法制審議会 刑事法(再審関係)部会 第10回会議 議事録 第1 日 時 令和7年11月11日(火) 自 午前 9時32分 至 午後 0時11分 第2 場 所 中央合同庁舎第6号館A棟7階会議室 第3 議 題 1 審議 ・「再審請求審における検察官の保管する裁判所不提出記録の弁護人によ る閲覧・謄写」 ・「再審請求事件の管轄裁判所」 ・「再審開始決定に対する不服申立て」 ・「再審請求権者の範囲」 2 その他 第4 議 事 (次のとおり) 議 事 ○しろまる今井幹事 ただいまから法制審議会刑事法(再審関係)部会の第10回会議を開催いたします。 ○しろまる大澤部会長 本日は御多忙のところ、御出席くださり誠にありがとうございます。本日は川出委員、酒巻委員、井上関係官、寺田関係官はオンライン形式により出席されています。また、後藤委員はオンライン形式により出席される予定ですが、所用のため遅れての出席と承っております。なお、酒巻委員、佐藤委員は所用のため途中で退室されると伺っております。また、江口委員は欠席をされています。 次に、事務当局から本日お配りした資料について説明をしてもらいます。 ○しろまる今井幹事 本日は配布資料9から11までをお配りしております。これらは一巡目の議論において、それぞれの論点に関し、委員、幹事の皆様から示された検討課題等について、部会長の御指示の下、事務当局において整理したものでございます。 配布資料9は「論点整理(案)」の「2 再審開始決定に対する不服申立て」に、配布資料10は「論点整理(案)」の「6 再審請求権者の範囲」に、配布資料11は「論点整理(案)」の「10 再審請求に係る決定に対する不服申立期間」にそれぞれ対応しております。 本日お配りした資料の御説明は以上となります。 ○しろまる大澤部会長 資料について御意見、御質問等がある場合には、前回と同様、関連する論点についての議論の際に御発言を頂ければと存じます。 それでは早速、諮問事項の審議に入りたいと思います。本日は、前回の会議でお配りした配布資料7に沿いまして「再審請求審における検察官の保管する裁判所不提出記録の弁護人による閲覧・謄写」のうち、「第1」の「4 再審請求審において閲覧・謄写した証拠の目的外使用を禁止するか」から審議を行いたいと思います。この論点につきましては、複数の検討課題が挙がっておりますけれども、全体をまとめて審議を行いたいと思います。御意見等がある方は挙手をお願いいたします。 ○しろまる田岡幹事 「4」番の目的外使用禁止について、発言させていただきます。まず、「第1」の「1」「(1)」の「A案」、裁判所提出型を前提とするのか、「B案」、直接開示型を前提とするのかによって、現行法の規律は異なると理解しております。 仮に「第1」の「1」「(1)」の「A案」、裁判所提出型を前提にするのであれば、これは通常審における記録の取り寄せ決定や公務所照会と同様に、証拠調べそのものではなく、証拠調べの準備行為であると理解できます。すなわち、通常審では民事訴訟の文書送付嘱託のような明文規定はございませんが、実務の慣行として記録や書類の取り寄せが行われておりまして、例えば裁判所間の共助として他の裁判所から関連事件の訴訟記録を取り寄せたり、家庭裁判所の社会記録、つまり少年調査記録を取り寄せる場合があります。また、公務所照会として公務所又は公私の団体から書類を取り寄せる場合があります。これらは証拠調べそのものではなく、証拠調べの準備行為と理解されておりまして、弁護人は裁判所が取り寄せた記録や書類を刑訴法40条に基づき謄写した上で必要な証拠の取調べを請求することとなっておりますが、このようにして弁護人が謄写した記録は、刑訴法281条の4第1項の検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠には該当しませんので、目的外使用禁止の対象にはならないと理解されております。 なお、民事訴訟においても文書送付嘱託又は文書提出命令によって他の裁判所や検察官等が保管する記録を取り寄せる場合がありますが、この場合にも当事者や訴訟代理人は送付嘱託に係る記録を謄写することができまして、これもまた同様に目的外使用禁止の対象にはならないと理解されております。さらに、第4回会議でも発言しましたように、少年保護事件や医療観察法の入院又は通院処遇事件において付添人が謄写した証拠についても、目的外使用禁止の規定は設けられておりません。 このように現行法の規律を見ますと、弁護人が検察官から閲覧・謄写の機会を与えられた証拠ではなくて、裁判所が取り寄せた記録や書類を謄写した場合には、目的外使用禁止の対象にならないという規律になっていると理解しておりますので、「第1」の「1」「(1)」の「A案」、裁判所提出型を前提にするのであれば、むしろ目的外使用禁止の対象にならないというのが現行法の規律であると理解しております。 その上で、閲覧・謄写された証拠に係る関係者の名誉、プライバシーの保護を図る他の方策があるかと考えますと、第4回会議でも発言しましたが、少年審判規則7条を参考にした規定を設けることによって弊害を防止することは可能ではないかと考えております。すなわち、少年保護事件においては付添人が謄写した証拠には目的外使用禁止の規定はありませんけれども、裁判所が閲覧又は謄写を許可する際に付添人に知らせてはならない旨の条件を付し、又は付添人に知らせる時期若しくは方法を指定することによって弊害を防止することができるとされており、さらに、これらの措置によっても弊害を防止することができないおそれがあるときは閲覧自体を禁止することさえできるとされております。 なお、先ほどの通常審が家庭裁判所の社会記録を取り寄せた場合についても、刑訴法40条の規定にかかわらず裁判所は謄写を許可しない運用になっていると理解しております。このように、現行法上、裁判所において閲覧・謄写した記録については、裁判所が適切な措置を講じることによって、関係者の名誉、プライバシーの保護は図られていると理解しておりまして、このような規律を改めるべきという御意見は伺っておりません。 そうしますと、再審請求事件においても「第1」の「1」「(1)」の「A案」、裁判所提出型を採るのであれば、弁護人が謄写した記録の目的外使用禁止規定を設ける必要はなくて、弊害のおそれがある証拠に限って、裁判所が閲覧・謄写の許可をする際に再審請求人に知らせてはならない旨の条件を付したり、又は再審請求人に知らせる時期若しくは方法を指定したり、さらには閲覧・謄写を禁止したりすることによって、適切に弊害を防止することは可能でありまして、証拠の種類、性質、弊害のおそれの有無を問わず、一律に全ての証拠について目的外使用禁止の対象にする合理性はないと考えます。 ○しろまる大澤部会長 念のためお伺いしますが、準備行為なのか、それとも事実の取調べそのものなのかによって、今、田岡幹事の御発言されたことというのは変わってきますか。 ○しろまる田岡幹事 事実の取調べがなされたか否かによって、閲覧・謄写を認めるべき必要性は変わり得るのかなとは思います。飽くまで取り寄せだけの段階では、裁判所の判断の基礎になっているわけではありませんので、その段階における閲覧・謄写については、裁判所の判断で、弊害があるというのでしたら閲覧を禁止する、あるいは謄写を禁止するということがあるかと思うのですが、事実の取調べがなされた段階になりますと、それが判断の基礎になるわけですので、当然それを再審請求人・弁護人において検討する機会が与えられなければいけませんから、閲覧・謄写が許可されるべきという方向には働くのかとは思いますが、目的外使用禁止との関係で言うと、特に関係はないのかなとは思いました。 ○しろまる大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○しろまる成瀬幹事 再審請求審において閲覧・謄写された証拠に係る関係者の名誉・プライバシーの保護等を図る必要があることについては、第4回会議において、弁護士の委員・幹事の皆様も含めて、特段、異論はなかったものと認識しております。 目的外使用の禁止は、正にそのための規律であり、謄写された証拠の複製等を本来の目的にのみ使用すべきこと、そして、その適正な管理に十分に意を用いるべきことは、当然のことであると思われます。また、仮に目的外使用の禁止を設けないとすると、閲覧・謄写の機会の付与について、本来の目的以外の目的での使用の可能性や不適正な管理による外部への流出の可能性をも考慮せざるを得ないこととなり、閲覧・謄写できる証拠の範囲が狭くなるおそれがあるという意味において、目的外使用の禁止が設けられることにより閲覧・謄写できる証拠の範囲が適切に確保されるといえます。 そのため、再審請求審における閲覧・謄写の規律の適切な運用を確保するためには、目的外使用の禁止を設けることが必要かつ相当であると考えます。 特に、前回議論した論点「第1」の「1」「(3)弊害への対処」の「A案」のように、証拠の提出命令の段階で弊害を考慮することとし、裁判所に提出された証拠については刑事訴訟法第40条による閲覧・謄写の対象とする場合、同じく同条による閲覧・謄写の対象となる証拠でありながら、通常審及び再審公判における検察官開示証拠については目的外使用が禁止されるのに対し、再審請求審における検察官提出証拠については目的外使用が禁止されないというのは、謄写された証拠に係る関係者の名誉・プライバシーの保護等を図る必要性が異なるものでないことに鑑みると、合理性を見いだすことが困難であり、後者についても目的外使用の禁止の対象とすることが現行法の規律とも整合的です。 この論点に関して、先ほど田岡幹事から、「目的外使用の禁止に関する規定を設けるのではなく、少年審判規則と同様に、裁判所が、事件記録の閲覧・謄写の際に適切な措置を講じることによって弊害を防止する規律とすべき」という御指摘がございました。もっとも、弁護人による目的外使用を防止するための措置として、閲覧・謄写自体を許可しないことまで可能とする趣旨であるとしますと、裁判所が再審の請求についての判断に用いる証拠であっても、弁護人が閲覧・謄写できないという事態が生じ得ることになり、先ほど大澤部会長からの問い掛けに対して田岡幹事自身も留保を付されたように、手続保障上問題があると思われます。 また、田岡幹事は「弊害のおそれがある証拠に限って対処すべき」という点も強調しておられましたが、謄写された証拠の複製等を本来の目的以外の目的に使用してはならないということは、証拠全般に妥当する当然の要請であるはずです。よって、目的外使用を禁止するか否かを個別の証拠ごとに考えるという発想自体が、そもそも合理性に欠けるように思われます。 ○しろまる大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○しろまる池田委員 現行法の目的外使用の禁止の規定は、開示証拠の複製等が適正に管理されることを確保するとともに、本来の目的にのみ使用されることを担保し、証拠開示がされやすい環境を整え、ひいては証拠開示制度の適正な運用を確保するために必要な制度とされております。また、現行刑事訴訟法上、開示証拠は当該被告事件の審理はもとより、これと密接に関連する手続及びこれらの手続の準備に使用することは許されており、防御の関係で目的外使用の禁止により被告人に支障が生じることはないと考えられます。その上でさらに、被告人の防御の機会を不当に制約することがないよう、目的外使用の禁止規定に違反した場合であっても、その場合の措置については、被告人の防御権を踏まえ、複製等の内容、行為の目的、態様等の諸事情を考慮するものとする旨の規定が設けられています。 以上を踏まえますと、再審請求審において閲覧・謄写された証拠についても、ただいま申し上げた現行の目的外使用の禁止に関する規定に準じた規定を設けることとすれば、本来の目的に沿った証拠の利用が妨げられることはなく、再審請求者の利益等が不当に制約されることはないと思われます。 なお、この点に関しては第4回会議において、目的外使用の禁止に関する規律を設ける必要性、相当性に関して、再審請求事件については支援者による支援活動や報道機関による報道の意義を踏まえる必要がある旨の指摘がされております。そのような事情は、既に開示証拠の目的外使用の禁止の規律が設けられている通常審や再審公判についても同様であると考えられますので、再審請求審における検察官提出証拠についてのみ目的外使用の禁止を設けないこととする理由にはならないものと考えます。 ○しろまる大澤部会 更に御発言はございますでしょうか。 ○しろまる村山委員 今ほど池田委員が言われた最後の点なのですけれども、通常の刑事裁判の場合は公判廷で証拠調べが行われると。当然、公判廷は公開されていますので、そういう意味ではマスコミの人は当然、取材すればそこは見られるわけです。ところが、現状で再審請求審は非公開の手続で行っていると認識しています。ですから、再審請求審における証拠開示を受けた証拠というものは、非公開の手続の中でしか事実の取調べが行われないとすると、一切マスコミ等の報道の機会はないということになると思うのです。そこがやはり問題なのではないかと思います。再審請求で社会的な耳目を集めている事件が現にあるにもかかわらず、マスコミ等で一切正確な報道ができないというのはやはり問題だと、私は実際上の効果として非常にそれが大きいと思っています。 ○しろまる大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○しろまる鴨志田委員 今の村山委員の御意見に対する補足なのですけれども、やはり再審請求手続が現在非公開ということが前提になっています。非公開であるということは、それ以外に法廷で傍聴するというような手段がないわけですから、市民やマスコミに事件の問題性を知ってもらう機会が激減してしまうということなのです。一方で、こういった目的外使用禁止規定というのは罰則を伴っているものでございまして、裁判の公開とか報道の自由といったようなところにも抵触する可能性があるわけですから、本来制約は必要最小限にとどめるべきところ、「目的外」の意味とか、証拠の代替物、例えばモザイクを掛けるとかイラスト化するといったような加工などといったものが目的外使用禁止規定に該当するのかどうなのかということに関しては、必ずしも明確になっていないように思います。そうだとすると、やはり通常審の規定をそのまま再審請求手続の目的外使用禁止にスライドさせるという形ではなくて、仮に規定を置くにしても、再審請求審の審理の実情等を踏まえた形で要件を検討するということは考えられるのではないかと思います。 ○しろまる吉田(雅)幹事 村山委員あるいは鴨志田委員に御趣旨を確認したいのですけれども、マスコミ報道の機会を確保するために開示済み証拠を使用するというのは、現行の刑事訴訟法第281条の4第1項各号のうちどれに当たるという解釈なのかということを教えていただきたいと思います。あわせて、もしそれと同じような規定を再審請求審で開示された証拠について作った場合に、そちらではマスコミ報道の機会の確保にはつながらないと考える理由を併せて教えていただきたいと思います。 ○しろまる村山委員 もう一度お願いしていいですか。 ○しろまる吉田(雅)幹事 まず第1点目ですが、現行の刑事訴訟法第281条の4第1項、これが目的外使用の禁止を定めている規定ですけれども、開示された証拠を用いてよい場合が第1号及び第2号に掲げられております。マスコミ報道の機会を確保することに開示済み証拠を使ってよいのだとすると、同項各号に掲げられているところに該当するということをおっしゃることになるのではないかと思ったのですけれども、どの文言に該当するという解釈になるのかということが第1点目でございます。 ○しろまる村山委員 マスコミ報道の場合は、マスコミが直接取材しますよね、実際にどういうものかというのは認識できると思うのです、公開の法廷で。 ○しろまる吉田(雅)幹事 通常審においては、マスコミ報道の機会を確保するためにマスコミ関係者などに開示済み証拠を提供することが許されるとお考えになっているわけではないということでしょうか。 ○しろまる村山委員 はい。マスコミ報道について、法廷で行われたことというのを、例えばマスコミの記者が直接見たり聞いたりするということは当然ありますよね。また、通常審の場合は実際に捜査機関からもいろいろな情報がマスコミには提供されていると思うのです。そういう形で報道がなされているということで承知しています。 ○しろまる吉田(雅)幹事 重ねての確認になりますが、通常審においてマスコミ報道の機会を確保するために開示済み証拠を用いることが刑事訴訟法第281条の4第1項各号のどこかに当たるとお考えになっているわけではない。同項の下で利用可能なものとして位置付けているわけではなくて、飽くまでマスコミが独自に報道しているだけであるという理解に立っておられるということでしょうか。 ○しろまる村山委員 それはそこまで今言及しているつもりはありません。それ自体は問題があると私は思っていますけれども、現時点でそこまで私は申し上げているつもりはありません。 ○しろまる大澤部会長 それでは、更に御発言はございますでしょうか。よろしいでしょうか。 (一同異議なし) ○しろまる大澤部会長 それでは、先に進めさせていただきたいと思います。 次に、「第1」の「5 裁判所不提出記録・証拠物の保存・管理に関する規律を設けるか」について審議を行いたいと思います。この論点については、検討課題全体をまとめて、審議を行いたいと思います。 御意見等がある方は挙手をお願いいたします。 ○しろまる鴨志田委員 まず、「規律を設けることの必要性」について、第5回会議で机上配布をさせていただいた季刊刑事弁護123号の私の論文にも書いておりますけれども、再審無罪が確定した湖東事件、袴田事件、福井女子中学生殺害事件などで相次いで検察、警察の証拠隠し、警察における証拠の検察への未送致という事態が明らかになっています。また、これらの事件では国家賠償請求訴訟において、布川事件の一審、松橋事件の一審では、検察官に証拠開示義務があることを前提に、その義務違反が違法と認定され、湖東事件の国賠請求においては、県警が検察官に証拠を送致しなかったことについて国賠法上の違法性が認定されて、これは被告滋賀県との間で確定しています。 これにとどまらず、さらに、例えば鹿児島県警が2023年に出していた文書で、未送致の記録や証拠については適切に廃棄するようにという、廃棄を推奨するような内部文書が配布されていたことが明らかになったり、また、2024年には滋賀県警において、証拠の大量放置、具体的には滋賀県内の七つの警察署で銃器、違法薬物、刀剣類などの物品のほか、防犯カメラ映像のDVDなどの様々な証拠、合計3,829点が適切な管理がされず放置されていた、また、これら放置されていた証拠品のうち2,241件についてはいずれの事件の証拠品か分からない状態になっているということなどが報じられています。また、本年9月には佐賀県警において、DNA型鑑定で、実際には鑑定を行っていないのに行ったように装うといった虚偽の内容の書類を作成する等の不正行為が繰り返されていたということなども報じられています。 第5回の会議のときに当時の谷委員が、このようなものについては反省もしており、重く受け止めているという発言はあったのですけれども、しかし、重く受け止めるというような、いわゆるマインドの問題ではなくて、これが放置されていたり、まだ繰り返し起こっているということを考えるべきだと思います。 つまり、法務大臣訓令があるからとか国家公安委員会規則があるから足りるという発想自体が、非常に理解し難いものであって、この論点の立て方として、これらとは別に規律を設けることの必要性についてどのように考えるかとされているのですけれども、それは逆ではないかと思います。むしろ、これらの訓令や規則が現にあるにもかかわらず、今申し上げたような証拠隠しであったり証拠の捏造等の事態が相次いでいる、これを現状のままでいいと考えるのか、今後も今列挙したようなことが繰り返されても仕方がない、それを放置することによって無実の人が救われなくても構わない、というふうに私には聞こえてしまいます。ですので、これは今申し上げたような立法事実から、規定を設けなければならないと思っています。 ○しろまる大澤部会長 ほかに御発言はございますか。 ○しろまる田岡幹事 まず、「(1)」について意見を申し上げた上で、一つ質問をさせていただいてから、「(2)」の意見を申し上げたいと思います。 まず、「(1)」の「規律を設けることの必要性」については、先ほど鴨志田委員からも指摘がありましたように、既に、法務大臣訓令である記録事務規程、証拠品事務規程や、国家公安委員会規則である犯罪捜査規範があるにもかかわらず、適切に証拠が保管・保存されていなかったために、検察官が当初不存在と回答したがその後に発見したとして開示された事例や、証拠が偽造されたり、あるいは証拠が隠されていたといった事例が多数報告されているのですから、これらの規程、規則があるのに、新たに規律を設ける必要性があるのかといった問題の立て方自体がおかしいのではないかと思います。 証拠開示、つまり裁判所不提出記録の閲覧・謄写の規定を新たに設けようという議論をしておりますが、そもそも証拠が適切に保管・保存されていなければ、裁判所に提出したり、あるいは再審請求人・弁護人が閲覧・謄写することはできなくなるのですから、証拠開示、つまり裁判所不提出記録の閲覧・謄写を適切に機能させるためには、法律によって証拠を適切に保管・保存すること、そして、それを検察官に確実に送致することを義務付けることが必要であると考えます。 確かに記録事務規程、証拠品事務規程には保管記録、再審保存記録、裁判所不提出記録のほか国庫帰属証拠物、つまり還付対象外の証拠物の保管・保存に関する規律はありますが、還付対象となる証拠物、証拠品の保管・保存に関する規律はありません。また、犯罪捜査規範の第79条3項には、「第1項の規定により収集された捜査資料及びその写しを保管する必要がなくなつたときは、還付すべきもの除き、これらを確実に廃棄しなければならない」と規定されており、捜査機関の判断によって必要がないとすれば廃棄できるとされております。先ほど鴨志田委員から、鹿児島県警が刑事企画課だよりにおいて、再審や国家賠償等において、廃棄せず保管していた捜査書類やその写しが組織的にプラスになることはありませんと記載された文書を発するなど、むしろ未送致証拠の廃棄を推奨することが行われていたという指摘がありましたが、犯罪捜査規範の存在によって、むしろ検察官に送致することなく、廃棄することが正当化されているのではないかと疑われます。 そうしますと、既に、記録事務規程、証拠品事務規程や犯罪捜査規範があるのに証拠隠し、証拠捏造、あるいは証拠の不開示などの不祥事が生じていることに対処するためには、法律によって証拠の保管・保存を義務付けるとともに、検察官に確実に送致することを義務付けることによって、証拠開示、つまり裁判所不提出記録の閲覧・謄写の対象になるということを確保する必要があると考えます。 そもそもですけれども、法務大臣訓令や国家公安委員会規則は法務大臣や国家公安委員会の判断によって改廃され得るものでありまして、証拠の保管・保存は証拠開示、つまり裁判所不提出記録の閲覧・謄写の前提となるものであり、再審請求人の権利利益に関わる重大な問題ですから、国民の権利利益に関する規律は法律に規定すべきであると考えます。 その上で、「(2)」の意見に入る前に、第5回会議で宮崎委員から、再審請求が予測される場合、還付対象外の証拠品、国庫帰属証拠品については保管・保存をしているという説明がありましたが、還付対象の証拠品について、保管・保存する運用になっているのかいないのか、またその根拠となる規定があるのかどうかお尋ねしたのですが、御回答いただけると有り難いと思います。よろしくお願いいたします。 ○しろまる大澤部会長 宮崎委員、回答されますか。 ○しろまる宮崎委員 併せて意見を申し上げます。第5回会議においても申し上げたとおり、検察庁における裁判所不提出記録や証拠物の保管等については、法務大臣訓令である記録事務規程及び証拠品事務規程や、それらの運用上の細目を定める通達において規定されております。裁判所不提出記録・証拠物が適切に保管されるためには、これらの規律を踏まえた運用がなされることが重要なのであり、裁判所不提出記録・証拠物の保存・管理に関する規律をあえて法律に設ける必要性は乏しいと思われます。 第5回会議と今ほど、田岡幹事から、再審の請求が予測される場合における還付対象の証拠物の保管・保存に関する規定の有無及びその運用について御質問がありました。証拠物のうち、没収の裁判、所有権の放棄等により国庫に帰属した証拠物以外のものについては、訴訟の終結後は被押収者に還付すべきものであり、改めて規定を確認しましたが、還付せずに保管を継続する旨の規定は存在しません。その上で、再審の請求が予測される場合におけるそのような証拠物の保管については、各検察官が、個々の事案の内容、再審請求の予測の程度、証拠物の内容及び重要性、被押収者の属性等に照らして、必要かつ相当と判断したときには、被押収者に事情を説明し、その理解を得た上で保管を継続するなど、適切に対応しているものと承知しております。 ○しろまる田岡幹事 宮崎委員の説明を踏まえまして、「(2)」の「訴訟の終結後も還付対象の証拠物の保管を義務付けることの相当性」について、意見を申し上げたいと思います。 先ほどの宮崎委員の御説明ですと、還付対象証拠物について判決確定後に保管を継続する旨の規定はないけれども、保管を継続する必要性があるときは、各検察官において被押収者、つまり所有者等に事情を説明し、その理解を得て保管を継続する運用になっていると理解しました。 刑事訴訟法123条1項は、押収物で留置の必要がないものは、被告事件の終結を待たないで決定でこれを還付しなければならないと規定しておりまして、ここでいう被告事件の終結とは一般的には終局裁判の確定をいうと理解されております。これは終局裁判が確定すれば、その後に押収物を保管する必要性がなくなるという理解を前提としていると思われます。しかし、再審請求が実際になされている場合や、再審請求はなされていないけれども今後再審請求がなされると確実に予測される場合には、証拠品を保管する必要性がなくなったとは必ずしもいえず、被告事件が終結したといえるのかという疑問があることから、所有者等との権利の調整を図り、保管・保存を継続する必要性があると考えます。 証拠品事務規程89条には、還付対象外の証拠物、つまり国庫帰属証拠物については、検察官は、再審請求が行われることが予測されるときは期間を定めて保管すると規定されておりまして、保管・保存に関する規律があるわけですけれども、還付対象証拠物についてはこのような規律がないために、所有者等の同意が得られなければ最終的には還付せざるを得ないということになります。 その結果どうなるかといいますと、例えば、DNA型鑑定の鑑定試料となり得る生体試料について所有権放棄がなされていない場合には、DNA型鑑定をすれば再審請求人が犯人であるかないかが明確になると予想され、再審請求人も再審請求を実際にしているか、又は今後再審請求をすることが確実に予測されるにもかかわらず、所有者等からその生体試料を還付してくださいと言われた場合には、検察官がこれを拒否することは難しいのではないでしょうか。 仮にDNA型鑑定を実施した結果、再審請求人が犯人でないということになれば、再審開始決定がなされ無罪となるでしょうし、逆に、DNA型鑑定をした結果、再審請求人が犯人であるということになれば、むしろ再審請求理由はないということになりまして再審請求が棄却されることになるわけですから、検察官にとっても証拠品を保管・保存することに正当な利益がある場合があるはずです。また、再審開始決定が認められた後の再審公判において証拠品を取り調べる必要性がある場合もあるはずです。 このように、一般的には刑事訴訟法123条1項によって、終局裁判の確定があれば押収物を保管する必要性がなくなるとしても、再審請求が実際になされているか、又は今後再審請求がなされると確実に予測される場合には、所有者等の権利との調整を図り、その後も保管を継続する必要性があるといえますので、このような場合には、所有者等の意見を聴いた上で、一次的には検察官の判断により、また、不服申立てがあれば裁判所の判断によって、還付対象証拠物を保管・保存するという規律を設けることが合理的であると考えます。 なお、保管・保存の期間については、確かに常に再審請求が予測されるわけではないでしょうから、一律に6か月とする必然性はないかと思いますけれども、少なくとも再審請求が予測される場合、例えば刑事確定訴訟記録法第3条2項の再審保存の請求、記録の場合には保管期間がまずは経過しないと再審保存の請求になりませんけれども、証拠品の場合にはそもそも保管の規律がありませんので、こういった規律を参考に、再審請求が予測される場合には、還付対象証拠物の保管・保存を義務付ける、また、保管・保存の期間を延長するという規律を設けることが考えられるのではないかと思います。 ○しろまる重松委員 捜査資料や証拠物件の保管につきまして、補足的に説明をさせていただきたいと思います。 第5回会議で当方から申し上げたと思いますけれども、警察におきましては国家公安委員会規則である犯罪捜査規範及びその細則を定める通達において、捜査資料や証拠物件の管理方法等について定めております。まず、捜査資料につきましては、その保管方法等について定めておりまして、組織的かつ厳格な管理を行うということにしております。具体的には、捜査資料が電磁的記録であれば、外部から遮断された共有フォルダ等に保管すること、捜査資料が電磁的記録以外であれば、施錠できるキャビネット等の共用の保管場所に保管することなどを定めております。 次に、証拠物件につきましては、滅失や変質等をすることのないように、その証拠価値の保全に努めることとしておりまして、証拠物件の保管設備や保管要領等についても詳細に定めております。具体的には、保管設備としまして施錠機能を具備した証拠物件専用の設備を設置するとともに、保管設備内を年別、事件別に区分するなどして、ほかの事件の証拠物件と混同することのないような措置を講じること、証拠物件の管理に当たっては、証拠物件と関係書類を照合し、証拠物件の滅失等、異常の有無を確認するなどした上で出納することなどを定めております。 このように、警察としては犯罪捜査規範や通達等の内部規範で証拠物件や捜査資料の保管・管理について詳細に定めておりますけれども、都道府県警察におきましては職務を遂行するに当たって、各種法令を遵守することはもとよりでありますけれども、このような内部規範を遵守することは当然のことでございます。警察庁においては都道府県警察に対して、これらが遵守されているかどうかについても随時確認、指導を行っております。こうした中で不適切な取扱いが発生しているということについては大変遺憾でありまして、重く受け止めておりますけれども、警察としてはこのような内部規範については十分にその実効性を有するものと考えております。 ○しろまる大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○しろまる池田委員 この点に関しては冒頭、鴨志田委員から御指摘があったような不適切と思われる事例が多数発生していることに鑑みて、田岡幹事からなされましたような、現状の規律について法的な根拠を与えるべきだという御指摘があるものと承知しております。もっともそのように、不適切な事態を防ぐために法律を設けるとして、実際どのような規定を設けるかが重要となると思います。少なくとも、現在の訓令の規律の内容を法律で規定することを想定されているとするならば、訓令は現時点でも行政機関の職員にとって義務規範として当然に遵守されるべきものであることから、それが法律になることによって保管等の在り方にどれだけの差異が生じることになるかは判然としないと思います。 