司法書士及び司法書士法人の業務のマネー・ロ
ーンダリング及びテロ資金供与に関するガイド
ライン
令和6年4月1日
法務省・日本司法書士会連合会 1目 次
第1 本ガイドラインの目的等 ................................................... 2
1 本ガイドラインの目的 ..................................................... 2
2 本ガイドラインの基本的な考え方............................................ 3
(1) リスクベース・アプローチの位置付け ...................................... 3
(2) 監督指導等の指針 ....................................................... 4
第2 司法書士に求められる取組み................................................ 4
1 司法書士が取り組むべきリスクベース・アプローチ ............................ 4
(1) リスクベース・アプローチの意義.......................................... 4
(2) リスクの特定及び評価 ................................................... 5
(3) リスク低減措置 ......................................................... 6
(4) リスク低減措置を講じてもリスクが許容される程度に低減されない場合の対応 ... 8
2 犯収法上の義務との関係 ................................................... 9
第3 監督指導等の対応 ......................................................... 9
1 基本的な考え方 ........................................................... 9
2 司法書士会による監督指導等............................................... 10
3 法務大臣等による監督 .................................................... 10
第4 ガイドラインの実現に向けた取組み等....................................... 11
1 日司連による手引の策定 .................................................. 11
2 司法書士会によるアウトリーチ等........................................... 11
3 その他留意事項 .......................................................... 11 2第1 本ガイドラインの目的等
1 本ガイドラインの目的
経済・金融サービスのグローバル化、
暗号資産の普及といった技術革新によ
り、資金の流れが多様化し、国境を越える取引が容易になっている中で、マネー・
ローンダリングやテロ資金供与
(以下
「マネロン・テロ資金供与」
という。)の手口も複雑化・高度化している。
こうした資金の流れを放置すると、
不正な資金が将来の犯罪活動や犯罪組織
の維持・強化に利用され、組織的な犯罪及びテロリズムを助長するとともに、
これを用いた事業活動への干渉が健全な経済活動に重大な悪影響を与えるお
それがあり、我が国や国際社会にとっての大きな脅威につながる。
このため、国際社会においては、不正な資金の移転が、国境を越え、脆弱な
規制や不十分な対策の隙をついて行われるという認識のもと、
金融活動作業部
会(Financial Action Task Force(以下「FATF」という。))の多国間枠
組みを通じて、マネー・ローンダリング、テロ資金供与、大量破壊兵器の拡散
活動への資金供与への対策の国際基準(以下「FATF基準」という。
)の策
定・履行を協調して行い、世界全体での対策の実効性向上を図っている。我が
