様式第十三(第4条関係)
新事業活動に関する確認の求めに対する回答の内容の公表
1.確認の求めを行った年月日
令和6年7月22日
2.回答を行った年月日
令和6年8月8日
3.新事業活動に係る事業の概要
照会者は、国又は地方公共団体と不動産取引業者(以下まとめて「契約当事者」という。)
との間で、クラウド上で文書ファイル(PDF形式)によって、売買、賃貸借等の不動産取引に
関する一連の契約締結プロセスをオンライン化するサービス(以下「本サービス」という。)
を提供する新規事業を検討している。本サービスを利用して電子契約を締結する場合は、以下
の手順により行う。
1 不動産取引業者向けマイページの作成
本サービスを利用して、自らが契約当事者となる契約を締結し、又は他人の契約の代理も
しくは媒介しようとする不動産取引業者は、照会者所定のアカウント登録手続きを経て、不
動産取引業者向けのマイページを作成する(当該マイページの作成を完了し照会者所定の本
人確認手続きを完了した不動産取引業者を、以下「業者ユーザー」という。)。
2 電子署名人の指定
業者ユーザーは、自らがオーナーシップを持っている契約書又は法的書面(以下「契約書
等」という。)に関し、業者ユーザーを含む、契約当事者、管理会社、仲介会社、宅建士、
保証人、その他契約書等に電子署名を施すことを想定している者(以下「電子署名ユーザー」
という。)を指定し、当該電子署名ユーザーの情報(氏名、メールアドレス等)の入力を本
サービス上で行う。
3 電子署名の付与
業者ユーザーは、本サービス上に、電子署名を施すことを予定している契約書等の電子デ
ータ(PDFファイル形式)をアップロードし、本サービスを通じて、全ての電子署名ユーザ
ーに対して、電子署名用のURLを電子メール送付する。契約締結用URLを電子メールにて受け
取った各電子署名ユーザーは、送られてきたリンクを開くことにより、本サービス上の画面
へアクセスすることができ、バーチャルな印影を画面上に施したうえ、「署名を完了」とい
うボタンをクリックすることにより、本サービス上で電子署名を施す旨の意思表示を行う。
業者ユーザーが指定した各電子署名ユーザーが、本サービス上で電子署名を施す意思表示を
示すと、その都度、上記契約書等の電子データには自動的に、Adobe Reader等のソフトウェ
アで署名パネルを確認することにより改変が行われていないかどうかを確認することができ
る機能を有する照会者名義の電子署名(公開鍵暗号方式(RSA-2048bit)による暗号化措置
を用いたもの)が施される。さらに、業者ユーザーが指定した全ての電子署名ユーザーが電
子署名を施す意思を示し、上記手続きに従って照会者名義の電子署名が契約書等の電子デー
タに施されると、当該電子データには、一般財団法人日本データ通信協会が認定した事業者
によるタイムスタンプが埋め込まれる。上記措置が施された段階で、締結した契約書等の内
容を閲覧し、ダウンロードを行うことができる(ダウンロードしたファイルは、出力し、書
面化することも可能である)リンクが、本サービスから、業者ユーザー及び電子署名ユーザ
ーに対して、電子メールにより送付される。
4 締結書面の確認
電子署名ユーザーは、本サービスを通じて、電子署名を施した契約書等を適宜Google
DriveやDropboxといったクラウドストレージサービスへ保存することができ、適宜印刷によ
り書面化することが可能である。さらに、契約書等のPDFファイルについて、Adobe Reader
等のソフトウェアで署名パネルを確認することにより、電子署名の内容及びタイムスタンプ
並びに電子署名を施した電子署名ユーザーの氏名・メールアドレス・署名時刻を確認するこ
とができる。
4.確認の求めの内容
(1)照会者が提供する本サービスを用いた電子署名が、電子署名及び認証業務に関する法律
(平成12年法律第102号。以下「電子署名法」という。)第2条第1項に定める電子署
名に該当し、これを引用する契約事務取扱規則(昭和37年大蔵省令第52号)第28条第
3項に基づき、国の契約書にも利用が可能であることを確認したい。また、同じくこれを引
用する地方自治法施行規則(昭和22年内務省令第29号)第12条の4の2に定める総務
省関係法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律施行規則(平成15年
総務省令第48号)第2条第2項第1号に基づき、地方公共団体の契約書についても利用可
能であることを確認したい(以下「本照会1」という。)。
(2)照会者が提供する本サービスを用いて、PDFファイル形式の書類をクラウドサーバーにア
ップロードし、契約当事者双方が契約締結業務を実施する仕組みが、契約事務取扱規則第2
8条第2項に規定する方法による「電磁的記録の作成」に該当し、契約書、請書その他これ
に準ずる書面、検査調書、見積書等の作成に代わる電磁的記録の作成として、利用可能であ
ることを確認したい(以下「本照会2」という。)。
5.確認の求めに対する回答の内容
(1)本照会1についての回答
ア 結論
