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1号特定技能外国人の日本語能力を測る試験等追加のためのガイドライン
出入国在留管理庁
第1 趣旨
「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針について」(平成30年
12月25日閣議決定。以下「政府基本方針」という。)3(1)ウにおいて、1号
特定技能外国人については、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力
を有することを基本としつつ、特定産業分野ごとに業務上必要な日本語能力水準が求
められることとされており、また、当該日本語能力水準は、分野所管行政機関が定め
る試験等により確認することとされている。これらを受け、分野所管行政機関が1号
特定技能外国人の日本語能力を測る試験等を新たに定めるに当たり、留意すべき点や
必要な手続等について以下に示すこととする。
第2 総則
このガイドラインは、分野所管行政機関が1号特定技能外国人の日本語能力を測る
試験等を新たに定めるに当たり、
日本語試験実施機関
(以下
「試験実施機関」
という。)等が満たすべき要件、提出を求めるべき資料、決定までの手続等について示すもので
ある。分野所管行政機関においては、本ガイドラインに沿って検討等を行うものとす
るが、各特定産業分野の事情に鑑みて、追加的な要件や提出資料等を課すことは妨げ
られない。
第3 試験実施要領の作成
試験実施機関は、有識者に相談し、又は助言を求めた上で、試験実施要領を作成し
公表するものとする。試験実施要領には、少なくとも下記1から15に掲げる内容を
含むものとする。
1 試験言語
試験は日本語によることを基本とする。
2 実施主体
試験実施機関の法人名等。
3 実施方法
コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式又はペーパーテスト
方式等、試験実施機関が定める試験の実施方法等。
4 事業年度における実施回数及び実施時期
各事業年度ごとの試験回数を定める。一事業年度当たりの実施回数は、2回以
上であることが望ましい。
5 実施場所
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試験を実施する国の名称等。
6 受験資格者
受験者の資格について定めている場合は記載する。なお、試験に合格すること
ができたとしても、「特定技能」の在留資格が付与されることが保証されるもの
ではなく、別途法令に定める要件を満たす必要がある旨を試験実施要領及び受験
案内等において周知するものとする。
7 試験実施時の注意事項
試験の実施に当たり、試験実施機関又は受験者が注意すべき事項等。
8 合否の通知方法
試験結果の通知及び証明書の発行の方法等。
9 試験実施体制
(1)試験問題作成体制
作問に当たり、有識者の知見を十分に踏まえるための体制や有識者の選定基
準等について記載する。なお、試験実施機関は、試験を行うに当たり必要な学
識経験、実務経験又は資格を有する者を作問委員等として指定し、テストスペ
ック(試験の細目表)に基づいた試験問題の作成のほか、採点基準や合否判定
基準の作成に当たることに加え、作問委員等が受験者を対象とする講習・研修
等に参加したり、受験者が所属する機関の関係者が作問委員等を務めることな
どのないようにすることを含め、作問委員等における守秘義務の遵守のために
必要な措置を講じるものとされていることに留意する(第5の3参照)。
(2)試験採点体制
産出技能についての出題、又は受容技能の出題であって自由記述問題がある
場合、試験の採点に当たり、有識者の知見を十分に踏まえるための体制や有識
者の選定基準等について記載する。なお、試験実施機関は、試験採点体制を構
築するに当たって必要な学識経験、実務経験又は資格を有する者を作問委員等
として指定し、採点基準や合否判定基準の作成に当たることに加え、作問委員
等が受験者を対象とする講習・研修等に参加したり、受験者が所属する機関の
関係者が作問委員等を務めることなどのないようにすることを含め、作問委員
等における守秘義務の遵守のために必要な措置を講じるものとされていること
に留意する(第5の3参照)。
(3)試験実施体制
試験に関する事務を適切に実施できる体制の確保の方法等について記載する
(4)試験の適切な運用をフォローする体制
試験の内容及び実施に関して、試験の妥当性、信頼性、複数回の試験の同質
性を含む適正性を継続的に担保する体制(例として、専門家又は第三者による
定期的な確認、助言の体制等)について記載する。また、試験の妥当性、信頼
性及び複数回の試験の同質性に関する研究・検証の状況(専門家又は第三者に
