の取組を行っていることを明確にすることにより、事業計画の検討が環
境面にも配慮して行われていることが明確化できる。
(3) 方法書手続への活用で期待される効果
前倒環境調査を方法書手続よりも前から実施する場合、調査結果を方法書に記載し、方法書における
調査・予測・評価の手法の検討に活用することが考えられる。方法書への先行成果活用で期待される効果
は以下のように想定されている。
・前倒環境調査の結果や「配慮書手続」の内容を踏まえるとともに、配慮書に対する大臣意見を勘案して、
「方法書手続」以降の環境影響評価の項目に係る検討や現況調査等の手法に係る検討を行うことによ
り、焦点の明確化、調査の重点化や調査手法の高度化を図ることが可能となる。
・前倒環境調査により必要な現況調査等を行った結果、環境影響が想定されない評価項目については、
前倒環境調査の結果を示すこと等により、評価項目として選定しない理由を示した上で、「方法書手続」
以降では評価項目として選定しない。
・「方法書」において、現況調査等の焦点の明確化や手法の高度化を図るための取組を行っていること
を明確にすることにより、手続の充実化が行われていることが明確化できる。
(4) 事例と留意事項
前倒環境調査によって得られた調査結果は、配慮書手続や方法書手続に活用することを積極的に検討
すると良い。早い段階から情報開示することで、地域の理解の醸成に寄与することも期待される。
例えば、前倒環境調査の結果を配慮書に活用することにより、事業実施想定区域内での施設配置計画
の妥当性等について、客観的根拠を示すことができる。また、方法書への活用により、方法書に記載した
調査・予測等の手法の妥当性について、客観的根拠を示すことができる。例えば、猛禽類の繁殖つがいの
行動圏が事業地から離れていることを示し、以後の調査の重点化・簡略化を図ること等が考えられる。
なお、希少猛禽類をはじめ希少野生動植物の位置など詳細情報については、野生生物保護の観点か
ら秘匿が求められており、情報開示の方法には配慮が必要である。実証事業の事例では、都道府県や関
係省庁の審査時に、環境影響評価図書の別添資料として提示する方法等がとられている。
2.2.12 共同事実確認(JFF)の活用
(1) 共同事実確認(JFF)とは
環境影響評価手続における地域コミュニケーションの対象には自然保護団体や事業反対者等も含まれ
るため、その進め方には慎重な対応が必要である。
このような場合のコミュニケーション手法の一つに、「共同事実確認(joint fact finding)」20
がある。共同事20東京大学政策ビジョン研究センター(http://pari.u-tokyo.ac.jp/event/smp111216.html)より作成
第2章 適切かつ迅速な環境影響評価の進め方25実確認とは、調査条件・調査手法を双方が合意し、それに基づいて現況調査等を行い、得られた調査結
果に基づいて対話を行う手法である。まず重要なのは、調査条件・調査手法を双方が合意することである。
現況調査等は、合同実施、別々に実施、あるいは一方が実施するなど様々なケースが考えられる。対話の
中で信頼関係が確保できるなら事業者のみの調査でもよい。合同調査は必要条件ではない。共同事実確
認の活用で期待される効果については以下のように想定されている。
表 2-7 共同事実確認(JFF)の活用可能性21
項目 活用可能性
活用の考え方
・事業者とステークホルダーが調査の条件等を設定した上で、各々に、または共同で現況調査等を
実施し、その結果により対話を行うことは、前倒環境調査においても可能と考えられる。
期待される効果
・事業者とステークホルダーの取得した情報やそれに対する意見が一致する場合には、地域理解の
醸成に寄与する可能性がある。
・結果を「方法書」や「準備書」に反映することで一層の地域理解の醸成の効果が期待できる。
活用にあたって
の課題
・ステークホルダーの特定や費用負担に関しての工夫が必要である。
・事業者とステークホルダーの取得した情報やそれに対する意見が相容れない可能性がある(特に
価値判断に係る意見)。その場合には、意見交換やコミュニケーションの進め方に工夫が必要とな
る。
(2) 事例と留意事項
共同事実確認の適用は、自然保護団体等との対話を通じて、地域理解の醸成を図り、環境影響評価手
続の手戻りや長期化の防止に役立つ可能性がある。対話の結果、仮に調査結果の「解釈」について意見
の相違があったとしても、データ自体は残されるので、現況調査等を最初からやり直す事態を回避できる可
能性が高い。また、双方の意見が一致した場合は、調査・予測の結果とともに、共同事実確認を行った事
実関係を方法書や準備書に記載することで、地域理解が醸成されると期待される。双方の意見が一致しな
かった場合でも、対話をしている事実関係を明示することは、事業者の誠実な姿勢を示す意味で、地域コミ
ュニケーション上の意味があると考えられる。
実証事業においては、地元の自然保護団体に調査結果を提示し、事業影響の予測・評価、環境保全対
策への理解を深める成果を得ていた。21「前倒環境調査の取組に向けて」
(風力・地熱発電に係る環境影響評価手続の迅速化等に関する研究会、2014 年 3
月)より作成
【JFFの活用事例】
しろまる実証事業の事例Aでは、JFFとして、地元の自然保護団体にも現況調査(動物)の結果報告を
行った。当該事例では、各手続段階を通じて一般意見は出されなかったが、これは、各段階の充
実した地域コミュニケーションやJFFを行ったことを反映しているものと考えられる。
一般意見の件数
配慮書への意見 方法書への意見 準備書への意見 合計
事例A 0 0 0 0
事例B 7 0 0 7
第2章 適切かつ迅速な環境影響評価の進め方262.3 前倒環境調査の全体計画モデル
地熱発電事業において前倒環境調査を適用する場合の全体工程のモデルを示す(3 ケース)。
いずれのケースにおいても、一般工程である手続期間 43 ヶ月に対し、前倒環境調査を適用することによ
り、手続期間 23.5 ヶ月が可能と見積もられる(手続期間:配慮書の公告から評価書手続終了まで)。このよ
うに、地熱発電事業においても前倒環境調査の適用による環境影響評価の手続期間の短縮は可能である
と想定される。
ただし、地熱発電事業においては、事業化判断及び対象事業実施区域の決定には、地元ステークホル
ダーとの調整や各種手続が必要である。ステークホルダーとの合意前に前倒環境調査を実施することは、
信頼関係が深まっていない場合、事業計画自体の実現に困難を来たす可能性があるため、慎重な対応が
必要である。一方、地熱発電事業では、多くのケースでは地熱資源調査段階の調査井を生産井・還元井
に転用するため、当該調査井の掘削段階で環境配慮(重大な環境影響の回避等)を検討していないと、事
業化の判断や事業計画の熟度が高まって以降に対応することが困難な場合が多い。したがって、改変を
回避することが求められる重要な環境要素の存在については、調査井掘削位置の選定段階で確認し、事
業化の判断や事業計画検討に反映しておく必要がある。
【ケース1:山地・自然植生内の地熱発電事業】
《 事業諸元とケーススタディ概要 》
検討ケース 事業特性 地域特性 ケーススタディの着目点
地熱発電
ケース1
【山地自然植
生内の地熱
発電事業 】
・供用時の余剰水、処理後
の一般排水は熱水とともに
地下に還元。
・排出ガスは空気と混合希釈
し、冷却塔から放出。
・近隣(約3.0km)に既存の地
熱発電所が稼働中。
住居等までの距離:約 2.0km
(民家及び温泉地等からやや離隔あり)
地形:山地(山麓、高原)
植生:自然植生(落葉広葉樹林)
土地利用:主として保安林
猛禽類:クマタカが生息
・事業地一帯にクマタカが生息しているため、猛
禽類調査を 2 営巣期実施する。
・現況調査等に約 14 ヶ月前倒しで着手施する。
・猛禽類調査を実施する期間中に、その他の現
況調査も実施、完了させる。
・方法書において、「植物」の項目で「排ガスに
よる植物への影響」の予測を行うことを明記
し、準備書で予測する。
《 一般工程 》
《 迅速化工程 》
月数 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 13 14 15 16 17 18 19 23 24 25 26 27 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47
手続 配慮書手続 (3ヶ月) 方法書手続 (6ヶ月)
検討 配慮書作成 方法書作成 (3ヶ月) 評価書作成 (1ヶ月)→ ↑
調査 評価書手続 (1ヶ月)
現況調査等 (2営巣期 : 18ヶ月)
準備書手続 (9ヶ月)
準備書作成 (6ヶ月)
12 20 21 28 29223年目 4年目
1年目 2年目30月数 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 13 14 15 16 17 18 19 23 24 25 26 27 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47
手続 配慮書手続 (3ヶ月)
方法書手続 (5.5ヶ月) 準備書手続 (6.5ヶ月) 評価書手続 (10日)
検討 配慮書作成 方法書作成 (3ヶ月) 準備書作成 (5.5ヶ月) 評価書作成 (1ヶ月)
調査 前倒環境調査を適用した現況調査 (1営巣期:18ヶ月)
4年目
12 20 21 28 29
1年目 2年目 3年目
22 30
猛禽類の現況調査等を約 14 ヶ月前倒して着手し、2営巣期(18 ヶ月)実施する。
その間、その他の現況調査等を可能な限り早期に完了させる。
第2章 適切かつ迅速な環境影響評価の進め方27【ケース2:【山地・牧草地内の地熱発電事業】
《 事業諸元とケーススタディ概要 》
検討ケース 事業特性 地域特性 ケーススタディの着目点
地熱発電
ケース2
【山地牧草地
内の地熱
発電事業 】
・供用時の余剰水、処理後
の一般排水は公共用水域
に排水。
・熱水は地下深部に還元。
・排出ガスは、空気と混合希
釈し、冷却塔から放出。
・近隣(約1.0km)に既存の地
熱発電所が稼働中。
住居等までの距離:100m未満
(民家及び温泉地等が隣接する)
地形:山地
植生:牧草地、植林地
土地利用:自然公園(国立公園普通地域)
猛禽類:繁殖する希少種つがいは確認でき
なかった。希少種でないノスリが生息
・事前調査を実施したところ、猛禽類は上空の
飛翔のみで、繁殖行動や対象事業実施区域
内における採餌行動はなかった。
・周辺には猛禽類ノスリが生息しているので猛
禽類調査を1年間は実施する。この間にその
他の現況調査も実施、完了させる。
・現況調査等に約 10 ヶ月前倒しで着手する。
《 一般工程 》
《 迅速化工程 》
【ケース3:【台地部・耕作地内の地熱発電事業】
《 事業諸元とケーススタディ概要 》
検討ケース 事業特性 地域特性 ケーススタディの着目点
地熱発電
ケース3
【台地部耕作
地内の地熱
発電事業 】
・供用時の余剰水、処理後
の一般排水は公共用水域
に排水。
・熱水は地下深部に還元。
・排出ガスは、空気と混合希
釈し、冷却塔から放出。
住居等までの距離:約 500m(民家または温
泉地等が存在する。ただしアクセス道路
沿いには存在しない。)
地形:台地
植生:耕作地、植林地
土地利用:幹線道路に直結するアクセス道
路がある。
猛禽類:サシバが生息。
・影響範囲内の希少猛禽類サシバの生息を考
慮し、猛禽類調査を 2 営巣期実施する。
・現況調査等に約 13 ヶ月前倒しで着手施する。
・猛禽類以外の現況調査等を早期に終了し、猛
禽類の2営巣期目の調査中に予測を先行して
実施する。
・配慮書において、建設作業騒音・振動、排ガス
による植物への影響を予測し、方法書で予測
結果を活用することで項目非選定または予測
しないことの根拠とする。
・硫化水素の予測に風洞実験と拡散予測数値
モデルを併用する。
《 一般工程 》
《 迅速化工程 》
月数 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 13 14 15 16 17 18 19 22 23 24 25 26 27 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47
手続 配慮書手続 (3ヶ月) 方法書手続 (6ヶ月) 準備書手続 (9ヶ月)
検討 配慮書作成 方法書作成 (3ヶ月) 準備書作成 (6ヶ月) 評価書作成 (1ヶ月)→ ↑
調査 現況調査等 (2営巣期 :18ヶ月) 評価書手続 (1ヶ月)
1年目 2年目 3年目 4年目
12 20 21 28 29
現況調査等を約 10 ヶ月前倒して実施する。現況調査等の期間として、猛禽
類・動物・植物・生態系等の通年調査(1年間:12 ヶ月)を見込む。
事前調査を実施し、結果を事業計画に反映させることで、環境影響評価手続の総合的な迅速化を図る。
月数 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 13 14 15 16 17 18 19 23 24 25 26 27 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47
手続 配慮書手続 (3ヶ月) 方法書手続 (6ヶ月) 準備書手続 (9ヶ月)
検討 配慮書作成 方法書作成 (3ヶ月) 準備書作成 (6ヶ月) 評価書作成 (1ヶ月)→ ↑
調査 現況調査等 (2営巣期 : 18ヶ月) 評価書手続 (1ヶ月)
12 20 21 28 29221年目 2年目 3年目 4年目30月数 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 13 14 15 16 17 18 19 23 24 25 26 27 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47
手続 配慮書手続 (3ヶ月) 方法書手続 (5.5ヶ月) 準備書手続 (6.5ヶ月) 評価書手続 (10日)
検討 配慮書作成 方法書作成 (3ヶ月) 準備書作成 (5.5ヶ月) 評価書作成 (1ヶ月)
調査 前倒環境調査を適用した現況調査 (1営巣期:18ヶ月)
4年目
12 20 21 28 29
1年目 2年目 3年目
22 30
猛禽類の現況調査等を約 13 ヶ月前倒して着手し、2営巣期(18 ヶ月)実施する。
その間、その他の現況調査を可能な限り早期に完了させる。
予測作業を前倒して実施する。
月数 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 13 14 15 16 17 18 19 22 23 24 25 26 27 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47
手続 配慮書手続 (3ヶ月) 方法書手続 (5.5ヶ月) 準備書手続 (6.5ヶ月) 評価書手続 (10日)
検討 配慮書作成 方法書作成 (3ヶ月) 準備書作成 (5.5ヶ月) 評価書作成 (1ヶ月)
調査 事前調査 前倒環境調査等 (通年:12ヶ月)
4年目
12 20 21 28 29
1年目 2年目 3年目
第2章 適切かつ迅速な環境影響評価の進め方28引用・参考文献
・「環境アセスメントデータベース"EADAS"」 (環境省大臣官房環境影響評価課)
https://www2.env.go.jp/eiadb/ebidbs/
・「発電所の設置又は変更の工事の事業に係る計画段階配慮事項の選定並びに当該計画段階配慮事項
に係る調査、予測及び評価の手法に関する指針、環境影響評価の項目並びに当該項目に係る調査、
予測及び評価を合理的に行うための手法を選定するための指針並びに環境の保全のための措置に関
する指針等を定める省令」 (1998 年 6 月 12 日 通商産業省令第 54 号)
・「発電所に係る環境影響評価の手引」(経済産業省商務流通保安グループ電力安全課、2019 年 3 月改訂)・「前倒環境調査の取組に向けて」(風力・地熱発電に係る環境影響評価手続の迅速化等に関する研究会、
2014 年 3 月)
・「今後の環境影響評価制度の在り方について(答申)」 (中央環境審議会、2010 年 2 月 22 日)
第3章 各論 〜迅速化の考え方と留意事項〜29第 3 章 各論 〜項目別の迅速化の考え方と留意事項〜
本章では、環境影響評価の項目別に、前倒環境調査の着手時期の考え方、前倒環境調査を運用する
上での留意事項、調査計画等の立案にあたって最低限必要な基礎知識等を提示した。本章の構成は影
響要因の区分に従い、供用後の影響、工事中の影響の順に項目別に記載した。
表 3-1 本章の目次構成 (項目と節番号の対応)
影響要因の区分
環境要素の区分
工事の実施
土地又は
工作物の
存在及び供用工事用資材等の搬出入造成等の施工による一時的な影響本章の目次(節番号)地形改変及び施設の存在
施設の稼働 廃棄物の発生本章の目次(節番号)地熱流体の採取及び熱水の還元排ガス排水
環境の自然的構成
要素の良好な状態
の保持を旨として
調査、予測及び評価
されるべき環境要素大気
環境
大気質
硫化水素 → 3.1
窒素酸化物 →3.13
粉じん等 →
騒音 騒音 → → →3.2振動 振動 → → →
水環境
水質
水の汚れ → 3.3
水の濁り →3.14
その他 温泉 → 3.4