そもそも、裁判所不提出記録や証拠物の適正な保管のためには、単に適正に保管しなければならないという旨を規定するだけではなくて、ただいま重松委員からも御指摘があったように、保管する記録・証拠物の具体的範囲や期間、保管に係るシステムへの登録、帳票類の作成、表示等の運用に関する細目的な規律が必要であると考えられ、このような事項を定めるものとしては、その内容面からも、また運用上の問題点や社会情勢の変化等に応じて適時適切に改めることができる必要があるということからも、法律ではなく訓令や通達等によるのがむしろ適切だという考え方には理由があるものと思われます。 その上で、先ほどの宮崎委員の御説明や重松委員の御説明を踏まえますと、法務大臣訓令や犯罪捜査規範等について証拠の保管・管理に関する規律がそれぞれ設けられており、裁判所不提出記録・証拠物の適正な保管のためには、これらの規律が機能することこそが重要であると考えております。 以上のことから、裁判所不提出記録や証拠物の保管に関する規律を法律に設けることについては、その必要性や相当性に疑問があるということになるのですけれども、あわせて、検察や警察においては、ただいま申し上げた訓令等の規律を適正に運用されることを期待したいと考えております。なお、書類及び証拠物の送致について生じた問題については、既に刑事訴訟法第246条に規律があり、問題が生じていたとすれば、それは運用の問題であって、新たな規律を法律に設ける必要性を直ちに基礎付けるものではないと考えております。 ○しろまる大澤部会長 更に御発言はございますか。 ○しろまる成瀬幹事 私は、検討課題の「(2)」について意見を申し上げます。 捜査機関による押収の効力は、公訴を提起した事件については、終局判決が確定するまでであると解されており、終局判決が確定した後は、国庫に帰属したもの以外の押収物は被押収者に還付しなければならないと解されます。 日本弁護士連合会改正案第444条の2は、そのような還付対象の証拠品一切について、再審請求のための留置の必要性等を問わず、再審請求がなされていない場合であっても、一律に6か月間の保管を検察官に義務付けており、このような規定を設けることは、所有者等の権利を不当に制約するものであって、相当でないと考えます。 次に、日本弁護士連合会改正案第444条の3によれば、保管検察官が、還付対象の証拠品について、再審の手続のため保存の必要があると認めるときは、6か月の保管期間を満了した後も、長期間保存することがあり得ることになります。 先ほどの田岡幹事の御説明によれば、現在の運用では、検察官が個々の事案に応じて所有者等の意向も踏まえつつ証拠品の保管を継続することになっているところ、それでは所有者等の意思に反する場合に保管を継続することができないので、この規定を設けることにより、所有者等がたとえ還付を望んだとしても、再審請求のために保管を継続できるようにする趣旨であると理解しました。 ただ、この規定がそのような趣旨であるとすれば、本来還付すべき証拠品について、所有者等の意見聴取手続の履践のみによって、強制的に占有を取得するという差押えと同様の効果を生じさせることとなります。おそらく、田岡幹事はそのことを理解しておられ、「第一次的には検察官の判断であるが、その後に裁判所による審査もあり得る」とおっしゃったのだと思いますが、証拠品の所有者等に対してそれだけ大きな権利制約をもたらす制度が果たして合理的なのかという点については、疑問が残ります。 以上のことから、先ほどの田岡幹事の御意見を伺った上でもなお、検討課題「(2)」を解消する十分な説明はなされていないと考えます。 ○しろまる大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○しろまる宮崎委員 私も検討課題「(2)」について意見を申し上げたいと思います。 国庫に帰属したもの以外の証拠物については、これを使用・収益する権利を有する所有者等が存在し、これに還付しなければならないはずのものであるのに、日本弁護士連合会の御提案のように、全ての事件において、再審請求の見込みも保管継続の必要性も問わずに、一律に訴訟の終結後も保管・保存するものとすることは、所有者等の権利を不当に制限するものであって合理性がない上、場所の確保や費用等の観点からも実施が困難であります。 また、日本弁護士連合会の御提案の第444条の3第1項においては、再審の手続のため保存の必要があると認めるときは、所有者等が存在する証拠品も含め、保管期間満了後も保存するものとされているところ、再審の請求は同一の理由によるものでない限り何度でもすることができ、また、再審の請求は有罪の言渡しを受けた者が死亡した場合には直系の親族等がすることができ、再審の請求が棄却されたとしても再び再審の請求がなされる可能性があり続けることから、保管検察官としては、将来の再審請求に備えてそのような証拠品の保存を半永久的に継続しなければならないことにもなりかねず、その点からも所有者等の権利を不当に制限するものであって合理性がないと考えます。 ○しろまる村山委員 先ほど田岡幹事の意見の中にもある程度ニュアンスが出ていたと思うのですけれども、確かに日弁連の案というのは、再審請求の予定があるかどうかとか請求されているかどうかに関係なくという規定になっているわけなのですけれども、やはり問題は、再審部会ですので、再審請求が予測されるという事態を想定して考えているとお考えいただいた方がいいのかなと思っています。 それから、宮崎委員が言われたように、何回でもできるのではないかと、そうなるとずっと永久的に保管しなければいけないということになりかねないということについては、これは確かに深刻な問題だとは私も認識しています。しかし、再審請求を、例えば1回目ですね、1回目にしようと思ったときに、既に証拠物がなくなってしまっているということになると、例えばその証拠物が生体試料などが付着していると思われるものであって、それをDNA鑑定をすれば容易に事の成否が分かるというような性質の証拠であった場合には非常にダメージが大きいというのは、冒頭で田岡幹事が発言されたとおりだと思うのです。そういった点についてやはり何の配慮もなく、還付対象物だからということだけで還付してしまうというのはいかがなものかと思いますし、今、検察官の方では事情を話してということなのですけれども、それは規定には何もないというわけですから、結局運用だということになってしまっていて、それが本当にそういう運用になっているかどうかというのはこちらは検証しようがないと思うのです。そういう意味では規定にしてほしいと思いますし、再審請求人にとっては、これは権利的な問題だと思いますから、やはり法律で規定すべきであると思っています。 なお、警察庁の方には大変耳が痛いと思いますけれども、そういう規定があるにもかかわらず不祥事の事例がたくさんあったということは事実です。つまり、今の規定では適切な保管はできないということを実証していると思います。これを改める必要があると私は考えます。 ○しろまる大澤部会長 予測されるというのはどういう場合か、何か具体的に考えておられるところがあるのでしょうか。 ○しろまる村山委員 弁護人などが確定記録の場合に再審保存という形で請求をするというのがあると思うのですが、それと同じような枠組みというのは考えられるのではないでしょうか。 ○しろまる大澤部会長 分かりました。 ○しろまる鴨志田委員 短くお話をします。先ほど来、還付対象物を還付しないで保存するということが所有者の所有権を侵害するという話が出ていますけれども、確かに所有権というのは財産権の中で一番強力ですし、保障するニーズが大きいものであるということは間違いないと思います。ただ、再審を請求する者が、証拠物がそこにあって、それがDNAの鑑定試料となり得るというときに、鑑定の機会を保障するということは、これは人身の自由、場合によっては生命それ自体というところに関係する権利なわけで、ここを比較したときに、ずっと累次の再審が繰り返されるというお話もありましたけれども、1回目のDNA鑑定の可能性を確保するということだけのところであっても、やはりここの部分についてきちんと規定を設けて、かつ、それを個々人の検察官の裁量というようなところではなくて一定の基準をもって定めていくという、そういう法制化の要請はなお強いと思います。 また、全体にわたって、こういった内規があるから運用でいいのだ、刑訴法246条があるから、それは運用の問題だとありますけれども、その運用がうまくいっていない例がこれだけあるのに、やはりそれを運用に任せるというのは、全くこれは前に進まない、現状の追認にしかならない、何のためにここで法改正を議論しているのかという、非常にもどかしい思いをずっと感じながら聞いておりました。やはり、少しでもよいもの、えん罪被害者を救済するための法改正の議論ではないかということに立ち返ったときに、運用でうまくいっていないところは何がしかの手当てをすべきという視点でお考えいただきたいと思います。 ○しろまる大澤部会長 ほかに御発言がございますか。 ○しろまる田岡幹事 先ほど大澤部会長から、再審の請求が行われることが予測されるという要件をどのようにして判断するのかという御質問がありましたので、私の方からお答えしたいと思います。 まず現行の法務大臣訓令である証拠品事務規程89条自体に国庫帰属証拠物の保管・保存に関する規律がありまして、第1項に「検察官は再審請求が行われることが予測されるときは、証拠品を期間を定めて保管する」「次項の規定による報告があったときも、同様とする」と規定されており、次項、つまり第2項に記録事務規程の「第9条第4項の規定により再審請求が行われることが予測される旨の通知があったときは、これを検察官に報告する」と規定されておりますので、現行の規程自体に、再審請求が予測されるときという要件によって、国庫帰属証拠品の保管の要否を判断するという規律がございます。 ただ、私もこの要件は不明確であり、結局のところ再審の請求が行われることが予測されるかどうかの判断を検察官に係らしめているために、検察官が再審の請求が行われないと判断してしまえば国庫帰属証拠品であっても廃棄されてしまうおそれがあると考えます。 現行の刑事確定訴訟記録法は記録を対象にしておりますので、証拠品はその対象外になっております。新たな規律を刑事確定訴訟記録法に設けるのか、又は刑事訴訟法に設けるのかはともかくとしまして、証拠物、証拠品についても、再審保存の請求に類似する規律を設けて、再審請求が予測されるときという要件をより明確にした規律を新たに設ければよろしいのではないでしょうか。そうすれば、還付対象証拠物だけではなくて国庫帰属証拠物についても同様に、再審請求が行われることが予測されるときという要件を判断することができまして、所有者等の権利と再審請求人の権利利益、また、検察官において押収物の保管を継続する必要性、その正当な利益との調整を図ることができると考えます。 ○しろまる大澤部会長 更に御発言あればと思いますが、よろしいでしょうか。 (一同異議なし) ○しろまる大澤部会長 それでは次は、「第1」の「6 証拠物の証拠価値の保全・鑑定に関する規律を設けるか」について審議を行いたいと思います。この論点につきましても、全体をまとめて審議を行いたいと思います。スピーディーな、かつ円滑な進行に御協力を願いたいと思いますが、御意見等がある方は挙手をお願いいたします。 ○しろまる田岡幹事 まず、「規律を設けることの必要性」についてですが、証拠品事務規程には証拠価値の保全に努めなければならない旨の規定はありますが、非常に抽象的な規律にとどまっておりまして、具体的にどのように保管・保存するかという具体的な規律はございません。また、犯罪捜査規範には、私はあらためて見返しましたけれども、証拠価値の保全に関する具体的な規律は見当たらないように思われました。 そもそも法務大臣訓令や国家公安委員会規則は捜査機関の判断によって改廃され得るものでありまして、証拠品の保管・保存に関する規律、また、その利用に関する規律は、再審請求人の権利利益に関わる問題ですから、法律に定めるべきであると考えます。 検討課題には、裁判所は必要があれば直ちに鑑定を実施することができるのだから、そのような規律を設ける必要性があるのかと書かれているのですが、まず前提として、鑑定を実施するためには鑑定試料となり得る証拠物の存在及び保管状況を把握する必要があります。仮に「1」「(1)」の「A案」、裁判所提出型を採用する場合でも、生体試料そのものを裁判所に提出させることは困難であると思われますので、裁判所は検察官に命じて、検察官が保管する証拠物の存在と保管状況をまずは明らかにさせた上で、それについて再審請求人・弁護人がその証拠物の保管状況等を確認するために証拠品を閲覧する制度が必要になると考えます。その上で仮に証拠物の保管状況に問題がある場合には、検察官の保管に委ねておけばよいということにはなりませんので、適正に保管するように裁判所が検察官に対して保管の改善を命じる制度が必要であると考えます。 その上で、裁判所は、必要があれば、確かに自ら鑑定を実施することもできますが、生体試料の保管・保存というのは裁判所が適切になし得るものではない場合もあると思われますので、証拠物を保管する検察官において自ら鑑定を実施することが相当であると判断される場合には、検察官に対して鑑定の実施を命じ、その結果の保存を命じることが相当である場合もあるのではないかと思われます。実際に東京電力女性社員殺害事件では、裁判所は検察官に対してDNA型鑑定を実施するよう求めておりまして、こうした実務運用を踏まえますと、裁判所が常に自ら鑑定を実施するのがよいとは限らず、検察官に対して鑑定の実施を命じて、その結果の保存を命じる制度にも合理性があると考えます。 次に、「(2)」の「再審請求審における審理の在り方との関係」でありますが、まず、「再審請求理由を離れて」と書かれていることの意味が問題でありまして、これは証拠開示、つまり裁判所不提出記録の閲覧・謄写の論点でも問題になりましたが、全く新証拠が提出されていないというのであればともかく、何らかの新証拠が提出されていたり、又は新証拠が再審請求人の手元にないとしても、裁判所の記録の取り寄せや証人尋問あるいは証拠開示を申し出る形での再審請求をすることも一概に不適法ではないと考えられておりますので、検察官の手元にある証拠物を利用したDNA型鑑定を実施してくださいといった形での再審請求も一概に不適法とはいえないのではないかと考えます。 そもそも、仮に鑑定試料となり得る証拠物を中立的な第三者が保管しているのであれば、再審請求人・弁護人はその証拠物を閲覧したり又は利用してDNA型鑑定を実施することができるのに、検察官や警察が犯行現場から押収して保管しているために、再審請求人・弁護人は証拠物に対するアクセスを禁止されている状態にありまして、証拠物を利用してDNA型鑑定を実施したくても、それができない状況に置かれているわけです。証拠へのアクセスを妨害されているに等しい状況です。更に言えば、再審請求人のDNA型に関しても、拘置所・刑務所において再審請求人の口腔内粘膜や頭髪を宅下げしたいと言っても拒否されますので、再審請求人のDNA型鑑定さえ実施することができない、身柄をとられているためにDNA型鑑定を妨害されているというのが、今の状況です。 本来であれば裁判所を介さずとも、再審請求の準備段階において、検察官が保管する証拠物を利用してDNA型鑑定を実施し、その結果、仮に被告人が犯人でないことが明白になれば、その結果を正に新証拠として再審請求を行うということが相当であると考えられ、それを法制化したのがアメリカのイノセンスプロジェクトや台湾のDNA型鑑定条例であると理解しておりますが、仮にそのような制度を設けないのであれば、再審請求人・弁護人は、再審請求をした上で、再審請求審においてDNA型鑑定の実施を求めるしかないわけですから、このような形での再審請求も一概に不適法とはいえないと考えます。 