高齢者等終身サポート事業者ガイドライン
令和6年6月
内閣官房(身元保証等高齢者サポート調整チーム)
内閣府 孤独・孤立対策推進室
金融庁
消費者庁
総務省
法務省
厚生労働省
経済産業省
国土交通省1<目次>
第1 全般的な事項 .................................................. 4
1 ガイドラインの目的............................................. 4
2 ガイドラインの対象............................................. 5
3 サービス提供に当たっての基本的な考え方......................... 7
第2 契約締結に当たって留意すべき事項 .............................. 9
1 公正な契約手順の確保について................................... 9
(1) 契約内容の説明について ................................... 9
(2) 取り消される可能性のある勧誘方法について ................ 12
2 提供するサービス内容ごとの留意事項............................ 12
(1) 身元保証等サービス ...................................... 12
ア 入院・退院等及び入所・退所等への支援 ...................... 13
イ 緊急連絡先の受託等 ........................................ 14
(2) 死後事務サービス ........................................ 14
ア サービス提供の合意 ........................................ 14
(ア)葬送に関する事務(葬儀・火葬・埋葬、供養・法要等) .... 15
(イ)行政機関への届出等(年金、医療保険、税金納付等) ...... 15
(ウ)家屋等の賃貸借契約について ............................ 16
(エ)電気・ガス・水道等の公共料金の支払・解約について ...... 16
(オ)携帯電話の解約について ................................ 16
イ 死後事務委任契約と相続人との関係について .................. 17
(3) 日常生活支援サービス .................................... 17
3 死因贈与契約、事業者への寄附及び遺贈について.................. 18
(1) 死因贈与契約及び事業者への寄附について .................. 18
(2) 遺贈について ............................................ 19
第3 契約の履行に当たって留意すべき事項 ........................... 22
1 サービス提供の管理について.................................... 22
2 提供するサービス内容ごとの留意事項............................ 23
(1) 身元保証等サービス ...................................... 23
ア 医療機関への入院時、退院時等の支援 ........................ 23
(ア)入院の際の対応について ................................ 23
(イ)医療に係る意思決定支援における高齢者等終身サポート事業者の
関わり方 .................................................. 232(ウ)退院時における支援 .................................... 24
イ 介護施設等への入居・入所時、退所時の支援 .................. 25
(ア)入居・入所の検討に係る支援 ............................ 25
(イ)介護施設等への入居・入所の際の対応について ............ 26
ウ 緊急連絡先の受託等 ........................................ 26
(2) 死後事務サービス ........................................ 27
ア 死後事務委任契約に基づく適正な履行について ................ 27
(ア)葬送に関する事務(葬儀・火葬・埋葬、供養・法要等) .... 27
(イ)行政機関への届出等(死亡届、医療保険等) .............. 27
(ウ)家屋等の賃貸借契約について ............................ 28
(エ)電気・ガス・水道等の公共料金、携帯電話の支払・解約について
.......................................................... 28
イ 死後事務委任契約と相続人との関係について .................. 28
(3) 日常生活支援サービス .................................... 28
3 利用者から金銭等を預かる際の対応について...................... 29
(1) サービス提供費用の前払(預託)を受ける場合の留意事項 .... 29
(2) 財産管理等委託契約に基づき利用者名義の通帳の管理等を行う場合
の留意事項 .................................................... 30
4 契約の変更・解約に当たって留意すべき事項...................... 30
5 判断能力が低下した場合の対応について.......................... 31
(1) 成年後見制度の利用について .............................. 31
(2) 高齢者等終身サポート事業者が任意後見人になる場合の留意事項
.............................................................. 33
(3) 利用者が成年後見制度の利用を開始した場合の留意事項 ...... 34
第4 事業者の体制に関する留意事項 ................................. 35
1 情報開示について.............................................. 35
2 個人情報の適正な取扱い........................................ 36
3 事業継続のための対策.......................................... 36
4 相談窓口の設置................................................ 373<参考>
高齢者等終身サポート事業に関連する制度・事務に関する政府の取組について
1 ガイドライン策定と併せて関係省庁において行う事項.............. 38
(1) 金融機関での手続について ................................ 38
(2) 携帯電話の解約について .................................. 38
(3) 関連業界に対するガイドラインの周知 ...................... 38
2 今後の課題.................................................... 38
(1) 重要な治療方針に関する高齢者等終身サポート事業者の関わり方に
ついて ........................................................ 39
(2) 介護保険外サービスの整理について ........................ 39
(3) 死亡届の届出資格者について .............................. 39
(4) 成年後見制度の見直しについて ............................ 40
(5) 事業者の認定制度等の検討について ........................ 40
【別紙】チェックリスト4第1 全般的な事項
1 ガイドラインの目的
○しろまる 高齢化の進展や核家族化等に伴い、高齢者の単独世帯が増加してきている。
特に高齢期には、医療機関への入退院や施設への入退所などの重大なライフ
イベントに直面することも多い。その際に、身寄りがない、家族がいても身近
に頼れる人がいない状況にある高齢者等の意思決定等を支援する仕組みが求
められている。
〇 こうした中、近時、高齢者等に対して身元保証や死後事務、日常生活支援等
のサービスを行う事業(以下「高齢者等終身サポート事業」という。
)が増加
しており、今後、その需要の更なる増加が見込まれる。
〇 また、
「身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する
調査」
(令和5年8月総務省行政評価局)をはじめとし、高齢者等終身サポー
ト事業者に関する課題提起が行われている。
○しろまる 高齢者等終身サポート事業については、将来にわたる身元保証等サービス
であることや死後事務サービスを含むものであり、契約が長期にわたること、
サービス提供に先行して一部費用が前払いされるなどのため契約内容の適正
な履行を確認しにくいこと、判断能力の低下が懸念される高齢者を主な対象
としているため、契約者の意思能力の有無等をめぐって事後的に争いが生じ
る可能性があること等の課題があることから、一般的な契約に比べ利用者保
護の必要性が高いなど、民法(明治 29 年法律第 89 号)
、消費者契約法(平成
12 年法律第 61 号)等の民事法の規律等も踏まえ、適正に事業が営まれること
が重要といえる。
○しろまる こうした観点から、高齢者等終身サポート事業者の適正な事業運営を確保
し、
高齢者等終身サポート事業の健全な発展を推進し、
利用者が安心して当該
事業を利用できることに資するようにするため、本ガイドラインを策定する
こととしたものである。
○しろまる 本ガイドラインは、高齢者等終身サポート事業者の参考となることはもと
より、利用者による事業者判断の目安ともなり得るものである。事業者・利用
者が簡便に確認できるように別紙チェックリストも作成しているため、併せ
て活用されたい。
○しろまる なお、提供されるサービスの目的は、高齢者等の意思決定等を支援し、死後
まで含めてサポートするためのものであることから、
本ガイドラインでは、こ5
れまでの「身元保証等高齢者サポート事業」という呼称 1
を「高齢者等終身サ
ポート事業」と呼称することとしている。
○しろまる 提供されるサービス内容等については、事業者と利用者の契約に基づき決
定されるものであるが、
本ガイドラインは、
現時点において事業者が取り組む
ことが重要と考えられる事項等を取りまとめたものである。
2 ガイドラインの対象
○しろまる 高齢者等終身サポート事業については、
表1のとおり、
提供しているサービ
ス内容が多岐にわたるものであるが、主に「身元保証等サービス」、「死後事務
サービス」、「日常生活支援サービス」に分類できる。
○しろまる これらのサービスのうち、
日常生活支援サービスにおいては、
家事代行サー
ビス等、事業者によっては必ずしも高齢者等を主な利用者とするものではな
く、
また、
当該サービスのみを単独に提供している事業所が一定数あるものと
考えられることも踏まえ、
本ガイドラインでは、
以下の3つの要件をみたす事
業者を主な対象とすることとする。1)「身元保証等サービス」及び「死後事務サービス」を提供するものである
こと
2)本人(契約者)と締結した契約に基づき、サービス提供するものであること3)事業として継続的に提供するものであること
(注)ただし、本ガイドラインは、各種業法による規制が及ばない高齢者等終身サポー
ト事業者について、一定の指針を示すものであることから、弁護士、司法書士、行
政書士等の業法に基づく規制等が既に存在している業種を対象外とするが、これ
らの業種において本ガイドラインに記載している業務を行う場合には、本ガイド
ラインを参考とすることが考えられる。
○しろまる ただし、
高齢者等に対する支援については、
必ずしも
「身元保証等サービス」
及び「死後事務サービス」を提供する事業者のみが担うものではない。死後事
務サービスのみを提供する事業者など表1のような支援に関わるその他の関
係者についても、本ガイドラインを参照することが望ましい。1「身元保証等高齢者サポート事業に関する消費者問題についての建議」
(平成 29 年1月
31 日消費者委員会)、「身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する
調査 結果報告書」
(令和5年8月総務省行政評価局)等において「身元保証等高齢者サポ
ート事業」と呼称している。6【表1】高齢者等終身サポート事業において提供されるサービスの例
種類 内容
身元保証 2
等 サ ー ビス1 医療施設への入院の際の連帯保証
2 介護施設等への入所の際の連帯保証
3 入院・入所、退院・退所時の手続の代行
4 死亡又は退去時の身柄の引取り
5 医療に係る意思決定の支援への関与
6 緊急連絡先の指定の受託及び緊急時の対応
死 後 事 務
サービス
1 死亡の確認、関係者への連絡
2 死亡診断書(死体検案書)の請求受領、火葬許可の市区町
村への申請、火葬許可証及び埋葬許可証の受領、死亡届申請
代行
3 葬儀に関する事務
4 火葬手続(火葬の申込み、火葬許可証の提示)に関する手
続代行
5 収蔵(納骨堂)
、埋蔵(墓処)
、永代供養に関する手続代行
6 費用精算、病室等の整理、家財道具や遺品等の整理
7 行政機関での手続関係(後期高齢者医療制度資格喪失届、
国民健康保険資格喪失届等)に関する代行
8 ライフラインの停止(公共料金(電気・ガス・水道)の解
約、
インターネット・Wi-Fi 等の解約、固定電話、携帯電話、
NHK等の解約等)に関する手続代行
9 残置物等の処理に関する手続代行(遺品目録の作成、相続
人等への遺品・遺産の引渡し)
10 墓地の管理や墓地の撤去に関する手続代行
日 常 生 活
支 援 サ ー
1 生活支援関係
1 通院の送迎・付添い2医療機関・介護保険施設等は、正当な理由なくサービス提供を拒否することはできず、
入院・入所の際に、身元保証人等がいないことのみを理由に入院・入所を拒むことは不適
当であるとされている。
「身元保証人等がいないことのみを理由に医療機関において入院を拒否することについ
て」
(平成 30 年4月 27 日厚生労働省医政局医事課長通知)
「市町村や地域包括支援センターにおける身元保証等高齢者サポート事業に関する相談へ
の対応について」
(平成 30 年 8 月 30 日厚生労働省老健局高齢者支援課・振興課通知)7ビス 2 買物への同行や購入物の配達、生活に必要な物品の購入
3 日用品や家具の処分
4 病院への入院や介護施設等への入所の際の移動(引っ越
し)及び家具類の移動・処分
5 介護保険等のサービス受給手続の代行
2 財産管理関係
1 公共料金等の定期的な支出を要する費用の支払に関する
手続代行
2 生活費等の管理、送金
3 不動産、動産等の財産の保存、管理、売却等に関する手
続代行
4 預貯金の取引に関する事項
5 金融商品の解約・換価・売却等の取引に関する手続代行
6 印鑑、印鑑登録カード等の証書・重要書類の保管
7 税金の申告・納税・還付請求・還付金の受領に関する手
続代行
※(注記) 利用者が契約締結後に判断能力が不十分になった場合、身上監護(法律行為に関するもの)
・財産管理
については成年後見(任意後見又は法定後見)へ移行
(出典)身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調
査結果報告書(令和5年8月総務省行政評価局)から一部改変。
3 サービス提供に当たっての基本的な考え方
○しろまる 高齢者等終身サポート事業においては、
利用者本人の尊厳を守り、
自己決定
を尊重することが重要である。
○しろまる このため、
定期的に利用者と面談する等により、
必要な情報や支援を提供し、
利用者本人の意思や考えを引き出すなど、利用者本人の価値観や選好に基づ
く意思決定を行えるよう配慮することが重要である。日常生活支援サービス
を併せて提供する場合には、その機会を活用することも考えられる。
○しろまる さらに、利用者の状況に応じて、自ら提供するサービスに加え、関連する各
種制度やサービスを提供する事業者等 3
との連携・役割分担を図りながら、利
用者の視点に立った支援が行われることが望ましい。3かかりつけ医などの医療関係者、ケアマネジャーなどの介護関係者、障害福祉サービス
の関係者や成年後見制度利用促進基本計画に基づく中核機関などの権利擁護に関する相談
窓口、社会福祉協議会、自治体の関連部署などが考えられる。8○しろまる 利用者の判断能力が低下しているおそれがある場合には、必要に応じて関
係機関と連携の上、
成年後見制度等の手続について検討するとともに、
その際
にも、利用者本人の自己決定を尊重するための支援を行うことが重要である。9第2 契約締結に当たって留意すべき事項
○しろまる 高齢者等終身サポート事業者は、
利用者との契約締結に当たって、
民法で定
められた契約の一般原則や消費者契約法に定められた消費者契約に幅広く適
用される民事のルールに従う必要がある。
この前提を踏まえつつ、
高齢者等終
身サポート事業の特徴に鑑み、特に以下の点に留意することが重要である。
1 公正な契約手順の確保について
(1) 契約内容の説明について
・ 高齢者等終身サポート事業においては、
契約の相手方が高齢者中心であ
り、
場合によっては加齢等によりこれらの者の判断能力が既に低下してい
る可能性も考えられる。このため、高齢者等終身サポート事業者は、あら
かじめ利用者の意思能力を丁寧に確認した上で契約を締結することが必
要である(民法第3条の2参照)。・ また、消費者契約法上、事業者は、消費者契約の締結について勧誘をす
るに際しては、消費者の理解を深めるために、消費者に必要な情報提供を
することが求められる。具体的には、
「物品、権利、役務その他の消費者
契約の目的となるものの性質に応じ、
事業者が知ることができた個々の消
費者の年齢、心身の状態、知識及び経験を総合的に考慮した上で、消費者
の権利義務その他の消費者契約の内容についての必要な情報を提供する」
措置を講ずるよう努めなければならない
(消費者契約法第3条第1項第2号)。
この点に関し、判断能力の低下が懸念される高齢者を主な対象としてい
ること、契約期間が長期間にわたること、サービス内容が多岐にわたるこ
と等の高齢者等終身サポート事業の特徴を踏まえ、高齢者等終身サポート
事業者は、契約に際して重要な事項に関する説明を行う際には、個々人ご
とに提供するサービス内容や、利用者の判断能力が低下した場合の対応方
針などの以下の事項について、利用者本人との面談等を通じ、利用者の年
齢、心身の状態、知識及び経験を踏まえた丁寧な説明を行うとともに、重
要事項説明書として作成・交付することにより、利用者の理解促進に努め
ることが重要である。
・ 重要事項として、具体的には、以下の事項等が考えられる。
1)契約者に対して提供するサービス内容や費用
※(注記) 包括的に示すのではなく、
入会金や預託金などを区分して示すとともに、
サー
ビス利用の都度支払う費用がある場合には、その旨を明確に示すことが重要で
ある。10※(注記) サービスごとの利用場面や費用の内訳などについて、利用者が理解しやすい
ように記載することが望ましい。
2)当該利用者の費用の支払方法
※(注記) 契約時に支払う費用、
サービス利用の都度支払う費用
(一定時期に利用分をま
とめて費用を支払うもの)等、支払うタイミングと金額、方法が具体的に分かる
ように示すことが重要である。
※(注記) 特に、
預託金から差し引く方法で費用を支払う場合には、
当該利用者にとって
費用の詳細が不透明になることが考えられるため、差し引かれた費用の金額と
内容について明らかにすることが望ましい。利用者とのトラブルを回避する観
点からは、費用の支払により預託金が不足した場合の追加預託の時期や条件に
ついて事前に示しておくことも考えられる。
3)契約者に対して提供するサービスの履行状況を確認する方法
4)入院・入所等が必要となった場合における対応方針、医療に係る意思
決定の支援
※(注記) 入院・入所等が必要になった際などに、
本人が希望する医療や介護をより円滑
に提供する観点から、本人の希望をあらかじめ書面に残しておくことが望まし
い。書面の内容等については、面談等を活用し、定期的に本人の意思を確認する
ことが望ましい。
5)利用者の判断能力が低下した場合の対応方針
6)契約するサービスの債務不履行や不法行為により利用者に損害が発生
した場合の賠償に関するルール
※(注記) 事業者の債務不履行責任又は不法行為責任を免除する条項
(免責条項)
を定め
る際には、
消費者契約法第8条に適合するように留意する必要がある。
具体的に
は、
事業者の損害賠償責任の全部を免除する条項、
事業者の故意又は重過失によ
る場合に損害賠償責任の一部を免除する条項、事業者の責任の有無や限度を自
ら決定する条項は無効となる。
7)契約するサービスの解除方法・解約事由や契約変更や解約時の返金に
関する取扱い
※(注記) 高齢者等終身サポート事業においては、
契約期間が長期であったり、
契約金額
が高額な場合もあり、契約の途中で解約を求める可能性も高いことが考えられ
る。解約等に関する取扱いについては、こうした性質に鑑み、以下の点に特に留
意する必要がある。
1 解約等に関する取扱いについて、重要事項説明の際に書面を交付して説明
することが特に望ましい。
2 解約料等に関しては、
消費者契約法上、
当該消費者契約の条項において設定
された解除の事由、
時期等の区分に応じ、
当該消費者契約と同種の消費者契約11の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるものは、平均
的損害を超える部分については無効となる(消費者契約法第9条第1項第1号)。このため、高齢者等終身サポート事業者は、解約料を定める際には、本