その他
の環境
地 形 及 び 地質重要な地形及び地質 → 3.5
地盤 地盤変動 → 3.6
生物の多様性の確
保及び自然環境の
体系的保全を旨と
して調査、予測及び
評価されるべき環
境要素
動物
重要な種及び注目すべき生息地→ → →
3.7、3.8植物 重要な種及び群落 → → → 3.9
生態系 地域を特徴づける生態系 → → → 3.10
人と自然との豊か
な触れ合いの確保
を旨として調査、予
測及び評価される
べき環境要素
景観
主要な眺望点及び景観資源並
びに主要な眺望景観
→ 3.11
人と自然との触れ合い
の活動の場
主要な人と自然との触れ合い
の活動の場
→ → → 3.12
環境への負荷の量
の程度により予測
及び評価されるべ
き環境要素
廃棄物等
産業廃棄物 →3.15←残土(建設発生土) →
温室効果ガス
温室効果ガス
二酸化炭素
一般環境中の放射
性物質について、調
査、予測及び評価さ
れるべき環境要素
放射線の量 粉じん等の発生に伴うもの →
水の濁りの発生に伴うもの →
産業廃棄物の発生に伴うもの →
凡例 :参考項目(省令 別表第四) →:右に示す節に記載 ←:左に示す節に記載
第3章 各論 〜迅速化の考え方と留意事項〜303.1 大気環境 (硫化水素)
3.1.1 項目選定の考え方
地熱発電に利用する地熱流体には「硫化水素」が含まれており、噴出試験時には全量が大気へ排出さ
れる。排出される硫化水素は、それぞれの蒸気井ごとに濃度が異なっており、噴出量によっても異なるため
一定ではなく、蒸気井各個に状況把握と環境保全対策が必要である。
地熱発電事業の環境影響評価手続では、冷却塔から放出される硫化水素の冷却塔からの排気上昇過
程、周辺建屋による拡散への影響、周囲の地形による拡散への影響を的確に再現し、着地濃度の予測値
を得る必要があるが、従来用いられてきた「風洞実験による方法」では実験設備確保や模型製作期間の関
連から長期間を要する。予測値によっては、設備内容を変更するなど事業計画に反映させる必要がある。
3.1.2 前倒環境調査の着手時期
上記の特性を踏まえ、「大気環境(硫化水素)」に関する現況調査等は、坑井調査を経て事業化の判断
がなされ、事業実施想定区域が定まった段階から着手することが望ましい。できるだけ早期に予測結果を
得て設備内容の検討にフィードバックすることが重要である。
図 3-1 大気環境(硫化水素)に係る現況調査等の着手時期
3.1.3 留意事項
硫化水素の大気拡散予測評価の期間短縮および費用削減を目的として、従来行われている風洞実験
の代替として用いることのできる 3 次元数値解析モデルが開発されている。当該数値解析モデルの予測精
度の検証のための風洞実験も行われ、当該数値解析モデルは、地熱発電所の環境影響評価手続におけ
る硫化水素拡散予測に十分適用可能であると結論づけられている。この技術開発により、予測期間はおお
むね半減するとされているが(次頁コラム参照)、いずれにしろ得られた予測結果を事業計画に反映させる
必要があるため、現況調査等自体は前倒しで実施することが望ましい。
事業性調査:資源調査段階 建設段階 操業段階
建設工事 運用
環境影響評価
坑井調査
概況調査・空中調査・地表調査 評価調査結果を事業計画に反映
前倒環境調査
大気環境(硫化水素)
環境影響評価段階
環境影響評価
環境保全措置
等の実施
事後調査
環境監視 等配慮書手続方法書手続準備書手続評価書手続
現況調査
予測評価報告書公表事業計画、設計、
工事計画の検討
事業化の判断
【現況調査】 気象観測(少なくとも1年間連続)、
硫化水素濃度調査(×ばつ4回)
【予測計算】 風洞実験等による着地濃度予測
もしくは、 シミュレーションによる着地濃度予測
活用
施設の詳細設計等を
予測の前提条件とする
第3章 各論 〜迅速化の考え方と留意事項〜31【新技術】 風洞実験に代わる硫化水素拡散予測数値モデル22
しろまる地熱発電所の環境影響評価では、発電所の稼働に伴って冷却塔から大気中に放出される硫化水
素について、発電所計画地点周辺における着地濃度を事前に予測・評価する必要がある。これ
までの環境影響評価では、硫化水素の大気拡散予測を行うのに風洞実験が広く用いられてきた
が、実験設備の確保や模型製作に長期間かつ膨大な経費を要していた。
しろまる東日本大震災以降、再生可能エネルギーの導入拡大に注目が集まる中、NEDOと一般財団法
人 電力中央研究所 は共同研究により、硫化水素拡散予測数値モデルを開発し、また、同モデ
ルにより風洞実験とほぼ同精度の予測が可能なことを検証、確認している。
しろまる開発した予測モデルは『簡易予測モデル』『詳細予測モデル』の 2 種類である。簡易予測モデ
ルは、正規分布型プルーム式に基づき、大気拡散式や地理情報システム(GIS)とも結合し
て排気拡散に及ぼす建屋の影響や上昇過程も織り込みながら、
硫化水素の着地濃度を予測する。
詳細予測モデルは、「数値流体力学(Computational Fluid Dynamics、CFD)」を用いて三
次元の流体計算を行もので、ベースには「乱流解析(Large Eddy Simulation、LES)」を組
み込んでいる。我が国の地熱発電所は、地形の複雑な山間部に建設される場合が多く、また冷
却塔の高さが低くて周囲には同程度の高さの発電所建屋が配置されるケースが一般的であるこ
とから、これらの形状を計算格子状に詳細に再現するモジュールを搭載している。
【詳細予測モデルによる予測の手順】
しろまるモデルの精度検証として風洞実験による再現数値とモデルを用いた予測値とを比較検証した。
簡易予測モデルでは、風洞実験で得られた最大着地濃度をおおむね良好に再現できた。詳細予
測モデルでは、着地濃度だけでなく、上空における空間濃度も高精度に予測できることが明ら
かとなった。
しろまるさらに、モデル精度の検証に関するクロスチェックや、具体的な環境影響の予測・評価への適
用に向けた課題の抽出、今後の対応方針の検討が進められている。
しろまる数値モデルを用いることにより、硫化水素の着地濃度に係る予測・評価の期間、費用を、いず
れも 1/2 以下に短縮・低減することが可能となったとされている。22「地熱発電所の環境アセスメントの効率化に向けて―風洞実験に代わる硫化水素拡散予測数値モデルを開発―
(一般財団法人 電力中央研究所、2016 年 12 月、電中研NEWS No.482)
発電所建設位置・排出緒元等の基礎データの収集・整理
数値地図情報・3次元建屋形状データ等の整備・収集・整理
【プリルーチン】 3次元計算格子の作成
【メインルーチン】 気流および拡散計算の実施
結果の処理・可視化
第3章 各論 〜迅速化の考え方と留意事項〜323.2 大気環境 (騒音・振動) [参考項目外]
3.2.1 項目選定の考え方
地熱発電事業においては、騒音・振動は「参考項目」に挙げられていないが、選定されることが多い項目
である。騒音・振動の環境影響として、供用後の影響が想定される。予測に用いる現況データとしては、実
証事業では冬季を除いた 3 季のデータが用いられていたが、これは積雪の影響で冬季調査の実施が困難
だったためである。通常は四季調査、季節変動が少ない場所でも 2 季の調査は実施する必要があると考え
られる。また、現況データの取得においては、事業計画や工事計画に対応して設定された地点、内容での
調査が求められる。調査・予測等の技術は確立されている分野である。
3.2.2 前倒環境調査の着手時期
上記の特性を踏まえ、「大気環境(騒音・振動)」に関する現況調査等は、調査地点の妥当性に疑義を示
されての追加調査といった手戻りのリスクを回避するため、方法書への大臣勧告が出され、調査方法等が
固まってから着手することが望ましいと考えられる。
図 3-2 大気環境(騒音・振動)に係る現況調査等の着手時期
3.2.3 留意事項
現況調査等については、予測の精度を高めるため、事業計画に対応した的確な地点等を設定する必要
がある。供用後の騒音・振動については、現況調査等に必要な期間は、特異な状況を除いては長大なも
のにはならないケースが多いため、方法書手続が完了してから着手しても環境影響評価手続の工程を遅
滞させることはないと考えられる。
事業性調査:資源調査段階 建設段階 操業段階
建設工事 運用
環境影響評価
坑井調査
概況調査・空中調査・地表調査 評価
現況調査
供用後の騒音・振動*
環境影響評価段階
環境影響評価
環境保全措置
等の実施
事後調査
環境監視 等配慮書手続方法書手続準備書手続評価書手続
現況調査
予測評価報告書公表*参考項目には挙げられてい
ないが、調査・予測項目に
取り上げられることが多い。
【現況調査】 1回 〜 四季調査
(注記)手戻りリスク、調査・予測評価の確立の状況、所用期間等を勘案すると、
方法書手続完了後に調査、予測・評価に着手することが効率的。
方法書手続
完了
第3章 各論 〜迅速化の考え方と留意事項〜333.3 水環境 (水の汚れ)
3.3.1 項目選定の考え方
地熱発電事業における水環境への環境影響としては、施設の稼働時における排水に伴う「水の汚れ」が
想定される。ただし、排水は還元井に戻すことで河川等には流さないケースも多いことから、事業によって
は影響項目に選定しない場合もある。水の汚れに係る予測に用いる現況データとして、通常、四季調査の
データを取得する。現況データの取得においては事業計画や工事計画に対応して設定された地点、内容
での調査の実施が求められる。
3.3.2 前倒環境調査の着手時期
上記の特性を踏まえ、「水環境(水の汚れ)」に関する現況調査等は、手戻りリスクを最小化するため、対
象事業実施区域が確定するなど事業計画の熟度が高まった段階から着手することが望ましい。
3.3.3 留意事項
基本的には、排水は還元井に戻す等、河川に流さない事業計画として影響の回避するに努める必要が
ある。やむを得ず排水を流す場合には、確実に事業影響を予測・評価すること、また、その対応とすること
をステークホルダーと合意することが重要である。
図 3-3 水環境(供用後の水の汚れ)に係る現況調査等の着手時期
3.4 その他の環境 (温泉)
3.4.1 項目選定の考え方
地熱発電事業においては、温泉への影響に係る注目度が高い。「発電所アセス手引」では、環境影響
評価のための現況調査等として、温泉の温度および湧出量について1年間、温泉の主成分について1回
の調査を行うこととしている。実証事業の事例 A では、融雪状況を考慮した5季の調査を実施していた(夏
事業性調査:資源調査段階 建設段階 操業段階
建設工事 運用
環境影響評価
坑井調査
概況調査・空中調査・地表調査 評価
前倒環境調査
水環境(供用後の水の汚れ)
環境影響評価段階
環境影響評価
環境保全措置
等の実施
事後調査
環境監視 等配慮書手続方法書手続準備書手続評価書手続
現況調査
予測評価報告書公表【現況調査】 原則、四季調査(通年)
(注記)手戻りリスクを勘案すると、事業計画の熟度が高まり
調査条件が明確になってからの調査着手が効率的。
活用
事業計画
の概成**事業地の立地特性や事業計画におい
て影響の回避が明確な場合には、方
法書段階(スコーピング)において調
査や予測・評価の項目に選定しないこ
とも可能である。
第3章 各論 〜迅速化の考え方と留意事項〜34季融雪期2回、夏季無雪期1回、秋・冬の降雪初期1回、春季残雪期1回。計5回)。
対象事業実施区域周辺に既存の温泉事業者が存在する場合には特に丁寧・慎重な対応が望まれ、温
泉の環境・状況監視と併せた適切な調査、予測・評価が必要である。
3.4.2 前倒環境調査の着手時期
上記の特性を踏まえ、「その他の環境(温泉)」に関する現況調査等は、坑井調査を経て事業化の判断
がなされたら速やかにデータ取得を進めることが望ましい。ただし、事業構想段階から温泉モニタリングを
行う場合が多く、調査項目として共通・類似する内容もあることから、取得する調査データを有効に活用す
ることを勘案しながら調査内容を編成すると良い。なお、調査・予測評価結果を事業計画に的確にフィード
バックすることが重要である。
3.4.3 留意事項
地熱発電事業では、温泉への影響を懸念する地元事業者等への配慮のため、早い段階から地元への
説明や合意形成のためのコミュニケーション、必要な現況モニタリングを適用することが一般的である。場
合によっては、事業検討の早期段階から温泉のモニタリングに着手するため、そこで得られるデータを環
境影響評価にも活用し、事業全体としての効率化・合理化を図ると良い。
図 3-4 その他の環境(温泉)に係る現況調査等の着手時期
3.5 その他の環境 (地形及び地質)
3.5.1 項目選定の考え方
地形および地質については、学術上等の重要な地形および地質が保全対象である。その適切な配慮の
ためには、文献調査を基本に事業実施想定区域内に保全対象が存在するかどうかを確認し、必要に応じ
て聞き取り調査や現地調査で情報を補完して、保全対象の状況を明確にする必要がある。
事業性調査:資源調査段階 建設段階 操業段階
建設工事 運用
環境影響評価
坑井調査
概況調査・空中調査・地表調査 評価調査結果を事業計画に反映
前倒環境調査
その他の環境(温泉)
環境影響評価段階
環境影響評価
環境保全措置
等の実施
事後調査
環境監視 等配慮書手続方法書手続準備書手続評価書手続
現況調査
予測評価報告書公表事業計画、設計、
工事計画の検討
【現況調査】 温泉の温度・湧出量等(原則1年間)、温泉主成分(1回)
【予測評価】 地熱流体採取、熱水還元に伴う既存温泉等への環境影響を予測・評価
活用
データの有効活用検討
温泉モニタリング
事業化の判断
第3章 各論 〜迅速化の考え方と留意事項〜35重要な地形及び地質のような改変すると不可逆的な(元に戻らない)影響を受ける保全対象は、影響を
回避する手法で保全することが基本であるため、事業計画の検討を進める前段階で存在を把握し、対応を
検討する必要がある。
3.5.2 前倒環境調査の着手時期
「その他の環境(地形及び地質)」については、予備調査によって事業地一帯に重要な保全対象がない
か確認しておくこと、坑井調査を経て事業化の判断がなされ事業実施想定区域が定められた段階以降に
現地調査に着手すること(手戻り防止のため)、調査結果を事業計画に的確に反映させること、以上に留意
した現況調査等の着手が望ましい。
なお、予備調査段階で保全対象が存在しないことを確認できた場合には、項目として選定しないことも
選択肢の一つである。
3.5.3 留意事項
「重要な地形・地質」を保全するため、調査井掘削位置選定時に予備調査を行って、重要な保全対象が
付近に分布していないことを確認しておくことが重要ある。保全対象が近接地にあった場合には、坑井調
査の実施の如何、当該地付近での事業化の判断から検討する必要がある。近接している状況でも事業化
を進めた場合には、事業計画検討に当該保全対象の情報を織り込み、影響の回避、低減を図る必要があ
る。
図 3-5 その他の環境(地形及び地質)に係る現況調査等の着手時期
3.6 その他の環境 (地盤変動)
3.6.1 項目選定の考え方
地盤変動の調査は、水準測量による各水準点の標高値と 1 年間の標高差、即ち地盤の隆起あるいは沈
下の現況を把握するものであり、調査地点は「地盤変動のおそれのある範囲に複数(通常は 10 点程度)の
事業性調査:資源調査段階 建設段階 操業段階
建設工事 運用
環境影響評価
坑井調査
試錘掘削、
坑井調査、
噴出試験等
概況調査・空中調査・地表調査 評価
前倒環境調査
その他の環境(地形・地質)
環境影響評価段階
環境影響評価
環境保全措置
等の実施
事後調査
環境監視 等配慮書手続方法書手続準備書手続評価書手続
現況調査
予測評価報告書公表事業計画、設計、
工事計画の検討
事業化の判断**事業計画において影響の回避が明確な
場合には、調査や予測・評価の項目に
選定しないことも可能である。
【予備調査】 坑井調査の着手に当たり、付近に保全対象となる「重要な地
形・地質」がないか確認する(文献等調査、必要に応じた現地調査)。
【前倒環境調査】 事業化の判断がなされたら、保全対象が近接する場合に
はその範囲を明確にし、事業計画に反映させる(影響回避)。
活用
調査井
掘削位置
の設定
予備調査結果
を事業化判断
時に考慮
予備調査結
果を事業計
画に反映
予備調査
第3章 各論 〜迅速化の考え方と留意事項〜36水準点を設置する。水準点設置にあたっては「表層の不安定な区域を除外するものとする」とされている。
また、調査地点の設定に当たっては、地熱流体の生産・還元に係る深部からの地盤変動を把握することが
目的であることから、表層の地盤変動(表層破壊、地滑り、雪崩、道路沿いのクリープ現象等)の影響がある
地点への水準点の設置は避ける必要がある。また、調査にかかる期間は、1年間の間隔を確保するため比
較的長期に及ぶ。事業に伴う影響が予測される場合には、事業計画を変更して影響の回避・低減を図る必
要がある。
3.6.2 前倒環境調査の着手時期
上記の特性を踏まえ、「その他の環境(地盤変動)」に関する現況調査等は、坑井調査を経て事業化の
判断がなされ、事業実施想定区域が定まった段階から着手することが望ましい。この調査で得られるデー
タは、事業計画に反映させると供に、環境影響評価手続のためのデータとしても活用する。
3.6.3 留意事項
現況調査等は、初期値データと1年後の計測値の比較により行うので、基本的には1年以上の調査期間
が必要となる。計測値点数も多数となるので、事業化の判断がなされたら速やかに、ただし手戻り防止のた