そして、DNA型鑑定を実施すれば再審請求人が犯人であるかないかが明白になるという場合には、新証拠のみで明白性が判断できない場合に、あえて新証拠の証拠価値について事実取調べを続けるよりも、端的にDNA型鑑定を実施して、再審請求理由が認められるかどうか、つまり新証拠に明白性があるかどうかを判断すれば足りるのでありまして、DNA型鑑定を実施すれば明白性が判断できるのに、あえてそれを実施せずに新証拠の証拠価値について事実取調べを延々とやるというのは、かえって再審請求手続の遅延を招くだけではないでしょうか。DNA型鑑定を実施すれば、再審請求理由、つまり新証拠の明白性が判断できるという場合には、DNA型鑑定を実施するという規律を設けることは、現在の実務運用を踏まえた、現実的な運用可能性のある方策であると考えます。 ○しろまる大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○しろまる池田委員 「(1)」と「(2)」について意見を申し上げます。 田岡幹事から今、様々な具体的な想定をお話しいただいた中で、検察官に試料の保管・保全を命じて検察官に鑑定を実施させることも考えられるから、その旨の規定を設けるべきだというお話がありましたが、それも現行刑事訴訟法上、裁判所がなし得る事実の取調べの一態様に含まれるのではないかと思われますので、更に新たな規定を設ける必要性があるかどうかについては疑問の残るところです。 それと、第2点目ですけれども、田岡幹事の御意見ではDNA鑑定について中心的にお話しいただいたのですが、冒頭では請求理由に関して鑑定が実施されることがあり得るという指摘もあった一方で、途中からはそれを離れて、まずはDNA鑑定を実施して、そこで新たな事情が判明すれば、それを新証拠として再審請求することも考えられるというお話もあったように伺いました。 しかしながら、裁判所が再審請求理由を離れて検察官に対し証拠物の保管や鑑定の実施等を命ずることができるとすることについては、裁判所が再審請求審においては再審請求者の主張する事実に拘束されて、職権で主張されていない再審請求理由に関する事実の取調べをすることは許されないという審理構造と整合しないように思われます。また、実際、裁判所がそのような請求理由とは無関係に鑑定等の要否を幅広に判断することは困難であると思われます。そのため、検討課題「(2)」についても、そうした懸念を解消するに足りる説明はなされていないのではないかと考えます。 ○しろまる恒光幹事 「(2)」の論点について意見を述べさせていただきます。 裁判所は飽くまでも新証拠とそれに基づく主張を基礎にして、主には新証拠の明白性を判断するために審理を行うことになります。先ほど「第1」の「5」「(2)」の論点でも、裁判所が還付対象物の還付の当否をめぐって調整したり、判断するかのような御意見もあったように認識しておりますけれども、仮に新証拠及びそれに基づく主張とは離れた形で、当該事件に関して広く証拠品の保管あるいは鑑定の必要性を判断しなければならないとするのであれば、それは再審請求審の審理構造になじむものではございませんし、裁判所といたしましても必要性の判断をすることはできないと考えております。 ○しろまる大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○しろまる宮崎委員 検討課題「(1)」に関して申し上げますが、第5回会議において申し上げたとおり、証拠品の保管については、既に法務大臣訓令である証拠品事務規程第2条に証拠品の証拠価値の保全義務を定める規律が設けられており、保管検察官や証拠品担当事務官はこの規程にのっとって証拠品を適切に保管しているところであり、証拠品が適切に保管されるためには、引き続きこの規律を踏まえた適切な運用がなされることが重要であると考えています。法務大臣訓令である証拠品事務規程は、検察庁の職員にとっての実務的な義務規範であるところ、これに加えて同内容の規律を別途法律に設ける必要はないと考えております。 ○しろまる大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○しろまる村山委員 「(1)」の方の「規定を設けることの必要性」という問題については、これは先ほどと同じような議論になってしまうと思いますので、あえて私はこの点については発言しません。 それから、先ほど池田委員が検察官に鑑定を命じるということは現行法でもできるのではないかと、私もできると思っています。ですから、そういう解釈であれば、裁判所の事実取調べの権限をもってやればいいのだというのは、私はそれは一理あるかなと思っています。 ただ、今問題にしているのは、例えばDNA鑑定については少し、請求理由を離れてというと問題があるというのは認識しているのですが、イノセンスプロジェクトのような形のアメリカ型のような規律を設けるのであれば、幅広くDNA鑑定請求権というのを設けるということになるのでしょうけれども、現状の議論ではなかなかそういう趣にはなっていないというのは私も認識していまして、飽くまでも再審請求審ということになると、再審請求審理由と離れてということはやや問題があるのかなと思います。 つまり、具体的に言うと犯人性が問題になっているというような形で、新証拠と直接結び付いているかはともかく、犯人性が問題になっていて、その犯人性についてはDNA鑑定をやれば極めて明瞭に分かるというような事態を想定した場合に、やはりそれが実施できないというのは非常に再審請求人にとっては歯がゆいと、それをやればはっきり分かるのにということは当然あるわけです。そういう意味で、こういう規定を設けるというのは一つあってもいいのではないかと思います。 もちろん現状の規定の運用でそれができるのだと皆さんがおっしゃるのであれば、それはそうなのかもしれないのですけれども、必ずしも現状でそういう理解が一般的だとは私は認識していませんので、規定を設けるということは一つ考えるべきことではないかと思っています。 ○しろまる大澤部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○しろまる成瀬幹事 私は、現行法上、裁判所は、事実の取調べの一態様として、検察官に対し鑑定の実施を命じることもできると理解しており、この点で、池田委員の御意見に賛成するものです。 それから、先ほどの田岡幹事の御発言では、再審請求者が証拠価値の保全やDNA型鑑定の実施を裁判所に請求できるようにするという点が強調されていたように思われ、一巡目の議論においても、村山委員が、請求権を認めるためにこういう規律が必要であるとおっしゃっておられました。 しかし、私の理解では、御提案いただいている内容は、基本的に事実の取調べの一態様として実施できるものですので、仮にそのような請求権を付与する必要性があるとしても、「事実の取調べについての請求権を付与することとするか」という論点において、その旨の規律を設ければ足りるのであって、別途、証拠価値の保全・鑑定に関する規律を設ける必要性はないと思います。 ○しろまる大澤部会長 ほかにいかがでしょうか。 先ほどの村山委員の御発言ですけれども、初めのところで多分、現行の制度についておっしゃったのですかね、再審請求理由との関係を離れて鑑定を命じることについて、少し問題があるという認識を言われたわけですが、その後で言われた、新たに設ける規定による鑑定というのは、再審請求理由と無関係でもそれを命じることができると、そういう規律ということで御提案になられているということでしょうか。 ○しろまる村山委員 若干それに関連して発言したのは、アメリカのイノセンス型のDNA鑑定請求権ですね、これを正面から認めるのであれば、それはそういう形になると思うのですけれども、現状でそこまで行けるのかという問題は確かにあるかなという気はしています。DNA鑑定請求権という場合は、どちらかというと再審請求をする前の段階でやって、そして、それが分かったときに再審請求するというのが本来的な話なのだろうと思うのですけれども、現状でそのようになっているかというと、なかなかそこまで行くのは大変かなという感じはします。現在、再審請求後ということで考えた場合に、再審請求理由で少なくとも犯人性についての具体的な争いがあるという形にならないと、DNA鑑定請求権という形、事実取調べ請求権というふうに、成瀬幹事が言うように置き換えてもいいかもしれないですけれども、そういう形にはならないのかなとは思います。 ○しろまる鴨志田委員 この問題は、従前検討した再審の準備段階での証拠開示ということをどう考えるのかということにも関連しているように思います。何度も申し上げますけれども、再審請求人は明白な新証拠を提出しなければならないという極めて重い負担を法によって課されているにもかかわらず、その多くの証拠が捜査機関の手元にあり、それにアクセスするという手段を保障されていません。そのような状況で、明白な新証拠を持ってきて裁判所に出せと言われているわけなのです。 そうだとすると、従前から何度も言われている「再審請求理由を離れて」ということになりますけれども、これは前回も申し上げたのですけれども、当初、最初に請求人が何とか準備をした新証拠と、それに基づく主張に限定されるということになると、これまでであれば再審開始が認められた事件であっても、恐らく証拠開示も実現せず、再審開始や無罪は認められないということになると思います。それは、実際の再審事件では、まず請求人が出した新証拠、これに基づく主張からスタートするけれども、その後、証拠開示が実現することによって主張が追加されていって争点が明確になっていくというプロセスをたどっているからです。 ですから、この再審請求理由を離れてというところを、当初請求人が出した新証拠とそれに基づく主張に限定されるということになると、この局面でもなかなかDNA鑑定は難しいということになるのでしょうけれども、そうではなくて、当初出した新証拠が例えば犯人性を争うというものであったとすれば、犯人性を争っている以上、DNA鑑定をやれば犯人性のところははっきりするのだから、そのために事実の取調べをしていく、それが事実の取調べとして認められ得るということであれば、それは現行法の規定でも何とかなるかもしれません。ただ、なかなか実際には、そこが裁量だということになると、適切な形で進んでいかないケースもたくさんあるので、そういう意味での明確な法文化というところが要求されるのではないかと考えます。 ○しろまる村山委員 冒頭の田岡幹事の発言にも関係するのですけれども、犯人性を争って再審請求する場合に、新証拠としてDNA鑑定をしてもらえれば分かるのだという形での請求というのが認められるかどうかという点もあると思うのです。確かに新証言があるので証人尋問をしてもらえば分かるのだという形の請求もあると、これも認められるという考え方もないわけではないのです。そこは認められないのだという立場に立ったとしても、DNA鑑定請求をするという場合に、それがDNA鑑定請求の証拠価値の、ほかと非常に差別化できるということを考えた場合に、それだけはやはり特別に扱う必要があるのではないかとは思っています。第一巡目の議論でも私はそういう発言をしたつもりでおりますけれども、今の鴨志田委員の発言を聞いて少し補足する必要があると思って、補足させていただきました。 ○しろまる大澤部会長 ほかに御発言はございますか。よろしいでしょうか。 (一同異議なし) ○しろまる大澤部会長 この「6」の論点はここまでということにいたしまして、それでは次に、前回の会議でお配りした配布資料8に沿って、「再審請求事件の管轄裁判所を確定審の第一審裁判所とするか」について審議を行いたいと思います。この論点につきましては検討課題全体をまとめて、審議を行いたいと思います。 御意見等のある方は挙手をお願いいたします。 ○しろまる田岡幹事 まず、「規律を設けることの必要性・相当性」ですが、第6回会議でも発言しましたように、高等裁判所や最高裁判所は普段、期日指定や事実の取調べ、記録の取り寄せ、意見陳述などのいわゆる事実審理を行っていないと思われます。再審請求手続においては高等裁判所や最高裁判所が再審請求審の役割を担うとしても、現実にはこれらの事実審理を行うことは困難であると考えられるために、下級裁判所を管轄裁判所とした方が事実審理を行うことが容易であると思われます。特に、最高裁判所が再審請求審の管轄裁判所になる場合には、再審請求棄却決定に対する不服申立てができないという重大な不利益がありますので、その必要性は大きいと考えます。 後藤委員は最高裁判所が事実審理を行うことに特に困難はないと発言しておられましたけれども、私が知る限り現実には最高裁判所が再審請求事件において事実の取調べを行った実例はないのではないかと思われますし、通常審においても、もちろん上告審であるという役割がありますから、事実の取調べを行った実例というのはほとんどないのではないかと思われます。また、最高裁判所が再審請求事件について期日を開いて再審請求人や弁護士の意見陳述を認めた実例というのはないのではないかと思われますし、少なくともこのような事実の取調べ等の事実審理は、本来最高裁判所に期待されている役割ではないと思われます。 仮に最高裁判所がこうした事実審理を行った前例があるといたしましても、再審請求人・弁護人は全国各地にいるわけでして、再審請求事件というのは全国各地で起こっているわけです。仮に期日が開かれることになれば、全国の再審請求人・弁護人は最高裁判所に出向かなければなりませんし、証拠開示の方法について「第1」の「1」「(1)」の「A案」、裁判所提出型とする場合には、全国の再審請求人・弁護人は最高裁判所に出向いて閲覧・謄写をするということになります。 この点、刑事確定訴訟記録法によると、保管記録は当該被告事件について第一審の裁判をした裁判所に対応する検察庁の検察官が保管するとされておりますので、第一審裁判所に対応する検察庁の検察官が保管しているのであれば、その検察官が所在する場所、つまり第一審裁判所において再審請求事件の審理を行うということもあながち合理性がないとはいえないのではないかと考えます。 その上で、検討課題に挙げられております審級制度との関係につきましては、皆様おっしゃられておりますように、通常審と再審請求審は訴訟物が異なりまして、再審請求審は再審開始事由の存否が争われているわけですから、下級裁判所が再審開始事由があると認めたとしても、必ずしも最高裁判所の実体判断を覆すということにはなりません。例えば、6号再審以外の場合を考えれば、下級裁判所が6号以外の再審開始事由があることを認めることが最高裁判所の事実認定を覆すことにならないということは明らかではないでしょうか。 また、第6回会議でも、日建土木保険金殺人事件を引用しましたが、これは被告人は犯行には一切加担していないとして無罪を主張していたのに、第一審原審が死刑に処し、最高裁判所がこれを破棄して無期懲役にした事件でありまして、この場合に再審請求をしようとすれば、管轄裁判所は確かに最高裁判所になりますけれども、最高裁判所は事実認定に関して判断を示したのではなくて、量刑判断に関して判断を示し、原判決を職権破棄したわけでありますから、事実認定に関する判断を争う際に最高裁判所が管轄裁判所でなければならないという理由は特にないのではないでしょうか。実際にドイツでは下級裁判所が管轄裁判所とされていると認識をしております。 ○しろまる大澤部会長 他に御発言はございますでしょうか。 ○しろまる池田委員 制度の在り方について意見を申し上げます。第6回会議において江口委員から、控訴審や上告審でなされた確定判決に対する審査を、下級審でありかつ破棄を受けた第一審裁判所が行うことの合理性を見いだすことが困難であるという御指摘がありました。同じ会議で成瀬幹事が述べられたとおり、我が国が採用する審級制度は、下級裁判所の裁判について上級裁判所の裁判による救済を求めることを許し、上級裁判所による是正の機会を認めることにより誤りなきを期する趣旨のものであると考えられるところ、これは下級裁判所よりも上級裁判所の方がより正しい判断をすることができるということを前提としているものといえます。