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よる確認、助言の体制を置く場合には、これら確認及び助言が当該研究・検証
等に基づくものであることを含む。)及び評価の方法・体制について記載する。
10 試験水準
政府基本方針3(1)ウに規定する日本語能力水準を踏まえ、試験実施
機関が定める試験の水準について記載するとともに、「「日本語教育の参照枠」
二次報告-日本語能力評価について-」
(令和3年3月12日文化審議会国語
分科会日本語教育小委員会。以下「日本語教育の参照枠」という。)における、
CEFRに準じたA1からC2の各レベルとの対応関係を示す対照表を記載
する。なお、当該水準は、日本語教育の参照枠におけるCEFRのA2レベル
相当以上にすることが必要であることに留意する。
11 試験の概要
試験を実施する科目及び試験時間、試験問題の構成、各設問で測ろうとして
いる力、試験の内容や解答方法、受験手続の流れ等について記載する。試験は、
少なくとも読む試験及び聞く試験により実施することを基本とする。
12 合否の基準
合否判定の基準(スコア方式の試験の場合、日本語教育の参照枠におけるC
EFRのA2レベル相当以上のスコア)について記載する。
13 試験の不正防止策
(1)ペーパーテスト方式の場合
適正な試験実施のための試験監督者の配置や研修、確実な本人確認等なり
すましの防止、持ち物検査、通信機能付き情報端末の管理の徹底、試験問題
の漏えいの防止など、不正行為や情報漏えい等の防止のために講じる措置等
を記載する(第5の5参照)。
(2)コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式の場合
(1)のほか、翻訳ソフトやオンライン辞書の使用等の防止のために講じ
る措置等を記載する(第5の5参照)。
14 試験結果の公表方法
試験結果の公表方法及び出入国在留管理庁に対する試験実施状況報告書の提
出等。
15 試験問題のサンプル
試験問題のサンプルを掲載する。
16 その他必要事項
合格証明書等の有効期限、試験に関する書類の保存期間その他の必要事項を
記載する。
第4 試験実施機関に関する要件
1 試験実施機関が法人(外国におけるこれに相当する者を含む。)であること。
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2 各分野所管行政機関と連絡及び調整等を行うことができる拠点を日本国内に常
設していること。
3 継続性のある組織・経営体制であり、次の(1)及び(2)を満たしているこ
と。
(1)過去3事業年度において債務超過でないこと。
(2)事業運営に必要な資力を有していること。
4 次の(1)又は(2)を満たし、個人情報に関するセキュリティ管理体制が整
備されていること。
(1)法人として、又は受験生の個人情報を扱う全ての事業単体において、プライ
バシーマークを取得し、又は情報セキュリティマネジメントシステム(ISO
27001/ISMS)の認証を受けていること。
(2)外国の試験実施機関については、当該国の個人情報保護に関する制度に鑑み
て(1)に準ずる個人情報の管理体制があること。
5 試験実施機関又はその代表者、理事等経営に実質的に関与している者が反社会
的組織との関係がなく、かつ、暴力的又は脅迫的行為等、日本語試験等を実施す
る主体として不適当な行為をする者でないこと。
6 試験の適正な実施を確保するため、分野所管行政機関又は出入国在留管理庁が
必要に応じて試験実施機関に対して指導等を行うことがあり、
試験実施機関はこ
れに誠実に対応しなければならないことを理解していること。
7 本ガイドラインに規定する要件について、1号特定技能外国人の日本語能力を
測る試験等として追加する旨の決定がなされた後も継続してこれを満たす体制
となっていること。また、当該要件を満たしていないことが判明し、改善の見込
みも認められない場合など、分野所管行政機関又は出入国在留管理庁が必要と認
める場合にあっては、
当該決定が取り消されることがあることを理解しているこ
と。
8 試験問題の作成及び試験の実施に関しては、本ガイドラインのほか、政府基本
方針及び「『特定技能』に係る試験の方針について」(令和2年1月30日出入
国在留管理庁)
の内容を十分に理解した上でこれらの趣旨を踏まえて行うことと
していること。
9 次の(1)ないし(3)に掲げる情報等について、分野所管行政機関又は出入
国在留管理庁から求めがあった場合は、速やかにこれを提供する体制となってい
ること。
(1)受験者数、合格者数、受験生の国籍・性別等の属性、試験会場、試験日程、
合格発表日、実施した全ての問題その他実施済み試験に関する情報、解答デー