めに状況に応じて調査地点を「広め」「多め」に設定して、調査に着手すると良い。
図 3-6 その他の環境(地盤変動)に係る現況調査等の着手時期
3.7 動物:全般
3.7.1 項目選定の考え方
動物については、基本的には動物相の調査を1年間実施して生息種を網羅的に把握し、そのうち「重要
前倒環境調査
その他の環境(地盤変動)
【現況調査】 調査地域内の水準点および周辺地域に設定した基準点の
標高値の変動状況(原則、初期値と1年後の計測値を比較)を把握。
【予測評価】 地熱流体採取、熱水還元に伴う地盤変動に関する環境影
響(特に地盤沈下)を予測・評価。
事業性調査:資源調査段階 建設段階 操業段階
建設工事 運用
環境影響評価
坑井調査
概況調査・空中調査・地表調査 評価調査結果を事業計画に反映
環境影響評価段階
環境影響評価
環境保全措置
等の実施
事後調査
環境監視 等配慮書手続方法書手続準備書手続評価書手続
現況調査
予測評価報告書公表事業計画、設計、
工事計画の検討*活用
事業化の判断
第3章 各論 〜迅速化の考え方と留意事項〜37な種」および「注目すべき生息地」について保全のための配慮・対策を検討する。
「重要な種」のなかには地域の生物相を象徴・代表し、地域に愛着をもって注目されている対象もあり、
影響の回避・低減を慎重・確実に進めなければならない場合がある。このような対象については、保全のた
めに事業計画の変更を求められる場合もあるため、事業計画地一帯にそのような対象が分布していないか、
事前に把握し、事業計画策定時には的確に織り込んでおく必要がある。
3.7.2 前倒環境調査の着手時期
「動物」に関する現況調査等については、坑井調査に向けた調査井の掘削位置選定段階で予備調査に
着手し、調査井候補地一帯に重要な保全対象が分布していないか確認し、その結果を事業化の判断や事
業計画に反映させ、重大な環境影響を回避する配慮を払う必要がある。
予備調査としては、文献調査や聴き取り調査で重要対象を抽出できる場合がほとんどであるが、状況に
応じて現地調査の実施を求められる場合がある。予備調査の方法・内容・時期・頻度等については当該地
域に詳しい専門家に助言を仰ぐ必要がある。
特に配慮が求められる保全対象が分布していない場合には、手戻りリスクを最小化するため、対象事業
実施区域や工事用道路が確定するなど事業計画の熟度が高まってから、事業計画を踏まえた調査内容を
設定し、現況調査等に着手すれば良い。事業計画は、方法書の届け出段階では固まっているはずなので、
この段階から、事業計画を踏まえて調査内容等を設定し、現況調査等に着手する。
3.7.3 留意事項
「動物」の保全に当たっては、生息個体の保全よりも地域個体群の存続を図ることを重視し、繁殖・継代
のための環境を維持、保全する考え方が重要である。したがって、繁殖適地環境の分布や規模を把握し、
当該環境への事業影響について予測・評価することになる。生態等が未解明な重要種等では繁殖環境の
特定が困難な場合もあるため、専門家等と的確に連携することが重要である。
図 3-7 動物(全般)に係る現況調査等の着手時期
前倒環境調査 動物(全般)
【予備調査】 坑井調査の着手に
当たり、周辺域に重要な保全
対象となる「動物の重要な種」
が分布していないか確認し、
「事業化の判断」や「事業計
画」に反映させる。
予備調査結果
を事業化判断
時に考慮
【前倒環境調査】 事業計画の熟度が高まった段階で、
環境影響の予測・評価に用いる情報を取得する現
況調査(原則四季調査)に着手する。
事業性調査:資源調査段階 建設段階 操業段階
建設工事 運用
環境影響評価
坑井調査
概況調査・空中調査・地表調査 評価
予備調査結果
を事業計画に
反映
環境影響評価段階
環境影響評価
環境保全措置
等の実施
事後調査
環境監視 等配慮書手続方法書手続準備書手続評価書手続
現況調査
予測評価報告書公表事業計画、設計、
工事計画の検討
事業化の判断
予備調査
活用
事業計画
の概成
試錘掘削、
坑井調査、
噴出試験等
調査井
掘削位置
の設定
第3章 各論 〜迅速化の考え方と留意事項〜383.8 動物 (鳥類 : 希少猛禽類)
3.8.1 項目選定の考え方
希少猛禽類は、その貴重性・象徴性、注目度の高さから、環境影響評価手続においては、他の動物種と
は異なり、1つがい単位で影響予測・評価する、2つがい毎に行動圏を把握し、『営巣中心域』の改変の
程度を予測・評価する。 3対象つがいの営巣中心域の把握のために、「少なくとも繁殖に成功した1営巣
期を含む2営巣期の調査」 を行うことが求められる。2営巣期とは、営巣期の長いクマタカでは少なくとも 20
ヶ月である。
図 3-8 猛禽類の「2営巣期」の調査 (クマタカの例)23
図 3-9 クマタカの行動圏内部構造の例 23
3.8.2 前倒環境調査の着手時期
上記の特性を踏まえ、「動物(鳥類:希少猛禽類)」に関する現況調査等としては、坑井調査の着手段階
で予備調査を行い、調査井一帯における重要な保全対象の有無を把握し、その結果を事業化の判断や
事業計画に反映させて重大な環境影響が生じないよう配慮することが重要である。
重要な保全対象となる猛禽類が分布していた場合には、長期間の調査が必要となるため、事業化の判
断がなされたら速やかに現況調査等に着手することが望ましい。猛禽類調査は、対象の行動圏の広さに対
応して広範な調査区域を設定するため、事業計画の熟度が高まっていない段階から着手しても、大きな手23「猛禽類保護の進め方(改訂版)特にイヌワシ、クマタカ、オオタカについて(2012 年 12 月 環境省自然環境
局野生生物課)
」に一部加筆。
2営巣期:クマタカの場合、少なくとも 20 ヶ月
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月抱卵期巣内育雛期 求愛
巣外育雛期
造巣期抱卵期巣内育雛期 求愛
巣外育雛期
造巣期
1営巣期目 2営巣期目
求愛期 求愛期
2営巣期にわたる調査データを蓄積して解析し、「営巣中
心域(左図のオレンジ色で囲んだ範囲)」を把握する。
事業に伴う「営巣中心域」の改変の有無や程度から、当
該つがいに対する事業影響を予測・評価する。
第3章 各論 〜迅速化の考え方と留意事項〜39戻りは生じない場合が多い。一帯に希少猛禽類が生息している場合には、事業実施想定場所が概ね定ま
った段階で、多少広めの調査対象範囲を設定し、猛禽類調査に着手しておくことが望ましい。そのことが事
業全体を俯瞰した時に、環境影響評価手続の迅速化に資することとなる。
なお、調査結果については、希少猛禽類の「営巣中心域」の改変を回避するよう、結果が得られ次第、
事業計画にフィードバックしていく必要がある。
図 3-10 動物(鳥類:希少猛禽類)に係る現況調査等の着手時期
3.8.3 留意事項
(1) 調査精度の確保
希少猛禽類は、他事業も含めた一般事例をみると、方法書や準備書段階の住民・知事意見及び大臣勧
告で、現地調査による情報量や予測検討の妥当性、事業計画側での回避等の妥当性等について指摘が
あった場合、長期間の調査や事業計画検討の手戻りが生じ得る項目である。
このため、想定される指摘に対し、科学的客観性のある根拠に基づく回答を準備しておくことが重要であ
る。追加調査が必要になると、指摘内容によっては2営巣期調査が必要になる。このため、現地調査の充
実度(定点からの視野範囲、観察期間・頻度、取得された情報量等)、予測の妥当性、環境保全措置の効
果、事後調査の必要性等や、事業計画にどのような環境配慮を反映したか等の根拠資料を整備しておくこ
とが望ましい。
また、手戻り・長期化のリスクを防止するためには、当初から、調査手法、予測・評価手法等の妥当性に
ついて、地域の専門家等からの助言を得るとともに、調査の実施中も専門家等との連携体制を維持し、必
要に応じて随時、調査結果及びその解釈等に関する確認・助言を得ておくことが重要である。
(2) 調査期間短縮の可能性
他事業も含めた一般事例では、希少猛禽類調査の調査期間を短縮できている事例がある。ただし、調
予備調査結
果を事業化
判断時に考慮
事業性調査:資源調査段階 建設段階 操業段階
建設工事 運用
環境影響評価
坑井調査
概況調査・空中調査・地表調査 評価予備調査結果を事業計画に反映
環境影響評価段階
環境影響評価
環境保全措置
等の実施
事後調査
環境監視 等配慮書手続方法書手続準備書手続評価書手続
現況調査
予測評価報告書公表事業計画、設計、
工事計画の検討
前倒環境調査
動物(鳥類:希少猛禽類)
【予備調査】 坑井調査の着手
に当たり、周辺域に保全対
象となる希少猛禽類の"繁
殖つがい"が分布していな
いか確認し「事業化の判断」
や「事業計画」に反映させる。
【前倒環境調査】 事業化の判断後は速やかに猛禽類調査に
着手し、保全すべき範囲(営巣中心域)を明確にする。調査
は 「少なくとも繁殖に成功した1シーズンを含む2営巣期
以上」 という長期間に及ぶ可能性がある。調査結果は、随
時、事業計画に反映させ、環境影響の最小化を図る。
活用
事業化の判断
予備調査
試錘掘削、
坑井調査、
噴出試験等
調査井
掘削位置
の設定
第3章 各論 〜迅速化の考え方と留意事項〜40査期間の短縮や調査の合理化を行うためには、以下の条件に合致する必要がある。
表 3-2 猛禽類調査の合理化の条件
ケース 合理化の条件 条件合致の判断A繁殖環境として適さず、
「繁殖つ
がい」がいないことも確認
十分な現地調査を行った上で、繁殖環境として適さず、繁殖つ
がいがいないことも確認できている場合
B 行動圏解析に既存情報等を活用
環境省の情報整備モデル事業や既存調査等で、事業地付近にお
ける該当種の飛跡データがあり、予測に活用可能な場合C行動圏解析に必要なデータを
「1営巣期目」の調査で取得
1営巣期目が繁殖成功年であって、巣外育雛期における巣立ち
幼鳥の行動圏調査も行うなど手厚い調査を行い、営巣中心域の
解析に必要な情報が十分に得られた場合
注) いずれの場合も、地域の猛禽類の専門家等の助言により、妥当性を判断することが必須。
1) 地域の専門家等の意見の活用により短縮...繁殖つがいが分布しない場合
調査結果から、「猛禽類の繁殖つがいが生息する可能性が極めて低い」といえる場合には、調査期間を
短縮できる可能性がある。
ただし、観察時間が限定されていることから確認できていない場合もあること、猛禽類は必ずしも毎年繁
殖活動を行うわけではなく、繁殖していない年には目立つ行動を行わない場合が多いこと、隠密行動も多
く存在そのものを捉えることができない場合があること等を勘案した慎重な判断が必要であり、地域の専門
家等に意見聴取を行い、判断の妥当性に確信をもっておく必要がある。
2) 地域の専門家等の意見の活用により短縮...1 営巣期で必要な情報を取得した場合
猛禽類調査は、対象事業実施区域付近に近接して生息する"繁殖つがい"の行動圏を把握し、事業影
響を予測評価することが目的であるので、1営巣期目の調査を充実させて、行動圏解析及び予測に必要な
情報が取得できた場合には、調査を合理化することができる。
ただし、調査1年目において対象とする猛禽類つがいが繁殖活動を行っている場合であって、かつ、手
厚くした調査により行動圏解析及び予測等に十分なデータが取得できたと評価できることが必要である。
そのためには、地域の専門家等からの助言を受け、短期間であっても充実した調査を計画・具体化する
ことが必要である。
3) 環境省の環境アセスメントデータベース"EADAS"の活用
環境省の環境アセスメントデータベースに現地情報が掲載されている場合には、その情報を活用して当
該猛禽類の繁殖つがいの行動圏解析を行うことで、本来必要とされる「2 営巣期(1.5 年以上)」の調査期間
を短縮できる可能性がある。したがって、地域の環境情報の収集にあたっては、既往調査の実施の有無等
についても留意することが有効である。
3.9 植物:植生、植物相
3.9.1 項目選定の考え方
植生については、植物が旺盛に繁茂している時期に調査し、植生区分ならびに群落組成を把握する。
植物相については、基本的には通年の植物相調査を実施して生育種を網羅的に把握する。その際、地
域特性や地点の状況、植生等に応じて、調査時期を適切に設定することが必要である。
把握した植生・植物相のうち「重要な種・重要な群落」について、保全のための配慮・対策を検討する必
要がある。これらのなかには、地域の生物相を象徴・代表し、地域に愛着をもって注目されている保全対象
もあることから、影響の回避・低減を慎重・確実に進めることが重要である。このような対象の保全のために
事業計画の大幅な変更を求められる場合もあるため、事業計画地一帯に重要な保全対象が分布していな
第3章 各論 〜迅速化の考え方と留意事項〜41いか事前に把握し、事業化判断や事業計画に的確に織り込んでおく必要がある。
3.9.2 前倒環境調査の着手時期
「植物」「植生」に関する現況調査等については、坑井調査の着手段階で予備調査を行い、調査井掘削
位置周辺に重要な保全対象(「自然度の高い植生」「希少性の高い植物種」等)が存在していないか確認し、
その結果を事業化の判断や事業計画に反映させることが重要である。
予備調査としては、文献調査や聴き取り調査で重要対象を抽出できる場合がほとんどであるが、状況に
応じて現地調査の実施を求められる場合がある。予備調査の方法・内容・時期・頻度等については当該地
域に詳しい専門家に助言を仰ぐ必要がある。
予備調査の結果、特に配慮が求められる保全対象が分布していなければ、手戻りリスクを最小化するた
め、対象事業実施区域や工事用道路が確定するなど事業計画の熟度が高まってから、事業計画を踏まえ
た調査内容を設定し、現況調査等に着手すれば良い。
3.9.3 留意事項
保全対象となる「自然度の高い植生」は元より、「移植等の保全措置手法が確立されていない重要種」に
ついては、事業影響を回避するには事業計画のなかで対応するしかない。そのため、早い段階から対象
の有無や分布を把握し、事業化判断や計画検討時に情報を織り込んでおく必要がある。
図 3-11 植生・植物相に係る現況調査等の着手時期
事業性調査:資源調査段階 建設段階 操業段階
建設工事 運用
環境影響評価
坑井調査
概況調査・空中調査・地表調査 評価
環境影響評価段階
環境影響評価
環境保全措置
等の実施
事後調査
環境監視 等配慮書手続方法書手続準備書手続評価書手続
現況調査
予測評価報告書公表事業計画、設計、
工事計画の検討
活用
前倒環境調査 植物・植生
【予備調査】 坑井調査の着手
に当たり、周辺域に重要な保
全対象となる「植物の重要な
種」「重要な植生群落」等が
分布していないか確認し「事
業化の判断」や「事業計画」
に反映させる。
【前倒環境調査】 事業計画の熟度が高まった段階で、環
境影響の予測・評価に用いる情報を取得する現況調査
(原則通年。厳冬期を除外する場合あり。)に着手する。
事業化の判断
予備調査結果
を事業化判断
時に考慮
予備調査結
果を事業計
画に反映
予備調査
事業計画
の概成
試錘掘削、
坑井調査、
噴出試験等
調査井
掘削位置
の設定
【自然度の高い植生への影響を回避するため事業計画を変更する手戻り】
しろまる実証事業事例Aでは、配慮書手続段階で提示した施設配置計画が「自然度の高い植生(オオシラビソ群
落)」に抵触していたところ、知事・大臣意見により改変を回避するよう求められた。その結果、事業計画を
見直す手戻りが生じている。重要な保全対象は早期に把握し、事業計画に反映させる必要がある。
第3章 各論 〜迅速化の考え方と留意事項〜423.10 生態系
3.10.1 項目選定の考え方
生態系に係る調査としては、手引には「上位性」「典型性」「特殊性」の観点から選定した注目種等の生
息・生育状況に応じて適切な時期・時間帯・内容の現地調査を行うよう求められている。また、選定した注
目種等そのものに加え、その餌資源についても把握し影響を予測・評価するよう指摘される場合も多い。現
況調査等については、他の動物(全般)や植物(植生・植物相)と同様、通年の調査が求められる。
保全対象の分布状況によっては、事業計画の大幅な変更を求められる場合もあるため、事業計画地一
帯における保全対象の分布の有無については事前に把握し、事業計画に的確に織り込んでおくことが重
要である。
3.10.2 前倒環境調査の着手時期
上記の特性を踏まえ、「生態系」に関する現況調査等は、坑井調査を経て事業化の判断がなされ、事業
実施想定区域が定まった段階から着手することが望ましい。また、調査結果については、事業計画に的確
にフィードバックする必要がある。
3.10.3 留意事項
生態系の調査、予測・評価については、技術的に発展途上であり、現状ではより良い手法を追求した試
行錯誤が行われている。したがって、専門家等との的確な連携により対応することが必要である。
図 3-12 生態系に係る現況調査等の着手時期
前倒環境調査
生態系
事業性調査:資源調査段階 建設段階 操業段階
建設工事 運用
環境影響評価
坑井調査
概況調査・空中調査・地表調査 評価調査結果を事業計画に反映
環境影響評価段階
環境影響評価
環境保全措置
等の実施
事後調査
環境監視 等配慮書手続方法書手続準備書手続評価書手続
現況調査
予測評価報告書公表事業計画、設計、
工事計画の検討
活用
事業化の判断
【前倒し環境調査】 生態系(上位性・典型性・特殊性)に係る予測・評価に用いるデータを取得する
ため適切かつ効果的な時期に現況調査を実施(原則四季調査)。調査結果を事業計画に反映さ
