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肺腺がんのかかりやすさに関わる2ヵ所の遺伝子領域を発見

国立がん研究センター・理研等研究グループによる新しい遺伝子領域の発見をNature Genetics誌に発表

2012年7月12日
独立行政法人国立がん研究センター
独立行政法人理化学研究所

肺がんはがん死因の一位であり、年間に本邦で7万人、全世界で137万人の死をもたらす難治がんです。肺がんの早期発見は難しく、また根治的手術を行ってもしばしば再発します。肺腺がんは最も発症頻度が高く増加傾向にある肺がんですが、喫煙による危険度は2倍程度と、ほかのタイプの肺がんと比較すると弱く、約半数は非喫煙者にも発症します。また、人種差があることも示唆されており、日本人症例を出発点とした喫煙以外の危険因子の同定とそれに基づく予防法の開発・罹患危険度の診断の方法が必要とされています。独立行政法人国立がん研究センター、独立行政法人理化学研究所等研究グループは共同で、肺腺がん患者6千人とがんに罹患していない人1万3千人を遺伝子多型(遺伝子の個人差)の比較解析(GWAS: genome-wide association study/全ゲノム関連解析)を行い、肺腺がんのかかりやすさに関わる2個の新規遺伝子領域を発見しました。そして、その研究成果に関する論文が国際学術誌『Nature Genetics』に発表されます(7月15日付けオンライン掲載:日本時間7月16日)[論文1]

共同研究の主な成果は以下の通りです。

  1. 日本人の肺腺がん患者6,029人とがんに罹患していないコントロール集団13,535人を対象に、ヒトゲノム全域にわたる約70万個の一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism:SNP)を比較解析しました。その結果、2ヵ所の遺伝子領域(BPTF, BTNL2)が肺腺がんへのかかりやすさと関わることが明らかになりました。
  2. 欧米や理研グループにより、すでに2ヵ所の遺伝子領域(TERT, TP63)が発見されていましたが[論文2、3]、今回の日本人症例に焦点を当てた大規模な検索により、合計少なくとも4ヵ所の遺伝子領域が、肺腺がんのかかりやすさに関係することが明らかになりました。
  3. 肺腺がんのかかりやすさには、喫煙等の環境要因だけでなく、遺伝要因(遺伝子の個人差)が関係することが、さらに確認されました。今後、環境要因・遺伝要因の組み合わせにより、肺腺がんにかかりやすい人を予測し、重点的に検診を行い、早期発見・治療を行うことで、肺がん死を減少させることができると考えられます。

本研究は、以下の研究グループ等の取り組みの成果です。

  1. 国立がん研究センター研究所ゲノム生物学研究分野(河野隆志分野長)
  2. 理化学研究所ゲノム医科学研究センター(久保充明センター長代理)
  3. 滋賀医科大学腫瘍センター(醍醐弥太郎センター長)
  4. 国立がん研究センター研究所ゲノムコアファシリティ(吉田輝彦分野長)
  5. オーダーメイド医療実現化プロジェクト(久保充明プロジェクトリーダー)等

私たち(上記1)の研究グループは、本年2月に、肺腺がんの治療標的としてRET融合遺伝子を同定しました[論文4]。

  • プレスリリース:2012年2月13日 新しい肺がん治療標的遺伝子の発見をNature Medicine誌に発表

今後も、予防・治療の両面から、肺腺がんによる死亡の減少をめざし、尽力して参ります。

詳細は関連ファイルをご覧ください。

  • プレスリリース:肺腺がんのかかりやすさに関わる2ヵ所の遺伝子領域を発見
  • [論文1] ShiraishiK, Kunitoh H, Daigo Y, Takahashi A, Goto K, Sakamoto H, Ohnami S, Shimada Y,Ashikawa K, Saito A, Watanabe S, Tsuta K, Kamatani N, Yoshida T, Nakamura Y,Yokota J, Kubo M, Kohno T. A genome-wide association study identifies two newsusceptibility loci for lung adenocarcinoma in the Japanese population. NatureGenetics, 2012, in press.
    doi:10.1038/ng.2353
  • [論文2] LandiMT, Chatterjee N, Yu K, Goldin LR, Goldstein AM, Rotunno M, et al. Agenome-wide association study of lung cancer identifies a region of chromosome5p15 associated with risk for adenocarcinoma. Am JHum Genet 85, 679-91 (2009).
  • [論文3] Miki D,Kubo M, Takahashi A, Yoon KA, Kim J, Lee GK, et al. Variation in TP63 isassociated with lung adenocarcinoma susceptibility in Japanese and Koreanpopulations. Nat Genet. 2010 Oct;42(10):893-6.
  • [論文4] Kohno T, Ichikawa H, Totoki Y,Yasuda K, Hiramoto M, Nammo T, Sakamoto H, Tsuta K, Furuta K, Shimada Y,Iwakawa R, Ogiwara H, Oike T, Enari M, Schetter AJ, Okayama H, Haugen A, SkaugV, Chiku S, Yamanaka I, Arai Y, Watanabe S, Sekine I, Ogawa S, Harris CC, TsudaH, Yoshida T, Yokota J, Shibata T. KIF5B-RET fusions in lung adenocarcinoma.Nature Medicine, 2012, 18, 375-377.

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