したがって江口委員の御指摘のとおり、上級裁判所でなされた確定判決に対する再審請求審をあえて確定審の第一審裁判所を管轄裁判所とする必要性、相当性にはなお疑問が残るところです。 ○しろまる大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○しろまる成瀬幹事 田岡幹事の御提案のような規律を設けることについては、第6回会議において、大要、以下の2点を指摘させていただきました。 第1に、高等裁判所や最高裁判所は、再審請求を受けた場合には、自ら再審請求事由の有無についての審理を行うのであって、その審理や判断の在り方は、地方裁判所や簡易裁判所が再審請求を受けた場合と変わらないから、再審請求を高等裁判所や最高裁判所が管轄することが、事実認定上の支障を生ずるとは考え難いこと。第2に、原判決をした裁判所が高等裁判所や最高裁判所であるときに、再審請求審を第一審の裁判所が管轄することとした場合、再審請求審において、高等裁判所や最高裁判所は常に即時抗告審や特別抗告審を担うこととなるが、より正しい判断をすることができると想定されている上級裁判所が自ら再審請求を受けた裁判所として審理を行うこととされている現行法の規律を改めてまで、わざわざ下級裁判所である第一審の裁判所に再審請求の審理を行わせた上で、上級裁判所はその判断の誤りを事後的に審査することにとどめるものとする必要性は乏しく、相当でもないことです。 先ほど田岡幹事から、特に最高裁判所が再審請求事件の管轄裁判所になる場合を念頭に置いて、最高裁判所が事実取調べを行った実例が存在しないことや、弁護人が最高裁判所に出頭して記録の閲覧・謄写をするのに困難が生じること等の指摘がなされましたが、いずれも、法律論として、最高裁判所が再審請求事件の管轄裁判所になることの問題性を述べるものではないと思われます。よって、第6回会議において私が申し上げた疑問点については、なお解消されるに至っていないと考えます。 なお、田岡幹事は、「最高裁判所が再審請求事件の管轄裁判所となる場合に、再審請求棄却決定に対する不服申立てができないことは、再審請求者にとって重大な不利益である」との指摘もされました。しかし、最高裁判所が終審裁判所であるという性格からして、制度上、最高裁判所の決定に対しては不服申立てをすることができない、というのが基本原則です。すなわち、最高裁判所の終審性、さらには、最高裁判所を頂点として構成されている我が国の裁判制度に照らせば、最高裁判所の再審請求棄却決定に対して不服申立てができないのは当然であり、そのこと自体を重大な不利益と捉えることはできないと考えます。 ○しろまる大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○しろまる村山委員 今ほど成瀬幹事から最高裁判所の終審性ということをお話しいただきまして、それは全くそのとおりだと思うのですけれども、だからこそ、やはり最高裁が直接判断するのは避けるべきなのではないかと思うわけです。つまり、その1回だけで決まってしまうということでいいのかと。また、最高裁は、いろいろあると思いますけれども、実際に事実取調べをやってくれますか、それはやらないですよ、法律審なのですから。先ほども成瀬幹事は、最高裁は自ら判断する立場で最高裁が事件に立ち向かうのだとおっしゃいましたけれども、やはり最高裁は法律審として位置付けられているということからすると、現実に事実の取調べをするということは私は想定できないと思います。したがって、最高裁が請求審の一審として、しかも最終審として判断をするという建前は、非常に問題があると思っております。 ○しろまる大澤部会長 更にいかがでしょうか。 ○しろまる平城委員 先ほど田岡幹事の方から高等裁判所、最高裁判所の事実取調べ能力に関する発言がありましたので、若干申し上げたいと思います。例えば確定審が高等裁判所になった事件、あるいは、請求審が一審であって抗告審で高等裁判所がやるということもありますが、これらの場合に高等裁判所において、事実取調べが不十分又はできないとして、うまく再審制度が機能していないという認識は私どもにはございません。もし、事実取調べができないことを原因として再審制度がうまくいっていないのだという実例があるのであれば、御紹介いただきたいと思っているところでございます。また、もちろん中には棄却されるものもあると思います。でも、それは事実取調べの能力の問題ではないのではないかと私たちは感じているところでございます。 また、最高裁判所のお話がございましたけれども、何せ実例がないというところもございます。最高裁判所が確定審に対応する請求審となった場合にどのような対応をするのかということについては、やらないということが明らかになっているわけでもなく、確定審に対応する請求審としてやるということであれば、必要な手続をやることになるのではないかと、このように認識しているところでございます。 ○しろまる大澤部会長 ほかにいかがでしょうか。この枠は、この程度ということでよろしいでしょうか。 (一同異議なし) ○しろまる大澤部会長 ありがとうございます。それでは、この枠はこの程度ということにいたしまして、午前11時まで休憩ということにさせていただきたいと思います。 (休 憩) ○しろまる大澤部会長 皆様おそろいのようですので、再開させていただきたいと思います。 次に、本日お配りした配布資料9に沿いまして、「再審開始決定に対する不服申立てを禁止するか」について審議を行いたいと思います。この論点については検討課題全体をまとめて審議を行いたいと思います。 御意見等がある方は挙手をお願いいたします。 ○しろまる鴨志田委員 全体をまとめてということですので、順を追って説明をさせていただきたいと思います。 まず、「再審開始決定に対する不服申立てを禁止するということの必要性」ですけれども、これは、私が第5回会議で述べた立法事実に尽きると考えています。その際、小島幹事は私の立法事実の説明の後に、今のお話を聞いてもなお、再審開始決定に対する不服申立てを禁止するだけでは迅速化を実現するという効果があるということには疑問がございますと発言されました。もとより検察官抗告の禁止は迅速化という文脈だけの問題ではなく、そもそも現在の運用では非公開で手続保障の薄い再審請求審で実質的に有罪、無罪が判断されてしまっているのを、実体判断は公開原則や直接主義、証拠法則の適用のある再審公判で行うことこそが相当であるという点もございます。 ただ、しかしながらここで問いたいのは、検察官の不服申立てによって最初の再審開始決定からその確定まで袴田事件では9年、福井女子中学生殺害事件では13年、免田事件では24年4か月という歳月が経過しているという事実を示しても、不服申立てを禁止するという必要性を認められないのかということです。袴田事件と免田事件は死刑事件です。死刑囚という立場の者にこれほどの年月、不安定な地位を強いるということを容認するのかということを、反対をされている委員や幹事に私は逆に問いたいと思います。 次に、「再審手続の二段階構造との整合性」についてですが、これはもう既出でございますけれども、同じ二段階構造をとっているドイツでは、1964年に再審開始決定に対する検察官の不服申立てを禁止していることは既に御承知のとおりと思います。これを日本の状況として更に見た場合に、日本では、というかドイツもそうですけれども、再審請求と再審公判の二段階の前に通常審が存在しているわけです。ここの部分まで視野に入れたとき、日本では当事者主義、三審制というところは通常審と、それから再審公判でも妥当するわけです。その間にある再審請求審は職権主義で、かつ決定手続という形になっています。要するに、当事者主義、三審制が基本にあって、そこで実体判断がされた有罪判決について、職権主義でかつ決定手続である再審請求審で再審を開くかどうかという判断をし、そして再び当事者主義、三審制の妥当する再審公判で、また有罪、無罪の実体判断を行うという流れになっています。 このように俯瞰したときに、なぜ再審請求手続が職権主義かつ決定手続であるかといえば、飽くまでもやはりそれは有罪、無罪の実体判断を行う前の前さばきであり、中間的な判断であるからにほかならないというべきだと思います。したがって、当事者主義の現行法の下でも、この再審請求に係る決定は裁判所の職権判断で足りるというのは、こういった中間的な判断であるということを念頭に置いているということもいえるのではないかと思います。したがって、二段階手続といっても、請求審は飽くまでも中間的な判断ということを考えると、必ずしもこの段階で不服申立てを認めるということが必須とはいえないのではないでしょうか。 また、全体としての「上訴制度の在り方との整合性」という点についてですけれども、今申し上げたとおり再審開始決定は中間判断です。この中間判断はその後に再審公判を控えていますので、そういった中間的な判断については、その後の終局判断を控えている以上、これには不服申立てを認めないというのが刑訴法の基本的な立て付けであると考えます。再審公判でも有罪の主張ができて、更に控訴、上告も認められているという検察官にこれ以上、再審請求審の決定の段階で争う機会を与える必要性にも乏しいように思います。 何よりも、そもそも再審制度の目的は、確定有罪判決から無実の者を救済するという無辜の救済にあるというべきです。上訴権の有無やその内容というものはそれぞれの制度目的に沿って検討されるべきであって、刑事訴訟手続の全体に同じような上訴手続を設けなければならないという話にはならないと思います。また、先ほど申し上げたのと同じ理由で、実体判断を行う通常審、再審公判、それに対して職権主義、決定手続という再審請求段階というのは制度的にも異なる、また、その差異によって異なる不服申立て制度が導かれるということも不合理ではないと考えます。 それから、「確定判決による法的安定性との関係」になりますけれども、そもそも再審とは確定判決の誤りを正すという制度です。現に三審制の下で証拠の捏造、証拠隠し、誤った鑑定が見過ごされ、誤った有罪判決が確定した事例がこれほど蓄積されている中で、三審制の下で慎重な判断を経たとか、確定判決による法的安定性といったものをここでの議論の前提にすること自体が問題があるように思います。再審開始決定を、下級裁判所の一度の判断だからという御意見もありましたけれども、先ほどから述べているとおり、再審開始決定というのは中間的な判断です。その後の再審公判、しかもそこに上訴、控訴、上告まで認められて、最終的には最高裁でも判断がされることが予定されている再審公判で有罪、無罪が決まっていくわけですから、これは確定審の軽視ということにはならないと思います。 なお、最後に、証拠開示の手続規定についての議論では、再審請求手続は職権主義であるということを前提に、裁判所の裁量を尊重すべきという意見が多数見られたように認識しております。そのような職権主義の下で広範な裁量を認められた裁判所が、その職権によって再審開始を決定しているのに、そうやって導かれた結論を尊重せず、当事者としては想定されていない検察官の不服申立ての方を必要視するというのは矛盾していないでしょうか。職権主義を徹底するのであれば、判断に資する資料は全部裁判所に集め、裁判所が充実した手続を行うべく手続規定を整備した上で、裁判所の決定を尊重し、直ちに再審公判に移行するということが職権主義に整合するということになるのではないでしょうか。 ○しろまる大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○しろまる村山委員 確かに、一番大事なのは「(1)」だと思っています。実際に迅速な救済を妨げているということが非常に大きいと思いますけれども、その点は鴨志田委員が今ほど発言をしていただきましたし、従前でもそういうお話はたくさん出ていたと思います。今回、私は「(2)」と「(3)」と「(5)」に関して少し意見を述べてみたいと思います。 まず、二段階構造という、二段階は確かに二段階なのですけれども、その実質は中間決定だと考えるべきだと思います。再審請求に対する決定で棄却決定と開始決定は全く性質が違っていまして、棄却決定の場合はそこでゲームセットです。しかし、開始決定は再審公判が始まるだけなのです。実際に再審請求審で開始決定が出て、そしてそれが確定した場合にどうなるかというと、同じ裁判所で同じ手続の延長線として再審公判が開かれます。事件番号も同じだというのが現在の扱いです。つまり一体的に見ているという証拠だと思います。 そういう中間的な決定だということから何が言えるかというと、訴訟法上は420条の1項で、中間的な手続についての決定はそれ自体独立の不服申立てが許されないというのが原則だと理解しています。したがって、この場合もその独立の不服申立ては許されるべきではないだろうと思っています。そして、実態としては開始決定というのは公判開始決定なわけでして、そういう意味では付審判請求事件との構造的類似性というのは間違いなくあると思います。付審判請求事件については独立の不服申立てはできないとなっております。同じように考えて何ら差し支えないと思っています。 また、実際上検察官の不服申立てが問題になるのは6号再審なのですけれども、審理の実情を見れば、実際に再審請求審と再審公判の審理がどういうものかというのを比較した場合に、確かに再審公判の方が広くなるというのは間違いないと思います。しかし、実際にやっている事実の取調べ、証拠調べは同じようなことが多いということで、訴訟経済上のロスは大変大きいと思います。これは長期化につながる一つの要因だと考えられます。更に言えば、検察官は6回主張する機会が与えられるということになります。確かに再審公判で上告審まで行ったという例はないと思いますので、6回行使したことはないのですけれども、しかし理屈の上ではそうなります。それを果たしていいのかという問題は当然あると思います。また、ドイツにおいて禁止されているのはそのとおりです。 それから、訴訟制度全般との関係で上訴制度として見た場合にどうかということなのですが、まず、不服申立てできるのはどういう人かというと、申立人のような当事者だという理解だと思います。再審請求の場合、検察官は当事者ではありません。請求人の相手方という形になっていまして、当事者性は認められないと。では関与しているのはなぜなのかというと、検察庁法の4条によって公益の代表者という形で関与しているのだと思いますけれども、公益の代表者が関与する場合に不服申立権が認められているのかというのを考えてみますと、例えば人事訴訟でも検察官は公益の代表者として関与が認められています、これは人事訴訟法の23条なのですけれども、この場合、関与した検察官は期日に立ち会って主張立証できます。しかし、その判断に対しては上訴することができるとはなっておりません。 また、広い意味では刑事手続の関係で職権主義だということで、少年事件の関係というのは当然考えなければいけないと思います。これについても考えてみますと、確かに少年事件においても検察官が関与する場合があります。それは非行事実の認定過程において検察官関与がなされるということはありまして、この場合、不服申立てがどうかという点では、抗告受理という形で一定の不服申立てができるとなっています。ここで私が注意しなければいけないと思っている点は、必ずしも抗告権ではないと、抗告受理の申立権だということと、この抗告受理ができるのは終局決定に対してなのです。つまり、保護処分に付さない決定又は保護処分の決定に対してとなっていまして、終局決定に対する抗告受理申立権が認められているという法制度になっています。 一方、少年事件では試験観察という中間処分があります。この場合も非行事実が争われる場合がありまして、非行事実が争われた結果、その証拠調べをやって、そして一定の非行事実が認定できそうだという蓋然的な判断の下に試験観察決定がなされるという場合があります。