せる必要がある場合もあるため、事業化の判断がなされたら速やかに着手することが望ましい。
第3章 各論 〜迅速化の考え方と留意事項〜433.11 景観
3.11.1 項目選定の考え方
環境影響評価における景観は、「景観資源」、「眺望点」及び「主要な眺望景観」を対象に、事業に伴う影
響を予測・評価するものである。また、眺望点からの眺望景観のほかに、地域住民が日常的に接しており、
地域に愛着を持たれている身近な景観についても予測・評価の対象であり、適切な対応が必要である。
景観は、他の環境要素とは異なり、以下のような特徴があることに留意して、調査及び予測・評価等を進
める必要がある。また、景観面の課題がある場合には、早期段階から地域コミュニケーションのテーマとし
て景観を取り上げることが重要である。
【環境要素としての「景観」の特質】
1景観の評価は、それぞれの地域に固有の特徴があるため、一律に捉えることが難しい。
2景観は、人と自然との関わり合いの上に長い時間をかけて積み上げられてきたものであり、今「見える」
眺めだけでなく、その背景にある文化的価値認識も含めて考える必要がある。
3住民等にとっても見た目で直感的に分かりやすいため、事業の影響の判断等について、認識の共有
や相互理解を深めることが重要である。
4環境影響評価の対象事業は、その規模が大きいため、景観に及ぼす影響は大きく、かつ一度壊すと
容易には戻らない。
5景観では、事業そのものが新たな視点や景観資源を生み出す場合もあるので、保全だけでなく創出
という側面からも捉えるよう留意する。
なお、景観の環境影響評価を適切に実施するためのポイントとして、環境省資料では以下3点が挙げら
れている。
表 3-3 景観の環境影響評価のポイント24
項目 ポイント
景観の特性を的確に
捉える
・景観は、その地域の景観で何が大事とされているのかを適切に捉えた調査・予測・評価
を行うことが重要である。
そのためには、
地域の景観を特徴づける構成要素に加え、要素間の関係性や自然・歴史・文化等の背景などにも踏み込んで、その地域の景観を、住
民等にとっての身近な景観も含め、幅広く的確に捉える必要がある。
認識の共有と相互
理解を重視する
・地域の景観の特性や景観形成の方向性について、
事業者や住民等を含めた関係者が、環境影響評価手続きにおける意見聴取等の機会を活用し、
情報・意見のやり取りを効果的
に行うことを通じて、認識を共有し、相互理解を深めていくことが必要である。
実効的な景観への
配慮を進める
・事業や地域の特性に応じた景観への配慮を効果的に行っていくために、事業の各段階
における検討の経緯や内容、
景観計画等との整合性等を踏まえながら、
環境保全措置を
検討し、その成果として事業全体の景観への配慮を確保する。
3.11.1 前倒環境調査の着手時期
「景観」に関する現況調査等については、坑井調査の着手段階で予備調査、事前予測等を行い、事業
地一帯における重要な眺望景観や視点場等の有無、事業化した場合に重大な影響が生じないかどうかを
把握し、その結果を事業化の判断や事業計画に反映させることが重要である。
また、事業化の判断がなされたら現況調査等に着手し、その成果を事業計画に的確にフィードバックす
ること、ならびに、データを活かした環境影響の予測・評価や保全措置の検討等を行う必要がある。24「環境影響評価技術ガイド 景観」
(環境省総合環境政策局環境影響評価課、2008 年 3 月)
第3章 各論 〜迅速化の考え方と留意事項〜44図 3-13 景観に係る現況調査等の着手時期
3.11.2 留意事項
地熱発電事業は国立・国定公園区域内に立地する場合が多いが、公園区域内における地熱開発は、
公園の風致景観への「著しい支障」を避けて立地する必要がある。著しい支障とは「主要な展望地から展
望する場合の著しい妨げ」及び「山稜線を分断する等眺望の対象に著しい支障」と定義されている25
。主要
な展望地には、「利用者の展望の用に供するための園地、広場、休憩所、展望施設のほか、駐車場も含め
た公園事業たる道路のうち利用者の展望の用にも供せられる区間も含まれる」とされており、道路や自然歩
道上からの眺望も保全対象であることに留意が必要である。展望・眺望に係る支障の程度については、眺
望の対象や利用の条件を踏まえて判断することとされており、視覚特性に関する指標として「垂直視野角」
等に関する既存の知見を目安とすることとされている。既存知見としては、例えば送電線鉄塔については、
垂直見込角が 0.5 度以下であれば視覚的に判別しづらく気にならないが、1 度を超えると認知でき、6 度く
らいまでが圧迫感を受けない上限とされている。26
また、自然公園区域内は原則、開発行為は認められていないが、公園利用の促進や公園事業の執行
に資するもので自然環境の保全や公園利用上の支障がないと考えられる場合には、第 2 種・第 3 種特別
地域ならびに普通地域における開発が認められることとなった(2015 年 10 月、環境省自然環境局長通知27)。この規制緩和以前には、建築物の新改増築の高さが 13m を超えない(既存建築物の増改築で現に
13m を超えているものにあっては既存建築物の高さを超えない)という高さ規制があったが、「風致景観へ
の著しい支障が回避され、風致景観との調和が図られている場合に限り、13m にとらわれず運用できる」よ
うになっている。規制緩和の意図を勘案し、自然公園区域内における地熱開発は、景観に配慮した環境保
全措置(植栽等による修景、調和等)を的確に適用するよう事業計画検討を進めることが重要である。25「自然公園法の行為の許可基準の細部解釈及び運用方法」
(環境省、2000 年 8 月、最終改訂 2010 年 4 月)26「景観対策ガイドライン(案)」(1981 年 UHV送電特別委員会環境部会立地分科会)27「国立・国定公園内における地熱開発の取り扱いについて」
(2015 年 10 月、環境省自然保護局超通達)
前倒環境調査 景観
事業性調査:資源調査段階 建設段階 操業段階
建設工事 運用
環境影響評価
坑井調査
概況調査・空中調査・地表調査 評価
環境影響評価段階
環境影響評価
環境保全措置
等の実施
事後調査
環境監視 等配慮書手続方法書手続準備書手続評価書手続
現況調査
予測評価報告書公表事業計画、設計、
工事計画の検討
活用
【予備調査】 坑井調査の着手に当たり、
重要な保全対象となる「優れた眺望
景観」「著名な視点場」「視点場を有
する自然歩道」等に影響が及ばない
か調査、事前予測し、「事業化の判
断」や「事業計画」に反映させる。
【前倒環境調査】 事業計画の熟度が高まった段階
で、環境影響の予測・評価に用いる情報を取得
する現況調査(原則四季調査)に着手する。
事業化の判断
予備調査結果
を事業化判断
時に考慮
予備調査結
果を事業計
画に反映
予備調査
事前予測
事業計画
の概成
試錘掘削、
坑井調査、
噴出試験等
調査井
掘削位置
の設定
第3章 各論 〜迅速化の考え方と留意事項〜45【景観に係る環境保全、合意形成の新技術】 エコロジカル・ランドスケープデザイン手法の適用
しろまる地熱発電事業に係る「合意形成の促進」「立地制約の解消」「風致景観に配慮したデザインの導
入」に向け、近年、「エコロジカル・ランドスケープデザイン手法」が注目され、特に環境影響評価
における景観項目の環境保全措置の充実・高度化、検討の効率化を進めるため、基本的な考え
方の熟成を図る議論や様々な関連技術・ツールの開発が進められている。28 29 30 31 32
しろまるエコロジカル・ランドスケープとは、"地域の潜在能力を利用して、その地域でしか成立し得ない
環境を保全・創出する手法"であり、その概念を構築する三要素「エコシステム」「デザイン」「エン
ジニアリング」を同次元で解決するものとされている33
。この手法では、景観整備を以下の3原則
に従って進め、その結果として、より地域に調和した、違和感のない景観形成を目指す。
原則1) 地域環境の潜在能力を見極める。
原則2) 人が手を加えて いいところ と いけないところ を正しく認識する。
原則3) 人が 1/2 造り、残りの 1/2 を自然に創ってもらう。
しろまる以上の考え方に基づいて地熱発電所の修景整備を行う考え方が試行されている。29
しろまる現在は、エコロジカル・ランドスケープデザインの考え方に基づく設計の支援ツールとして、「GIS
(地理情報システム)により自然環境構成を見える化するツール」 「3D地形(立体地図上)で可
視領域を見える化するツール」 「VR(仮想現実)の空間で発電所を見える化するツール」 等の
開発が進められている段階であるが 30 31 32
、今後の実用化、各地の地熱発電事業への具体的
な適用に大きな期待が寄せられている。28「エコロジカル・ランドスケープ手法で地熱発電所を計画する」
(小川総一郎、環境省 地熱ガイドライン検討会
配布資料、2014 年 10 月)29「エコロジカル・ランドスケープ手法で地熱発電所の優良事例を作る」
(小川総一郎、環境省 国立・国定公園内
の地熱開発に係る優良事例形成の円滑化に関する検討会 話題提供資料、2015 年 4 月)30「エコロジカル・ランドスケープデザイン手法を活用した設計支援ツールの開発」
(小松裕幸(清水建設株式会社)、JOGMEC 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構、平成 26 年度 地熱部事業成果報告会資料、2015 年
7 月)31「地熱発電技術研究開発/発電所の環境保全対策技術開発/エコロジカル・ランドスケープデザイン手法を活用
した設計支援ツールの開発(平成 28 年度分中間年報)
」NEDO 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開
発機構 成果報告書(受託者:清水建設株式会社・株式会社風景デザイン研究所・学校法人法政大学、2016 年 12月)32
「NEDO における地熱発電技術開発」
(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 新エネルギー部
生田目修志、平成 29 年度第4回 地熱発電・熱水活用研究会 講演配布資料、2017 年 11 月)33「エコロジカル・ランドスケープというデザイン手法」
(小川総一郎、2009 年 5 月)
景観構成上、発電所の建屋や
パイプラインが気になる状況
になると予測されたため、環
境保全措置として遮蔽植栽を
施すこととしたが、、、
発電所建屋をスギ植林で取り
囲んで見えなくする方法、パイ
プラインを生垣で覆う方法で
は違和感があるため、、、
エコロジカル・ランドスケープ
デザインを適用し、地域に調
和し、なじむ景観を、地域の自
然環境の潜在能力を活かして
創出する対策を図る。
第3章 各論 〜迅速化の考え方と留意事項〜463.12 人と自然との触れ合いの活動の場
3.12.1 項目選定の考え方
「人と自然との触れ合いの活動の場」に係る調査については、発電所アセス手引には、利用形態等の特
性を考慮して、適切な期間、時期、時間帯を設定し、実施するよう記載している。事業計画地一帯において、
人の利用が多くなる時期の設定が重要である。
事業による影響としては、工事の実施や施設の稼働に伴う「アクセス性の阻害」「利用対象となる自然要
素への影響」「人と自然との触れ合いの活動への影響」等が想定される。影響を確実に予測・評価するには、
事業計画の熟度が高まっている必要がある。
3.12.2 前倒環境調査の着手時期
上記の特性を踏まえ、「人と自然との触れ合いの活動の場」に関する現況調査等は、手戻りリスクを最小
化するため、対象事業実施区域や工事用道路が確定するなど事業計画の熟度が高まってから、方法書手
続の開始前後から着手することが望ましい。
3.12.3 留意事項
地熱発電事業では事業地が自然公園区域内や隣接区域に立地する場合が多く、「人と自然との触れ合
いの活動の場」に関する現況把握、予測・評価では、自然公園法の規定を勘案する必要がある。また、そ
の他の事業で考慮する影響事象である、開発行為に伴う直接的な「活動の場の改変」や「アクセス阻害」に
加えて、噴気等に伴う環境改変が生じる可能性も考慮する必要がある。
図 3-14 人と自然との触れ合いの活動の場に係る現況調査等の着手時期
事業性調査:資源調査段階 建設段階 操業段階
建設工事 運用
環境影響評価
坑井調査
概況調査・空中調査・地表調査 評価
環境影響評価段階
環境影響評価
環境保全措置
等の実施
事後調査
環境監視 等配慮書手続方法書手続準備書手続評価書手続
現況調査
予測評価報告書公表活用
前倒環境調査
人触れの場
【現況調査】 原則、四季調査(通年)
(注記)手戻りリスクを勘案すると、事業計画の熟度が高まり
調査条件が明確になってからの調査着手が効率的。
事業計画
の概成
第3章 各論 〜迅速化の考え方と留意事項〜473.13 工事の実施:大気環境 (窒素酸化物・粉じん・騒音・振動等)
3.13.1 項目選定の考え方
地熱発電事業の工事中の影響として、参考項目には挙げられていないが、窒素酸化物・粉じん・騒音・
振動等の影響が想定される。予測に用いる現況データとして、窒素酸化物や粉じん等の大気質について
は通常四季調査のデータを、騒音・振動等については季節変動に応じて一季〜四季の調査データを取得
する。現況データの取得においては、事業計画や工事計画を踏まえた的確・適切な地点、内容の調査の
設定が求められる。
3.13.2 前倒環境調査の着手時期
上記の特性を踏まえ、「工事中の大気環境(窒素酸化物・粉じん・騒音等)」に関する現況調査等は、手
戻りリスクを最小化するため、工事計画の検討が進むなど事業計画の熟度が高まる方法書手続の開始前
後から着手することが望ましい。
3.13.3 留意事項
「工事中の大気環境(窒素酸化物・粉じん・騒音等)」に関する現況調査等については、予測の精度を高
めるため、工事計画に対応した的確な地点等を設定する必要がある。そのため、前倒環境調査の適用を
考えている場合には、工事計画もなるべく早期段階から検討しておく必要がある。
図 3-15 工事中の大気環境(窒素酸化物・粉じん・騒音等)に係る現況調査等の着手時期
3.14 工事の実施:水環境 (水の濁り)
3.14.1 項目選定の考え方
地熱発電事業における水環境への環境影響としては、造成等の工事に伴う「水の濁り(濁水の発生・流
出)」が想定される。水質に係る事業影響の予測のためには、現況データとして、通常、四季調査によりデ
事業性調査:資源調査段階 建設段階 操業段階
建設工事 運用
環境影響評価
坑井調査
概況調査・空中調査・地表調査 評価
前倒環境調査
工事中の大気質・騒音・振動
環境影響評価段階
環境影響評価
環境保全措置
等の実施
事後調査
環境監視 等配慮書手続方法書手続準備書手続評価書手続
現況調査
予測評価報告書公表【現況調査】 1回 〜 四季調査
(注記)手戻りリスクを勘案すると、事業計画の熟度が高まり
調査条件が明確になってからの調査着手が効率的。
活用
事業計画
の概成
第3章 各論 〜迅速化の考え方と留意事項〜48ータを取得する。現況データの取得においては事業計画や工事計画に対応して設定された地点、内容で
の調査の実施が求められる。
3.14.2 前倒環境調査の着手時期
上記の特性を踏まえ、「水環境(工事中の水の濁り)」に関する現況調査等は、手戻りリスクを最小化する
ため、工事計画の検討が進むなど事業計画の熟度が高まる方法書手続の開始前後から着手することが望
ましい。
3.14.3 留意事項
「水環境(工事中の水の濁り)」に関する現況調査等については、予測の精度を高めるため、工事計画に
対応した的確な地点等を設定する必要がある。そのため、前倒環境調査の適用を考えている場合には、
工事計画もなるべく早期段階から検討しておく必要がある。
図 3-16 水環境(工事中の水の濁り)に係る現況調査等の着手時期
3.15 工事の実施:廃棄物等・温室効果ガス・放射線の量
3.15.1 項目選定の考え方
地熱発電事業における環境影響評価の参考項目として工事中・供用後の「廃棄物等(産業廃棄物・建
設発生土等)」、工事中の「放射線の量」等が挙げられており、また、参考項目外の温室効果ガスに係る評
価を求められるケースもある。いずれも、事業計画・工事計画に基づき事業影響の予測・評価を行う。
3.15.2 前倒環境調査の着手時期
「廃棄物・温室効果ガス・放射線の量等」に係る現況値の把握は、事業計画の熟度の高まる方法書手続
段階頃から着手する。予測・評価は事業計画・工事計画に沿って行うため、与条件としての事業計画等が
事業性調査:資源調査段階 建設段階 操業段階
建設工事 運用
環境影響評価
坑井調査
概況調査・空中調査・地表調査 評価
前倒環境調査
水環境(工事中の水の濁り)
環境影響評価段階
環境影響評価
環境保全措置
等の実施
事後調査
環境監視 等配慮書手続方法書手続準備書手続評価書手続
現況調査
予測評価報告書公表【現況調査】 原則、四季調査(通年)
(注記)手戻りリスクを勘案すると、事業計画の熟度が高まり
調査条件が明確になってからの調査着手が効率的。
事業計画
の概成
活用
第3章 各論 〜迅速化の考え方と留意事項〜49固まってから実施することが効率的である。
3.15.3 留意事項
「廃棄物・温室効果ガス・放射線の量等」については、予測・評価は事業計画・工事計画に沿って行う。
逆に、環境配慮型の事業として「廃棄物」「温室効果ガス」「放射線」等の排出をできるだけ抑えた事業計画