国でも、犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成 19 年法律第 22 号。以
下「犯収法」という。
)等を制定するなどして、FATF基準の履行を図って
いる。
犯収法は、令和4年 12 月に改正され(国際的な不正資金等の移動等に対処
するための国際連合安全保障理事会決議第 1267 号等を踏まえ我が国が実施す
る国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法等の一部を改正する法
律(令和4年法律第 97 号))、司法書士を含む一定の資格者に義務付けられる
取引時確認事項が、犯収法第4条で規定する全ての事項に及ぶこととなった。
司法書士及び司法書士法人(以下、両者を併せて「司法書士」という。
)につ
いては、日本司法書士会連合会(以下「日司連」という。
)が特定取引におい
て果たすべき確認事項を示すチェックシートのモデルを作成し、
これに基づい
て司法書士が取引時確認の義務を果たすこととなる。また、司法書士は、犯収
法第8条に規定される疑わしい取引の届出義務が課されないこととなったが、
当該義務に代わる自主的な制度として、各司法書士会(以下、日司連と併せて
「日司連等」
という。)の会則において
「特別事件報告」
の制度が設けられた。
しかし、
社会情勢等が刻々と変化することに伴うマネロン・テロ資金供与の 3リスクの変化等に機動的に対応し、
個々の依頼についてマネロン・テロ資金供
与を目的とするものか否かを的確に判断するためには、
これまで行われてきた、
法令等の整備によるいわゆる「ルールベース・アプローチ」に基づく対策のみ
では不十分であり、
司法書士が直面するリスクに応じた柔軟な対応を取ること
が不可欠である。
そこで、本ガイドラインは、司法書士を対象とする「リスクベース・アプロ
ーチ」
の枠組みを示し、
これを遵守させることを目的とするものである1。リス
クベース・アプローチは、自らの業務について直面しているマネロン・テロ資
金供与のリスクを適時かつ適切に特定及び評価し、
リスクに見合ったリスク低
減措置(資産及び収入の状況の確認を含む。
)を講ずることをいい、司法書士
が業務を行う上での姿勢を示すものである。
また、
司法書士の業務におけるマネロン・テロ資金供与への対策を実効的な
ものとするために、
法務省、
日司連等が行うべき取組みや司法書士に対するモ
ニタリングのあり方について明らかにする必要がある。
法務省、
日司連等が本
ガイドラインを踏まえたマネロン・テロ資金供与対策への対応状況等について
モニタリングを行い、
適切な是正措置を行うことで司法書士が果たすべき執務
の一層の適正化を図るものである。
2 本ガイドラインの基本的な考え方
(1) リスクベース・アプローチの位置付け
犯収法は、
国民生活の安全と平穏を確保し、
経済活動の健全な発展に寄与
する上でマネロン・テロ資金供与の防止が極めて重要であること
(犯収法第
1条参照)
に鑑みて、
その防止のために特定事業者による措置等を規定して
いる。このような法の趣旨及び目的並びに司法書士の職責(司法書士法(昭
和 25 年法律第 197 号)第2条)に照らすと、司法書士は、自らの業務に関
する依頼の目的がマネロン・テロ資金供与であると認めた場合には、
その依
頼を受けてはならないことになる。
そのため、
自らの業務に関する依頼を受
けようとするときは、
その依頼の目的がマネロン・テロ資金供与であるか否
かについて慎重かつ的確に検討しなければならない。
また、
その検討の結果、1リスクベース・アプローチは、FATFによるマネロン・テロ資金供与対策に関する勧告に
おける基本原則とされており、司法書士を含む特定非金融業者及び職業専門家(DNFBPs)に対
しても遵守が求められている。 4依頼の目的がマネロン・テロ資金供与であることの疑いを払拭できない場合
についても、その依頼を受けてはならない。
リスクベース・アプローチは、依頼の目的がマネロン・テロ資金供与であ
るか否かを検討するための合理的な方法であり、
司法書士は、
自らの行う業
務がマネロン・テロ資金供与に利用されないことが極めて重要な社会的責務
であることに鑑みて、全ての依頼について、マネロン・テロ資金供与に関す
るリスク(以下単に「リスク」という。
)の観点から、犯収法等の趣旨を踏
まえ、リスクベース・アプローチに基づく対応を行わなければならない2。(2) 監督指導等の指針
マネロン・テロ資金供与対策の実効性を確保するためには、