この非行事実の認定が、検察官が関与した上で検察官にとっては不満のある、つまり送致事実とは違った形の軽い罪の非行事実が認められるということがあるわけですけれども、その場合に検察官が不服申立てができるかというと、これは当然できないということになっていまして、やはりこの場合も中間決定に対しては不服申立てができないという規定になっていると思います。 つまり、全体的に見ますと、検察官が公益の代表者として関与している場合に不服申立てができるかどうかというのは、一義的にできるわけではなくて、むしろできないのが原則だと理解していますけれども、中間的な決定だということを考えてみますと、ますます検察官は不服申立てができないという方向に傾くと。そういう意味では、二段階構造だということとか上訴制度全般を見たときにも、検察官がこの再審請求の開始決定に対して不服申立てができるという方がむしろ理由がない、できないという方が制度全体から見ても自然であると考えられます。そういう意味で、この制度的な問題等を考えてみても、検察官の抗告権、不服申立権が正当化されるということは、私はないと思っています。 続いて、「5」番なのですけれども、「再審手続の迅速化方策としての実効性」があるのかと。これは再審手続全体として見た場合の迅速化ということだと思いますが、まず請求審だけをとれば当然、迅速化するに決まっています、これは明らかです。手続全体と言っているのは、再審公判も視野に入れた場合にどうかということだと思います。しかし、これは足して一緒ではないかという議論は私は間違っていると思います。というのは、再審公判における審理の進め方というのは、完全にスケジュール的に期日管理がなされて進んでいきます。ところが再審請求審の即時抗告審、特別抗告審であると、そういう規制は基本的には余り働いていません。つまり、裁判所の職権という形で、裁判所がどのように進めるかということに依存しておりまして、それが迅速な審理をもたらす、保障するということにはなっていないと思います。 現に再審請求審で長期化した事例というのはたくさんあります。それは何年、何十年と掛かっているのもありますし、前回も紹介したかもしれませんけれども、狭山事件は19年やっても結論が出ないまま請求人が亡くなったと。これは開始決定が出ていない事件ですから比較するのは相当ではないと思いますけれども、再審公判でそういうことがあるかといったら、それはあり得ないと思います。つまり、早く再審公判が開かれた方が、全体としても期間が短縮され、再審公判の中で検察官が十分な主張立証をしたとしても、即時抗告審、特別抗告審を経て、更に再審公判をやるということに比べれば、訴訟ロスが非常に少なくなって、そして全体としても期日で進むという手続の進行の仕方の違いによっても、迅速化するということは明らかだと思っています。 ○しろまる川出委員 私からは「検討課題「2」の「再審手続の二段階構造との整合性」について意見を申し上げたいと思います。 第5回会議において申し上げたように、再審開始決定に対する不服申立てを禁止し、その誤りを是正する余地を一切認めないことにした場合には、違法な再審開始決定が是正されず、再審請求審における事案の選別が適切に行われなくなりますので、二段階構造がとられている意味が失われるという問題があります。これに対して第5回会議において村山委員から、二段階構造といっても再審開始決定は中間的な判断であるので、必ずしも不服申立てを認める必要はないという趣旨の御発言があり、先ほども、鴨志田委員、村山委員から同趣旨の御発言がありました。 しかし、一般に、中間的な判断であるからそれ自体に対する不服申立てを認める必要はないとされる根拠は、最終的な判断の対象と中間的な判断の対象が重なっているために、最終的な判断において実質的に中間的な判断についても審査がなされるからであると考えられます。この観点から見ますと、第5回会議でも申し上げましたように、再審請求審と再審公判では審判対象が異なりますし、また、刑事訴訴法第435条第6号の証拠の明白性の判断はともかくとして、同条第6号以外の再審開始事由及び同号についても証拠の新規性の判断については、実質的にも両手続における判断対象は重なりません。したがって、再審開始決定がそれ自体に対する不服申立てを認める必要性がないという意味での中間的な判断であるということはできないと思います。 それから、この点に関連して、第5回会議において村山委員から、第435条第6号以外の再審開始事由や同条第6号における証拠の新規性が熾烈に争われるといった、実際に余りないと思われる事例を挙げて議論しても実益がない旨の御発言がありました。しかし、ここでは、制度として再審開始決定に対する不服申立てを禁止するとした場合にどのような理論的問題が生じるかということを議論しているわけですから、対象事例がどれくらい存在するかということは議論する上で考えるべきことではないと思います。 ○しろまる大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○しろまる小島幹事 再審開始決定に対する不服申立てを禁止することについてはなお疑問が残るという立場から、今回の資料との関係で申しますと主に「(2)」と「(3)」に関係する内容につき、発言をさせていただきたいと思います。 まず、ある裁判について不服申立てを認めるかどうかというのを決める際の考慮要素の一つとして、その裁判が何についての判断を内容とするものかという点があるものと思います。私自身はこの観点から、第1ラウンドの議論の際に触れましたとおり、再審請求棄却決定と再審開始決定というのは、いずれも再審開始事由があるかどうかという同一の判断対象についての裁判であって、その帰結が異なるだけで、裁判の性質としては共通するものであるとして、そうした性質の裁判に対して不服申立てを認めるという仕組みそのものに合理性があるのであれば、再審請求棄却の決定に対しても再審開始決定に対しても等しく不服申立てを認める、別の言い方をしますと、どちらの裁判についても吟味ないし是正の機会が設けられるというのが理屈としては一貫するのではないかと考えております。このこと自体は、再審請求の手続が職権構造であることから直ちに結論が変わってくるものではないと考えているところでございます。 それから、第1ラウンドの議論の中でも、先ほどの委員の方々からのお話の中でも、再審開始決定が中間的な裁判であって、それが出たらそれに対する不服申立ての余地を認めず、直ちに再審公判に移行することにするべきなのだと、そういう趣旨のお話が出ていたものと認識しております。そのこととの関連で、特に再審開始決定が中間的な裁判であるという位置付けの根拠について少し疑問がございます。仮にこの点が再審開始決定の判断の中身の問題として、事件の実体、つまり有罪なのか無罪なのかという点についての解決ないし結論を含むものではないということから出てくるのだといたしますと、これは再審請求を棄却する決定についても、その判断の中身自体は再審事由が認められないという判断であって、それ自体が有罪、無罪に関する解決ないし結論を含むものではないはずですので、同じことが妥当するのではないかと考えております。そうしますと、このような説明からは検察官の再審開始決定に対する不服申立てだけを禁止するということにはならないのではないかと考えているところでございます。 それから、再審法制における二段階構造というところに着目をして、それは事件の実体に関する最終的な判断に向けての一連の手続であって、そのうちの予備審査に相当するものが再審請求の手続で、本審査に当たるのが再審公判であると位置付けるという観点から、再審開始決定を中間的な裁判とするということも考えられるところかと思います。この発想によりますと、恐らく主たる争いの場は再審公判になるので、そこにすっと行くべきだという話になるのだろうと思います。そして、こうした発想からいたしますと、再審開始決定については、先ほどのお話にも出てまいりましたある種の前さばきにすぎない、あるいは、それは再審公判を経た終局的な解決に向けた一連の手続の中の通過点の一つにとどまるという位置付けがもしかしたら出てくるのかもしれません。ただ、第1ラウンドの議論の中でも出ておりましたように、再審法制全体を眺めますと、再審開始決定には、単純に再審公判に向けた一つの通過点ということを超えた重みが与えられているのではないかと思います。少なくとも再審開始決定が確定いたしますと、それによってもちろん再審公判への道が開かれるという効果もあるのですけれども、それにとどまらず、刑の執行停止をすることができるようになるというような重要な付随的効果も生じるわけでございまして、それは再審法制そのものが再審開始決定はそれ自体かなり重たいものであるという想定で組まれているということの表れなのではないかと思います。 そのように考えますと、やはりまずもって再審開始決定そのものが信頼できるものでなければならない、そこがきっちり担保されなければいけないというのが、少なくとも元々の再審法制における二段階構造で想定されているところではないかと思います。そうしますと、再審に係る手続の構造という面からしても、再審開始決定に対する慎重な吟味の機会を設けることなく再審公判にストレートに進んでよいということには直ちにはならないのではないかと考えております。 ○しろまる大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○しろまる宇藤委員 私も、再審開始決定に対する検察官からの不服申立てを禁止するということについては反対でございます。誤解のないように言っておきますと、全体として再審手続の迅速化を図るということについては異論があるわけではございません。ただ、検察官による不服申立ての禁止をそのための手段とすることにそれほどの合理性があるかということについては疑問がございます。この点は、第5回会議においても、再審開始決定に対する不服申立ての禁止をすることが再審請求審と再審公判という全体的な再審手続の迅速化に資するという点について疑問がある旨の意見を述べておりましたので、繰り返しではありますが、現在でもその点が解消されたわけではないと考えております。 既に川出委員、小島幹事からお話がありましたとおり、理論的に言えば、再審公判との関係で請求審は必ずしも中間的な手続ではありません。先ほどから鴨志田委員あるいは村山委員は中間手続としての性質を有する旨の御指摘があり、更に付審判手続との類似という御発言もあったのですが、川出委員から御指摘がありましたように、訴訟物が重ならないため、付審判手続と同様に考えることはできないと思います。 御承知のとおり、刑事訴訟法第435条第6号の再審請求事由は、そこに書かれているような証拠があるかどうかということを争点とするのに対して、再審公判では、有罪・無罪が争われるわけでございますから、単純にその内容が重なっているわけではございません。したがって、第5回会議の際に村山委員からは、再審請求審における判断に実質的に不服がある場合は再審公判で扱えばよいというお話があったかと思いますが、理論の問題として、それは厳密な意味では当たらないのではないかと思います。 加えて、迅速化が図れるかという点なのですけれども、この点について、理論的な差はあったとしても事実上やることは同じだからということが、やはり村山委員から御指摘があったかと思いますが、その内容というのは恐らく証拠能力や信用性といったところが再審公判でなお争点となることは否定されないということを前提にして、請求審と同じことをやるのだからそれでいいではないかというふうな話だったかと思います。ただ、それで争点がはっきりして、それを争いますということから迅速化が図れるかというと、かなり疑問です。請求審で整理したというわけではございませんので、再審公判にその点についての争点が持ち越されてしまうということでありますから、結局のところそれほど変わらないのではないか。さらに、本日会議における先ほどの村山委員の御発言によれば、再審公判というのは期日できちんきちんとやっていくからというお話で、必ずこれは早くなるという御趣旨であったかとは思うのですけれども、この点についても結局のところ、証拠能力あるいは信用性を争うという話が持ち越されることに変わりはないわけでございますので、期日をしっかり規律をしたとしても、再審公判が長くなることの対策にはならないのではないかと率直に思いました。 ○しろまる大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○しろまる田岡幹事 まず、「(1)」の「再審開始決定に対する不服申立てを禁止する必要性」については、鴨志田委員、村山委員が発言されたとおりだと思います。また、在り方協議会における足立構成員の発言や、これまでに各委員・幹事に届いている各地方議会・首長及び各種団体の要望書、意見書を見ましても、皆さん、検察官の不服申立ては禁止すべきであるという意見です。このような要望書・意見書が多数寄せられていること自体が、正にこの必要性を示す立法事実と思われます。既に衆議院に提出されております衆法第61号の法案でも、検察官の不服申立ては禁止すべきというものになっております。こうした国民の声に耳を傾けずに、専門家が単に理論的な整合性について難があるといった指摘をしたところで、果たしてそれが国民の要望にこたえるものになっているのかと率直に疑問に思います。 その上で、「(2)」の「再審手続の二段階構造との整合性」について、先ほど来、中間的な決定であるから、不服申立てを認める必要性がないということが指摘されておりますが、私もその意味について考えたところをお話ししたいと思います。 まず、我が国は再審請求審と再審公判の二段階構造をとっておりますが、再審請求審の訴訟物は再審開始事由の存否でありまして、6号再審の場合には、無罪等を言い渡すべき明らかな証拠があるか否かということであります。確かにこれは再審公判における訴訟物とは異なっております。 ただ、ここでいう明らかな、つまり明白性というのは、白鳥・財田川決定によれば、新旧両証拠を総合評価したときに確定判決の有罪認定に合理的な疑いを差し挟む場合に当たるか否かということでありまして、ほとんど実体的判断と異ならないものであります。ただ、再審請求審において直ちに無罪を言い渡すとはされていないことから、再審請求審における再審開始決定というのは実体判断ではなくて蓋然性の判断、白鳥・財田川決定が、その認定を覆すに足りる蓋然性のある証拠と言っていますように、予測的な判断でありまして、飽くまで蓋然性の判断にとどまるわけであります。最終的に実体的に有罪であるか無罪であるかは再審公判において決着を付けるということが予定されているわけですから、再審公判において予測的な判断、蓋然性の判断を繰り返すことに意味はなく、直ちに再審公判を開いて決着を付ける方が迅速な手続に資するだけではなく、再審請求手続のような非公開で適正手続も保障されない手続を繰り返すよりも、公開の法廷において証拠能力のある証拠による厳格な証明が要求される再審公判を開いた方が、適正手続の保障にも、また、実体的真実の発見にも資すると考えられるところです。 なお、川出委員から、6号再審以外の場合については再審開始決定に対する不服申立てを認めなければ違法、不当な決定を是正する機会がないのではないかという指摘がありましたが、少なくとも6号再審の明白性が問題になる場合に関して言えば、再審請求審における再審開始事由の審理と再審公判における事実認定は実質的に重なっていると言って差し支えないのではないでしょうか。成瀬幹事の法学教室の461号でも、再審請求審において新証拠と旧証拠の総合評価により確定判決、有罪認定の当否を実体的に判断するならば、再審公判で行われる事実認定との差は紙一重であると説明されているところでありまして、これは予測的な判断、蓋然性の判断と言いながら実体的判断に等しいことを行っているわけでして、この予測的判断、蓋然性の判断に対する検察官の不服申立てを認め、かつ再審公判における無罪判決についても検察官の上訴を認めるというのは、二重に不服申立てを認めるに等しいわけですから、これを認める実益がありません。