を策定する場合も多い。事業者としての説明責任を果たせるような事業内容の説明の一環として、適切な
排出量を提示することが重要である。
図 3-17 廃棄物・温室効果ガス・放射線の量等に係る現況調査等の着手時期
事業性調査:資源調査段階 建設段階 操業段階
建設工事 運用
環境影響評価
坑井調査
概況調査・空中調査・地表調査 評価
前倒環境調査・予測評価
廃棄物・放射線の量等
環境影響評価段階
環境影響評価
環境保全措置
等の実施
事後調査
環境監視 等配慮書手続方法書手続準備書手続評価書手続
現況調査
予測評価報告書公表【現況調査】 事業計画検討と連動
(注記)手戻りリスクを勘案すると、事業計画の熟度が高まり
調査条件が明確になってからの調査着手が効率的。
活用
事業計画、設計、
工事計画の検討
事業計画
の概成
第3章 各論 〜迅速化の考え方と留意事項〜50引用・参考文献
・ 「地熱発電所の環境アセスメントの効率化に向けて―風洞実験に代わる硫化水素拡散予測数値モデル
を開発― (一般財団法人 電力中央研究所、2016 年 12 月、電中研NEWS No.482)
・ 「平成 25 年度-平成 27 年度 地熱発電技術研究開発 発電所の環境保全対策技術開発 硫化水素拡
散予測シミュレーションモデルの研究開発」(日揮株式会社・学校法人明星学苑明星大学、2017 年 1 月、
NEDO 委託事業報告書)
・ 「猛禽類保護の進め方(改訂版)特にイヌワシ、クマタカ、オオタカについて」(環境省自然環境局野生生
物課、2012 年 12 月)
・ 「環境影響評価技術ガイド 景観」(環境省大臣官房環境影響評価課、2008 年 3 月)
・ 「自然公園法の行為の許可基準の細部解釈及び運用方法」 (環境省、2000 年 8 月、最終改訂 2010 年
4 月)
・ 「景観対策ガイドライン(案)」(UHV送電特別委員会環境部会立地分科会、1981 年)
・ 「国立・国定公園内における地熱開発の取り扱いについて」(2015 年 10 月、環境省自然保護局超通達)
・ 「エコロジカル・ランドスケープ手法で地熱発電所を計画する」(小川総一郎、環境省 地熱ガイドライン検
討会 配布資料、2014 年 10 月)
・ 「エコロジカル・ランドスケープ手法で地熱発電所の優良事例を作る」(小川総一郎、環境省 国立・国定
公園内の地熱開発に係る優良事例形成の円滑化に関する検討会 話題提供資料、2015 年 4 月)
・ 「エコロジカル・ランドスケープデザイン手法を活用した設計支援ツールの開発」(小松裕幸(清水建設株
式会社)、JOGMEC 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構、平成 26 年度 地熱部事業成果
報告会資料、2015 年 7 月)
・ 「地熱発電技術研究開発/発電所の環境保全対策技術開発/エコロジカル・ランドスケープデザイン手
法を活用した設計支援ツールの開発(平成 28 年度分中間年報)」NEDO 国立研究開発法人 新エネル
ギー・産業技術総合開発機構 成果報告書(受託者:清水建設株式会社・株式会社風景デザイン研究
所・学校法人法政大学、2016 年 12 月)
・ 「NEDO における地熱発電技術開発」(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 新
エネルギー部 生田目修志、平成 29 年度第4回 地熱発電・熱水活用研究会 講演配布資料、2017 年
11 月)
・ 「エコロジカル・ランドスケープというデザイン手法」(小川総一郎、2009 年 5 月、理工図書)
第 4 章 今後の課題51第 4 章 今後の課題
4.1 前倒環境調査の適用事例と知見の蓄積
前倒環境調査を適用した環境影響評価手続の実施事例の蓄積と、その要因分析等による適切な進
め方の知見の蓄積が求められる。また、これらの事例及び知見に係る情報を参照できる仕組みが求めら
れる。
4.2 調査・予測等に係る知見の蓄積
地熱発電事業に係る環境影響評価手続においては、調査及び予測・評価手法に関する技術開発が
求められる。また、先端情報や直近の類似事例等に係る情報を参照できる仕組みが求められる。
4.3 環境保全措置の事例の蓄積
調査・予測等の手法だけでなく環境保全措置についても、事例の蓄積と技術開発が求められる。
特に、環境保全措置の効果検証については知見が少なく、事例における効果等の情報を参考資料と
して蓄積・整備していくことが望まれる。
第 4 章 今後の課題52 巻末資料
目 次
資料1 地熱発電事業に係る環境影響評価について ............................................................................1
1.1 環境影響評価法の施行以前 (1999 年 6 月まで) .....................................................................1
1.2 環境影響評価法の施行後 (1999 年 6 月以降) ........................................................................1
1.3 迅速化の要請..........................................................................................................................2
1.4 環境影響評価手続の迅速化への取組 ......................................................................................2
1.4.1 経済産業省と環境省の連携.....................................................................................2
1.4.2 経済産業省関連.....................................................................................................3
1.4.3 環境省関連............................................................................................................5
資料2 環境影響評価で用いる調査・予測・評価の参照資料 .................................................................9
資料3 都道府県の環境影響評価の審査に係る担当部署...................................................................17
資料1 地熱発電事業に係る環境影響評価について
巻末資料 1
資料1 地熱発電事業に係る環境影響評価について
資料1では、地熱発電所の環境影響評価に携わる担当者が知っておくべき「背景と経緯」
「関連施
策」
「行政の参照資料」等を概観する。
1.1 環境影響評価法の施行以前 (1999 年 6 月まで)
我が国における発電所に係わる環境影響評価は、省議アセス「発電所の立地に関する環境影響調
査及び環境審査の強化について」
(1977 年 7 月省議決定)、「発電所の立地に関する環境影響調査及
び環境審査の実施方針」
(1979 年 6 月 資源エネルギー庁長官通達)等で規定されている。
閣議アセス「環境影響評価の実施について」
(1984 年 8 月閣議決定)では、発電所に関する規定
はなされていなかった 1、2。その後、1999 年 6 月に施行された環境影響評価法 5(以下、
「法」とい
う。
)において、地熱発電所は対象事業の一つとして位置付けられた。
1.2 環境影響評価法の施行後 (1999 年 6 月以降)
地熱発電所の規模要件については、
「第一種事業」が出力 10,000kW 以上、
「第二種事業」が出力
7,500kW 以上 10,000kW 未満、と定められた。
なお、条例アセスでは、地方公共団体によっては、上述した規模要件(第一種事業:10,000kW
以上、第二種事業:7,500kW 以上 10,000kW 未満)よりも小さい規模の事業を対象としている事例
がある。
表1-1 対象事業の規模要件 3
種別 規模要件
第一種事業
出力 10,000kW 以上
である発電所(地熱を利用するものに限る。)
の設置の工事の事業
第二種事業
出力 7,500kW 以上 10,000kW 未満
である発電所(地熱を利用するものに限る。)
の設置の工事の事業
*1:変更の工事においても同様とする。
1 「発電所の環境影響評価について(2010 年 2 月 経済産業省原子力安全・保安院電力安全課)」2「資料 2-1 環境影響評価法における規模要件(環境省)」
https://www.env.go.jp/policy/assess/5-2windpower/wind_h22_5/mat_5_2-1.pdf3「環境影響評価法施行令(1997 年 12 月 3 日 政令第 346 号)」
資料1 地熱発電事業に係る環境影響評価について
巻末資料 2
1.3 迅速化の要請
風力発電及び地熱発電の導入拡大を図るため、2013 年 6 月に閣議決定された「日本再興戦略」
では、風力発電所及び地熱発電所の環境影響評価の迅速化、すなわち「3、4 年程度かかるとされる
手続期間の半減を目指すこと」
が政府目標とされた。
(なお、
2017 年 6 月 9 日に閣議決定された
「未
来投資戦略 2017」においても「環境アセスメント迅速化手法の一般化」が明記されている。)しろまる 「日本再興戦略(抄) (2013 年 6 月閣議決定)」4
・再生可能エネルギー導入のための規制・制度改革等
地熱発電への投資を促進する。環境アセスメントの迅速化(3、4 年程度かかるとされる手続期間の
半減を目指す)や、既存の温泉井戸を活用した小型地熱発電の推進のための保安規制合理化等の規
制・制度改革、地域の方々の理解促進等に取り組む。
この政府目標を踏まえ、経済産業省と環境省の連携により、審査期間の短縮を始めとした様々な
取組が進められてきている。
(これらの取組内容は後述)
また、資源エネルギー庁が設置した研究会 5において、
「通常、方法書手続において調査の対象や
方法が確定した後に行われる調査・予測・評価を、配慮書手続や方法書手続に先行して、あるいは
同時並行で進める手法」、すなわち
「前倒環境調査」
の有効性と実施にあたっての課題が検討された。
その結論として、前倒環境調査の各種課題の解決方法を実証事業により検証すること及び方法論に
関する知見をとりまとめることが必要であることが確認された 6。
この研究会報告を踏まえ、2014 年度から 2017 年度まで、NEDO 事業として、前倒環境調査を
適用した環境影響評価の期間短縮を行う上での課題等の特定、
解決及び更なる短縮化を図るために、
「方法書手続に係る経済産業大臣の通知又は勧告から準備書の届出までの期間を 8 ヶ月以内とする
こと」を成果目標とした「環境アセスメント調査早期実施実証事業」を実施した。また、
「環境アセ
スメント迅速化研究開発事業」では、環境影響評価の迅速化に資する技術の研究開発を実施した。
さらに、
「環境アセスメント前倒データベース化事業」では、上記の実証事業による検証を通じ、前
倒環境調査の方法論に関する知見をとりまとめてきた。
本ガイドは、これらの事業の成果に基づくものである。
1.4 環境影響評価手続の迅速化への取組
環境影響評価手続の迅速化に資するための取組や、地熱発電所の環境影響評価に関連する調査・
研究報告等について、その概要を簡潔に解説する。
1.4.1 経済産業省と環境省の連携
(1) 審査期間の短縮
2013 年 6 月 14 日閣議決定の「規制改革実施計画」において、風力・地熱発電に係る環境影響評
価における国の審査期間について、火力発電所リプレースと同様に、短縮目標(全体で 45 日程度4「日本再興戦略」(2013 年 6 月 9 日閣議決定)5「風力・地熱発電に係る環境影響評価手続の迅速化等に関する研究会」(2013 年 12 月〜2014 年 3 月)6「前倒環境調査の取組に向けて(2014 年 3 月 風力・地熱発電に係る環境影響評価手続の迅速化等に関する研究会)」
資料1 地熱発電事業に係る環境影響評価について
巻末資料 3
に短縮)を明示した上で、実効的な審査短縮策を講じることとされた 7。
この閣議決定を踏まえ、経済産業省商務流通保安グループ電力安全課においては、火力リプレー
スに係る国の審査期間の短縮目標を公表した報告書 8 に記載した火力リプレースに係る国の審査
の具体的方策を、風力・地熱発電所の審査にも適用することとしている。
これに基づき、それまで 150 日程度かかっていた国における審査期間(方法書、準備書、評価書
審査)を、45 日程度に短縮する方針で審査を実施してきている。
また、
経済産業省と環境省の連名で、
自治体に対して、
審査期間の短縮への協力を依頼している。
1.4.2 経済産業省関連
(1) 「発電所に係る環境影響評価の手引」の改訂
発電所に係る環境影響評価を実施する場合の指針として、発電所に係る「主務省令」9に基づく、
「手引(以下、本書では「発電所アセス手引」と言う。)」10がある。
「発電所アセス手引」は、風力・地熱発電所の環境影響評価を行う場合に必ず参照することが必
要な資料であり、
調査・予測等の基本的な考え方や手法が示されている。
なお、
「発電所アセス手引」
は、随時時点更新されており、地熱発電所については 2017 年 5 月に、
「地熱発電所設置に係る硫化
水素の環境影響評価の簡素化・迅速化のため、拡散予測評価に使用可能な数値シミュレーションが
開発されたため、
【第4章環境影響評価の項目及び手法の選定】に追記する」との改訂等がなされて
おり 11、常に最新版で記載内容を確認する必要がある。
また、経済産業省 HP の「発電所環境アセスメントについて」12において、手続概要、審査概要、
環境アセスメント事例、環境審査顧問会議事録等が公表されている。
(2) FIT 法の改正
再生可能エネルギーは、2012 年の固定価格買取制度の開始以来、導入が拡大しているが、それに
伴う国民負担の増大や太陽光に偏った導入等の課題があった。このため、FIT 法 13が 2017 年 4 月
から改正施行され、
「新認定制度の創設」、「コスト効率的な導入」、「リードタイムの長い電源の導入」、「減免制度の見直し」、「送配電買取への移行」等の取組が進められている。
また、
FIT 法の改正に関連し、
2016 年 12 月から環境影響評価法等の対象となる事業については、
改正 FIT 法第 9 条の規定に基づく再生可能エネルギー発電事業計画認定の申請
(以下、
「FIT 申請」
という。)に必要な添付書類が、
「方法書手続を開始したことを証する書類」
となった
(改正前の FIT7「規制改革実施計画」(2013 年 6 月 14 日閣議決定)8「発電所設置の際の環境アセスメント迅速化等に関する連絡会議 中間報告(2012 年 11 月 27 日 環境省・経済産業省)」9「発電所の設置又は変更の工事の事業に係る計画段階配慮事項の選定並びに当該計画段階配慮事項に係る調査、予測
及び評価の手法に関する指針、環境影響評価の項目並びに当該項目に係る調査、予測及び評価を合理的に行うため
の手法を選定するための指針並びに環境の保全のための措置に関する指針等を定める省令」(1998 年 6 月 12 日 通商
産業省令第 54 号)10「発電所に係る環境影響評価の手引(2017 年 5 月 経済産業省商務流通保安グループ電力安全課)」(経済産業省 HP で
公表:http://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/electric/detail/tebiki.html)11「発電所に係る環境影響評価の手引の改訂について(2017 年5 月 経済産業省商務流通保安グループ電力安全課)」(経
済産業省 HP:)
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/safety_security/kankyo_shinsa/pdf/29_01_03_00.pdf12「発電所環境アセスメントについて」(経済産業省 HP)
http://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/electric/asesu/index.html13「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」(2011 年 法律第 108 号)
資料1 地熱発電事業に係る環境影響評価について
巻末資料 4
設備認定申請
事業計画認定申請
【従来】
【制度の運用変更後】(2016年12月〜)
前倒環境調査
前倒環境調査
大臣勧告
配慮書
手続
方法書
手続
準備書
手続
評価書
手続
配慮書
手続
方法書
手続
準備書
手続
評価書
手続
届出
法の設備認定申請では、
「準備書に対する勧告書等」の添付)14。