本サービスを用いた電子署名は、電子署名法第2条第1項に規定する電子署名に該当す
ると認められる。したがって、契約事務取扱規則第28条第3項に基づき、国の契約書が
電磁的記録で作成されている場合の記名押印に代わるものとして、利用が可能であると考
える。また、地方自治法施行規則第12条の4の2に定める総務省関係法令に係る情報通
信技術を活用した行政の推進等に関する法律施行規則第2条第2項第1号に基づき、地方
公共団体の契約書についても利用が可能であると考える。
イ 理由
電子署名法における「電子署名」とは、電子署名法第2条第1項に規定されているとお
り、
(ア)電磁的記録に記録することができる情報について行われる措置であって(同項
柱書)、(イ)当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのも
のであること(同項第1号)及び(ウ)当該情報について改変が行われていないかどうか
を確認することができるものであること(同項第2号)のいずれにも該当するものである。
(ア)電磁的記録に記録することができる情報について行われる措置の該当性
本サービスについては、「全ての電子署名ユーザーが本サービス上にて契約書等に電
子署名を施す意思表示を完了すると、契約書等の電子データが本サービス上で最終的な
PDFファイルに変換され、更に、当該PDFファイルには自動的に当社名義の公開鍵暗号方
式(RSA-2048bit)による暗号化が施される。そして、当該暗号化に関する情報は、契約
書等のPDFファイル上に記録される」との照会書の記載(照会書8ページ参照)を前提と
すれば、「電磁的記録に記録することができる情報について行われる措置」との要件を
満たすことになると考える。
(イ)当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものである
ことの該当性
本サービスでは、PDFファイル形式の書類をクラウドサーバーにアップロードし、契約
当事者となる各電子署名ユーザーが本サービス上で電子署名を施す意思表示をすること
で、契約締結業務を実施する仕組みとなっている。この場合、電子署名ユーザーの当該
操作をもって、サービス提供者である照会者の署名鍵により暗号化等を行うサービスで
あるため、電子署名法第2条第1項第1号の「当該措置を行った者」が利用者であると
評価し得るかどうかが問題となる。
この点、事業者署名型(利用者の指示に基づき、利用者が作成した電磁的記録につい
て、利用者自身の署名鍵ではなく、サービス提供者である照会者の署名鍵により暗号化
等を行うサービス)による措置につき、令和2年7月17日に総務省、法務省及び経済
産業省において公表している「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵
により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A」(以下「Q&A」という。)
では、以下の解釈が示されている。
 電子署名法第2条第1項第1号の「当該措置を行った者」に該当するためには、必ずし
も物理的に当該措置を自ら行うことが必要となるわけではなく、例えば、物理的にはA
が当該措置を行った場合であっても、Bの意思のみに基づき、Aの意思が介在すること
なく当該措置が行われたものと認められる場合であれば、
「当該措置を行った者」はB
であると評価することができるものと考えられる。
 このため、利用者が作成した電子文書について、サービス提供事業者自身の署名鍵によ
り暗号化を行うこと等によって当該文書の成立の真正性及びその後の非改変性を担保し
ようとするサービスであっても、技術的・機能的に見て、サービス提供事業者の意思が
介在する余地がなく、利用者の意思のみに基づいて機械的に暗号化されたものであるこ
とが担保されていると認められる場合であれば、
「当該措置を行った者」はサービス提
供事業者ではなく、その利用者であると評価し得るものと考えられる。
 そして、上記サービスにおいて、例えば、サービス提供事業者に対して電子文書の送信
を行った利用者やその日時等の情報を付随情報として確認することができるものになっ
ているなど、当該電子文書に付された当該情報を含めての全体を1つの措置と捉え直す
ことによって、電子文書について行われた当該措置が利用者の意思に基づいていること
が明らかになる場合には、これらを全体として1つの措置と捉え直すことにより、
「当
該措置を行った者(=当該利用者)の作成に係るものであることを示すためのものであ
ること」という要件(電子署名法第2条第1項第1号)を満たすことになるものと考え
られる。
本サービスは、上記のとおり、事業者署名型と呼ばれる電子署名サービスであるため、
上記Q&Aの適用を前提に「当該措置を行った者」
(電子署名法第2条第1項第1号)の
該当性を判断するべきであると考える。以上を踏まえて本件について以下のとおり検討
する。
本サービスでは、
「暗号化措置は、サイバートラスト株式会社が提供するiTrustリモー
ト署名サービスを利用して」、「電子署名ユーザーの指示に基づきクラウド上で機械的に