司法書士会及
び法務省が、
司法書士によるマネロン・テロ資金供与対策の取組状況につい
てモニタリングを行う必要がある。また、司法書士によるマネロン・テロ資
金供与対策が明らかに不十分であるなどの場合には、
監督指導による是正が
必要となる(以下、モニタリング及び監督指導を合わせて「監督指導等」と
いう。)。
このような監督指導等の具体的な内容は、
司法書士がマネロン・テロ資金
供与に関わるリスク(以下「監督上のリスク」という。
)に応じて決められ
るべきである(第3を参照)。第2 司法書士に求められる取組み
1 司法書士が取り組むべきリスクベース・アプローチ
(1) リスクベース・アプローチの意義
リスクベース・アプローチとは、司法書士が、業務に関して依頼を受けよ
うとする際及び依頼を受けた後に、
自らが直面しているリスクを適時かつ適
切に特定及び評価し、
当該依頼を行うことが許容される程度にまで当該リス
クを実効的に低減するため、
当該リスクに見合った対策を講ずることをいう。
リスクベース・アプローチの枠組みは、
司法書士の業務に関する依頼の目
的がマネロン・テロ資金供与にあるか否かを検討するための基本原則である
ことから、本来的には、その適用対象は犯収法上の特定取引(犯収法第4条2リスクベース・アプローチに基づく検討を行うまでもなく依頼の目的がマネロン・テロ資金
供与を目的とすることが明らかである場合には、当然、その依頼を直ちに拒否しなければなら
ない。 5第1項)に限定されるものではなく、司法書士の業務(司法書士法第3条若
しくは第 29 条に定める業務又はこれらに付随し、若しくは関連する業務)
のうち、
依頼者のためにする行為又は手続に係る依頼全般に適用されるべき
ものである。
(2) リスクの特定及び評価
ア リスクの特定及び評価
リスクの特定は、司法書士が、自らが依頼を受け、又は依頼を受けよう
とする行為や依頼者の属性等のリスクを包括的かつ具体的に検証し、
マネ
ロン・テロ資金供与に係るリスクを特定するものであり、リスクベース・
アプローチの出発点というべきものである。
リスクの特定について、
司法書士は、
司法書士の業務について依頼を受
けようとする場合には、依頼者の属性、依頼者との業務上の関係、依頼内
容及び依頼に関係する事実
(例えば、
不動産登記の代理申請の依頼におい
ては、
当該申請の登記原因に係る事実)
等の事情を包括的かつ具体的に検
討した上で、
これらを総合的に考慮してリスクを特定しなければならない。
また、
依頼を受けた後であっても、
同様にこれらの事情について新たなリ
スクが判明した場合には、
これを踏まえてリスクの特定を検討する必要が
ある。そして、司法書士は、特定されたリスクについて、自らへの影響度
等を踏まえて総合的な評価を行い、
その依頼について高リスクであるか否
かの判断を行わなければならない。
このようなリスクの特定及び評価は、
リスク低減措置の具体的な内容を
基礎付けるものであり、
リスクベース・アプローチの土台となるものであ
る。
イ 高リスクの依頼
高リスクとは、
その依頼を受けようとする場合に、
特定したリスクの評
価の結果、司法書士会の会則(以下「会則」という。
)で定められた依頼
者等の本人であることの確認並びに依頼の内容及び意思の確認
(以下
「依
頼者等の本人確認等」という。
)の義務や犯収法で規定された取引時確認
等の義務を履行するだけでは許容されない程度のリスクが残ることをい
う。
ここで、
「許容されない程度のリスク」とは、依頼の目的がマネロン・
テロ資金供与であることの疑いを払拭できないことを意味している。
この 6場合には、
後記(3)アのとおり、
追加的なリスク低減措置が講じられなけれ
ばならない。
ウ リスクの特定及び評価の具体的方法
司法書士は、
リスクの特定及び評価に当たっては、
自らの有する情報の
ほか、
後述するリスクベース・アプローチに関する解説や国家公安委員会
作成の「犯罪収益移転危険度調査書」
(以下「危険度調査書」という。)などを参照したり、
法務省等の関係省庁から提供される情報や日司連等から
提供される情報等を踏まえたりするなどして、
高リスクであるか否かの判
断を適切に行うように努めなければならない。
また、
特定の依頼者との関係で継続的に業務に従事する場合には、
依頼
を受けた後においてもリスクの特定及び評価が必要とされる場合がある。
(3) リスク低減措置
ア リスク低減措置としての顧客管理
前記(2)で特定及び評価されたリスクを許容される程度に実効的に低減