そのような意味において再審開始決定というのは、中間的な判断であるから、検察官の不服申立てを認める必要性がないと理解しております。実際に、我が国と同様に二段階構造をとるドイツでは、再審開始決定に対する不服申立ては禁止されていると理解をしております。 次に、「(3)」の「上訴制度の在り方との整合性」に関して言いますと、先ほど来、鴨志田委員や村山委員が指摘されていますように、そもそも、再審請求手続における検察官は当事者ではありません。再審請求人は当事者として裁判所に対し再審請求理由を主張し、再審開始事由の有無について判断を求めているわけですから、再審請求理由が認められなかった場合には不服申立てをする利益を有するのに対して、検察官は当事者ではなくて、単に検察庁法4条の公益の代表者として再審請求手続に関与するにすぎないわけですから、当然に不服申立てを認めなければいけないというものではありません。 先ほど村山委員が指摘されたとおり、人訴法の23条は検察官関与を認めておりまして、この場合には、検察官は期日に立ち会って事実を主張し、また証拠の申立てをすることができるとされています。これは検察官の公益の代表者としての役割に照らし、その関与が認められていると理解しておりますけれども、不服申立てまでは認められないとされていると理解をしております。そうだとしますと、現行法上、検察官が公益の代表者として関与する場合には不服申立てを認めなければならないとは考えられていませんので、これを認めなかったとしても、差し支えはないのではないかと考えます。 また、刑訴法420条の1項との関係でも、訴訟手続に関し判決前にした決定に対しては即時抗告をすることができないとされております。小島幹事は裁判の性質が同じだから、再審棄却決定と再審開始決定は等しく考えるべきだと言われましたが、付審判請求の場合には付審判の決定に対しては抗告はできないが、付審判決定が棄却された場合には抗告ができるとされておりますので、再審棄却決定に対する不服申立てが認められるのであれば、再審開始決定に対する不服申立てを認めなければならないとはいえないと思います。 また、少年法55条の家庭裁判所移送決定に対しても、これは終局裁判でありますけれども、抗告はできないと理解されております。このように不服申立てを認めなければならない理由がなければ、不服申立てを認めないという制度にすることは可能であり、不服申立てを認めないとしても、上訴の在り方との整合性を説明できないとはされていないわけですから、検察官の不服申立てを認めないという制度にすることも可能であると考えます。 ○しろまる大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○しろまる成瀬幹事 私は、川出委員・小島幹事・宇藤委員の御意見に賛同するものであり、再審開始決定に対する不服申立てを禁止することは、違法な再審開始決定の放置を招くものであって、制度の在り方として相当性に欠けると考えます。 先ほど田岡幹事から「第6号の明白性だけに特化して見れば」という趣旨のお話がありましたが、ここは基本法制の在り方を調査・審議する法制審議会の場ですので、再審制度全体を見渡して検討する必要があると考えます。川出委員と宇藤委員は、そのような観点から、「再審請求審と再審公判は、制度全体を見れば、やはり審判対象を異にする別個の手続である」と指摘しておられるのだと思います。この点に更に付け加えて申し上げると、仮に再審開始決定に対する不服申立てを一律に禁止することとした場合には、再審請求権を有しない者によって再審請求がなされた場合のように、再審請求が法令上の方式に違反しているなどの手続違反があっても、一たび再審開始決定がなされれば、そうした手続違反はもはや問題とされることなく再審公判が開始されてしまい、公訴事実の存否について審理がなされることとなります。こうした事態が不当であることは明らかでしょう。 よって、鴨志田委員・村山委員・田岡幹事の御提案のように、再審開始決定に対する不服申立てを禁止するのは相当でないと考えます。 なお、外国法に関しては、第5回会議において、田岡幹事や村山委員から、「イギリスではCCRCの控訴院付託決定に対する検察官の不服申立ては禁止されている」旨の御指摘がございました。しかし、我が国と外国とでは刑事手続の構造等が異なりますので、一部のみを切り取って議論することは適切でないと考えます。 イギリスに関して申し上げれば、そもそも通常審においても、検察官が無罪評決に対し事実認定の誤りを理由として上訴することはできないとされており、我が国とは、裁判における事実誤認の取扱いが異なっています。 また、再審については、CCRCという司法から独立した公的機関による調査を経た上で裁判所による司法審査が行われるという、我が国とは全く異なる制度が採られており、比較対象とする前提を欠いていると思われます。 よって、CCRCの控訴院付託決定に対する不服申立てが禁止されているから、我が国においても再審開始決定に対する不服申立てを禁止すべきであるという御主張は、説得力に欠けると言わざるを得ません。 ○しろまる大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○しろまる池田委員 ただいま成瀬幹事から外国法について言及がありましたが、私からも、これまでに、ドイツやフランスで再審開始決定に対する検察官の不服申立てが禁止されている旨の御発言がありました点について意見を申し上げます。前提として、成瀬幹事の御指摘のとおり、我が国と諸外国では検討の前提となる刑事手続全体の構造等が異なりますので、一部のみを切り取って議論すべきではないということに賛同いたします。 その上で、ドイツに関しては、第4回会議における配布資料4にも記載されているように、そもそも通常審においても重大事件においては無罪判決も含めて事実認定の誤りを理由とする上訴はできないとされています。再審請求審における無罪方向の決定である再審開始決定に対する不服申立てが禁止されているということは、これと同一の方向のものであって、その限りで整合するものです。これに対し、我が国においては事実誤認は控訴の理由とされており、通常審において無罪判決に対する上訴の制限は設けられておらず、前提となる制度の理解に違いがあります。したがいまして、ドイツにおいて再審開始決定に対する検察官の不服申立てが禁止されているからといって、直ちに我が国においても同様の取扱いをすべきであるということにはならないと考えられます。なお、調べた限りでは、ドイツのこの取扱いについては、疑わしい判断に基づいて確定力が失われ、不必要な公判をもたらすこととなるという批判もありますので、申し添えます。 また、フランスに関しては再審開始決定に対する検察官の不服申立てのみならず再審請求棄却決定に対する再審請求人の不服申立ても認められておりません。そうであるにもかかわらず、前者のみを取り出して、それと同様に我が国において再審開始決定に対する検察官の不服申立てのみを禁止すべきであるというのは適切とは言い難いと思われます。 あわせて、制度全体の整合性を踏まえて、上訴制度としての在り方という見地から意見を申し上げたいと思います。これは第5回会議においても申し上げたことですけれども、刑事訴訟制度においては、裁判所の判断の慎重さ、適正さを確保する観点から、その全体を通じて上訴制度が設けられています。そうした中で再審開始決定についてのみ不服申立てを一律に禁止することは、上訴制度の在り方との関係で整合性を欠く上、再審請求審における判断の慎重さ、適正さを確保する上で問題があると思われます。 この点について敷衍いたしますと、仮に再審開始決定について不服申立てが禁止されて上級審による審査の機会がなくなれば、下級審による再審開始決定が誤っていても上訴審によって是正されなくなるとともに、下級審においては上級審による審査を見据えることで慎重かつ適正な判断の下に再審開始決定がなされるという制度的な担保がなくなるために、構造的に下級審の判断の慎重さの欠如をもたらすこととなるということへの懸念も指摘できようかと思われます。 さらに、仮に通常審において最高裁判所まで争われて有罪が確定した事案であっても、一度下級裁判所の裁判官が再審開始決定をすれば、それが誤ったものであっても是正されることなく直ちに再審公判に移行するというのは、確定判決を軽視するものだと言わざるを得ないように思われます。第5回会議において後藤委員から、また先ほど小島幹事からも御指摘があったように、確定した有罪判決について再度の公判を開くという再審開始決定が持つ効果の重大さに鑑みても、その決定の誤りを放置することは相当とは言い難いように思われます。 なお、第5回会議において鴨志田委員から、通常審において最高裁まで慎重な審理が尽くされているというのはフィクションではないかとの御発言がありました。もとより全ての事件について通常審で最高裁まで審理が尽くされているということを申し上げたいわけではなく、先ほど申し上げたような事態が生じ得る仕組みとすること、それ自体の問題点を指摘したものです。 また、先ほど来、職権主義の下で裁判所に広範な裁量を認めている非公開の手続である再審請求審よりも、適正手続を保障されている再審公判において審理がなされ、有罪又は無罪の判決に対して上訴がなされる方が健全であるという趣旨の御発言がなされております。仮にそれが再審請求審が再審公判よりも手続的に劣っているという趣旨であるとすれば、なぜそのような手続においてなされた再審開始決定について是正の余地が一切認められないこととなるかについても理解が容易ではないと思われます。いずれにしても手続保障の在り方はそれぞれの手続の目的に見合ったものであるべきところ、通常審における手続保障と、一旦それを経た事件について再度審理するにふさわしいものを選別する再審請求審における手続保障とでは、その在り方はおのずと異なることになるものと考えます。 最後に、当事者ではなく公益の代表者として再審請求審に関与する立場にすぎない検察官に再審開始決定に対する不服申立ての権限を認める必要はない旨の御発言もございました。しかし、これも第5回会議で述べたとおり、むしろ検察官は違法、不当な裁判の是正を求める立場にある者として関与しているわけですので、再審請求審における検察官の立場を理由として不服申立ての権限を否定することにはならないと考えられます。様々な制度に言及して検察官の在るべき役割を議論していただいておりますけれども、正にそのとおりでありまして、それぞれの手続の性質、趣旨、目的に照らして在るべき立場を論じるべきものと考えております。 ○しろまる大澤部会長 オンラインで挙手されておられますので、川出委員どうぞ。 ○しろまる川出委員 先ほど池田委員から言及がありましたドイツの制度について、若干補足をさせていただきたいと思います。 ドイツでは、我が国と同様に、二段階構造の下で再審開始決定に対する検察官の抗告を認めていたのですが、1964年の改正により、現行法には、検察官の抗告を禁止する規定が置かれています。この改正内容は、元々の政府提出法案には含まれておらず、連邦議会の法務委員会の段階で追加されたものです。そこで、この改正がどのような理由に基づくもので、再審手続が二段階構造になっていることとの関係をどのように説明しているのかを調べてみたのですが、改正法案の理由書には改正の理由は明記されておらず、また、法務委員会での議事録も公表されておりません。 改正後に出された文献を見ますと、十分な検討なしに改正がなされたことを批判するものがありましたので、連邦議会での改正規定の追加は、抗告を禁止することについての理論的問題を十分に議論した上でのものではなかったと推測されます。また、詳細は省略しますが、その後に、改正に賛成する立場から示されている理由を見ても、例えば、誤った再審開始決定がなされる可能性は低いので、抗告を認めてそれを是正する必要性よりも、抗告を禁止して再審手続を迅速化する要請が上回るからだといった政策的な理由が挙げられており、私の調べた限り、再審手続の二段階構造と整合しないのではないかという問題に真正面から答えたものは見当たりませんでした。 したがって、ドイツの法制は確かに二段階構造の下で検察官による再審開始決定に対する抗告のみを禁止する制度があり得ることを示すものではありますが、そこでの議論はそれに伴う理論的問題を解消するために参照できるようなものではないように思います。 ○しろまる大澤部会長 ほかに御発言はございますか。 ○しろまる宮崎委員 第5回会議においても申し上げたとおり、再審開始決定に対する不服申立てを一律に禁止すると、仮に通常審において三審制の下で最高裁判所まで慎重な審理が尽くされて有罪判決が確定した事案であっても、制度上は、簡易裁判所や地方裁判所といった下級裁判所の1人の裁判官が再審開始事由に該当すると認めて再審開始を決定すれば、その判断が仮に誤っていたとしても、その当否はもはや問題とされずに再審開始決定が確定して再審が開始されることとなるのであって、確定判決による法的安定性が著しく害されることとなりかねません。こうした事態を法的に正当化する合理的な理由は示されておらず、日本弁護士連合会の御提案のように再審開始決定に対する不服申立てを禁止することは法的合理性を欠くものであって、相当でないと考えられます。 なお、第5回会議において鴨志田委員から、通常審において最高裁判所まで慎重な審理が尽くされているというのはフィクションに基づく主張ではないかとの御発言がありました。しかしながら、通常審において全ての事件が上告までされるわけでないことは当然でありますが、控訴、上告がなされて最高裁判所まで深刻に争われ、慎重な審理が尽くされて有罪判決が確定した事案も多数存在するのであり、そうした事案でも再審請求がなされることはありますし、先ほど池田委員も述べられたように、そもそも私の発言の趣旨は、不服申立てを一律禁止する制度自体の問題点として先ほど申し上げたような事態が生じてしまうことを指摘したものであります。 ○しろまる大澤部会長 成瀬幹事、なるべく簡潔にお願いします。 ○しろまる成瀬幹事 検討課題「(5)」に関連して、事務当局に質問をさせていただきたいと思います。 第5回会議の配布資料6に記載されている事案のうち、再審開始決定が確定したものについて、その後の再審公判において検察官が無罪判決等に対して上訴した事案があるかどうかという点について、御教示いただけますでしょうか。 ○しろまる大澤部会長 答えられますか。 ○しろまる今井幹事 お尋ねの配布資料6記載の各事案で再審開始決定に至ったものにつきましては、再審公判において検察官が上訴した事案は存在しないものと承知しております。 ○しろまる成瀬幹事 ありがとうございます。同趣旨で鴨志田委員にもお伺いしたいのですが、鴨志田委員が第5回会議において提出してくださった「検察官抗告の状況」と題する資料に記載されている事案のうち、再審開始決定が確定したものについて、その後の再審公判で有罪立証がなされたかという点については記載して頂いているのですが、検察官が無罪判決等に対して上訴した事案があるかという点について、もしお分かりであれば教えていただけますか。 ○しろまる鴨志田委員 1件もないと承知しております。 ○しろまる成瀬幹事 ありがとうございました。ただいまの事務当局及び鴨志田委員のお答えによりますと、再審公判においては、無罪判決等に対する検察官による上訴が基本的になされていないと考えられますが、こうした実情は、現行制度上、再審開始決定に対する不服申立てが認められていることと無関係ではないように思われます。 すなわち、再審開始決定に対する不服申立てが認められ、再審開始事由の存否をめぐって上級審まで慎重な審理が尽くされた上で再審公判に移行する仕組みとされていることが、再審公判において、無罪判決等に対する上訴が基本的になされていないことにつながっているのではないかと考えます。 それゆえ、これとは反対に、再審開始決定に対する不服申立てを一律に禁止して、再審請求審を早く打ち切ることとした場合には、再審請求審における争いが再審公判に持ち越され、検察官が無罪判決等に対して上訴する事態も生じると予想されることから、村山委員は「再審手続全体として見た場合でも、必ず迅速化する」と断言しておられましたが、私は、再審手続全体を見た場合に必ず迅速化するとまでは言い切れないと思います。 あともう1点、村山委員の本日の御発言の中で、「検察官は6回主張する機会が与えられる」という指摘がございました。第5回会議においても、村山委員は、「現行法上、再審請求者は、再審請求が棄却されると同一の理由によっては請求できなくなるのに対し、検察官は、再審請求審において即時抗告・特別抗告、再審公判において控訴・上告をすることができ、実際には同じテーマで合計6回チャレンジできるので、不当だ」という趣旨の発言をされていたと思います。 しかし、請求者が再審請求審において請求を棄却された場合に同一の理由によって再度請求をすることができなくなることと、検察官が再審請求審と再審公判を通じて合計4回不服申立てをすることができることは、別々の事柄ですので、そもそも両者を比較して主張される趣旨が私にはよく理解できませんでした。 その点を措くとしても、再審請求審と再審公判は、制度趣旨や審判対象を異にする別個の手続であり、刑事訴訟法第435条第6号における証拠の新規性や同号以外の再審開始事由が問題となる事案を見れば明らかなように、再審開始決定に対する不服申立てと再審公判における上訴とは別物であって、これらの審級を足し合わせて「検察官は合計6回チャレンジできる」と述べるのは、誤解を招く表現であると思います。 また、再審請求者は、再審請求棄却決定に対して、即時抗告・特別抗告をすることが可能である上、仮に再審公判において有罪判決がなされれば、控訴・上告をすることも可能ですので、再審請求者の権利と検察官の権限との間で不均衡は生じていないと考えます。 ○しろまる大澤部会長 更にどうしてもという御発言があればお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。 (一同異議なし) ○しろまる大澤部会長 よろしいでしょうか。この枠はこの段階としてはここまでということにいたしまして、次に、配布資料10に沿って、「再審請求権者の範囲を拡大するか」について審議を行いたいと思います。この論点につきましても検討課題をまとめて、審議を行いたいと思います。 御意見等がある方は挙手をお願いいたします。 ○しろまる田岡幹事 私からは、弁護士会又は日弁連を再審請求権者とすることの必要性と法的根拠について発言を致します。 まず、第6回会議で鴨志田委員からも発言がありましたように、再審請求人がえん罪を訴えていたのだけれども、本人や親族が死亡したり、又は親族の協力が得られないために再審請求の継続が困難になってしまった、そのために再審開始決定が得られないといった事例があることを考えますと、現行法の再審請求権者の範囲を拡大する必要性があるということは否定し難いのではないかと思われます。三鷹事件についても、報道による限りですけれども、専門家の証人尋問を実施することが決まったのに、再審請求人が死亡していることが判明したために再審手続が終了する見込みであると報じられております。 その上で、刑訴法439条によれば、再審請求人や親族がいない場合あるいは協力が得られない場合に再審請求権者となれるのは検察官のみとされておりますが、仮にですけれども、再審開始事由が客観的には存在する可能性が極めて高いと認められるにもかかわらず、検察官が再審請求を行わないために再審開始決定に至らないといった場合を考えますと、その不合理性は明らかなのではないかと思います。 ところで、弁護士会及び日弁連になぜ再審請求権者となる法的根拠があるのかということを考えますと、確かに弁護士会、日弁連は弁護士及び弁護士法人の使命及び職務に鑑み、その品位を保持し、弁護士及び弁護士法人の事務の改善進歩を図るために弁護士及び弁護士法人の指導、連絡、監督を行う事務を行うことを目的とした団体ですが、弁護士は基本的人権を擁護し、社会的正義を実現することを使命としており、弁護士はその使命に基づいて誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならないとされておりますので、弁護士会や日本弁護士連合会は公益的な性格を有しているということができます。このような公益的な性格に鑑みますと、ほかに再審請求権者となり得る者が存在しない場合には、検察官に代わり、あるいは検察官と並んで、公益の代表者として再審請求権者となり得ると考えます。 この場合、弁護士会や日本弁護士連合会は再審請求権者の権利を代理行使したり、あるいは承継しているのではなくて、検察官と同様に、言わば固有権として再審請求権を有するものと考えます。 ○しろまる大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○しろまる鴨志田委員 具体的な事例を一つ紹介したいと思います。私が弁護士を務めております大崎事件という事件がございますが、この事件では主犯とされた者と、共犯とされた3名の合計4人の当事者が全員、存命中は無実を訴えていました。しかし、主犯とされた者、この方は生きていますけれども、現在は心神喪失の状態です。共犯者のうちの1人は、その主犯格とされた者の夫なのですが、この方は亡くなっています。この2人については、2人の子が再審請求人になって再審請求を行っているのですが、ほかの共犯者2名については亡くなっていて、現時点で再審請求を行う者がおりません。その結果、4人全員が存命中に無実を訴えていた事件であっても、再審請求ができている当事者とできていない当事者がいるという状況です。なお、榎井村事件も2人の共犯事件でありながら、1名のみが再審請求をして無罪が確定していますけれども、もう1名の方の名誉は回復されていません。このように、共犯事件で有罪の言渡しを受けた者の一部にのみ親族再審請求人がいる場合に、そうでない者との間に著しい不公平が生じるという状況になります。 このような場面を想定したときに、少なくとも存命中に無実である、再審をしたいという意向を示したような者について再審請求人がいないという事態は、やはり公平を欠くのではないでしょうか。そのような場合に、あらかじめ指名を受けた者や弁護士会、日弁連に再審請求権を認める必要があるということは否定できないのではないかと思います。 ○しろまる大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○しろまる池田委員 検討課題「(3)」に関連して意見を申し上げます。 第6回会議において申し上げましたとおり、刑事訴訟法第439条第1項第4号において一定範囲の者に再審請求審が認められている趣旨は、有罪の言渡しを受けた者の名誉を回復するために必要であることに加えて、刑事補償を受け得るなどの法律上の利益が認められ得るところにあるとされています。これは有罪の言渡しを受けた者が死亡した場合について、公益の代表者である検察官によるものを除き、いつまでも再審請求をすることを可能とするのではなく、再審請求権者を法律上の利益が認められ得る者が存在する限りでその者による再審請求を認めることにより、確定判決による法的安定性と個々の事件における是正の必要性とのバランスを図っているものと理解することができます。 これに対して、日本弁護士連合会の御提案にあります有罪の言渡しを受けた者から指名を受けた者や弁護士会、日本弁護士連合会には、有罪判決の見直しによって生じることとなる法律上の利益との関わりを認めることができないと思われます。また、弁護士会や日本弁護士連合会については、田岡幹事の御指摘があったように公的な性格を持っていることを否定するものでありませんが、法的な位置付けとしては検察官と異なり、公益の代表者とはされておりません。したがいまして、その範囲にまで再審請求権を認めることとなるとすれば、ただいま申し上げた現行刑事訴訟法の下で図られているバランスとは相入れないということになります。さらに、有罪の言渡しを受けた者の名誉回復のためとはいえ、その者の死後いつまでたっても再審請求が繰り返されるような事態をももたらされ得ることにもなります。 以上によれば、このような法改正の必要性、相当性には疑問が残るところです。 ○しろまる大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○しろまる成瀬幹事 私は、検討課題の「(2)」について、第6回会議において、以下のような指摘をさせていただきました。一つ目の「有罪の言渡しを受けた者からあらかじめ指名を受けた者に再審請求権を認める法的根拠」については、代理構成と権利承継構成のいずれについても課題が多いこと、二つ目の「弁護士会及び日本弁護士連合会の法的な位置付けとの関係」については、公益の代表者として固有の再審請求権が認められている検察官と弁護士会及び日本弁護士連合会とでは法的な位置付けが異なるほか、我が国の現行法において、他に参考となる規定も見当たらない中で、再審の場面でのみ弁護士会や日本弁護士連合会に固有の再審請求権を認めることは困難であることです。 後者の点に関して、田岡幹事から、「弁護士法第1条において、弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とすると謳われているのだから、公益的な性格を有する弁護士会及び日本弁護士連合会に固有権として再審請求権を付与することも正当化される」という趣旨の御指摘がございました。 しかし、本日のこれまでの議論の中で、検察官は、公益の代表者として、刑事事件に限らず、他の法分野でも一定の権限を行使することが指摘されていたと思います。具体的には、人事訴訟法第23条第1項により、人事訴訟の期日に立ち会い、事件について意見を述べることがあるほか、民法の世界でも、同法第7条に基づいて後見開始の審判を請求したり、第817条の10に基づいて特別養子縁組の離縁を請求したり、第834条に基づいて親権喪失の審判を請求したりするなど、様々な権限を行使するものとされています。このように、我が国の法制度全体を見渡せば、検察官と弁護士の法的位置付けが異なることは明らかであり、弁護士会及び日本弁護士連合会に固有の再審請求権を認めることはやはり困難であると思います。 また、検討課題「(3)」については、先ほど池田委員から御指摘があり、検討課題「(4)」については、第6回会議において、江口委員から、有罪の言渡しを受けた者から指名を受けたというだけで再審請求権を認めることとすると、再審請求者が本当に指名を受けたか否かなどをめぐって深刻な争いが生じ、裁判所における再審請求権者の該当性判断に困難を来し、本筋とは離れたところで再審請求審が混乱し、長期化させることとなりかねないとの懸念が示されました。 私も、池田委員や江口委員から示された御意見に賛同するところであり、こうした検討課題は、先ほどの田岡幹事・鴨志田委員の御説明を踏まえてもなお、克服されるには至っていないと思われます。 よって、有罪の言渡しを受けた者からあらかじめ指名を受けた者や弁護士会及び日本弁護士連合会に再審請求権を認めることは、相当でないと考えます。 ○しろまる大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○しろまる鴨志田委員 今の点ですけれども、「指名を受けた者」の「指名」というのは当然、有罪の言渡しを受けた者が存命中に自らの意思で、ある一定の者を指名するということだろうと考えます。そうだとすると、言ってみれば有罪の言渡しを受けた者の死亡や心神喪失を効力発生要件条件として、再審請求を行い得る権利なり地位なりを承継するというような、一定の契約のようなものを想定できるのではないかと思います。なお、一定の親族に再審請求権が認められておりますので、再審請求権を一身専属権と考える必要はないのではないかと思います。このような捉え方をすると、例えば任意後見契約を考えたときに、正に心神喪失に至る前に、行為能力がある状態で契約をして、そのような書面に公証人の認証を受けるということで、一定の状態になったときに任意後見が発効するというような、それに近いようなものをイメージして対応策を講じることは可能なのではないかと考える次第です。 ○しろまる大澤部会長 更に、いかがでしょうか。 ○しろまる田岡幹事 台湾では検察官が再審請求をする例が相当数あると聞いております。結局、このような問題がなぜ我が国で問題になるかといいますと、検察官は6号による再審請求をすることがないからです。つまり身代わり犯人事例のように、再審請求人が犯人隠避の罪に問われるような場合を除いては検察官が再審請求をしないために、他に再審請求権者となり得る者がいない場合には、再審開始事由があることが明らかになったとしてもなお、再審開始決定に至らないという不都合があるからだと考えます。 先ほど鴨志田委員が言われたような、例えば榎井村事件のように2名共犯事件で1名は再審開始決定がなされて無罪になっているのに、もう1名について再審請求がなされないために再審開始決定に至らないとすれば、それはやはり不合理なのではないでしょうか。 この問題を解決するために仮に再審請求権者の範囲を拡大しないのであれば、一定の場合に検察官に再審請求を義務付けるか、あるいは再審請求人が死亡しても再審請求手続が当然には終了しないことにするか、何らかの対策を講じないと、現実に不都合があるにもかかわらず、理論的に弁護士会又は日本弁護士連合会を再審請求権者とするのは法的根拠がないというだけで済ませてしまってよいのだろうかという疑問を持っております。 ○しろまる大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。よろしいでしょうか。 (一同異議なし) ○しろまる大澤部会長 ありがとうございました。予定していた時間も参りましたので、本日はもう一つやる予定でございましたけれども、それにつきましては次回に送らせていただくということで、本日の審議はここまでとしたいと思います。 本日積み残しとなりました論点については、次回会議において審議を行うこととしたいと思います。また、次回会議においてそのほかにどの論点について審議を行うかにつきましては、私の方で早急に検討させていただき、期日間に事務当局を通じてできるだけ早期に皆様にお知らせするということにしたいと思います。 本日の会議における御発言の中で具体的事件に関する御発言などもございましたので、非公開とすべき部分があるかどうかにつきましては精査をした上で、そのような部分がある場合には、御発言なさった方の御意向なども確認した上で該当部分を非公開とする等、適宜の処理をしたいと思います。それらの具体的範囲や議事録上の記載方法等につきましては、いつものことでございますが、部会長である私に御一任いただきたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。 (一同異議なし) ○しろまる大澤部会長 他方で、本日の配布資料につきましては特に公開に適さない内容にわたるものはなかったと思われますので、公開することとしたいと思います。この点もよろしゅうございますでしょうか。 (一同異議なし) ○しろまる大澤部会長 最後に、次回の日程につきまして事務当局から説明をお願いいたします。 ○しろまる今井幹事 次回の第11回会議につきましては、令和7年11月26日水曜日午後1時30分からを予定しております。また、次々回の第12回会議につきましては、令和7年12月2日火曜日午前9時30分からを予定しております。詳細につきましては別途、御案内申し上げます。 ○しろまる大澤部会長 日程がかなり詰まっておりまして、皆様いろいろお忙しい中大変だと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。 それでは、本日はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。 -了-