タ、試験分析結果等
(2)受験予定者数、受験予定者の属性等今後実施予定の試験に関する情報、デー
タ等
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(3)個別の受験者の合否、出願時の申告内容その他受験生個人に関する情報
10 試験の内容又は実施状況に関して、分野所管行政機関又は出入国在留管理庁に
おいて調査が必要と判断する場合は、これに誠実に協力することとしているこ
と。
第5 試験に関する要件
1 日本国内において、原則として、申請日の時点において2年以上、日本語試験
が継続的に実施されている実績があること。また、海外においても複数回開催さ
れていることが望ましい。
ただし、既に日本語に係る資格・検定試験の実績がある試験実施機関において
同一試験と認められる範囲での試験内容の変更を行う場合や、同試験実施機関に
おいて新たな試験を開発する場合には、有識者の判断等により、基礎となる資格
・検定試験で得られた知見の活かされ方を勘案し、実績が2年に満たない場合で
あっても参加を可能とする場合がある。
2 試験び試験時間、試験問題の構成、試験の内容や解答方法、受験手続の流れ、
模擬テスト(問題のサンプル)が受験者に理解できるよう、ホームページや試験
のガイドブックなどに公表されていること。
3 試験を行うに当たって必要な学識経験、実務経験又は資格を有する者が作問委
員等として指定され、テストスペック(試験の細目表)に基づいた試験問題の作
成、採点基準や合否判定基準の作成に当たっていること。また、作問委員等が受
験者を対象とする講習・研修等に参加したり、受験者が所属する機関の関係者が
作問委員等を務めることなどのないようにすることを含め、作問委員等における
守秘義務の遵守のために必要な措置が講じられていること。
4 試験水準が適切であること。特に、「日本語教育の参照枠」における、CEF
Rに準じた各レベルとの対応関係について、専門家による統計的な検証がなされ
ており、その内容及び手法が適切であって、かつ、報告書等の形で取りまとめら
れているなど第三者による確認が可能であること。
5 試験の不正防止策が適切であること。特に、試験監督者の配置や研修、なりす
ましの防止、持ち物検査、通信機能付き情報端末の管理の徹底、試験問題の漏え
いの防止、CBT方式の場合の翻訳ソフトやオンライン辞書等の使用の防止等、
不正行為や情報漏えい等の防止に関して具体的な措置を講じていること。
6 試験会場及び試験実施の際の受験者の緊急時の安全確保について具体的な対策
及び実施マニュアルなどが整備されていること。
7 各事業年度終了後、出入国在留管理庁に対し、遅滞なく試験実施状況報告書を
提出するとともにこれを公表することとしていること。
第6 1号特定技能外国人の日本語能力を測る試験等の追加手続
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1 試験実施機関からの要望を踏まえ、分野所管行政機関において、1号特定技能
外国人の日本語能力を測る試験等の追加について検討を行う。
2 分野所管行政機関から試験実施機関に対して、試験実施要領案を始め、上記第
3から第5に定めた要件を満たすことを示すための書類の作成を指示する。その
際、本ガイドラインに参考書式の定めのあるものはこれによることとするが、各
特定産業分野の事情に鑑みて追加の要件又は提出資料等を定めている場合には、
これらに係る資料の作成等も併せて指示する。
3 試験実施機関において、有識者に助言等を求めた上で試験実施要領案を作成す
るとともに、その他の提出書類の作成等を行う。
4 試験実施機関から各書類の提出を受けた分野所管行政機関において、下記の点
について可能な範囲で確認し、
必要と判断する場合には修正又は追加の資料等を
求める
(分野所管行政機関において追加の要件等を設けた場合はそれに適合等す
るかについて判断する。)。
○しろまる 試験実施要領案の適正性(有識者の適正な助言に基づいているか等)
○しろまる 試験水準の適正性(「日本語教育の参照枠」における、CEFRに準じた各
レベルとの対応付けが適正になされているか等)
○しろまる ガバナンスの適正性(不正防止策が適正に講じられているか等)
○しろまる その他必要書類が適正に作成及び提出されているか
5 分野所管行政機関から確認済みの各書類の回付を受けた出入国在留管理庁は、
1号特定技能外国人の日本語能力を測る試験等に追加することが適当かについ
て、
必要に応じて専門的な知見を有する有識者に対するヒアリングを実施した上
で検討する。
6 出入国在留管理庁から文化庁に対して確認を依頼し、文化庁からの回答を踏ま
えた上で出入国在留管理庁から分野所管行政機関に対して結果を通知する。