するための措置を講ずることは、
マネロン・テロ資金供与対策の実効性を
決定付けるものである。
リスク低減措置のうち、
特に個々の依頼者に着目
し、
自らが特定及び評価したリスクを前提として、
個々の依頼者の情報や
当該依頼者の依頼内容等を調査し、
調査の結果をリスク評価の結果と照ら
して、
講ずべきリスク低減措置を判断及び実施する一連の流れを、
本ガイ
ドラインにおいては「顧客管理」という。リスク低減措置の中核的な事項
である。
依頼者との個別的な契約締結を前提とする司法書士の業務において、リスク低減措置は、
通常、
個々の依頼者を単位として講じられることとなる。
そこで、司法書士は、特定及び評価されたリスクについて、個々の依頼者
に着目したリスク低減措置を講ずることが基本となる。
顧客管理は、依頼を受けようとする際の顧客管理(以下「依頼時の顧客
管理」
という。)と依頼を受けた後の顧客管理
(以下
「依頼後の顧客管理」
という。
)に分けることができる。一般的にいえば、単発的な不動産登記
手続の代理申請業務の多くは、
依頼時の顧客管理のあり方が中心的な問題
となり、
財産管理業務など依頼者との間で継続的な関係が予定される場合
には、
依頼時の顧客管理に加えて依頼後の顧客管理のあり方も問題となる
ことが多い。 7イ 依頼時の顧客管理の内容
依頼時の顧客管理は、
依頼者等の本人確認等を典型例とする。
講ずべき
措置の内容は、
特定及び評価されたリスクの内容及び当該リスクが高リス
クであるか否かに応じて決められるべきである。
本ガイドラインにおいて
は、高リスクと判断した場合に講ずべき顧客管理を「厳格な顧客管理」と
いい、
高リスクではないと判断した場合に講ずべき顧客管理を
「通常の顧
客管理」という。
(ア)厳格な顧客管理(高リスクの場合)
高リスクと判断した場合には、
依頼者等の本人確認等を行うだけでは
リスクを許容される程度に低減することはできないため、
追加的なリス
ク低減措置を講ずることが求められる。
追加的なリスク低減措置の具体
的な内容は、犯収法第4条第2項に規定する取引(以下「ハイリスク取
引」という。
)における追加的な確認方法及び後述するリスクベース・
アプローチに関する解説や危険度調査書に記載された取組内容等を参
照しつつ、
司法書士が直面する具体的なリスクの内容に応じて決められ
るべきである。なお、高リスクと判断した場合には、その判断根拠や講
じたリスク低減措置の内容について記録化しておくべきである。
(イ)通常の顧客管理
高リスクではないと判断した場合には、
司法書士の職責上求められる
依頼者等の本人確認等の義務や犯収法で規定された取引時確認の義務
を履行することで、
リスクを許容される程度に低減することができる3。ウ 依頼後の顧客管理
依頼者との契約に基づく財産管理業務に従事したり、
同一の依頼者から
継続的に登記申請手続の代理業務に従事したりする場合など、
特定の依頼
者との関係で継続的に業務に従事するときには、
依頼時の顧客管理によっ
て低減されたリスクを依頼後も適切に管理しなければならない。
これに加
えて、
業務に従事する過程で新たなリスクが判明した場合には、
リスクの
評価を行い、その内容に応じたリスク低減措置を講じなければならない。
このように、
依頼後の顧客管理は、
継続的なリスク管理と新たなリスク等
への対応に分けることができる。3後述する「簡素な顧客管理」は、
「通常の顧客管理」の一態様として整理される。 8(ア)継続的なリスク管理
継続的なリスク管理は、
依頼時の顧客管理において取得した情報を更
新していくことが想定されている。
その更新の頻度については、
高リス
クであるか否かに応じて決められるべきであるが、
依頼時の顧客管理を
実行することにより許容される程度にリスクが低減されていることか
ら、
依頼後に新たなリスク等が生じたり、
依頼時に行った適切な顧客管
理をもってしても判明しなかった事情が事後的に判明したりしたとい
った場合を除いて、
適切な顧客管理の実効性が妨げられない範囲で、取引の円滑な遂行等を考慮した顧客管理が許容される
(以下、
このような
顧客管理を「簡素な顧客管理」という。)。
(イ)新たなリスク等への対応
特定の依頼者との関係で継続的に業務に従事する過程で新たなリス
ク等が判明したり、
依頼時に行った適切な顧客管理をもってしても判明
しなかった事情が事後的に判明したりしたといった場合には、
依頼を受
ける際と同様のリスク評価を行わなければならず、
これによってその依
