我が家の人権問題
広島県 廿日市市立大野東中学校の生徒の作品
「LGBTQ」先日の広島サミットではようやくこの議題が取り上げられ、
世の中では理解が進みつつあるようだ。そんな中、私の家では妹がその当事者
になり、そのことについて考える機会が増えた。
妹は、もともと可愛いものより格好いいものが好きだった。プリキュアより
も戦隊ヒーローが好きで、スカートよりズボンを好んではいた。私は単にそれ
だけの事だと思っていたが、思春期を迎えると妹が女性であることを異常に嫌
がりはじめた。私はそれが理解できなかった。私もスカートやフリフリした可
愛い服は嫌いだが、女性であることは嫌ではない。そのため体のサイズに合わ
ないメンズの服を着ようとする妹の心がわからなかった。女物でも格好いい服
はあるのになぜダメなのか、なぜ同じような柄の服なのにレディースと知った
だけで嫌がるのか、また、それが原因で毎日母と言い争う姿に私はイライラし
た。反発がエスカレートしていくとさらに私は困惑し、ますます腹立たしく思
った。
妹が長かった髪をばっさり切りベリーショートにした時、やっと彼女がLG
BTQに当てはまると理解した。それまでの私は妹の性自認が男だと気付けて
いなかった。なぜなら私たち姉妹は趣味が同じで、よく少年マンガを読んだり
一緒にゲームをしたりする似た者同士だと思っていたからだ。そのため、私が
嫌ではないことがなぜ嫌なんだ、という思いや、私と話している時は昔と何も
変わらないのに、という思いになった。一方で今までの妹の行動はそれが原因
だったのか、とその時ようやく納得した。
しかし、私は妹の性自認について理解してもまだ違和感を感じていた。妹は
急に男友達と遊ばなくなったり、一人称を「私」から「自分」にしたり、高い
声を出さないようにしたり、次から次へと私達が驚く行動をした。今までの妹
を知っているからこそそれらの行動にショックを受け、
「元に戻ってほしい」
と思ってしまうことがあった。
私は今まで、LGBTQに対する偏見はないと思っていた。しかし、いざ身
内がそうなると否定的なことを言ったり、考えたりしてしまうことに気が付い
第 42 回全国中学生人権作文コンテスト
法務副大臣 賞
た。例えばテレビに性的マイノリティの人が出ていても変だとは思わない。む
しろ、そういった人を批判する人達を許せないとさえ思う。ただそれが身内だ
と、
「きっと気の迷いだろう」
「元の妹に戻って」と思ってしまう。このように
して私も家族も妹を、知らず知らずのうちに傷付け、追いつめていたと思う。
私は差別なんて有り得ないと思っていたのに、一番身近な家族にそんなことを
思ってしまった。そしてそんな自分にとても驚いた。そのままでいいよと受け
入れるべきなのに。性的少数者が生きづらい理由のひとつは、こうして家族な
どからも否定されることがあるからだと理解した。
私は妹の事で、LGBTQの問題を身近に感じることができた。おそらく世
の中には、私のようにLGBTQのことを理解している『つもり』の人がたく
さんいると思う。しかし、いざ自分の周りにそういった人が現れたら、否定的
なことを言ったり、思ったりすると思う。それは仕方のないことかもしれない。
ただ、それは私のようにその人を傷つけてしまうことになる。そんな理解した
『つもり』をなくすために、まず自分自身や身近な人がそうだったら......と
色々な想像をしてみてほしい。
世の中にはLGBTQに限らず、あらゆるマイノリティの人達が生きづらさ
を抱えて暮らしている。妹も家で、学校で一日中生きづらさを感じている。私
は、SDGsでも謳われた『誰一人とり残さない』世の中になることを願い、
自分自身そういった人達に起こる問題を理解し、私の正しいと思う行動をして
いきたいと思う。そして皆が同じような気持ちで、少しずつでも世の中が変わ
って家が、学校が、会社が生きづらさを抱えた人にとって、優しい場所になっ
ていってほしいと思う。

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