行われ、当社の意思が介在する余地がなく、電子署名ユーザーの意思のみに基づいて行
われ」ており、
「電子署名ユーザーの端末から当社サーバー間を含む全ての通信は、TLS
通信の強制により通信の暗号化が図られることから、第三者による通信途上のなりすま
し、盗聴、改ざんが発生することはな」く、
「暗号化措置に用いる秘密鍵は、サイバート
ラスト社のHSMで厳密に管理され、当社では保持しえないことから、当社の運用管理者や
開発者がサービス利用者(署名者)の意図と異なる暗号化を行う等の改ざんを行う事は
不可能である」
(照会書9ページ参照)とのことである。
また、当該暗号化に関する情報は「PDFリーダーの署名パネルにて、全ての電子署名ユ
ーザーの氏名・メールアドレス・署名時刻とともに、確認することができる」
(照会書9
ページ参照)とのことである。
以上を踏まえると、本サービスについては、
「技術的・機能的に見て、サービス提供事
業者の意思が介在する余地がなく、利用者の意思のみに基づいて機械的に暗号化された
ものであることが担保されている」ことが認められ、これを前提にすれば「当該措置を
行った者」は照会者ではなく、利用者であると評価し得るものと考えられることから、
電子署名法第2条第1項第1号の「当該情報が当該措置を行った者の作成に係るもので
あることを示すためのものであること」の要件を満たすことになるものと考えられる。
(ウ)当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものである
ことの該当性
照会書によれば、「PDF化された契約書等のファイルには、各電子署名ユーザーによる
意思表示の度に、自動的に当社名義の公開鍵暗号方式(RSA-2048bit)による暗号化措置
が施され」、「上記PDFファイルに付される暗号化に関する情報には、PDFファイルをハ
ッシュ関数で求めたハッシュ値を秘密鍵で処理した暗号文が含まれる。この暗号文を公
開鍵で復号したハッシュ値が、PDFファイルを再度ハッシュ関数でハッシュ値にしたもの
と合致すれば、PDFファイルの改ざんがなされていないことが確認できる」(照会書9ペ
ージ参照)とされていることから、「当該情報について改変が行われていないかどうか
を確認することができるものであること」(電子署名法第2条第1項第2号)の要件を
満たすことになるものと考えられる。
以上から、照会者の提供する本サービスを用いた電子署名は、電子署名法第2条第1
項における「電子署名」に該当すると考えられる。そのため、同項を引用する契約事務
取扱規則第28条第3項に基づき、国の契約書についても利用可能であること、また、
地方自治法施行規則第12条の4の2に定める総務省関係法令に係る情報通信技術を活
用した行政の推進等に関する法律施行規則第2条第2項第1号に基づき、地方公共団体
の契約書についても利用が可能であると考える。
(2)本照会2についての回答
ア 結論
照会者が提供する本サービスにおいて、PDFファイル形式の書類をクラウドサーバーに
アップロードし、契約当事者双方が当該電子ファイルを確認・同意し、契約締結業務を実
施する仕組みは、契約事務取扱規則第28条第2項に規定する方法による「電磁的記録の
作成」に該当し、契約書等の作成に代わる電磁的記録の作成として、利用可能であると考
える。
イ 理由
契約事務取扱規則第28条第2項は、同条第1項各号に掲げる書類等の作成に代わる電
磁的記録の作成について、「各省各庁の使用に係る電子計算機(入出力装置を含む。以下
同じ。)と契約の相手方の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処
理組織を使用して当該書類等に記載すべき事項を記録する方法」によることを規定してい
る。
本サービスは、各電子署名ユーザーがそれぞれの電子計算機から本サービスにログイン
し、オンライン上で処理を行うものであることから、「各省各庁の使用に係る電子計算機
と契約の相手方の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織を
使用」に該当する。
また、各電子署名ユーザーは、本サービスを通じて、電子署名を施した契約書等を適宜
Google DriveやDropboxといったクラウドストレージサービスへ保存することができるこ
とから、これは、「当該書類等に記載すべき事項を記録する方法」に該当する。
以上により、照会者の提供する本サービスを用いた契約締結業務を実施する仕組みは、
同条第2項に規定する方法に該当するものと認められる。
(注)
本回答は、確認を求める対象となる法令(条項)を所管する立場から、照会者から提
示された照会書の記載内容のみを前提として、現時点における見解を示したものであり、
もとより、捜査機関の判断や罰則の適用を含めた司法判断を拘束するものではない。ま
た、電子署名サービスの安全性を担保するものではない。

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /