パーキンソン病とは?
その自動車運転との関連は?
国立病院機構 仙台西多賀病院
脳神経内科 武田 篤
法務省 東京 2024. 7.26.
武田 篤 (たけだ あつし) :神経内科専門医、認定内科医
独立行政法人国立病院機構 仙台西多賀病院 院長
東北大学連携大学院 高齢者認知・運動機能障害学講座 客員教授
一般社団法人日本パーキンソン病・運動障害疾患学会 代表理事
一般社団法人日本神経学会 理事
1985年 東北大学医学部卒業
1985年 東北大学医学部附属病院研修医(神経内科)
1986年 国立療養所宮城病院・神経内科医師
1987年 国立療養所岩手病院・神経内科医師
1987年 国立療養所西多賀病院・神経内科医師
1992年 東北大学大学院医学研究科卒業(医学博士取得)
1994年 東北大学医学部助手(神経内科)
1998年 米国Case Western Reserve大学病理研究所・神経病理部門留学
2006年 東北大学病院神経内科講師
2007年 東北大学大学院 神経内科学分野准教授
2013年 国立病院機構 西多賀病院・副院長
2014年 国立病院機構 仙台西多賀病院・院長
パーキンソン病 (PD)の運動症状
=パーキンソン症候群(パーキンソニズム)
1筋強剛
2安静時振戦
3動作緩慢
4 PLoS One 8:e66757, 2013.
パーキンソン病の進行=脳内レビー小体病理の進展
脳幹から大脳全体へ=運動障害疾患から認知症疾患へ5Frontiers in Human Neuroscience 15 :661880, 2021
ヒト脳内のドパミン神経系
運動機能
情動機能
学習機能 大脳皮質
線条体
脳幹
早期 進行期
合併症
運動症状
非運動症状
20年前 10年前 発症 10年後 20年後
精神異常
(幻視・幻覚)
症状の日内変動・
ジスキネジア
嚥下障害・
姿勢保持障害・
すくみ足・転倒
運動緩慢・
筋強剛(筋固縮)・
振戦
尿路症状・
起立性低血圧・
認知症
疼痛・疲労・
軽度認知障害
日中の
過度な眠気・
嗅覚低下・
抑うつ
レム睡眠
行動障害
便秘
パーキンソン病の臨床経過
Lancet 2015;386(9996):896-912
Lancet Neurol., 5:525,2006
パーキンソン病は
60歳代から急増する
年代別パーキンソン病(PD)患者数の推移
武田 篤, パーキンソン病実践診療マニュアル, 12-13, 2018
0 50,000 100,000 150,000 200,000 250,000 300,000
2030年
2010年
1990年
70歳未満
70歳以上
(人)
日本の人口動態と将来予想(国立社会保障・人口問題研究所)を基に年齢別有病率を掛け合わせて推計
パーキンソン症候を来たす疾患
=パーキンソン症候群
• 変性疾患
– 特発性パ-キンソン病
– 家族性パーキンソン病
– 多系統萎縮症(MSA)
– 進行性核上性麻痺(PSP)
– 大脳皮質基底核変性症(CBD)
– レビー小体型認知症(DLB)
– 蒼球黒質ルイ体萎縮症
(DRPLA)
– SCA2、SCA3
– その他
• アルツハイマー病など
• 症候性パーキンソニズム
– 血管障害性
– 薬剤性
• 抗精神病薬など
– 中毒性
• 一酸化炭素、マンガンなど
– 感染後
• 脳炎後パーキンソニズムなど
– 代謝障害
• Wilson病など
– その他
• 正常圧水頭症など
10 Neurology 2018;91:e906-e916.
PD患者の運転シミュレーターや
ロードテストの成績は悪いが
事故リスクは上昇していない
11 Journal of Parkinson’s Disease 12 (2022) 465–471
多くのPD患者は診断後、運転に関連した行動変化を示す
12 Neurology 79:2067–2074, 2012.
PDの運転能力には運動能力よりも認知機能が強く関連
推奨レベル
Level A 有用性あるいは予測
性が確立している
Level B 有用性あるいは予測
性が有り得る
Level C 有用性あるいは予測
性があるかもしれない
運動機能に関連した評価スケール
認知機能に関連した評価スケール
まとめと私見
• PDはドパミン減少を中心として緩徐に進行する疾患であ
り特徴的な運動障害(=パーキンソニズム)を示す
• ドパミン補充薬による治療が有効である
• 人口の高齢化にともない世界中で激増している
• 運動症状だけではなく、認知機能障害(特に高齢者で多
い)を含む非運動症状を伴う
• 特に認知機能障害に関連して運転能力の低下が生じる
と報告されているが、実際の事故リスクが上昇するエビ
デンスは示されていない
– 多くの患者は適切な行動変化で事故を回避できている
– 危険運転致死傷罪の対象とするには相当な違和感がある13