条項に適合するよう留意する必要がある。
3 事業者は、
消費者から解約料について説明を求められた場合、
解約料の算定
根拠の概要を説明する努力義務を負う(同条第2項)
。ここでいう算定根拠の
概要とは、
違約金等を事業者が設定するに当たって考慮した事項、
当該事項を
考慮した理由、
使用した算定式、
金額が適正と考えた根拠など違約金等を設定
した合理的な理由を意味するものと考えられる。
(参考)適格消費者団体 4
が、高齢者等終身サポート事業者が使用していた解約料
条項について、
消費者の利益を一方的に害する条項であり無効
(消費者契
約法第 10 条)であるとして、差止請求し、最終的に和解した事案がある5。
8)預託金の管理方法等
9)死後事務として提供されるサービスの内容
10)寄附や遺贈に関する取扱方針
11)個人情報の取扱方針と管理体制
12)相談窓口の連絡先
・ 高齢者等終身サポート事業に関連した消費生活相談には、
これまで、
「契
約書が交付されていない」といった相談が寄せられている。高齢者等終身
サポート事業の性質に鑑みて、契約内容を明確化するために、契約書を作
成し、利用者に交付することが重要である。
・ 高齢者等終身サポート事業が判断能力の低下が懸念される高齢者を主
な対象としていること等を踏まえ、
契約の効力についての争いを未然に防4不特定かつ多数の消費者の利益を擁護するために差止請求権を行使するために必要な適
格性を有する消費者団体として内閣総理大臣の認定を受けた法人(消費者契約法第 13条)。5消費者庁「京都消費者契約ネットワークと一般社団法人京都高齢者支援協会との裁判外
の和解について」
(https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/collective_litigation_system/abo
ut_qualified_consumer_organization/release39/2018/pdf/release39_180622_0001.pdf)
消費者庁「京都消費者契約ネットワークと一般社団法人京都高齢者支援協会との間の裁判
上の和解について」
(https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_system_cms203_200219_02.pdf)12止する観点からは、契約締結時に第三者(医療・介護関係者、利用者の親
族等)の立会いを求めることが考えられる。
(2) 取り消される可能性のある勧誘方法について
・ 消費者契約法は、消費者に対し、事業者の不当な勧誘によって締結した
契約の取消権を認めている(消費者契約法第4条)。消費者契約法が定める不当勧誘には、誤認を通じて消費者の意思表示に
瑕疵をもたらすような不適切な勧誘行為、具体的には、不実告知(同条第
1項第1号)、断定的判断の提供
(第1項第2号)、不利益事実の不告知(第2項)
、及び困惑を通じて消費者の意思表示に瑕疵をもたらすような不適
切な勧誘行為、具体的には、不退去(第3項第1号)
、退去妨害(第3項第
2号)等がある 6。・ 高齢者等終身サポート事業においてもこれらを遵守する必要があると
ころ、特に、契約の相手方が高齢者中心であることが想定され、場合によ
っては加齢等によりそれらの者の判断能力が既に低下し、
現在の生活の維
持に不安を抱いている可能性も考えられる。例えば、高齢者等終身サポー
ト事業者が勧誘を行う場合であっても、
契約を締結しなければ現在の生活
の維持が困難となる旨など消費者の不安を煽るような説明を避け、
誠実な
説明を行うとともに、
本人の意思に基づいて契約を締結することが必要で
ある(消費者契約法第4条第3項第7号参照)。2 提供するサービス内容ごとの留意事項
○しろまる 高齢者等終身サポート事業には、
「身元保証等サービス」、「死後事務サービ
ス」、「日常生活支援サービス」等が含まれ得るところ、契約締結に当たって留
意すべき主な事項は以下のとおりである。
(1) 身元保証等サービス
・ 身元保証等サービスについては、医療機関への入退院、介護施設等への
入退所の手続等の支援・代行、連帯保証(身元保証)
、緊急連絡先の指定
の受託、緊急時の対応、身柄の引取り等を行うことが考えられるが、具体
的な支援内容やその費用については、重要事項説明書を用いて、利用者に6消費者庁「逐条解説」第4条以下の解説参照。
(https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/consumer_contract_act/annotat
ions/)13丁寧に説明するとともに、
契約書に明記した上で契約を締結することが重
要である。
ア 入院・退院等及び入所・退所等への支援
・ 利用者が希望する事項
(手続の代行、
説明の場への同席、
連帯保証(身元保証)等)を確認し、対応する内容や費用等について丁寧に説明する
ことが重要である。
・ 連帯保証(身元保証)に関する契約をする場合には、高齢者等終身サ
ポート事業者が保証人として未払費用を負担した場合における契約者
への求償や前払預託金からの充当に関するルールを明示することが重
要である。
・ また、利用者が入退院・入退所時の支援を希望する場合には、以下の
ような事項について利用者に説明・確認することが望ましい。
かかりつけ医や担当のケアマネジャー等 7
既に医療や介護を利用し
ている場合には、関係機関と連絡・情報共有することについても利
用者の了解を得ておくこと。
利用者の希望する医療や介護について、医療機関が本人の意思を尊
重した対応として、医療の提供に当たり、あらかじめ本人が書面で
残した内容を尊重することも考えられる 8
。このため、医療や介護に
関する利用者の希望を書面で残すことについて、利用者の意向を確
認しておくことが望ましい。なお、利用者が希望すれば、地域で「事
前指示書」などについて、どのような実践が展開されているかを確
認し、セミナーや説明会を周知・紹介することも考えられる。書面
を残した場合には、利用者の状況や希望の変化を反映させるため、
面談等により定期的に利用者の意向を確認することについても了解
を得ておくこと。7ケアマネジャーのほか、相談支援専門員(障害福祉サービス)などの福祉関連サービス
に係る相談に応じる職種が考えられる。8厚生労働省「身寄りがない人の入院及び医療に関する意思決定が困難な人への支援に関
するガイドライン」中、
「2.
(4)本人の意思・意向の確認と尊重」において、
「本人の
意思を尊重した対応として、医療の提供に当たり、本人が記した、いわゆる「事前指示
書」の内容を尊重することも考えられます。本人が「事前指示書」や「エンディングノー
ト」などを記載していないか確認します」との記載あり。
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/miyorinonaihito
henotaiou.html)14イ 緊急連絡先の受託等
・ 緊急時に対応できる事項(土日・休日の対応体制等)とこれに要する
費用について丁寧に説明することが重要である。
・ 緊急連絡先の受託をする場合には、緊急時に連絡がつながるように、
高齢者等終身サポート事業者の連絡先を関係機関等に伝える方法につ
いても利用者と相談し、定めておくことが望ましい(かかりつけ医・担
当のケアマネジャー等にあらかじめ知らせておく、利用者が身に着けて
おく、利用者の自宅内の分かりやすい位置に掲示しておく等)。・ 入院時・入所時や緊急時に連絡を希望する先の有無や連絡の可否につ
いても確認しておくことが望ましい。
(2) 死後事務サービス
ア サービス提供の合意
・ 死後事務サービスについては、死亡に係る連絡を受けた際の関係者へ
の連絡、葬儀に関する手続や携帯電話の解約等の代行業務等が考えられ
る。その際、具体的な支援内容や、費用支払のための預託金の取扱い、
残金の扱いについて、契約書及び重要事項説明書に明記した上で、死後
事務委任契約を締結することが重要である。
・ 委任を受けた高齢者等終身サポート事業者は、委任者から請求がある
ときは、いつでも委任事務の処理状況の報告をし、委任事務が終了した
後は、委任者に対し、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければなら
ない(民法第 645 条)
。このため、死後事務が終了した後はその時点で
委任者の地位にある相続人に対して報告をする必要があるところ、推定
相続人が複数いる場合、利用者の死後に委任事務の結果報告等を円滑に
行えるよう、利用者と相談の上、事情によっては、推定相続人のうち特
定の者に報告すれば足りる旨を死後事務委任契約の中で定めておくこ
とも考えられる。
・ 高齢者等終身サポート事業者は、利用者との間での死後事務委任契約
に基づき、預託金を受けることができ、死後事務に要した費用は同預託
金から精算することができる。
預託金を受ける場合、利用者の死後、預託金の返還の要否やその額な
どをめぐって利用者の相続人との間でトラブルが生じるおそれがある
ことから、高齢者等終身サポート事業者は、死後事務の内容等に照らし
て的確な預託金額を算定し、かつ、これを利用者やその推定相続人に丁
寧に説明しておくことが望ましい。15・ 委任事務の範囲を決めるに当たっては、利用者から丁寧に希望を聞き
取るとともに、利用者の死後における法的なトラブルを避ける観点から、
利用者の意思に反しない場合には、できる限り推定相続人にも事前の説
明を行うことが望ましい。利用者が事前に推定相続人に知らせないこと
を希望する場合には、死後事務委任に関する事務の執行が困難になる可
能性があることを説明しておくことが望ましい。
・ また、死後事務を履行する際には、受任者である高齢者等終身サポー
ト事業者の事務負担が過重になったり、推定相続人の利益に過度の影響
を及ぼしたりすることのないよう、費用の上限や対応期間の目安、葬儀
等について見積もりを取るべき件数等を事前に設定しておくという工
夫も考えられる。
・ 具体的な事務における留意事項の例としては、以下のものが挙げられ
る。
(ア)葬送に関する事務(葬儀・火葬・埋葬、供養・法要等)
・ 利用者の希望を踏まえ、具体的な葬送方法等を把握した上で、必要
な見積もり等を把握して利用者に説明することが望ましい。
・ なお、利用者の希望する葬送方法に応じ、散骨の場合には地方自治
体への確認のほか、樹木葬の場合等は場所の確保ができることの確認
をしておくなど利用者の希望に対応できるかを事前に確認しておく
ことが望ましい。
(イ)行政機関への届出等(年金、医療保険、税金納付等)
・ 死亡時に必要な手続について確認の上、利用者の希望を踏まえて死
後事務委任契約を締結することが重要である。
・ 年金支給停止のための年金受給権者死亡届は、市区町村への死亡届
がなされていれば、原則として届出を省略できる(※(注記))。※(注記) 日本年金機構でマイナンバー登録がなされている場合
(登録率は 99.8%(令和5年9月))。
登録状況は、
利用者本人がねんきんネット等を通じて確認でき
るため、必要に応じ事前に確認することも考えられる。
・ 医療保険の手続については、加入している医療保険に応じて必要な
手続をあらかじめ確認しておくことが望ましい。
・ なお、利用者の死亡後の、その利用者の所得税に係る税務申告等に
ついては、相続人(相続人がいない場合等には相続財産法人)が納税16義務者となる 9
ため、死後事務委任契約で税務申告等に対応すること
はできない。
(ウ)家屋等の賃貸借契約について
・ 利用者の希望がある場合には、利用者の死亡時に契約関係及び残置
物を円滑に処理することができるよう、
あらかじめ、
利用者
(賃借人)
と受任者である高齢者等終身サポート事業者との間で、1賃貸借契約
の解除と2残置物の処理に関する死後事務委任契約を締結しておく
ことが望ましい。
・ その際、
国土交通省及び法務省において、
「残置物の処理等に関する
モデル契約条項」10
を策定しているため、契約書の作成に当たって参
考とされたい。
・ また、不動産内に残された動産類の搬出・処分についても具体的な
内容をあらかじめ調整しておくことが望ましい。形見分け等について
誰に何を渡すのか希望がある場合には、事前に利用者に確認するほか、
利用者が速やかな廃棄処分を希望する場合には、その旨を委任契約の
中に明記しておく措置を講じることが望ましい。
・ なお、推定相続人が明らかである場合には、可能であれば、推定相
続人に連絡を取り、利用者から依頼を受けた旨について了解を得ると
ともに、賃貸人にもその依頼内容を連絡しておくことが望ましい。
(エ)電気・ガス・水道等の公共料金の支払・解約について
・ 電気・ガス・水道等の公共料金の支払・解約については、受任者で
ある高齢者等終身サポート事業者が解約手続を行うことができない
場合もあるため、事前に事業者に確認しておくことが望ましい。
(オ)携帯電話の解約について
・ 携帯電話の解約については、受任者である高齢者等終身サポート事
業者が解約手続を行うことができない場合もあるため、事前に携帯電
話事業者の解約条件等に照らし、適切に履行できることを確認した上
で、携帯電話の解約に係る死後事務委任契約を締結することが望まし
い。9国税庁「納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」
(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2022.htm)
国税庁「民法上の相続人が不存在の場合の準確定申告の手続」
(https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/07/15.htm)10国土交通省「残置物の処理等に関するモデル契約条項」
(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000101.html)17・ また、解約の際に死後事務委任契約書等の資料を求める携帯電話事
業者もいるため、契約の締結に併せて必要となる資料を準備しておく
ことが望ましい。
イ 死後事務委任契約と相続人との関係について
・ 死後事務委任契約の締結に当たっては、死後事務をめぐる親族等の相
続人とのトラブルを回避する観点から、委任事務の範囲を決める際に事
前に推定相続人等に説明をするなどにより、利用者の意思に反しない場
合には、契約内容について、できる限り推定相続人等に事前に了解を得
ておくことが望ましい。
・ 死後事務委任契約は、委任者が受任者に対して委任者の死後に一定の
事務を行うことを委任する契約であるところ、原則として委任者の死亡
が委任契約の終了原因とされていること(民法第 653 条第1号)との関
係で、委任者の死亡によっても委任契約が終了しないことを明確化する
観点から「委任者が死亡した場合においても、本契約は終了せず、相続
人は、委任者の本契約上の権利義務を承継する」旨を契約に明記するこ
とが望ましい。
・ なお、案件によっては利用者と推定相続人との関係に大きな問題があ
る場合もあるため、
そのような場合には、
「委任者の相続人からの反対等
により、委任事務の履行が不可能又は著しく困難となった場合には、受
任者は委任者の相続人に対する意思表示により、受任者としての地位を
辞任することができる」といった規定を入れておくことも考えられる。
(3) 日常生活支援サービス
○しろまる 高齢者等終身サポート事業者が、日常生活支援サービスを実施する場
合の留意点は以下のとおりである。
・ 高齢者等終身サポート事業者が行う生活支援については、
通院の送迎・付添いや生活に必要な物品の購入、契約に基づいて利用者の意向を踏ま
えた各種手続や契約締結の支援等を行うことが考えられる。
・ 当該サービスの実施に当たっては、具体的な支援内容やその費用につ
いて、重要事項説明書を用いて、利用者に丁寧に説明するとともに、契
約書に明記した上で契約を締結することが重要である。
・ さらに、日常的に発生する支払等に関し、高齢者等終身サポート事業
者が金銭管理等を含めて行う場合には、管理する範囲や保管方法、記録
の保存、利用者の確認方法などの具体的な事項について、重要事項説明18書を用いて、利用者に丁寧に説明するとともに、契約書に明記した上で
財産管理等委託契約を締結することが重要である。
・ 利用者が希望するサービスによっては、自ら提供できない場合でも、
他の事業者を紹介するなどの対応も考えられる。また、利用者が介護保
険サービスや障害福祉サービス等の利用希望がある場合には関係機関
と連携して調整することが望ましい。
・ 高齢者等終身サポート事業者が利用者から受任した日常生活支援サー
ビスについては、利用者の許諾を得て他の事業者等との間で復委任契約
を締結することにより(民法第 644 条の2第1項)
、高齢者のニーズに
対応するサービス(介護保険給付の範囲外として行うもの)を提供する
事業者やヘルパー等の介護職員が保険外サービスとして担うことも考
えられる。こうした業務分担について、ケアマネジャーの負担の軽減に
もつながることから、当該事業者等とケアマネジャーがよく連携して取
り組むことが望ましい。
3 死因贈与契約、事業者への寄附及び遺贈について
(1) 死因贈与契約及び事業者への寄附について
・ 高齢者等終身サポート事業者が、利用者との間で、死因贈与契約(利用
者が死亡したときは、利用者の財産の一部又は全部を高齢者等終身サポー
ト事業者に贈与する旨の契約)を締結することや利用者から寄附を受ける
こと(贈与契約)は、本来、それが真に利用者の意思に基づくものであれ
ば、不適切とはいえない。
ただし、死因贈与契約の締結や寄附をすることを、高齢者等終身サポー
ト事業に係る契約の条件にし、あるいは、高齢者等終身サポート事業に係
る契約とパッケージにした契約プランを設けることなど(例えば、利用者
が死亡した場合には、利用者が、高齢者等終身サポート事業者に対して、
預託金の残金を贈与する、あるいは、死後事務委任契約に基づく事務処理
の費用に充てるものとして相続財産の全部又は一部を贈与する旨の契約
を併せて締結することなど)は、死因贈与契約や寄附が真に利用者の意思
に基づくものか疑義が残るため、避けることが重要である。
・ また、上記のように契約の条件等にするのでなくとも、高齢者等終身サ
ポート事業者が利用者と死因贈与契約を締結すると、
高齢者等終身サポー
ト事業者にとっては、サービス提供に係る費用をかけなければ、将来、死
因贈与を受けられる財産の額がその分増大することになる。
このような利
益相反的な立場にあるため、
契約内容やその後のサービス提供の状況等に19よっては、生前の利用者に対するサービスの質が低下し、利用者の死後に
相続人との間で紛争が生じるリスクもあることから、
利用者との間で死因
贈与契約を締結するに当たってはこの点に十分に注意することが重要で
ある。
※(注記) 高齢者等終身サポート事業者が、
利用者との間で締結した、
身元保証契約と死因
贈与契約をセットにした死因贈与契約に関して、その内容及び締結過程に照らし、
いわば社会的弱者とされる高齢者に身元保証を提供する代わりに合理的な理由も
ないままその死亡時の不動産を除く全財産を無償で譲渡させることにより同事業
者が利益を得るものであって、暴利行為といえ、公序良俗に反して無効であるとし
た裁判例がある(名古屋高裁(令和4年3月 22 日判決))。
・ 高齢者等終身サポート事業者と利用者との間の死因贈与契約について
は、当該利用者の意思に基づいて締結されたものであっても、原則として
当該利用者が生前に当該死因贈与契約を撤回することができるものと考
えられる。高齢者等終身サポート事業者においては、利用者との間で死因
贈与契約を締結する場合は、
利用者に撤回の機会を与える観点から、
また、
利用者の死後、相続人との間で紛争が生じるリスクを回避する観点から、
利用者に対して撤回権があることを説明し、
その旨を記録しておくことが
望ましい。
※(注記) 一般に、
死因贈与契約については、
原則として贈与者が生前に撤回することがで
きるとされている(最高裁昭和 47 年5月 25 日判決・民集 26 巻4号 805 頁)こと
を踏まえたもの。
ただし、
負担付贈与であって受贈者が既にその負担の全部又はそ
れに類する程度の履行をした場合には、その契約の全部又は一部を取り消すこと
がやむを得ないと認められる特段の事情がない限り、贈与者が死因贈与契約を撤
回することはできない(最高裁昭和 57 年4月 30 日判決・民集 36 巻4号 763 頁)
ともされている。
(2) 遺贈について
・ 遺言によって特定の者に財産を譲与することを遺贈といい、
遺言の方式
には、
主に自筆証書遺言
(民法第 968 条)
と公正証書遺言
(同法第 969 条)
がある。遺贈は、遺言者本人の自由な意思に基づいてされる単独行為であ
り、作成者である遺言者のニーズに応じて、そのメリット、デメリットを
踏まえ、自筆証書遺言と公正証書遺言は使い分けられる。
・ 高齢者等終身サポート事業者が利用者から遺贈を受けようとする場合、20主な利用者が判断能力の低下が懸念される場合もあり得る高齢者が中心
であり、死因贈与契約及び寄附(贈与契約)と同様に利益相反的な状況に
なり得るため、利用者の死後に相続人との間で、利用者の遺言能力の有無
等をめぐってトラブルが生じやすいことに留意する必要がある。
高齢者等終身サポート事業者は、利用者から遺贈先の相談を受ける場合、
遺贈先として当該事業者のみを示すのではなく、他の遺贈先を選択肢とし
て示すことで、真に利用者の意思による自発的な遺贈先の選択を促すこと
が望ましい。また、事後的なトラブルを未然に防止する観点から、その過
程を記録に残しておくことが望ましい。
・ 高齢者等終身サポート事業者において、
利用者から遺贈を受けようとす
る場合には、利用者である本人に遺言能力があり、その自由な意思に基づ
く遺贈であることを担保する観点から、
公正証書遺言によることが望まし
い。
・ なお、
遺贈を受けることを高齢者等終身サポート事業に係る契約の条件
とすることなどは、死因贈与契約及び寄附(贈与契約)と同様、真に利用
者の意思に基づくものであるか疑義が残るため、
避けることが重要である。
※(注記) 自筆証書遺言と公正証書遺言について
・ 自筆証書遺言は、軽易な方式の遺言であり、遺言者本人が遺言書の全文(財産目
録を除く。)、
日付及び氏名を自書し、
これに押印することによって成立するもので
あり、
他人の力を借りることなく、
いつでも自らの意思に従って作成することがで
き、手軽かつ自由度の高い制度である(民法第 968 条)。・ 自筆証書遺言は、いつでも、どこでも、容易に遺言書を作成することができる、
遺言の内容のみならずその存在そのものを秘密にしておくことができる、作成費
用が掛からないといったメリットがある一方、
遺言者の不知・不注意等からしばし
ば方式不備が生じること、記載された内容が不明確であって要領を得ないなどし
て、遺言の効力について紛争が生じることが少なくないこと、遺言書が偽造・変造
される危険性があること、遺言書の紛失や発見されない危険性、他人による隠匿・
破棄の危険性があることなどのデメリットがある。なお、法務局の保管制度(自筆
証書遺言書保管制度)を利用することにより、デメリットの一部は軽減される。
・ 公正証書遺言は、
法律専門家である公証人関与の下で、
2名以上の証人が立ち会
うなど厳格な方式に従って作成され、公証人がその原本を厳重に保管するという
信頼性の高い制度である
(同法第 969 条等)。公正証書遺言においては、
遺言者は、
遺言の内容について公証人の助言を受けながら、最善の遺言を作成することがで
きる。また、公証人において、遺言者の遺言能力の確認なども行われる。
・ 公正証書遺言は、紛失や改変等のおそれがないこと、公証人が遺言の内容や遺言21能力の確認を行うことから一般には無効な遺言になりにくいといったメリットが
ある一方、一定の手続を要することから負担を伴うこと、作成費用が掛かることな
どのデメリットがある。22第3 契約の履行に当たって留意すべき事項
1 サービス提供の管理について
○しろまる 高齢者等終身サポート事業には、
「身元保証等サービス」、「死後事務サービ
ス」、「日常生活支援サービス」等が含まれ得るところ、高齢者等終身サポー
ト事業者と利用者との間の契約は、
その内容によって
「委任」
(民法第 643 条)
又は「準委任」
(民法第 656 条、第 643 条)と整理され得る。
「委任」又は「準
委任」に該当する場合には、受任者である高齢者等終身サポート事業者は、
委任者である利用者等に対して、その請求に応じて委任事務の処理の状況を
報告する義務や、委任終了後にその経過及び結果を報告する義務を負ってい
る(民法第 645 条)。○しろまる また、
利用者との間で法的トラブルが生じ、
高齢者等終身サポート事業者が
契約上の義務を履行したか否かが争われる場合、高齢者等終身サポート事業
者は、契約上の義務を履行したことについての主張・立証責任を負うことが
ある。
○しろまる そこで、
高齢者等終身サポート事業者は、
受任者として報告義務の履行を求
められる場合や法的トラブルが生じた場合に備えて、その契約の期間中、そ
の提供したサービスの時期や内容、要した費用等についてサービス提供記録
を作成、保存しておくことが重要である。
○しろまる 加えて、
上記サービス提供記録の内容については、
定期的に利用者に報告す
るとともに、利用者が成年後見制度を利用している場合には成年後見人等に
も情報共有を行うことが重要である。
〇 特に、サービスを提供する中で、利用者の希望や、医療・介護を必要とする
状況なども変化することから、
定期的な面談により、
利用者の希望や必要とす
るサービスに変化がないか確認することが望ましい。
〇 さらに、
医療や介護を必要とするなど、
利用者の生活に大きな影響が生じる
変化があったときには、利用者や関係機関から高齢者等終身サポート事業に
連絡が入るよう、
関係者と連絡体制を取っておくことにより、
円滑に必要なサ
ービス提供が可能となる。
○しろまる また、
死後事務については、
利用者自身は当該事務の履行を確認することが
できないことから、
事業の適正性を確保する観点から、
当該履行状況に関し、
第三者による点検等が定期的に行われる仕組み等を構築しておくことが有効
であり、利用者から推定相続人等の連絡先を聴取している場合には、推定相
続人等に報告することが重要である。232 提供するサービス内容ごとの留意事項
〇 高齢者等終身サポート事業の契約を締結した後は、
契約内容に基づき、
所要
のサービスを履行する。
○しろまる 前記1に記載した事項に加え、個別のサービスごとに留意すべき主な事項
は以下のとおりである。
(1) 身元保証等サービス
ア 医療機関への入院時、退院時等の支援
(ア)入院の際の対応について
・ 利用者が自ら手続を行うことができる場合には、利用者が手続を行
うことが原則であるが、入院手続を支援内容に含めることを契約書に
明記している場合には、利用者の意思を十分踏まえた上で、入院に係
る手続
(入院手続等に関する説明への立会い、
費用の支払の代行など)
について高齢者等終身サポート事業者が支援を行うことができる。
・ このほか、利用者の意向を踏まえて、入院手続の説明等の場に、高
齢者等終身サポート事業者が立ち会うことは差し支えないものと考
えられる 11。・ また、契約に基づき、入院の際に高齢者等終身サポート事業者が身
元保証等サービスを行う場合には、必要となる対応(連帯保証、入院
手続に係る支援、緊急連絡対応、身柄の引取り等)を医療機関に確認
の上、それぞれについて契約に基づく対応の可否を医療機関に伝える
ことが重要である。
その際、利用者にとって必要であるが、高齢者等終身サポート事業
者が対応できない事項については、
医療機関や関係機関等とも相談し、
代替サービスの手配などを調整することが望ましい。
(イ)医療に係る意思決定支援における高齢者等終身サポート事業者の関
わり方
・ 医療同意そのものについては、利用者の身体・生命に関わり一身専
属性が高い事柄であることから、高齢者等終身サポート事業者を含む
「身元保証人・身元引受人等」の第三者には、その同意権限はないも11「身寄りがない人の入院及び医療に関する意思決定が困難な人への支援に関するガイド
ライン」中「3.
(1)2入院計画書に関すること」中、
「本人が理解できるようわかりや
すく説明を行うとともに、家族、ケアマネジャー、相談支援専門員や友人・知人など、本
人の身の回りの人で、本人の入院診療についての説明に同席を希望する人がいる場合は、
本人の意向を確認した上で、情報提供を行います。
」との記載あり。24のと考えられる 12
。本人の判断能力の程度にかかわらず、医師等の医
療従事者から適切な情報の提供と説明がなされ、本人による意思決定
を基本とした上で適切な医療提供を行うことが重要である。
・ 一方、同意そのものではないが、利用者が医療を必要とする場合に
備え、意思が明確な段階から事前に利用者が作成した書面を保管する
など本人の意思を代弁する関わり方は想定されるため、利用者の意思
を医療機関が把握し、利用者の希望を踏まえた医療が提供されること
に資するよう、
事前に利用者の意思を記した書面を高齢者等終身サポート事業者
が預かっている場合に、利用者の意思が確認可能な場合には確認
の上、当該書面を医師等へ渡すこと 8
利用者が希望する場合、医師等による説明の場に、高齢者等終身
サポート事業者が同席すること 13
は差し支えないと考えられる。
・ なお、
意思決定が求められる時点で本人の意思が確認できない場合、
医療機関向けに作成されている「身寄りがない人の入院及び医療に係
る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」14
を参照の上、
支援に取り組むことが重要である。
(ウ)退院時における支援
・ 医療機関の退院に際しては、利用者が必要とする医療・介護の状況
に応じて、在宅での生活や、転院や入居・入所先を検討する必要があ
る。
・ 退院の見通しが立ってきた際には、高齢者等終身サポート事業者は、
医療機関や担当のケアマネジャー等の関係者に、退院後に必要と想定12「身寄りがない人の入院及び医療に関する意思決定が困難な人への支援に関するガイド
ライン」P6参照13「身寄りがない人の入院及び医療に関する意思決定が困難な人への支援に関するガイド
ライン」中「3.
(1)2入院計画書に関すること」中、
「本人が理解できるようわかりや
すく説明を行うとともに、家族、ケアマネジャー、相談支援専門員や友人・知人など、本
人の身の回りの人で、本人の入院診療についての説明に同席を希望する人がいる場合に
は、本人の意向を確認した上で、情報提供を行います。
」との記載あり。14厚生労働省「身寄りがない人の入院及び医療に関する意思決定が困難な人への支援に関
するガイドライン」
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/miyorinonaihito
henotaiou.html)25される医療や介護の状況を確認するとともに、利用者の意思決定を支
援し、利用者が希望する生活を円滑に送れるようにするため、利用者
自身の退院後の生活に関する意向を確認することが重要である。
・ なお、入院後に利用者の意向を確認することも必要であるが、普段
から、面談等の機会を通じて、利用者本人が希望する医療や介護の利
用について、意向を確認し、その内容を書面にしておくことが望まし
い。
・ 利用者の意向に基づき、主治医や医療ソーシャルワーカー(既に介
護保険サービスを利用している場合には担当のケアマネジャー等を
含む)
の判断も踏まえ、退院後の選択肢(転院、
介護施設等への入居・
入所、退院後の通院や在宅医療の利用、介護サービスの利用等)につ
いて、利用者に分かりやすく情報を提供することが望ましい。
・ また、利用者の判断能力が不十分な場合には、成年後見人等と連携
して、意思決定の内容に応じて関係ガイドライン 15
を参照しながら意
思決定の支援を実施することが重要である。
イ 介護施設等への入居・入所時、退所時の支援
(ア)入居・入所の検討に係る支援
・ 高齢期は時間とともに心身の状況が緩やかに変化し、住み慣れた自
宅での生活から、高齢者向けの支援のある住まいや介護施設等への入
居・入所を検討することが必要になる場合もある。
・ 高齢者向けの支援のある住まいや介護施設等への入居・入所への検
討が必要となった場合や、利用者から相談があった場合には、高齢者
等終身サポート事業者は、まず利用者の希望内容を確認することが重
要である。
・ また、利用者が必要とする医療・介護の状況に応じたサービスを受
けることができるよう、利用者の意向を踏まえ、必要に応じて医療機15厚生労働省「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関す
るガイドライン」
(https://www.mhlw.go.jp/content/000516181.pdf)
厚生労働省「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」
(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-
Roukenkyoku/0000212396.pdf)
意思決定支援ワーキング・グループ「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」
(https://www.mhlw.go.jp/content/000750502.pdf)26関の関係者等や担当のケアマネジャー等とも緊密に連携し、利用者が
必要とする医療・介護の状況や考えられる選択肢について確認・相談
することが望ましい。医療・介護サービス等を現在利用していない場
合等には必要に応じて地域包括支援センター等と連携することも考え
られる。
・ こうした情報を踏まえ、利用者に対し、選択肢(住まいや施設の種
別、それぞれの特徴など)について分かりやすく情報提供し、利用者
の意思決定の支援を行うことが重要である。
・ なお、利用者の判断能力が不十分な場合には、成年後見人等と連携
して意思決定の支援を実施することが重要である。
(イ)介護施設等への入居・入所の際の対応について
・ 利用者が自ら手続を行うことができる場合には、利用者が手続を行
うことが原則であるが、入所手続を支援内容に含めることを契約書に
明記している場合には、高齢者等終身サポート事業者が、利用者の意
思を十分踏まえた上で、介護施設等の入居・入所に係る手続に関する
支援(面談等の日程の調整、重要事項説明時の立会い、必要書類の作
成及び発送並びに提出の支援、入所費用の支払など)について、利用
者の意向を踏まえた支援を行うことが重要である。
・ また、契約に基づき、入所の際に高齢者等終身サポート事業者が身
元保証等サービスを行う場合には、必要となる対応(連帯保証、入所
手続に係る支援、退所時の対応、緊急連絡対応等)を介護施設等に確
認の上、それぞれについて契約に基づく対応の可否を介護施設等に伝
えることが重要である。
その際、利用者にとって必要であるが、高齢者等終身サポート事業
者が対応できない事項については、介護施設等や関係機関等とも相談
し、代替サービスの手配など必要な調整を行うことが望ましい。
ウ 緊急連絡先の受託等
・ 入院等が必要になった場合に、高齢者等終身サポート事業者を緊急連
絡先とすることについては、特に夜間・休日の連絡体制や、医療機関や
介護施設等へ駆けつけるタイミング等についてあらかじめ利用者に説
明しておくことが重要である。なお、既に入院中や入所中の場合は、医
療機関や介護施設等にも説明をしておくことが望ましい。
・ 平時から、かかりつけ医や担当のケアマネジャー等の医療・介護の関
係者に、緊急時の連絡先として、高齢者等終身サポート事業者の連絡先
を伝えておくほか、緊急時に分かりやすいよう、利用者宅の分かりやす27いところに連絡先を掲示する、身に着けておいてもらう等の依頼をする
ことが望ましい。
・ 利用者が危篤等の緊急時に、連絡してほしい先がある場合には、当該
連絡先等を把握しておくことが重要である。その際、定期的な面談の際
等を活用し、当該連絡先等に変更がないか確認しておくことが望ましい。
また、利用者の了解が得られる場合には、先方に対し、緊急時に高齢者
等終身サポート事業者から連絡がある旨を伝えておくことが考えられ
る。
・ 医療機関等へ提出するものとして、希望する医療や介護についてあら
かじめ利用者が記載した書面を預かっている場合には、当該書面を医療
機関等に渡すことが重要である。
・ 医療機関や介護施設等から利用者が死亡した旨の連絡があった場合に
は、
(2)死後事務サービスの記載を参考として対応することが重要で
ある。
(2) 死後事務サービス
ア 死後事務委任契約に基づく適正な履行について
・ 高齢者等終身サポート事業者が死後事務を履行するに当たっては、既
に利用者本人が死亡していることから、利用者の生前に締結した死後事
務委任契約に基づき、適正に事務を履行することが重要である。
(ア)葬送に関する事務(葬儀・火葬・埋葬、供養・法要等)
・ 葬儀等は利用者の死亡後速やかに行う必要があるため、利用者が死
亡した場合に速やかに高齢者等終身サポート事業者に伝わるように
事前に利用者や関係機関等と調整しておくことが重要である(高齢者
等終身サポート事業者の連絡先を利用者の自宅内に掲示する、医療・
介護の関係者へ周知しておく等)。・ 利用者が死亡したことを把握した場合には、葬儀業者等に連絡する
など、必要な手続を進める。利用者が死亡した旨を連絡する先を把握
している場合には、当該連絡先にその旨を連絡することが重要である。
(イ)行政機関への届出等(死亡届、医療保険等)
ア 死亡届について
・ 利用者が死亡した場合、死亡の事実を知った日から7日以内(国
外で死亡したときは、その事実を知った日から3か月以内)に、同
居の親族、同居者、家主、地主家屋管理人、土地管理人等は、死亡
届を提出しなければならず(戸籍法第 86 条、第 87 条第1項)
、同居
の親族以外の親族、後見人、保佐人、補助人、任意後見人、任意後28見受任者は、同期間内に死亡届を提出することができる(戸籍法第
86 条、第 87 条第2項)。・ そのため、高齢者等終身サポート事業者自身が任意後見人又は任
意後見受任者であるときは、届書を作成し、死亡者の死亡地・本籍
地又は届出人の所在地の市役所、区役所又は町村役場に遅滞なく届
け出ることができる。任意後見人等ではない高齢者等終身サポート
事業者は、自身で死亡届を提出することができないため、相続人が
いるときは、死後事務委任契約に基づき、速やかに、利用者が死亡
した旨を当該相続人に連絡することが重要である。
イ 医療保険について
・ 利用者が加入している医療保険により取扱いが異なるため、加
入している保険に応じて手続を行うことが必要である。
(ウ)家屋等の賃貸借契約について
・ 賃貸人に連絡し、残置物の整理のための必要な手続等を行うことが
重要である。
(エ)電気・ガス・水道等の公共料金、携帯電話の支払・解約について
・ 利用者が契約していた事業者に連絡し、必要な支払、解約手続を行
うことが重要である。
イ 死後事務委任契約と相続人との関係について
・ 利用者の死後、委任事務が終了した場合には、相続人に対し遅滞なく
その経過及び結果を報告しなければならない(民法第 645 条)。・ また、利用者の死後において、死後事務に関して生前の本人の意思と
相続人の希望とが異なる場合には、まずは高齢者等終身サポート事業者
において相続人に対して生前の本人の意向を丁寧に説明し、その理解を
得られるよう努めることが望ましい。
もっとも、
相続人がなお生前の本人の意思に反して契約の解除や契約
内容の変更を求める場合には、法的な紛争を避けるという観点からは、
相続人の申出に応じて合意により契約の解除や契約内容の変更をする
ことも考えられる。
(3) 日常生活支援サービス
○しろまる 高齢者等終身サポート事業者が、
日常生活支援サービスを実施する場合
の留意点は以下のとおりである。
・ 日常生活支援サービスについては、利用の都度費用が発生するものも
あるため、実施したサービス内容や費用等について記録を残しておくこ
とが重要である。29・ 通院時の送迎・付添いや介護保険等サービスの手続支援等の業務を行
う場合には、医療機関のかかりつけ医や介護保険サービスの担当のケア
マネジャー等に日頃から定期的に連絡するなど、連携体制を築いておく
ことが望ましい。
3 利用者から金銭等を預かる際の対応について
○しろまる 高齢者等終身サポート事業者が利用者から金銭等の預託を受ける主な局面
としては、
(1)サービス提供費用の前払(預託)を受ける場合や、
(2)財
産管理等委託契約に基づき利用者名義の通帳の管理等を行う場合が考えられ
る。それぞれの場合において留意すべき主な事項は以下のとおりである。
(1) サービス提供費用の前払(預託)を受ける場合の留意事項
・ 高齢者等終身サポート事業においては、
例えば日常生活支援サービスや
死後事務サービスの提供のために必要となる金銭について、
利用者から事
前に前払(預託)を受けることがあり得る。
・ こうした利用者からの前払金(預託金)と高齢者等終身サポート事業者
自身の運転資金等との混在を防止するとともに、
高齢者等終身サポート事
業者の万が一の経営破綻等の場合における利用者の被害を極小化する観
点から、高齢者等終身サポート事業者は利用者からの前払金(預託金)に
ついて、
(1)高齢者等終身サポート事業者自身の運営資金等とは明確に区分して
管理すること
(2)利用者に定期的に管理状況を報告すること
が望ましい。また、これらの事項を適切に実施する旨を契約書に明記し、
利用者とも共有しておくことが望ましい。
・ 利用者からの前払金(預託金)の管理方法に関しては、例えば資金決済
に関する法律(平成 21 年法律第 59 号)では、キャッシュレス決済などの
送金サービスを提供する資金移動業者は、
送金にあたり顧客から受け入れ
た資金を原則として供託、保全契約若しくは信託契約(又はこれらの手段
の併用)により保全することが義務付けられている。
供託については法律の定めがない限り利用できないこと、
一部の高齢者
等終身サポート事業者においては信託契約を利用する慣行が既に見られ
ること等を踏まえると、利用者からの前払金(預託金)については信託銀
行又は信託会社を相手方とする信託契約を利用して保全することが望ま
しい。30このほか、資金管理に関する知識・経験を有し、かつ財産基盤が充実し
ており、
士業等の業法に基づく規制に服している別法人に預託金の管理を
委託する方法や、
高齢者等終身サポート事業者自身の運転資金等と分別し
た預金で管理する方法も考えられる(※(注記))。※(注記) 資金決済に関する法律では、少額(5万円以下)の送金のみを扱う第三種資金移
動業については、利用者のリスクが相対的に小さいことを考慮し、
(年 1 回以上の
監査法人等による監査を前提として)利用者資金を自己の財産と分別した預金で
管理することが認められている。
※(注記) ただし、これらの方法により利用者からの前払金(預託金)を管理する場合、必
ずしも倒産隔離が効かず、
高齢者等終身サポート事業者・別法人の破綻時に利用者
が十分な資金の還付を受けられない可能性があることには留意を要する。
(2) 財産管理等委託契約に基づき利用者名義の通帳の管理等を行う場合の
留意事項
・ 高齢者等終身サポート事業においては、財産管理等委託契約に基づき、
(銀行との間で代理人指名手続を行った上で)
利用者名義の通帳の管理や、
日常生活において使用する物品・サービスの購入又はその料金支払の代行
をすることがあり得る。
・ その場合は、利用者ごとの出納記録の作成、領収書等の保存、及び利用
者への都度の報告を行うことが望ましい
(利用者からの求めがあれば報告
しなければならない)。・ 金銭的な支払が生じる場合は、
可能な限り利用者自らの支払をサポート
する形での支援を行うことが望ましいが、
利用者の同意を得た上で支払を
代行するときは、
利用者から預かった金銭等を高齢者等終身サポート事業
者自身の運転資金等とは明確に区分しておくことが望ましい。
4 契約の変更・解約に当たって留意すべき事項
〇 高齢者等終身サポート事業に関して、消費生活相談には、これまで、消費者
が実際に契約を解約しようとした時に、解約方法が分からないという相談が
寄せられているところ、消費者契約法上、事業者は、消費者の求めに応じて、
消費者契約により定められた当該消費者が有する解除権の行使に関して必要
な情報を提供する努力義務を負う(消費者契約法第3条第1項第4号)
。した
がって、高齢者等終身サポート事業者は、利用者からの求めがあれば、利用者
が契約を解除する際に必要な具体的な手順等の情報を提供する努力義務を負
う。31○しろまる 解除方法・解約事由や契約変更や解約時の返金に関する取扱いについては、
重要事項説明書を用いて、利用者に丁寧に説明するとともに、契約書に明記
することが重要である。
○しろまる なお、
仮に消費者契約の解除に伴う違約金を定める等の場合については、適切な額を設定することが必要である(消費者契約法第9条第1項)。5 判断能力が低下した場合の対応について
(1) 成年後見制度の利用について
・ 判断能力(民法第7条、第 11 条、第 15 条第1項及び任意後見契約に関
する法律第2条第1号参照)が低下した場合(医師の診断を踏まえて一定
の判断能力の低下が見られる場合等)の本人保護の制度として、成年後見
制度(任意後見制度・法定後見制度(補助、保佐及び成年後見)
)がある。
・ 高齢者等終身サポート事業者が適切な支援を行う場合であっても、
利用
者の判断能力が低下し、十分に意思表示を行うことができないなど、利用
者の権利を保護する必要がある場合には、
成年後見制度を活用することが
必要である。
具体的には、
利用者と高齢者等終身サポート事業者等との間で任意後見
契約が締結されている場合において、
利用者の判断能力が不十分になった
ときは、速やかに任意後見監督人の選任の請求を行い、適切に任意後見契
約を発効させるようにしていくこと、また、任意後見契約が締結されてい
ないときは、本人に対して、補助開始の審判(既に利用者の判断能力の状
態が保佐又は後見相当である場合には、保佐開始又は後見開始の審判)の
請求を促し、適切に法定後見制度へつないでいくことが重要である 16。・ ただし、成年後見制度については、基本的には本人保護の制度であるた
め、まずは利用者本人がその必要性を理解することが重要である。このた
め、
高齢者等終身サポート事業者は、
定期的に利用者と面談するなどして、
利用者が成年後見制度の利用についてどのような希望を有しているかを
把握し、適切な働き掛け等を行うことを通じ、適切な時期に任意後見監督
人の選任の申立てについての同意を得ることや利用者において適切な時16法定後見制度と任意後見制度との違いについては法務省「成年後見制度・成年後見登記
制度 Q&A」Q2、法定後見制度については Q3 参照。
(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji17.html)
成年後見制度の詳細については法務省「成年後見制度 成年後見登記制度」参照。
(https://www.moj.go.jp/MINJI/pdf/pamphlet.pdf)32期に補助開始の審判の請求をすることができると考えられる。
・ このような観点から、以下の事項について、重要事項説明書を用いて、
利用者に丁寧に説明するとともに、利用者との合意の上、契約書に明記し
ておくことにより、利用者の判断能力が不十分になった際にも、円滑に支
援を行うことが可能となるものと考えられる。1)定期的に利用者と面談するなどして利用者の状態や成年後見制度の利
用に関する希望を的確に確認すること
2-1)利用者が任意後見を希望する場合
上記1)の内容に加え、利用者の判断能力が不十分となった場合に、
・ 利用者と高齢者等終身サポート事業者との間で任意後見契約が締
結されているときは、速やかに任意後見監督人の選任を請求すること・ 利用者が高齢者等終身サポート事業者以外の者との間で任意後見
契約を締結しているときは、任意後見受任者に対して利用者の判断
能力が不十分となったことを伝えること
・ 高齢者等終身サポート事業者が利用者と財産管理等委託契約を締
結しているときは、
任意後見契約の発効後、
任意後見人との権限の重
複によるトラブルを避ける観点から、任意後見契約が発効された際
には当該財産管理等委託契約が終了すること
2-2)利用者が任意後見を希望しない場合
上記1)の内容に加え、利用者の判断能力が不十分となった場合に、利
用者に対して、補助開始の審判等の請求を促すこと
※(注記) 任意後見について(任意後見契約に関する法律第4条第1項)
任意後見契約が登記されている場合において、精神上の障害により本人の事理を弁
識する能力が不十分な状況にあるときは、本人、配偶者、四親等内の親族又は任意後
見受任者は、任意後見監督人の選任を請求することができるとされている。
※(注記) 法定後見(補助、保佐及び成年後見)について
精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所
は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検
察官の請求により、補助開始の審判をすることができるとされている(民法第 15 条第
1項)。精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭
裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人
又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができるとされている(民法第3311 条)。精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判
所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保
佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすること
ができるとされている(民法第7条)。・ そして、契約期間中に利用者の判断能力が不十分となった場合には、契
約書及び重要事項説明書に明記したことに基づき、
利用者と高齢者等終身サポート事業等との間で任意後見契約が締結
されているときは、速やかに任意後見監督人の選任を請求すること
利用者が高齢者等終身サポート事業者以外の者との間で任意後見契
約を締結しているときは、速やかに任意後見受任者に対して利用者の
判断能力が不十分となったことを伝えること
により、適切に任意後見契約の発効が可能となるようにしていくことが重
要である。
また、任意後見契約が締結されていないときは、本人に対して、補助開
始の審判(既に利用者の判断能力の状態が保佐又は後見相当である場合に
は、保佐開始又は後見開始の審判)の請求を促し、適切に法定後見制度へ
つないでいくことが重要である。
(2) 高齢者等終身サポート事業者が任意後見人になる場合の留意事項
・ 任意後見に係る適正性を確保するため、任意後見契約に関する法律上、
任意後見人又はその代表する者と本人の利益とが相反する行為について
は、任意後見監督人が当該行為について代表することとされている(任意
後見契約に関する法律第7条第1項第4号)。・ 利益相反に当たるか否かは、
後見人が本人を代理してなした行為自体を
外形的客観的に考察して判定することとされている(最判昭和 42 年4月
18 日民集 21 巻3号 671 頁参照)が、一般的には、任意後見人となる高齢
者等終身サポート事業者が、
利用者が入所している施設を経営しているよ
うな場合、利用者が利用している各種サービス(介護サービスや家事代行
サービスなど)
の事業を経営しているような場合などには利用者に対して
入所費用やサービス利用料などを請求する立場にあることから、
高齢者等
終身サポート事業者が利用者との間で任意後見を締結するに当たり、
例え
ば、
1)高齢者等終身サポート事業者が経営する施設、サービスの入所契約や
利用契約の締結や費用の支払等の代理権を設定しないこと342)
高齢者等終身サポート事業者が経営する施設、
サービスの入所契約や
利用契約の締結や費用の支払等に関する事項を代理権の範囲に入れる
場合には、
当該事項については任意後見監督人が代理する旨を契約書に
明示しておくこと
などの配慮をすることが考えられる。また、高齢者等終身サポート事業者
が任意後見契約を履行する際には、当該契約書に基づき、適正に事業を履
行することが重要である。
(3) 利用者が成年後見制度の利用を開始した場合の留意事項
・ 成年後見人の選任によって、
直ちに本人と高齢者等終身サポート事業者
との間で締結された契約に影響を与えるものではないが、当該契約は、死
後事務を含み、長期にわたる契約である一方で、成年後見人は本人の財産
を管理し、かつ、その財産に関する法律行為について本人を代表する(民
法第 859 条)ことに鑑み、成年後見人が選任された後は、契約内容につい
て成年後見人とよく相談することが望ましい。35第4 事業者の体制に関する留意事項
1 情報開示について
○しろまる 高齢者等終身サポート事業については、判断能力の低下が懸念される高齢
者を主な対象としていること、
契約期間が長期間にわたること、
サービス内容
が多岐にわたること等の特徴があることから、利用者が安心して当該サービ
スを利用する観点から、高齢者等終身サポート事業者がサービスの提供に先
立って、
事業者に関する情報や提供しているサービス情報などについて、
事業
者のホームページ等で公表しておくことが重要である。
○しろまる 具体的には以下の事項等について公表することが考えられる。
1)高齢者等終身サポート事業者の基本情報(組織、人員体制等)
・財務諸表
に関する情報
2)提供しているサービス内容や費用
※(注記) 包括的に示すのではなく、入会金や預託金などを区分して示すとともに、サー
ビスごとの内訳や当該サービスを利用する場合の場面など、利用者が理解しやす
いように記載することが望ましい。
3)費用の支払方法
4)サービスを利用できない者
5)提供しているサービスの履行状況を確認する方法
6)契約変更や解約の事由・手続等
7)契約変更や解約時の返金に関する取扱い
※(注記) 費用ごとに区分されて記載されていることが望ましい。
8)預託金の管理方法等
9)寄附や遺贈に関する取扱方針
10)個人情報の取扱方針と管理体制
11)相談対応体制・連絡先
〇 なお、
契約期間が長期間にわたり、
サービス内容が多岐にわたることから、
各サービスと費用の関係や解約時のルールをはじめ、利用者との契約内容は
複雑になりやすいと考えられる。このため、検討に資するよう第2 1(1)
に例示する事項に関して利用者一般に共通する規程や約款自体を作成し、あ
らかじめホームページ等で公表しておくことが望ましい。362 個人情報の適正な取扱い
○しろまる 高齢者等終身サポート事業の提供に当たっては、
利用者本人の個人情報(要配慮個人情報を含む)
や、
プライバシーに関わる情報を多く取り扱うこととな
る。
〇 個人情報取扱事業者は、
個人情報を取り扱うに当たっては利用目的をできる限り特定しなければ
ならず、あらかじめ個人情報を第三者に提供することが明らかになって
いる場合には、
その旨が明確に分かるように特定しなければならない(個人情報の保護に関する法律(平成 15 年法律第 57 号)第 17 条第1項)こ
とのほか、個人情報を取得した場合は、あらかじめ利用目的を公表して
いる場合を除き、
速やかに、
利用者本人に通知し、
又は公表しなければな
らない(同法第 21 条第1項)こと
個人データの漏えい、滅失又は毀損の防止その他の個人データの安全管
理措置を講じなければならない(同法第 23 条)ことのほか、従業者の監
督(同法第 24 条)
、委託先の監督(同法第 25 条)なども行わなければな
らないこと
要配慮個人情報が含まれる個人データの漏えい又は漏えいのおそれがあ
る場合などには、個人情報保護委員会への報告及び本人への通知を行わ
なければならないこと(同法第 26 条、個人情報の保護に関する法律施行
規則(平成 28 年個人情報保護委員会規則第3号)第7条)
などが規定されており、同法に基づく対応が必要となる。また、個人データの
適正な取扱いの確保について組織として取り組むために、
基本方針を策定する
ことなども重要となる。