すなわち、FIT 申請のためには、従来は準備書に対する大臣勧告まで手続が進行している必要が
あったが、この運用変更により方法書手続の開始とともに可能となった(図1-1)。図1-1 FIT 申請のタイミング
ただし、これに伴い、拙速に方法書手続を開始して FIT 申請を行う事業が増えることが懸念され
たため、2017 年 7 月に経済産業省と環境省の連名で「可能な限り早い段階から、有識者ヒアリン
グ、現地調査及び地元等からの意見聴取に関する結果を踏まえて、環境影響に十分配慮した事業内
容を検討すること」等をはじめとする6項目の留意事項が通知されている。
なお、方法書の公告後に FIT 申請を行い、仮に認定されたとしても、並行して行われる環境影響
評価の手続の方で事業計画の修正・変更が必要となった場合、FIT 認定は必ずしも担保されないこ
とが指摘されている。
上記の連名通知の趣旨や関連する制度における規定を踏まえると、早期の段階から環境配慮を反
映したより良い事業計画を検討としておくことが求められており、そのために必要な精度の環境情
報を得ておくことが必要になっている。したがって、事業計画の検討の全体スケジュールの考え方
は、従来とは変えていく必要がある。また、環境影響評価の全体スケジュールや調査計画の考え方
も、それに対応してより適切なものすることが必要となっている。
(3) 硫化水素拡散予測シミュレーションモデルの研究開発
地熱発電の導入・促進を目的として、
「地熱発電技術研究開発事業(2013〜2017 年度 NEDO)」が進められている。当該事業の一つに「発電所の環境保全対策技術開発」が含まれており、
「熱発電
所設置のための環境アセスメント(第一種事業:10,000kW 以上、第二種事業:7,500kW 以上
10,000kW 未満)における、硫化水素の影響評価は、その解析に風洞実験を含め6ヶ月程度を要す
るが、これを拡散シミュレーションモデルの開発を通じて、有害ガス拡散予測評価期間の半減を目
指すことにより、アセス全体に要する検討期間の短縮を目指す」ことを目的に、
「硫化水素拡散予測14「設備認定申請における環境影響評価に関する添付書類について」
(資源エネルギー庁、2016 年 12 月 5 日)
資料1 地熱発電事業に係る環境影響評価について
巻末資料 5
シミュレーションモデルの研究開発」が実施され 15、2016 年 3 月に、地熱発電所における硫化水
素の拡散モデルが完成した。今後、地熱発電事業の環境影響評価において同モデルの活用が期待さ
れる。
1.4.3 環境省関連
(1) 国立・国定公園内における地熱開発の取扱いについて
環境影響評価とは直接関係しないが、地熱発電事業の促進を図るための国定・国立公園内での規
制緩和に関する施策について解説する。
地熱発電事業の適地となる熱資源量が多い火山地域は、自然環境・風致が豊かで国立・国定公園
等の自然公園の指定区域であることが多く、これまで国定・国立公園内での開発行為は、
「自然公園
地域内において工業技術院が行う「全国地熱基礎調査」等について」
(1974 年 9 月 17 日付け環自
企第 469 号環境庁自然保護局企画調整課長通知)及び「国立・国定公園内における地熱発電につい
て」
(1994 年 2 月 3 日付け環自計第 24 号・環自国第 81 号環境庁自然保護局計画課長・国立公園課
長通知)等で一定の規制がなされていた。
一方、行政刷新会議の規制・制度改革に関する分科会において、
「再生可能エネルギーの導入促進
に向けた規制の見直しを含めた規制・制度改革に係る対処方針」
16が 2010 年 6 月に閣議決定され、
自然公園における地熱発電に関しては「地熱発電に係る過去の通知を見直し、
傾斜掘削について、個別に判断する際の考え方を明確にするとともに、国立公園等の地表部に影響のない方法による事業
計画であれば許可できる旨新たに通知するための調査・検討に着手する。
」こととされた。閣議決定
等を受けて、地熱発電事業に伴う自然環境への影響や自然公園の風致景観上の支障について検証を
行うとともに、その軽減策の検討を行い、過去の通知見直しに向けた基本的考え方の整理を行うこ
とを目的として、2011 年 6 月から「地熱発電事業に係る自然環境影響検討会」が開催され、この検
討会の報告等を踏まえ、
「国立・国定公園内における地熱開発の取扱いについて」
(2012 年 3 月 環
境省自然環境局長通知。以下、2012 年通知という。
)が定められ、既往通知等は廃止された。
更に自然環境と調和した地熱開発のより一層の促進を図るための考え方等を整理し、地熱開発に
係る優良事例の形成の円滑化に資することを目的として、2015 年 3 月から「国立・国定公園内の
地熱開発に係る優良事例の円滑化に関する検討会」が開催され、同検討会の報告を受けて、
「国立・
国定公園内における地熱開発の取扱いについて
(2015 年 10 月 環境省自然環境局長通知)
」17が定
められ、2012 年通知は廃止された。同通知により、地熱発電事業に関して「第2種特別地域及び第
3種特別地域並びに普通地域において自然環境の保全や公園利用上の支障がないものは認める」、「第1種特別地域については、2012 年通知では地下部への傾斜掘削も認めないこととしていたが、
本改正により、地表に影響がないこと等を条件に、地下部への傾斜掘削を認める(特別保護地区は
地下部も認めない)」、
「建築物の高さ規制については、風致景観への著しい支障が回避され、風致景
観との調和が図られている場合に限り、13mにとらわれずに運用できることを明示する。
」等の規
制緩和がなされた。1815「NEDO における地熱発電技術研究開発の取り組み状況」(2015 年 7 月 10 日NEDO新エネルギー部)
http://geothermal.jogmec.go.jp/report/file/session_11.pdf16「規制・制度改革に係る対処方針」(2010 年 6 月 18 日 閣議決定)17「国立・国定公園内における地熱開発の取扱いについて(2015 年 10 月 2 日環境省自然環境局長通知)
(環境省 HP http://www.env.go.jp/nature/geothermal_np/mat02.pdf)18「国立・国定公園内における地熱開発の取扱いについての改正について」(環境省)
(環境省 HP http://www.env.go.jp/press/files/jp/28243.pdf)
資料1 地熱発電事業に係る環境影響評価について
巻末資料 6
(2) 温泉資源の保護に関するガイドライン ( 地熱発電関係 )
地熱発電所の建設・運転が環境に及ぼす影響として、既存温泉の温度やゆう出量に対する直接的
な影響等が懸念された。2007 年 2 月、環境省の諮問に基づき温泉資源の保護対策及び温泉の成分
に係る情報提供の在り方等について検討を行っていた「中央環境審議会(自然環境部会温泉小委員会)」は、環境省に対し「都道府県が温泉資源保護のための条例・要綱等を定めるに当たっての参考
となり、対策を円滑に進めることができるよう、新規事業者による掘削や動力装置の許可等の基準
の内容や都道府県における温泉資源保護のための望ましい仕組みについて、国は、温泉は国民共有
の資源であるという観点に立って、
できるだけ具体的・科学的なガイドラインを作成すべきである」
との答申を行った。同答申を受けて、2008 年 12 月から中央環境審議会温泉小委員会における審議
等を経て、環境省は、2009 年 3 月に「温泉資源の保護に関するガイドライン(2009 年度版)
」を
策定した。
その後、2010 年 6 月に閣議決定された「規制・制度改革に係る対処方針について」における前
述の規制改革事項が実施時期を前倒しする事項とされ、
その内容として、
「地熱発電を推進するため、
温泉法における掘削許可の判断基準の考え方を策定し、ガイドラインとして運用するよう 2011 年
度中を目途に通知する。
」こととされ、環境省では、温泉資源の保護を図りながら再生可能エネルギ
ーの導入が促進されるよう、地熱発電の開発のための温泉の掘削等を対象とした「温泉資源の保護
に関するガイドライン(地熱発電関係)
(2012 年 3 月、環境省自然環境局)
」19を策定した。
このガイドラインにおいては、地熱開発と既存温泉施設の共生の観点から、地熱発電事業者に求
められる取り組みとして、1温泉事業者、地熱発電事業者等によるモニタリングの重要性、2情報
の共有・公開、3関係者の合意形成(協議会等の設置)等が規定されている。
また、2009 年度版の温泉資源の保護に関するガイドラインに、
「温泉の摂取量に関する取扱い」
の項目を追加した改訂版が、2014 年 4 月に公表されている 20。この改訂版では温泉資源の保護の
ため、平時から長期を見据えたモニタリングを実施して資源動向を捉えること(データの記録・整
理、集計・グラフ化等による解析)が推奨された。2015 年 3 月には、温泉モニタリングを体系的
に実施するためのマニュアルも公表されている 21。
さらに、2017 年度には、ガイドラインの地熱発電関係初版(2012 年度版)から 5 年を経たこと
を踏まえた見直し、更新版の公表が行われている 22。2017 年度の改定では、我が国を含め世界各
国の熱資源量データを更新したほか、
2014 年改訂版で推奨されたモニタリングの実施状況を示すな
ど、
現況データを最新化、
補足したうえで、
温泉資源保護のための関係者間協議の重要性を指摘し、
協議会体制の構築例を明示して、今後の合意形成や協働のしくみづくりの推進を図っている。19「温泉資源の保護に関するガイドライン(地熱発電関係)(2012 年 3 月 環境省自然環境局)」20「温泉資源の保護に関するガイドライン (改訂) (2014 年 4 月 環境省自然環境局)」21「温泉モニタリングマニュアル (2015 年 3 月 環境省自然環境局)」22「温泉資源の保護に関するガイドライン(地熱発電関係) (改訂) (2017 年 10 月 環境省自然環境局)」
資料1 地熱発電事業に係る環境影響評価について
巻末資料 7
引用・参考文献
・「日本再興戦略」(2013 年 6 月 9 日閣議決定)
・「規制改革実施計画」(2013 年 6 月 14 日閣議決定)
・「発電所の環境影響評価について(2010 年 2 月 経済産業省原子力安全・保安院電力安全課)」
・「資料 2-1 環境影響評価法における規模要件(環境省)」
・「環境影響評価法施行令(1997 年 12 月 3 日 政令第 346 号)」
・「日本再興戦略」(2013 年 6 月 9 日閣議決定)
・「風力・地熱発電に係る環境影響評価手続の迅速化等に関する研究会」(2013 年 12 月〜2014 年 3 月)
・「前倒環境調査の取組に向けて(2014年3月 風力・地熱発電に係る環境影響評価手続の迅速化等に関
する研究会)」
・「規制改革実施計画」(2013 年 6 月 14 日閣議決定)
・「発電所設置の際の環境アセスメント迅速化等に関する連絡会議 中間報告(2012 年 11 月 27 日 環境
省・経済産業省)」
・「発電所の設置又は変更の工事の事業に係る計画段階配慮事項の選定並びに当該計画段階配慮事項
に係る調査、予測及び評価の手法に関する指針、環境影響評価の項目並びに当該項目に係る調査、
予測及び評価を合理的に行うための手法を選定するための指針並びに環境の保全のための措置に関
する指針等を定める省令」(1998 年 6 月 12 日 通商産業省令第 54 号)
・「発電所に係る環境影響評価の手引(2017 年 5 月 経済産業省商務流通保安グループ電力安全課)」
・「発電所に係る環境影響評価の手引の改訂について(2017 年 5 月 経済産業省商務流通保安グループ
電力安全課)」
・「発電所環境アセスメントについて」(経済産業省 HP)
・「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」(2011 年 8 月 30 日 法第 108号)・「設備認定申請における環境影響評価に関する添付書類について(2016 年 12 月 5 日 資源エネルギー
庁)」
・「風力発電事業に係る環境影響評価手続の着実な実施について(FIT 申請時期の運用変更等に伴う対
応等) (2017 年 7 月 4 日 経済産業省商務流通保安グループ電力安全課・環境省総合環境政策局環
境影響評価課)」
・「NEDO における地熱発電技術研究開発の取り組み状況」(2015 年 7 月 10 日NEDO新エネルギー部)
・「規制・制度改革に係る対処方針」(2010 年 6 月 18 日 閣議決定)
・「国立・国定公園内における地熱開発の取扱いについて(2015 年 10 月 2 日環境省自然環境局長通知)
・「国立・国定公園内における地熱開発の取扱いについての改正について」(環境省)
・「温泉資源の保護に関するガイドライン 地熱発電関係 (2012 年 3 月 環境省自然環境局)」
・「温泉資源の保護に関するガイドライン (改訂) (2014 年 4 月 環境省自然環境局)」
・「温泉モニタリングマニュアル (2015 年 3 月 環境省自然環境局)」
・「温泉資源の保護に関するガイドライン 地熱発電関係 (改訂) (2017 年 10 月 環境省自然環境局)」
資料1 地熱発電事業に係る環境影響評価について
巻末資料 8
資料2 環境影響評価で用いる調査・予測・評価の参照資料
巻末資料 9
資料2 環境影響評価で用いる調査・予測・評価の参照資料
各実証事業の実例から、風力・地熱発電事業の環境影響評価で用いる参照資料を一覧表にとりま
とめた。
表2-1 環境影響評価で用いる参照資料 (1/8)
参照資料
「発電所の設置又は変更の工事の事業に係る計画段階配慮事項の選定並びに当該計画段階配慮
事項に係る調査、予測及び評価の手法に関する指針、環境影響評価の項目並びに当該項目に係
る調査、予測及び評価を合理的に行うための手法を選定するための指針並びに環境の保全のた
めの措置に関する指針等を定める省令」(平成10年 通商産業省令第54号)
「改訂・発電所に係る環境影評価の手引」(平成27年7月改定 経済産業省)
「環境アセスメントの技術」(平成11年6月 社団法人環境情報科学センター)
「風力発電所の環境影響評価のポイントと参考事例」(平成25年6月 環境省総合環境政策局環
境影響評価課環境影響審査室)
「平成22年度地熱発電に係る環境影響審査手法調査業務報告書」(平成23年3月 株式会社プ
レック研究所)
地方自治体の「環境保全条例・環境計画、環境影響評価技術指針・マニュアル等」
「硫化水素拡散予測数値モデル」(平成28年 一般財団法人電力中央研究所、NEDO)
「地熱発電所から排出される硫化水素の大気拡散予測のための数値モデル開発,大気環境学会
誌,第52巻 1号,pp,10-29(2017)」
「温泉の利用基準について」(昭和50年 環自企424号)
「気象業務法施行規則」(昭和27年 運輸省令第101号)
「地上気象観測指針」(平成14年 気象庁)
「高層気象観測指針」(平成7年 気象庁)
「発電用原子炉施設の安全解析に関する気象指針」(昭和57年 原子力安全委員会)
「大気汚染物質測定法指針」(昭和62年 環境庁)
「労働安全衛生規則における立入禁止について」(昭和47年 労働省令第32号)
「屋外作業場等における作業環境管理に関するガイドライン」(平成17年 厚生労働省)
「平年値2010(統計期間1981〜2010年)第5版」(平成24年 気象庁編)
「気象統計情報」(気象庁ホームページ)
「二酸化窒素に係る環境基準について」(昭和53年 環境庁告示第38号)
「窒素酸化物総量規制マニュアル〔新版〕」(平成12年12月 公害研究対策センター)
「越境大気汚染・酸性雨長期モニタリング報告書(平成20〜24年度)」(平成26年 環境省)
「過去の気象データ・ダウンロード」(気象庁ホームページ)
「気象統計情報」(気象庁ホームページ)
「気象業務法施行規則」(昭和27年 運輸省令第101号)
「地上気象観測指針」(平成14年 気象庁)
「公共用水域水質 地下水質 大気汚染状況 ダイオキシン類測定結果」(岩手県)
「道路環境影響評価の技術手法(平成24年度版)」(平成25年3月 国土交通省国土技術政策総合
研究所独立行政法人土木研究所)
「国土技術政策総合研究所資料NO.671道路環境影評価等に用いる自動車排出係数の算定根拠
(平成22年度版)」(平成24年 国土交通省国土技術政策総合研究所)
「全国道路・街路交通情勢調査(道路交通センサス)一般交通量調査実施要綱 交通量調査編」
(国土交通省)
「建設機械等損料算定表」(平成26年 福島県土木部)
「有害大気汚染物質に係る発生源周辺における環境影響評価予測手法マニュアル(経済産業省
-低煙源工場拡散モデル:METI-LIS)」(平成13年3月 経済産業省)
「大気常時観測結果概要」(岩手県)
「北海道の大気環境」(北海道生活部環境局環境推進課)
「都市計画法」(昭和43年 法律第100号)
「平年値2010(統計期間1981〜2010年)第5版」(平成24年 気象庁編)
地方自治体の「環境白書・環境計画等」
「環境測定分析法注解第1巻」(昭和59年 環境庁)
「衛生試験方法・注解」(平成22年 日本薬学会編)
「過去の気象データ・ダウンロード」(気象庁ホームページ)
「気象統計情報」(気象庁ホームページ)
「気象業務法施行規則」(昭和27年 運輸省令第101号)
