2 人権の擁護
1.主な人権課題
この章では、主な人権課題とその取組を取り上げます。
女性の社会参加や活躍の機会が奪われることはあってはなりません。
また、
女性は、
性犯罪・性暴力、
DV、
ハラスメント等の対象となりや
すく、
こうした被害から守ることが必要です。
男女平等の理念は、
「日本国憲法」に明記されており、法制上も「雇用の分野
における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」等によって、男女平
等の原則が確立されています。しかし、今なお、
「男は仕事、女は家庭」といっ
た男女の役割を固定的に捉える意識が社会に根強く残っており、このことが家庭
や職場において様々な男女差別を生む一因となっています。
また、性犯罪・性暴力、配偶者等からの暴力(DV)
、職場におけるセクシュ
アルハラスメントや妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い等の問題も、近年多
く発生しています。
こうした女性の人権問題に対しては、平成28年4月に施行された「女性の職
業生活における活躍の推進に関する法律」により、国と地方公共団体、一定数の
労働者を常時雇用する事業主に対して、女性の活躍状況の把握・課題分析、数値
目標を掲げた行動計画の策定、策定した行動計画及び女性の活躍状況に関する情
報の公表等が義務付けられ、女性が職業生活において十分に能力を発揮し、活躍
できる環境を整備するための取組が進められています。また、パワーハラスメン
トの防止対策が全ての事業主に義務付けられるとともに、労働者が事業主に各種
女性〜性犯罪・性暴力・DV・ハラスメント〜❶●くろまる内閣府
「人権擁護に関する世論調査」 (令和4年8月調査)
から
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あなたが、
女性に関し、
体験したことや、
身の回りで見聞きしたことで、
人権問題だと思ったことはどのようなことですか。 複数回答(%)男女の固定的な役割分担意識に基づく差別的取扱いを
受けること
【47.0%】
女性が管理職になりにくいなど職場において
差別待遇を受けること
【39.0%】
ドメスティック・バイオレンス
【31.6%】
セクシュアル・ハラスメント
【42.0%】
売春・買春
【13.3%】
「令夫人」「婦人」のように女性だけに用いられる
言葉が使われること
【10.9%】
アダルトビデオなどに出演したことで被害を受けること
【8.1%】
特にない
【18.0%】
人権の擁護 3
啓発動画「『誰か』
のこと じゃない。」ポスター
「女性の人権ホッ
トライン」
ハラスメントに関する相談を行ったこと等を理由とする不利益取扱いの禁止が明
記されており、職場におけるハラスメント防止対策の強化が求められています。
女性に対する暴力等への取組の一つとして、毎年11月12日から25日までの
2週間が「女性に対する暴力をなくす運動」期間とされ、社会の意識啓発等のほ
か、都道府県に設置された配偶者暴力相談支援センターや性犯罪・性暴力被害者
のためのワンストップ支援センター等において、相談や支援が行われています。
さらに、毎年4月を「若年層の性暴力被害予防月間」と定め、SNS等を活用し
た若年層への啓発活動が行われています。また、AV出演被害対策については、
いわゆるAV出演被害防止・救済法に基づき、出演契約に係る特則等の周知、相
談支援の充実、広報啓発の実施、厳正な取締り等が推進されています。
法務省の人権擁護機関では、専用相談電話「女性の人権ホットライン」
(ナビ
ダイヤル0570‐070‐810(全国共通)
)を設置し、法務局職員や人権擁護委員
が、DVや職場等における各種ハラスメント、ストーカー被害、AV出演被害等
といった女性をめぐる様々な人権問題に関する相談に応
じ、人権侵害の疑いを認知した場合には、人権侵犯事件
として調査救済活動を行うほか、啓発動画の配信等の人
権啓発活動に取り組んでいます。
■しかく女性に対する暴行・虐待に関する人権侵犯事件(注)
の新規救済
手続開始件数1345
平成30年 令和元年 令和2年
1,182 947 629
令和3年435令和4年430女性に対する暴行・虐待
(注)人権侵犯事件については、40〜44ページをご覧ください。2特集 人権擁護に関する世論調査