〇 個人情報保護についての詳細は、
「個人情報の保護に関する法律についての
ガイドライン」17
や、
「自己点検チェックリスト」18
を参照の上対応されたい。
3 事業継続のための対策
○しろまる 高齢者等終身サポート事業については、契約期間が長期にわたること等か
ら不測の事態が生じた場合であっても継続的にサービスを提供できるように
取り組むことが重要である。17個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」
(https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/#page_top)18個人情報保護委員会「自己点検チェックリスト」
(https://www.ppc.go.jp/files/pdf/Self_assessment_checklist.pdf)37○しろまる このため、
事業継続のための対策として、
災害等が生じた場合の事業継続計
画及び事業を清算することになった場合の対応方針をあらかじめ定めておく
ことが望ましい。
4 相談窓口の設置
○しろまる 高齢者等終身サポート事業については、
契約が長期にわたり、
利用者側の事
情変更もあり得ることから、契約内容をめぐってトラブルが発生することが
想定される。
○しろまる このため、事業者においては、できる限り、利用者からの相談を一元的に対
応できる窓口を設置するとともに、その連絡先を事業者のホームページに掲
載し、重要事項説明書にも記入しておくことが望ましい。
○しろまる このほか、事業者は、適切なサービスを実施できるよう、研修等により職員
が関連制度等に理解を深める機会を設けることが望ましい。38<参考>
高齢者等終身サポート事業に関連する制度・事務に関する政府の取組について
1 ガイドライン策定と併せて関係省庁において行う事項
(1) 金融機関での手続について
身寄りのない高齢者が今後増加していくと、
親族以外の代理人が金融機関に
おいて高齢者本人に代わって各種手続を行うケースも増えていくことが見込
まれる。
親族以外の代理人による手続に既に対応している金融機関はあるもの
の、今後、高齢者等終身サポート事業者が代理人として手続ができるよう、顧
客利便の観点から金融機関に対して適切な対応を促していく。
同様の観点から親族がいる場合においても、
本人死亡後の口座の閉鎖手続時
は相続関係書類も多く手続が煩雑になるため、
顧客の個別事情に配慮し、
丁寧
な対応
(窓口マニュアル整備の徹底等)
を行うよう金融機関に対して促してい
く。
(2) 携帯電話の解約について
身寄りのない高齢者が今後増加していくと、
相続人以外の代理人が携帯電話
の解約手続を行うケースも増えていくことが見込まれる。
一部の事業者では高齢者等終身サポート事業者からの解約申請を受け付け
ていないところ、
解約事務を適切に受任した高齢者等終身サポート事業者から
の解約申請も受付けるべく事業者団体と調整を進める。
(3) 関連業界に対するガイドラインの周知
今後、
様々な場面において高齢者等終身サポート事業者の活用が見込まれる
ことから、高齢者等終身サポート事業者が提供するサービス(P5 表1参照)
に関わる医療・介護・福祉事業、不動産業、葬儀業、携帯事業、電気・ガス・
水道事業、金融業等の関連業界においても、本ガイドラインが、質の高い高齢
者等終身サポート事業者の判断目安として活用されるよう、
業界団体や自治体
に対し、本ガイドラインの周知を行う。
2 今後の課題
○しろまる 今後の高齢者等終身サポート事業の利用状況等を踏まえ、身近に手助けを
する人のいない高齢者等の適切な支援に向けて、関係する制度の見直し等の
必要な検討を進める。39(1) 重要な治療方針に関する高齢者等終身サポート事業者の関わり方につ
いて
身寄りがない高齢者等が医療を必要とする場合に備え、
意思が明確な段階か
ら事前に身寄りがない高齢者等が作成した書面を保管するなど本人の意思を
代弁する関わり方は想定されるため、
この部分での支援が今後の高齢化・多死
社会を迎えるに当たり重要となってくる。
意思決定に係る高齢者等終身サポート事業者の関わり方の実態把握を行っ
た上で、
身寄りがない高齢者等が医療を必要とする場合に備えた事前の意向確
認等について、
高齢者等終身サポート事業者の関わり方
(担うべき役割や留意
事項等)を示す。
(2) 介護保険外サービスの整理について
「身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査
結果報告書」
(令和5年8月総務省行政評価局)において、身元保証人が求め
られている現状に係る意見として、
「身寄りのない高齢者の死後事務が課題で
あり、現状、担当のケアマネジャーや後見人が対応せざるを得ないケースや、
入居していた介護施設等の職員が対応しているケースもあり、
負担となってい
る。
」と指摘されている。
このような意見を踏まえ、
死後事務も含め、
ケアマネジャーや介護職員等が
対応せざるを得ない現状について把握し、必要な対応を検討する。
(3) 死亡届の届出資格者について
高齢者等終身サポート事業の事業形態等を踏まえて、
高齢者等終身サポート
事業者が戸籍法第 87 条第1項第3号の家屋管理人等として死亡届の届出資格
者に含まれるか検討する。
(参考)戸籍法(昭和 22 年法律第 224 号)
(抄)
第 87 条 次の者は、その順序に従つて、死亡の届出をしなければならない。ただし、
順序にかかわらず届出をすることができる。
第一 同居の親族
第二 その他の同居者
第三 家主、地主又は家屋若しくは土地の管理人
2 死亡の届出は、同居の親族以外の親族、後見人、保佐人、補助人、任意後見人及び
任意後見受任者も、これをすることができる。40(4) 成年後見制度の見直しについて
成年後見制度については、
判断能力が回復しない限り、
制度の利用をやめる
ことができない、成年後見人には包括的な取消権、代理権があり、本人の自己
決定が必要以上に制限される場合があるなどの問題点が指摘されており、
第二
期成年後見制度利用促進基本計画(令和4年3月 25 日閣議決定)では、
「成年
後見制度の見直しに向けた検討を行う。
」とされている。
令和6年2月には、
法制審議会に対し、
成年後見制度の見直しに関する諮問
がされたところであり、今後、法制審議会において、高齢化の進展など、成年
後見制度をめぐる諸事情に鑑み、
成年後見制度を利用する本人の尊厳にふさわ
しい生活の継続やその権利利益の擁護等をより一層図る観点から、
成年後見制
度の見直しについて調査審議が進められる。
(5) 事業者の認定制度等の検討について
本ガイドラインは、
事業者が自主的に適正な事業実施の観点から確認するた
めのものであるとともに、
利用者の質の高い事業者の判断目安としてガイドラ
インが活用されることにより、
ガイドラインの履行が促進されることを目指す
ものである。
今後、
確実な履行確保等の観点から、
ガイドラインの普及や関連制度の検討
状況も踏まえつつ、
優良な事業者を認定する仕組みの創設等について、
検討す
る。
別紙
1 ○しろまる身元保証の内容と費用の取扱いが明らかになっている。 12,13 □しろいしかく
2 〇入退院時に行う対応が具体的に明らかになっている。 13 □しろいしかく
3 〇緊急時の連絡先や連絡方法が明らかになっている。 14 □しろいしかく
4 死後事務 〇死後事務で行う内容と費用の取扱いが明らかになっている。 14-17 □しろいしかく
5 日常生活支援 〇提供されるサービス内容と費用の取扱いが明らかになっている。 17,18 □しろいしかく
6 解約料
◎にじゅうまる解約料について適正な金額が設定されている。(消費者契約法第9条第1項第
1号)
10,11 □しろいしかく7〇契約時に死因贈与や寄附(贈与)を条件等とした契約を締結していない。(民
法第90条参照)
18,19 □しろいしかく8〇死因贈与契約を締結する場合、その契約を撤回できることを明らかにしてい
る。
19 □しろいしかく
9 判断能力の低下時 〇利用者の判断能力低下時の取扱いを定めている。 31-34 □しろいしかく
10 ○しろまる預託金の額やその根拠について明らかになっている。 14 □しろいしかく
11 ○しろまる預託金の管理方法等の取扱いについて明らかになっている。 29,30 □しろいしかく
12 勧誘方法
◎にじゅうまる不当な方法による勧誘を行っていない。(消費者契約法第4条)
(不当な勧誘の例)
「契約を締結するまで、事務所から帰さない」
「『契約しないと生活が維持できなくなる』と不安を煽る」など
12 □しろいしかく
13 〇利用者の年齢、心身の状態、知識等に応じた適切な説明を行っている。 9-12 □しろいしかく14〇契約に関する重要事項を説明し、その内容を利用者に書面(重要事項説明書)
で交付している。
9-11 □しろいしかく
15 〇重要事項説明書には、少なくとも以下の項目が含まれている。 9-11 □しろいしかく
16 ・契約者に提供するサービスの内容や費用、費用の支払方法 9,10 □しろいしかく
17 ・契約するサービスの解除方法・事由や契約変更・解約時の返金の取扱い 10,11 □しろいしかく
18 〇契約書を作成し、利用者に交付している。 11 □しろいしかく19○しろまるサービス提供の時期、内容、費用等について、適時に記録の作成、保存をして
いる。
22 □しろいしかく
20 〇定期的な面談等により利用者の希望の把握や状況の把握を行っている。 7 □しろいしかく21○しろまる利用者の通帳・現金等を適切に管理し、支出内容等を利用者に適切に報告して
いる。
30 □しろいしかく22○しろまる利用者からの預託金について、事業者自身の運転資金等とは明確に区分して管
理している。
29,30 □しろいしかく23◎にじゅうまる利用者が求めた際に、サービスの実施状況について報告している。(民法第
645条)
22 □しろいしかく24◎にじゅうまる委任契約の終了後、利用者本人又は相続人に対し、その経過及び結果について
報告している。(民法第645条)
28 □しろいしかく25◎にじゅうまる利用者の求めた際に、解約に必要な手順を伝えている。(消費者契約法第3条
第1項第4号)
30 □しろいしかく26〇解約を申し入れた際に、解約を過度に制限する不当な説明をしていない。
(不当な説明の例)
「解約を考え直してくれなければ困る」
「『解約すると生活が維持できなくなる』と不安を煽る」など
30 □しろいしかく27◎にじゅうまる解約料の算定根拠の概要や、違約金等を設定した合理的理由を説明することが
できる。(消費者契約法第9条第2項)
31 □しろいしかく28〇事業者に関する情報や提供しているサービス情報について、HPで公表されてい
るなど、利用者が分かるようになっている。
35 □しろいしかく
29 〇個人情報保護に関する取扱方針が定められている。 36 □しろいしかく
30 〇利用者からの相談窓口が設置されており、連絡先が分かる。 37 □しろいしかく
※(注記) 高齢者等終身サポート事業者ガイドラインにおいて、当該項目に関する記載があるページ契約の締結身元保証等
死因贈与等
預託金
契約時の説明等
チェックリスト
項目
内容
(◎にじゅうまる:法令に根拠があるもの)
該当頁※(注記)
チェック履行の提供サービス提供等
解約方法等事業者の体制
事業者の体制