「地上気象観測指針」(平成14年 気象庁)
「面整備事業環境影響評価技術マニュアル」(平成11年11月 建設省都市局都市計画課)
「道路環境影響評価の技術手法(平成24年度版)」(平成25年3月 国土交通省国土技術政策総合
研究所独立行政法人土木研究所)
「国土技術政策総合研究所資料NO.671道路環境影評価等に用いる自動車排出係数の算定根拠
(平成22年度版)」(平成24年 国土交通省国土技術政策総合研究所)
「全国道路・街路交通情勢調査(道路交通センサス)一般交通量調査実施要綱 交通量調査編」
(国土交通省)
「スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律」(平成2年 環大自第84 号)
「平年値2010(統計期間1981〜2010年)第5版」(平成24年 気象庁編)
地方自治体の「環境計画等」
環境影響評価項目
共通
大気環境大気質 硫化水素粉じん等窒素酸
化物
資料2 環境影響評価で用いる調査・予測・評価の参照資料
巻末資料 10
表2-1 環境影響評価で用いる参照資料 (2/8)
参照資料
「騒音に係る環境基準について」(平成10年 環境庁告示第64号)
「騒音に係る環境基準の評価マニュアル」(平成27年 環境省)
「騒音規制法」(昭和43年 法律第98号)
「騒音規制法第十七条第1項の規定に基づく指定地域内における自動車騒音の限度を定める省
令」(平成12年 総理府令第15号)
「風力発電施設から発生する騒音等への対応について」(平成28年11月 環境省 風力発電施設
から発生する騒音等の評価手法に関する検討会)
「風力発電施設から発生する騒音等測定マニュアル(平成29年5月 環境省)」
「特定建設作業に伴って発生する騒音の規制に関する基準」(昭和43年 厚生省・建設省告示第
1号)
「低騒音型・低振動型建設機械の指定に関する規定」(平成9年 建設省告示第1536号)
「建設工事騒音の予測モデル"ASJCN-Model2007"(日本音響学会誌64巻4号)」(平成20年4月
一般社団法人日本音響学会)
「道路交通騒音の予測モデル"ASJRTN-Model2013"(日本音響学会誌70巻4号)」(平成26年4月
一般社団法人日本音響学会)
「ISO 9613シリーズで示されている伝搬予測方法」
「ISO 226 に示されている最小可聴値」
「JIS C 1400-11 (対応国際規格 IEC 61400-11) に示されている純音性可聴度」
「道路環境影響評価の技術手法(平成24年度版)」(平成25年3月 国土交通省国土技術政策総合
研究所独立行政法人土木研究所)
「国土技術政策総合研究所資料NO.671道路環境影評価等に用いる自動車排出係数の算定根拠
(平成22年度版)」(平成24年 国土交通省国土技術政策総合研究所)
「全国道路・街路交通情勢調査(道路交通センサス)一般交通量調査実施要綱 交通量調査編」
(国土交通省)
「低周波音の測定方法に関するマニュアル」(平成12年10月 環境庁大気保全局)
「低周波音対策検討調査(中間とりまとめ)」(平成15年3月 環境省)
「ゼンリン住宅地図」(株式会社ゼンリン)
「都市計画法」(昭和43年 法律第100号)
「環境基準達成状況の評価結果(道路別)」(北海道環境生活部環境推進課)
「道路別評価状況」(北海道環境生活部環境推進課)
地方自治体の「環境白書・環境計画等」
「特定建設作業に伴って発生する騒音の規制に関する基準」(昭和43年厚生省・建設省告示第
1号)
「特定工場等において発生する騒音の規制に関する基準(昭和43年厚生省・農林省・通商産業
省・運輸省告示第1号)過去)
「低周波音の測定方法に関するマニュアル」(平成12年10月 環境庁大気保全局)
「昭和55年度報告書1 低周波音に対する感覚と評価に関する基礎研究」(文部科学省研究費
『環境科学』特別研究:超低周波音の生理・心理的影響と評価に関する研究班)
「風力発電施設から発生する騒音等への対応について」(平成28年11月 環境省 風力発電施設
から発生する騒音等の評価手法に関する検討会)
「ISO 9613シリーズで示されている伝搬予測方法」
「ISO 7196 に示されている周波数重み付け特性 G特性、及び超低周波音の感覚閾値」
地方自治体の「環境白書・環境計画等」
「振動規制法」(昭和51年 法律第64号)
「振動規制法施行規則」(昭和51年 総理府令第58号)
「振動規制法施行規則別表第二備考4及び7」(昭和51年 総理府令第58号)
「特定建設作業に伴って発生する振動の規制に関する基準」(昭和43年 厚生省・建設省告示第
1号)
「建設騒音及び振動の防止並びに排除に関する調査試験報告書」(昭和54年 建設省土木研究所)「建設工事に伴う騒音振動対策ハンドフック 第3版」(平成13年 (社)日本建設機械化協会)
「低騒音型・低振動型建設機械の指定に関する規定」(平成9年 建設省告示第1536号)
「道路交通振動の予測計算式」(旧建設省土木研究所提案式)
「地域の環境振動」(平成13年3月 社団法人日本騒音制御工学会)
「道路環境整備マニュアル」(平成元年 社団法人日本道路協会)
「道路環境影響評価の技術手法(平成24年度版)」(平成25年3月 国土交通省国土技術政策総合
研究所独立行政法人土木研究所)
「国土技術政策総合研究所資料NO.671道路環境影評価等に用いる自動車排出係数の算定根拠
(平成22年度版)」(平成24年 国土交通省国土技術政策総合研究所)
「全国道路・街路交通情勢調査(道路交通センサス)一般交通量調査実施要綱 交通量調査編」
(国土交通省)
「土地分類基本調査(地形分類図)」(国土庁土地局)
地方自治体の「環境白書・環境計画等」
騒音
環境影響評価項目
大気環境騒音及
び超低
周波音
超低周
波音
振動 振動
資料2 環境影響評価で用いる調査・予測・評価の参照資料
巻末資料 11
表2-1 環境影響評価で用いる参照資料 (3/8)
参照資料
「水質汚濁に係る環境基準」(昭和46年 環境庁告示第59号)
「風力発電等環境アセスメント基礎情報整備モデル事業報告書」(環境省)
「河川防災技術基準 調査編」(平成24年 国土交通省)
「面整備事業環境影響評価技術マニュアル」(平成11年11月 建設省都市局都市計画課)
「新たな森林施業に対応した水土保全技術手法に関する調査研究 平成25 年度報告書」(平成
26年6月 一般社団法人森林保全管理技術研究所)
「道路及び鉄道建設事業における河川の濁り等に関する環境影響評価ガイドライン」(平成21
年 環境省)
「新訂版 ダム建設工事における濁水処理」(平成12年 財団法人日本ダム協会)
「森林作業道からの濁水流出を防ぐために-林地の濁水流出防止効果-」(平成25年 岐阜県森林
研究所)
「重要水源地における林道と水流の間の距離」(Trimble&Sartz,1957)
「山形県河川・砂防情報システム」(山形県ホームページ)
「可搬式電磁流速計を用いた流速断面積法」(平成26年4月版 国土交通省河川砂防技術基準 調
査編)
「気象業務法施行規則」(昭和27年 運輸省令第101号)
「地上気象観測指針」(平成14年 気象庁)
「公共用水域水質 地下水質 大気汚染状況 ダイオキシン類測定結果」(岩手県)
JIS A1201
JIS A1204(土の粒度試験)
JIS A12185(定水位試験方法)
JIS K00948.4(流速計による測定)
JIS K0101 9
JIS M0201
地方自治体の「環境白書・環境計画・林地開発手引き等」
「水文水質データベース」(国土交通省HP 平成29年)
「むつ小川原港港湾計画資料」(昭和52年 むつ小川原港港湾管理者)
「河川砂防技術基準調査編」(平成24年 国土交通省)
「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律施行令第5条第1項に規定する埋立場所等に排出
しようとする金属等を含む廃棄物に係る判定基準を定める省令」(昭和48年 総理府令第6号)
「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律施行令第5条第1項に規定する埋立場所等に排出
しようとする廃棄物に含まれる金属等の検定方法」(昭和48年 環境庁告示第14号)
「水質汚濁に係る環境基準」(昭和46年 環境庁告示第59号)
地方自治体の「環境計画等」
「鉱泉分析法指針」(環境省)
「温泉資源の保護に関するガイドライン(地熱発電関係)」(平成24年3月 環境省自然環境局)
水の濁り水質
環境影響評価項目
水環境
底質 有害物質その他 温泉
資料2 環境影響評価で用いる調査・予測・評価の参照資料
巻末資料 12
表2-1 環境影響評価で用いる参照資料 (4/8)
参照資料
「日本の典型地形」(平成11年 財団法人日本地図センター)
「日本の地形レッドデータブック」(平成6年 古今書院)
「過去の気象データ・ダウンロード」(気象庁ホームページ)
「自然環境保全基礎調査」(環境庁・環境省)
「第3回自然環境保全基礎調査」(環境庁平成元年)
「第6回・第7回自然環境保全基礎調査-植生調査情報」(環境省自然環境局生物多様性セン
ター)
「土地分類基本調査」(昭和50年 国土庁土地局)
「土地分類基本調査GISデータ」(国土交通省)
「文化財保護法」(昭和25年 法律第214号)
地方自治体の「文化財保護条例・環境計画等」
「第5回風力発電施設に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会資料」(平成23年2月
風力発電施設に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会)
「風力発電用風車の日影による環境影響シミュレーション」(小川主水)
「Update of UK Shadow Flicker Evidence Base」(Department of Energy and Climate
Change、2011)
「PlanningforRenewableEnergyACompanionGuidetoPPS22」
(OfficeoftheDeputyPrimeMinister,2004)
「Hinweise zur Ermittlung und Beurteilung der optischen Immissionen von
Windenergieanlagen」(WEA-Schattenwurf-Hinweise)「風力発電による視覚的影響に関する評
価方法」(平成14年 シュレースヴィッヒ・ホルシュタイン州環境庁)
「第2〜5回自然環境保全基礎調査(植生調査)現存植生図」(環境省生物多様性センター)
「第6回・第7回自然環境保全基礎調査-植生調査情報」(環境省自然環境局生物多様性セン
ター)
「土地利用基本計画図」(国土交通省)
「ゼンリン住宅地図」(株式会社ゼンリン)
「地形図」(国土地理院)
「国土数値情報」(国土交通省ホームページ)
「土地分類基本調査」(昭和50年 国土庁土地局)
「土地利用図」(国土地理院)
「北海道土地利用基本計画図石-2(江別市石狩市当別町厚田村新篠津村)」(平成16年3月 北海道)地方自治体の「環境計画等」
「地上デジタル放送 受信ガイドブック 共同受信施設のデジタル化に向けて」(平成17年 地上
デジタルテレビ放送受信ガイドブック編集委員会)
「建造物によるテレビ受信障害調査要領(地上デジタル放送)地上デジタル放送テレビ受信状況
調査要領」(平成22年 社団法人日本CATV技術協会)
「建造物障害予測技術(地上デジタル放送)」(平成15年 NHK受信技術センター編)
「風力発電設備によるテレビ受信障害の予測検討方法」(平成24年4月 財団法人NHK エンジニ
アリングサービス)
「デジタル放送時代の受信システム」(平成15年 社団法人電子技術情報産業協会)
地方自治体の「環境計画等」
電波障
害(漁
業無線)地方自治体の「環境計画等」
「国土交通省公共測量作業規程」(平成25年 国国地第315号 及び 平成28年 国国地第190号)
「斜面安定解析による地すべり地形斜面の危険度評価」(平成19年 森脇克・佐々木良宣、日本
地すべり学会誌)
環境影響評価項目
その他
の環境
地形及
び地質
重要な
地形及
び地質
その他 風車の影電波障害地盤変動 資料2 環境影響評価で用いる調査・予測・評価の参照資料
巻末資料 13
表2-1 環境影響評価で用いる参照資料 (5/8)
参照資料
「河川水辺の国勢調査基本調査マニュアル」(平成24年3月一部改訂 国土交通省水管理・国土
保全局河川環境課)
「サシバの保護の進め方」(平成25年12月 環境省自然環境局野生生物課)
「チュウヒ保護の進め方」(平成28年6月 環境省自然環境局野生生物課)
「ミゾゴイ保護の進め方」(平成28年6月 環境省自然環境局野生生物課)
「猛禽類保護の進め方(改訂版)-特にイヌワシクマタカオオタカについて-」(平成24年 環境省
自然環境局野生生物課編)
「風力発電等環境アセスメント基礎情報整備モデル事業報告書」(環境省)
「市町村別鳥獣生息状況調査報告書」(平成元年 青森県)
「自然環境保全基礎調査 動植物分布調査報告書等」(環境庁・環境省)
「道路環境影響評価の技術手法(平成24年度版)」(平成25年3月 国土交通省国土技術政策総合
研究所独立行政法人土木研究所)
「鳥類等に関する風力発電施設立地適正化のための手引き」(平成27年9月改訂 環境省自然環
境局野生生物課)
「球体モデルによる風車への鳥類衝突数の推定法」(平成25年 由井・島田)
「風力発電導入ガイドブック」(平成20年 NEDO)
クマタカその保護管理の考え方(平成12年 クマタカ生態研究グループ)
「平成26年度風力発電施設に係る渡り鳥・海ワシ類の情報整備委託業務報告書」(平成27年3月
環境省自然環境局)
「Use of Avoidance Rates in the SNH Wind Farm Collision Risk Model」(Scottish
Natural Heritage,2010)
「Ecology and conservation of raptors in forests」(Petty,Steve J.1998. )
「コウモリ識別ハンドブック改訂版」(平成23年 コウモリの会)
「栃木県におけるコヤマコウモリの初記録と音声構造」(平成23年 栃木県立博物館紀要)
「海を渡るコウモリ」(道東コウモリ研究所ほか)
「環境省報道発表資料-希少猛禽類調査(イヌワシ・クマタカ)の結果について-」(環境省
ホームページ)
「日本におけるオオタカの生息分布(1996年〜2000年)」(平成17年 環境省)
「いきものログ」(環境省ホームページ)
「Web 情報に基づくヤマネ生息分布図の作成・公開について」(平成22 年 杉山昌典・門脇
正、筑波大学技術報告、30:62-66)
「希少な生物ユビナガコウモリの移転 津軽ダムとコウモリの共存への取り組み」(津軽ダム環
境保全措置)
「調査報告書」(平成9年3月 山形県文化財保護協会)
「平成25年度風力発電施設に係る渡り鳥・海ワシ類の情報整備委託業務報告書」(平成26年3月
環境省自然環境局)
「平成26年度風力発電施設に係る渡り鳥・海ワシ類の情報整備委託業務報告書」(平成27年3月
環境省自然環境局)
「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約(ラムサール条約)」(昭和55年 条
約第28号)
「モニタリングサイト1000」(環境省生物多様性センターホームページ)
「日本の重要湿地500」(環境省)
「ガンカモ類の生息調査報告書」(環境省)
「文化財保護法」(昭和25年 法律第214号)
「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(平成4年 法律第75号)
「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」(平成14年 法律第88号)
「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」(大正7年 法律第32号)
「自然環境保全法」(昭和47年 法律第85号)
「生物多様性国家戦略2012-2020」(平成24年9月 閣議決定)
地方自治体の「レッドデータブック・環境保全条例・環境計画等」
「天王町誌天王自然と人のあゆみ」(平成22年12月 潟上市)
「面整備事業環境影響評価技術マニュアル」(平成11年11月 建設省都市局都市計画課)
「糞粒法を利用したシカ個体数推定の現状と問題点」(哺乳類科学:44 平成16年 )
「むつ小川原港港湾計画資料」(昭和52年 むつ小川原港港湾管理者)
「日本の干潟藻場サンゴ礁の現況」(平成9年 環境庁)
地方自治体の「環境計画等」
環境影響評価項目
動物
海域に生息する
動物
重要な種及び注
目すべき生息地
(海域に生息す
るものを除く)
資料2 環境影響評価で用いる調査・予測・評価の参照資料
巻末資料 14
表2-1 環境影響評価で用いる参照資料 (6/8)
参照資料
「河川水辺の国勢調査基本調査マニュアル」(平成18年度制定 平成24年3月一部改訂、国土交
通省水管理・国土保全局河川環境課)
「環境省モデル事業」(平成27年 環境省)
「風力発電等環境アセスメント基礎情報整備モデル事業報告書」(環境省)
「道路環境影響評価の技術手法(平成24年度版)」(平成25年3月 国土交通省国土技術政策総合
研究所独立行政法人土木研究所)
「国土技術総合研究所資料No721道路環境影響評価の技術手法「13.動物植物生態系」の環境保
全措置に係る事例集」(平成25年 国土交通省)
「自然環境保全基礎調査」(環境庁・環境省)
「平成12年度地熱開発促進調査No.C-5 安比地域 環境影響調査(第1次)報告書」(平成13年
NEDO)
「硫化水素拡散予測数値モデル」(平成28年 一般財団法人電力中央研究所、NEDO)
「機械通風式冷却塔からの白煙予測手法(その1)及び(その3)」(平成21年 一般財団法人電力中
央研究所、経済産業省受託研究)
「車道による周辺植生への影響(V)」「亀山章(1976) 信州大学農学部紀要 13巻 l号)
「いきものログ」(環境省ホームページ)
「植生調査(1/50,000 縮尺)(自然環境情報GIS 提供システム)」(環境省ホームーページ)
「秋田県植物分布図第2版藤原陸夫」(平成12年 秋田県環境と文化のむら協会)
「石狩町植生概況調査報告書」(平成8年 石狩町・石狩町緑化推進協議会)
「文化財保護法」(昭和25年 法律第214号)
「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(平成4年 法律第75号)
「自然環境保全法」(昭和47年 法律第85号)
「生物多様性国家戦略2012-2020」(平成24年9月 閣議決定)
「植物群落レッドデータ・ブック」(平成8年 NACS-J,WWF Japan)
林野庁保護林制度(平成26年4月1日現在、国有林野部経営企画課国有林野生態系保全室)
「天王町誌天王自然と人のあゆみ」(平成22年12月 潟上市)
「面整備事業環境影響評価技術マニュアル」(平成11年11月 建設省都市局都市計画課)
地方自治体の「レッドデータブック・環境保全条例・環境計画等」
「地熱発電所周辺における樹木の着氷影響と体制樹種に関する文献調査」(電力中央研究所 昭
和58年)
「むつ小川原港港湾計画資料」(昭和52年 むつ小川原港港湾管理者)
「日本の干潟藻場サンゴ礁の現況」(平成9年 環境庁)
地方自治体の「環境計画等」
重要な種及び重
要な群落
植物
海域に生育する
植物
環境影響評価項目
資料2 環境影響評価で用いる調査・予測・評価の参照資料
巻末資料 15
表2-1 環境影響評価で用いる参照資料 (7/8)
参照資料
「自然環境保全法」(昭和47年 法律第85号)
「生物多様性国家戦略2012-2020」(平成24年9月 閣議決定)
「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(平成4年 法律第75号)
「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」(平成14年 法律第88号)
「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」(大正7年 法律第32号)
「道路環境影響評価の技術手法(平成24年度版)」(平成25年3月 国土交通省国土技術政策総合
研究所独立行政法人土木研究所)
「動植物分布調査報告書」(自然環境保全基礎調査環境庁)
「文化財保護法」(昭和25年 法律第214号)
「風力発電等環境アセスメント基礎情報整備モデル事業報告書」(環境省)
「面整備事業環境影響評価技術マニュアル」(平成11年11月 建設省都市局都市計画課)
「猛禽類保護の進め方(改訂版)-特にイヌワシクマタカオオタカについて-」(平成24年 環境省
自然環境局野生生物課編)
「環境アセスメント技術ガイド」(財団法人自然環境研究センター)
「クマタカ・その保護管理の考え方」(平成12年 クマタカ生態研究グループ)
「北海道十勝平野におけるノスリの営巣パターンおよび営巣場所の特徴」(平井克亥・柳川久
平井(2013)日本鳥学会誌,62(2):166-170)
「津軽ダムのクマタカ」(平成20年 国土交通省東北地方整備局津軽ダム工事事務所)
「鳥類等に関する風力発電施設立地適正化のための手引き」(平成27年9月改訂 環境省自然環
境局野生生物課)
「鳥類生態学入門」(平成9年 山岸哲編、築地書館)
「球体モデルによる風車への鳥類衝突数の推定法」(平成25年 由井・島田)
「森林野生動物研究会(編)」(平成9年)
「野生動物管理のためのフィールド調査法」(平成27年 京都大学学術出版会)
「糞粒法によるノウサギ生息密度の推定」(平岡誠志・渡辺弘之・寺崎康正(1977)日本林学会
誌,59(6):200-206)
「ノウサギの生息密度推定法の現状と課題」(矢竹一穂・梨本真・島野光司・松本吏弓・白木
彩子(2002)哺乳類科学,42(1):23-34)
「ノウサギ生息数調査法と被害調査法」(昭和49年 野兎研究会)
「糞から抽出されたDNA を用いたテンの個体数推定」(田悟和巳・荒井秋晴・松村弘・中村匡
聡・足立高行・桑原佳子(2013)哺乳類科学,53(2):311-320)
「豊田市北部広沢川下流域の昆虫調査」(平成16年 矢作川研究)
「天王町誌天王自然と人のあゆみ」(平成22年 潟上市)
地方自治体の「環境保全条例・環境計画等」
環境影響評価項目
生態系 地域を特徴づけ
る生態系
資料2 環境影響評価で用いる調査・予測・評価の参照資料
巻末資料 16
表2-1 環境影響評価で用いる参照資料 (8/8)
参照資料
「国立・国定公園内における風力発電施設の審査に関する技術的ガイドライン」(平成25年3月
環境省自然環境局)
「第3回自然環境保全基礎調査」(平成元年 環境庁)
「第4回自然環境保全基礎調査自然環境情報布図」(環境庁)
「第5次横浜町総合振興計画」(平成23年3月 横浜町)
「環境アセスメント技術ガイド 自然とのふれあい」(平成24年 財団法人自然環境研究セン
ター)
「平成12年度地熱開発促進調査No.C-5 安比地域 環境影響調査(第1次)報告書」(平成13年
NEDO)
「日本の自然景観 東北版I 青森県・岩手県」(平成元年 環境庁)
「景観対策ガイドライン(案)」(昭和56年 UHV送電特別委員会環境部会立地分科会)
地方自治体の「景観条例・景観計画・環境計画等」
「北海道自然環境保全指針」(平成元年7月 北海道)
「全国道路・街路交通情勢調査(道路交通センサス)一般交通量調査実施要綱 交通量調査編」
(国土交通省)
「騒音に係る環境基準について」(平成10年9月 環境庁告示第64号)
「騒音に係る環境基準の評価マニュアル」(平成27年 環境省)
「建設工事騒音の予測モデル"ASJCN-Model2007"(日本音響学会誌64巻4号)」(平成20年4月
一般社団法人日本音響学会)
「道路交通騒音の予測モデル"ASJRTN-Model2013"(日本音響学会誌70巻4号)」(平成26年4月
一般社団法人日本音響学会)
「地域の音環境計画(平成9年 社団法人日本騒音制御工学会)
「ISO 9613シリーズで示されている伝搬予測方法」
「低周波音の測定方法に関するマニュアル」(平成12年10月 環境庁大気保全局)
「Planning for Renewable Energy A Companion Guide to PPS22」(Office of the Deputy
Prime Minister,2004)
「Hinweise zur Ermittlung und Beurteilung der optischen Immissionen von
Windenergieanlagen」(WEA-Schattenwurf-Hinweise)「風力発電による視覚的影響に関する評
価方法」(平成14年 シュレースヴィッヒ・ホルシュタイン州環境庁)
「風力発電用風車の日影による環境影響シミュレーション」(小川主水)
地方自治体の「環境白書等」
「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(昭和45年 法律第137号)
「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」(平成12年 法律第104号)
「資源の有効な利用の促進に関する法律」(平成3年 法律第48号)
「建設副産物適正処理推進要綱」(平成14年 国土交通省)
「国土交通省土木工事積算基準 平成26年度版」(国土交通省)
地方自治体の「環境計画・廃棄物処理計画等」
地方自治体の「環境計画等」
温室効
果ガス等「温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル(Ver3.5)」(環境省・経済産業省)
「放射性物質汚染対処特措法」(平成23年 法律第110号)
「地上気象観測指針」(平成14年 気象庁)
「降下物モニタリング結果情報」(福島県ホーム―ページ)
「環境放射線モニタリング指針」(原子力安全委員会)
「放射線モニタリング情報」(原子力規制委員会ホームページ)
「公共用水域放射性物質モニタリング調査結果」(環境省ホームページ)
「環境試料採取法(文部科学省放射能測定法シリーズ No.16)」(昭和58年制定 文部科学省)
環境影響評価項目
景観 主要な眺望点及
び景観資源並び
に主要な眺望景観二酸化炭素
放射線の
粉じん等の発生
に伴うもの
水の濁りの発生
人と自
然との
触れ合
いの活
動の場
主要な人と自然
との触れ合いの
活動の場
廃棄物等産業廃棄物
残土
資料3 都道府県の環境影響評価の審査に係る担当部署
巻末資料 17
資料3 都道府県の環境影響評価の審査に係る担当部署
各都道府県の風力・地熱発電事業の環境影響評価の審査担当部局を一覧表にとりまとめた(2017
年度現在)。表3-1 都道府県の環境影響審査に係る担当部署 (1/2)
地方 県名 名称 担当部署 連絡先
- 北海道 北海道環境影響評価審議会
北海道環境生活部 環境局 環境政策課
環境影響評価グループ
TEL:011-204-5981
FAX:011-232-1301
青森県 青森県環境影響評価審査会 環境保全課 水・大気環境グループ
TEL:017-734-9242
FAX:017-734-8081
岩手県 岩手県環境影響評価技術審査会
環境生活部 環境保全課
環境影響評価・土地利用担当
TEL:019-629-5269
FAX:019-629-5364
宮城県 宮城県環境影響評価技術審査会 環境対策課
TEL:022-211-2667
FAX:022-211-2696
秋田県 秋田県環境影響評価審査会 生活環境部 環境管理課
TEL:018-860-1571
FAX:018-860-3881
山形県 山形県環境影響評価審査会 みどり自然課 環境影響評価担当 TEL/FAX:023-630-3042
福島県 福島県環境影響評価審査会 環境共生課 環境影響評価担当
TEL:024-521-7250
FAX:024-521-7927
茨城県 茨城県環境影響評価審査会 生活環境部環境政策課環境企画
TEL:029-301-2933
FAX:029-301-2949
栃木県 栃木県環境影響評価技術審査会 環境森林政策課 環境立県戦略室
TEL:028-623-3294
FAX:028-623-3259
群馬県 群馬県環境影響評価技術審査会 環境森林部環境政策課
TEL:027-226-2815
FAX:027-243-7702
埼玉県 埼玉県環境影響評価技術審議会 環境部 環境政策課 環境影響評価担当
TEL:048-830-3041
FAX:048-830-4770
千葉県 千葉県環境影響評価委員会 環境生活部環境政策課環境影響評価・指導班
TEL:043-223-4138,4135
FAX:043-222-8044
東京都 東京都環境影響評価審議会 環境局 総務部 環境政策課 TEL:03-5388-3406
神奈川県 神奈川県環境影響評価審査会
環境農政局 環境部 環境計画課
環境影響審査グループ
TEL:045-210-4070
新潟県 新潟県環境影響評価審査会 環境企画課企画調整係
TEL:025-280-5149
FAX:025-280-5166
富山県 富山県環境影響評価技術審査会 生活環境文化部 環境政策課 TEL:076-444-3141
石川県 石川県環境審議会 環境部環境政策課
TEL:076-225-1463
FAX:076-225-1466
福井県 福井県環境審議会
環境政策課
環境政策課環境計画推進グループ
TEL:0776-20-0301
FAX:0776-20-0679
山梨県 山梨県環境影響評価等技術審議会 山梨県森林環境部大気水質保全課
TEL:055-223-1508
FAX:055-223-1512
長野県 長野県環境影響評価技術委員会 環境部環境政策課
TEL:026-235-7163
FAX:026-235-7491
岐阜県 岐阜県環境影響評価審査会 環境生活部環境管理課環境安全係
TEL:058-272-1111
(内線2835)
静岡県 静岡県環境影響評価審査会 くらし・環境部環境局生活環境課
TEL:054-221-2268
FAX:054-221-3665
愛知県 愛知県環境影響評価審査会
環境部 環境活動推進課
環境影響評価グループ
TEL:052-954-6211
三重県 三重県環境影響評価委員会 環境生活部 地球温暖化対策課
TEL:059-224-2368
FAX:059-229-1016
滋賀県 滋賀県環境影響評価審査会 滋賀県琵琶湖環境部環境政策課
TEL:077-528-3357
FAX:077-528-4844
京都府 京都府環境影響評価専門委員会 環境部環境管理課
TEL:075-414-4715
FAX:075-414-4705
大阪府 大阪府環境影響評価審査会
環境農林水産部 環境管理室環境保全課
アセスメントグループ
TEL:06-6210-9580
FAX:06-6210-9575
兵庫県 兵庫県環境影響評価審査会 農政環境部 環境管理局 環境影響評価室
TEL:078-362-9086
FAX:078-362-3914
奈良県 奈良県環境審議会
くらし創造部景観・環境局 環境政策課
きれいに暮らす奈良推進係
TEL:0742-27-8732
FAX:0742-22-1668
和歌山県 和歌山県環境影響評価審査会 環境生活部 環境政策局 環境生活総務課
TEL:073-441-2674
FAX:073-433-3590近畿東北関東中部
資料3 都道府県の環境影響評価の審査に係る担当部署
巻末資料 18
表3-1 都道府県の環境影響審査に係る担当部署 (2/2)
地方 県名 会名称 担当部署 連絡先
鳥取県 鳥取県環境影響評価審査会 生活環境部環境立県推進課
TEL:0857-26-7205
FAX:0857-26-8194
島根県 島根県環境影響評価技術審査会 環境生活部 環境政策課
TEL:0852-22-6379
FAX:0852-25-3830
岡山県 岡山県環境影響評価技術審査委員会 環境文化部環境企画課 審査・調整班 TEL:086-226-7299
広島県 広島県環境影響評価技術審査会 環境保全課 環境評価・瀬戸内海グループ TEL:082-513-2925
山口県 山口県環境影響評価技術審査会 環境生活部 環境政策課 環境アセスメント班 TEL:083-933-2933
徳島県 徳島県環境影響評価審査会 県民環境部 環境管理課 土砂担当
TEL:088-621-2294
FAX:088-621-2847
香川県 香川県環境影響評価技術審査会
環境森林部 環境政策課
環境マネジメントグループ
TEL:087-832-3213
FAX:087-806-0227
愛媛県 愛媛県環境影響評価審査会 県民環境部環境政策課
TEL:089-912-2345
FAX:089-912-2344
高知県 高知県環境影響評価技術審査会 林業振興・環境部 環境共生課 TEL: 088-821-4554
福岡県 (非公開) 環境部 自然環境課
TEL:092-643-3368
FAX:092-643-3357
佐賀県 佐賀県環境影響評価審査会 県民環境部 環境課
TEL:0952-25-7079
FAX:0952-25-7783
長崎県 長崎県環境影響評価審査会 環境部 地域環境課 地域環境対策班 TEL:095-895-2355
熊本県 熊本県環境影響評価審査会 環境生活部 環境保全課
TEL:096-333-2268
FAX:096-387-7612
大分県 大分県環境影響評価技術審査会 生活環境部 環境保全課 大気保全班 TEL:097-506-3114
宮崎県 宮崎県環境影響評価専門委員会 環境森林部 環境管理課 環境審査担当
TEL:0985-26-7082
FAX:0985-38-6210
鹿児島県 (非公開) 環境林務部環境林務課
TEL:099-286-3327
FAX:099-286-5544
- 沖縄県 沖縄県環境影響評価審査会 環境部環境政策課環境影響評価班 TEL:098-866-2183九州中国四国
環境アセスメント迅速化手法のガイド 地熱発電所 総論
-前倒環境調査の方法論を中心に-
国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構
New Energy and Industrial Technology Development Organization
公開日 2018 年3月 30 日 初版 (修正:2019年3月 31 日)
編集事務局 株式会社 建設環境研究所

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