頼が高リスクと判断された場合には、
速やかに依頼時の顧客管理におい
て取得した情報を更新するとともに、
厳格な顧客管理として追加的なリ
スク低減措置を講じなければならない。その内容は、前記イ(ア)に記
載したことが基本的には該当する。
(4) リスク低減措置を講じてもリスクが許容される程度に低減されない場合
の対応
リスクベース・アプローチに基づくリスク評価の結果、
その依頼が高リス
クと判断され、
リスク低減措置を講じてもそのリスクが許容される程度まで
減ぜられなかったときには、
依頼の目的がマネロン・テロ資金供与であるこ
との疑いが払拭できない場合に該当するとして、
司法書士は、
その依頼を拒
まなければならず、受任後であれば、辞任しなければならない。
依頼の目的がマネロン・テロ資金供与であることの疑いが払拭できない場
合であるかに関する判断過程は合理的なものである必要があり、
前記(1)から
(3)までのリスクベース・アプローチの手順に則ったものである必要がある。
また、
リスクが許容される程度を超えているかについては、
リスク低減措置
を講じた後に残るリスクの程度が、
高リスクと同程度のものといえるかによ
って判断されることとなる。 9上記の枠組みは、
依頼後に新たなリスク等が生じた場合についても同様に
当てはまる。
2 犯収法上の義務との関係
前記1のリスクベース・アプローチは、
司法書士の業務に関する依頼の目的
がマネロン・テロ資金供与であるかどうかを合理的に検討する枠組みであり、
これをもって司法書士が犯収法上の義務の履行を免れるものではないことに
注意する必要がある。
例えば、司法書士は、リスクベース・アプローチの枠組みに基づき依頼を高
リスクではないと判断した場合であっても、
犯収法上の取引時確認等を要する
取引類型については、これを実施しなければならないのは当然である。
第3 監督指導等の対応
1 基本的な考え方
マネロン・テロ資金供与対策の実効性を確保するためには、
司法書士に対す
る適切な監督指導等が行われる必要がある。
監督指導等は、
大きく分けて、
司法書士会による監督指導等と法務大臣又は
法務局及び地方法務局の長による監督
(以下
「法務大臣等による監督」
という。)に区別することができる。
司法書士によるマネロン・テロ資金供与対策には、
犯収法上の取引時確認等
や会則上の依頼者等の本人確認等のように、
法令又は会則に基づいて司法書士
による遵守が義務付けられている対策
(以下
「法令等に基づく対策」
という。)と、リスクベース・アプローチのように、法令又は会則に基づいて義務付けら
れているものではないが、
ガイドライン等によって取組みが求められている対
策(以下「ガイドライン等に基づく対策」といい、法令等に基づく対策と合わ
せて「司法書士によるマネロン・テロ資金供与対策」という。
)が存在する。
司法書士会による監督指導等は、
法令等に基づく対策とガイドライン等に基
づく対策の双方について行われるのに対し、
法務大臣等による監督は、
特に法
令等に基づく対策の不遵守等を対象として行われることが想定されている。
司法書士会による監督指導等や法務大臣等による監督の方法は、
いずれも監
督上のリスクの内容及び性質、
当該リスクの程度等に応じて決められるべきで
ある。 102 司法書士会による監督指導等
司法書士会は、
司法書士によるマネロン・テロ資金供与対策が十分であるか
についてモニタリングを行う。
司法書士会によるモニタリングは、
司法書士か
ら提出された特定事件報告書に基づいて行うこととなる4。司法書士会は、
特定事件報告書の記載内容を通じて司法書士のマネロン・テ
ロ資金供与対策について確認を行う。
特定事件報告書に記載された内容に照ら
すと司法書士が行うべきマネロン・テロ資金供与対策として不十分な措置がと
られていると認めた場合には、
当該司法書士から事情聴取をした上で、
当該司
法書士に対して適切な助言及び指導を行うこととなる。
特定事件報告書の性質やこれに基づいた司法書士会による助言及び指導の
実効性を確保する必要性があることを踏まえると、
司法書士が特定事件報告書
の提出に全く応じない場合、
特定事件報告書の内容に基づく司法書士会による
助言や指導に従わず、
執務の内容等に改善がみられない場合、
特定事件報告書
に虚偽の記載をした場合には、
監督上のリスクが高いものとして、
司法書士会
による注意勧告等の的確な対応をとることが要請される。
日司連は、
司法書士会に対し、
司法書士会による監督指導等の対応指針を示
し、助言及び指導を行うこととする。
3 法務大臣等による監督
司法書士会は、
その会に所属する司法書士に対する指導権限があることから、
まずもって司法書士会による監督指導等によって改善が図られることとなる。
しかし、
司法書士会による監督指導が功を奏しない事案、
法令等の違反の程
度が重大である事案、
司法書士会による自治的な取組みに委ねることが相当で
ない事案など、
監督上のリスクが特に高いと認められる場合には、
法務大臣等
による監督が検討されなければならない。
法務大臣等による監督は、犯収法上の監督権限(犯収法第 15 条以下)及び
懲戒権限(司法書士法第 47 条及び第 48 条)の行使を通じて行われる。
法務局及び地方法務局の長は、
犯収法上の監督権限として、
報告等を求める
権限(同法第 15 条)
、立入検査等の権限(同法第 16 条第 1 項)
、指導等の権限
(同法第 17 条)及び是正命令の権限(同法第 18 条)を有している(犯収法第4特定事件報告書は、司法書士会によるモニタリング等の基礎となるものであるから、その記
載事項は、その時点での社会的情勢等に反映した適切なものとされなければならない。そのた
め、必要に応じて、記載内容は改定されることとなる。 1115 条以下、犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令(平成 20 年政令第
20 号)
第 35 条。
なお、
罰則規定につき犯収法第 25 条、
第 26 条及び第 31 条)。また、
法務大臣は、
司法書士法上、
司法書士に対する懲戒権限を有しており、
「司法書士及び司法書士法人に対する懲戒処分の考え方(処分基準等)
」にお
いて、
犯収法違反を伴う本人確認等義務違反が違反行為として明記されている
(別表番号8及び 15)。法務大臣等による監督は、
対象となる事案の性質及び内容、
法令等の違反の
程度、それぞれの権限の性質や趣旨を踏まえて、どの措置をとるかが決定され
るべきである。また、具体的な法務大臣等による監督の内容は、司法書士によ
る法令等の違反の内容やその程度等から評価される監督上のリスクに応じて
決定されるべきである。
第4 ガイドラインの実現に向けた取組み等
1 日司連による手引の策定
司法書士がリスクの特定及び評価を適切に行い、実効的なリスク低減措置
を可能とするためには、広くマネロン・テロ資金供与に関する最新の情報を
収集し、分析することが有益である。
そこで、日司連は、司法書士会と連携して参考事例を集積及び分析し、リ
スクベース・アプローチに基づく対応を行う上で参考となる事項をまとめた
手引を策定し、司法書士に提供するものとする。
リスクベース・アプローチに関する解説の内容は、社会情勢等が日々大き
く変化することに伴うマネロン・テロ資金供与のリスクの変化等に機動的に
対応するために、定期的に更新されることが想定される。
2 司法書士会によるアウトリーチ等
司法書士会は、日司連及び法務省とも連携しつつ、リスクベース・アプロ
ーチその他のマネロン・テロ資金供与への対策に関する情報を、引き続き研
修その他の機会を通じて司法書士に提供するものとする。また、日司連は、
関係機関からの情報提供を受けたり、関係機関との間で意見交換等をしたり
することで、適時情報を把握して、司法書士会を通じて会員に情報提供をす
るものとする。
3 その他留意事項
日本では、外国為替及び外国貿易法(昭和 24 年法律第 228 号)や国際連合 12安全保障理事会決議第 1267 号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの
財産の凍結等に関する特別措置法(平成 26 年法律第 124 号)に基づいてタリ
バーン関係者やテロリスト等に対し、
資金その他資産の使用・資金の流れを防
止するための資産凍結措置を実施している。
司法書士においても、
個々の依頼者に着目するほか、
下記の対応をとること
が求められる。
・取引の内容(送金先、取引関係者(その実質的支配者を含む)等)につい
て最新の制裁リストと照合するなど、的確な運用を図ること
・制裁対象者が新たに指定された際には、遅滞なく、特定受任行為の代理等
の依頼者に係る情報と照合するなど、
国内外の制裁に係る法規制等の遵守
その他リスクに応じた必要な措置を講ずること

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